『カラオケ行こ!』綾野剛&齋藤潤が明かす、2人の“エモい”関係!「会うたびハグをしていました」

和山やまの人気コミックを綾野剛主演、齋藤潤共演で映画化した『カラオケ行こ!』/撮影/興梠真穂

『カラオケ行こ!』綾野剛&齋藤潤が明かす、2人の“エモい”関係!「会うたびハグをしていました」

1月10日(水) 14:30

和山やまの人気コミックを綾野剛主演、齋藤潤共演で映画化した『カラオケ行こ!』が、1月12日(金)に公開される。絶対に歌が上手くならなければならない主人公のヤクザ・成田狂児が、思春期の悩める合唱部部長の中学生・岡聡実をカラオケに誘い、歌の指導を頼む…。そんな奇抜な設定の物語を、『1秒先の彼』(23)、『リンダ リンダ リンダ』(05)の山下敦弘監督が、ドラマ「アンナチュラル」「逃げるは恥だが役に立つ」などを手掛ける野木亜紀子の脚本でエモーショナルに映し出した話題作だ。
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取材冒頭、「四代目祭林組 若頭補佐成田狂児」と印刷された名刺を、劇中と同様人差し指と中指で挟んで「よろぴく」と言いながら記者1人1人に手渡し、一気に取材陣の心を掴んでいた綾野。今回は「岡聡実と齋藤潤の成長がこの作品に大きな影響を与えてくれると現場にいる誰もが信じ、彼の心の動きをカメラに映すことに注力した現場」であり、「役者の仕事をする上で、新しい角度や精度が求められた」と振り返る。そして、「例えるなら、“お麩”のようとでも言いますか」と、独特の綾野節で語り始めた。

■「『ただひたすら温かくてたおやかな青春』を表現したかったです」(綾野)

綾野「本来ヤクザと中学生が噛み合うはずがないのです。それは同時に僕と潤くんの芝居が噛み合ってはいけないという事になります。原作では、聡実の“心の声=モノローグ”で、その噛み合わなさを治癒しチューニングしていますが、今回はモノローグもありません。つまり、山下監督や脚本の野木さんは、原作の“実写化”ではなく、“映画”にすることを目指したのです。いかに完成させることなく芝居を成立させられるか。例えるならお麩のようとでも言いますか。台本のように最初は揺らぎなく固く安定し、現場に入るとお湯に入れたように柔らかく広がり原型を留めておりません。一言で言えば"変体"なのですが、実際掴めていたものが掴めなくなる繊細な関係性を、この映画の中の狂児と聡実は、維持し続けなくてはならないんです」

――なるほど…。お麩、ですか。

綾野「お麩の水分を吸い切った先にあるその形は、間違いなく水分を含む前よりも大きく、柔らかくなっている。それこそが、この作品のたおやかさに繋がっています。青春って、決して美しいものばかりではなく、やや鋭利で、残酷でもあり、時に甘酸っぱいものでもあります。どちらかと言えばストーリーテリングがしやすい、苦しくて残酷なことの方が描かれやすいですが、この映画では『ただひたすら温かくてたおやかな青春』を表現したかった。狂児が20%ぐらいで存在し、他のキャストもフラットでいることによって、 岡聡実の感情がどう動いているのかだけが浮き彫りになる。だからこそ序盤は観ている人たちに違和感や不安を覚えさせかねない表現、言わば“何を見せられているんだ感”を、勇気を持って出すことを求められたわけです」

――齋藤さんは、今の綾野さんのお話を聞いていかがですか?

齋藤「撮影は1年前だったのですが、当時はまだお芝居の知識もほとんどなく無我夢中でやっていて。僕としては、剛さんと芝居が噛み合った時に、『あ、いまのいい!』って思えたんですけど…」

齋藤「でもそれだと何かが違うから。僕は正解が何なのかわからなくなってしまって」

綾野「うん、正解がわからなかったよね」

齋藤「監督から『次はこういう感じでやってみて』と言われても、やっていくうちに自分でもだんだん何をやっているのかわからなくなくなってきて。『さすがにもうダメかもしれない…』って。実際、途中で心が折れたこともありましたよね?」

綾野「心が折れたとは感じなかったですよ。むしろ階段を1つ1つ確実に上っているのだと思いました」

齋藤「そんなときも、剛さんがずっとそばにいて言葉をかけてくださって。そのおかげでやるべきことが見えてきたんです。だからもう、剛さんと監督には感謝しかありません」

――綾野さんは、どんな言葉をかけられたんですか?

綾野「『ちょっと風当たりに行く?』とか『ちょっと散歩でもしようか』くらいのことですよ。でも、いざ外に出てみたら、12月だったので『ごめん、寒いね』って。潤くんは何に対しても目を背けることなく立ち向かいました。だからこそ、そんな僕のちょっとした声掛けも敏感にキャッチしてくれたのだと思います」

――綾野さんには、デビュー作の「仮面ライダー555」での初演技で、23テイク撮ったという有名なエピソードがありますが、大人たちがこんなにも自分と真剣に向き合ってくれている姿を目の当たりにして、「自分も誰かのために頑張らなければ…」と思われたそうですね。齋藤さんとお芝居する上で、当時のご自身ことを思い出したりしましたか?

綾野「僕の場合は、きっかけを与えてもらい役者としての現場を歩ませていただくことになったので、この年齢で自ら役者を志して現場に立ち向かっている潤くんとは、スタートラインから全く違います。潤くんは、僕が23テイク撮っていた段階なんてもうとっくに通り越していますし、役者として誠実に現場に佇む彼の眩さを前に敬意しかありません。ただ、僕らは、1人で何かを成し得てきたわけではなく、先人たちが作り上げてきた礎の上に立たせていただいている。そして、当然ながらその礎を守るだけではなく、そこからハイブリッドして、さらに進化させていく過程に僕らは存在しています。後に続く彼らが迷わず真っ直ぐ進んで行けるように、“可能性”という名の扉の隙間だけは開けていきたいという、祈りのような気持ちはあります」

■「聡実と狂児は、思わず気持ちが温かくなるような、“エモい関係”」(齋藤)

――聡実と狂児の関係については、お2人はどう思われましたか?

齋藤「えっと…」

綾野「僕から先に話そうか。その間に思いつくかもしれないから」

齋藤「はい。お願いします」

綾野「シンプルに“優しい関係”。この言葉に尽きると思います。立場や職業、年齢など関係なしに、すごくフラット。その対等さが、誰にでも伝わる優しさに変化するのだろうなと。『ありがとう』も『ごめんね』も『さよなら』も言い合える、すてきな関係だなと思います」

齋藤「観ていて思わず気持ちが温かくなるような、“エモい関係”だなって思いました」

綾野「エモい関係!ぜひそれでお願いします」

――エモい関係ですね!変声期を迎えたせいで、「綺麗なソプラノが出ない」と悩みを吐露する聡実に、狂児が「綺麗なものしかあかんかったら、この街ごと全滅や」と答える場面がとても示唆的で印象に残っています。綾野さんご自身はこのセリフについてどう思われましたか?

綾野「そこだけ切り取ると哲学を持っているように聞こえるかもしれませんが、あれは、狂児にとって聡実への純粋なエールです。感情を変容させずにストレートに発した言葉。狂児は、『大人の手練手管で聡実と向き合ってはいけない』ということを、本能的に察知できる人です。それが、狂児の本質的な凄味であり、だから聡実も相手がヤクザであるとわかっていても、当たり前のように一緒にいられるという説得力に変わる。もしあれが、大人としての経験則に基づいて、狂児が発していた言葉だったとしたら、きっと聡実には響かなかったはずです。目の前の相手を説得や納得させようと思って発したわけでなく、あくまでも聡実と同じ目線で世の中を見渡した瞬間に、狂児の内側から、ポッと生まれ出た言葉だったような気がします」

――なるほど。それが、聡実の感動的なクライマックスシーンにつながるわけですね。齋藤さんは、スナックのシーンで大勢の強面の大人の俳優さんたちに囲まれた時、どんな心境でしたか?

齋藤「あの時はとにかくもう、『いくしかない!』『やるしかない!』という感じでした」

綾野「あの状況は腹をくくるしかないよね」

齋藤「30人の大人がタバコをふかしている中に入っていくのは、さすがに勇気がいりましたけど…。そこはあまり深く考えることなく聡実としての感情をぶつけました」

■「潤くんに、『一緒の船に乗っているよ』という想いを伝えたかった」(綾野)

――齋藤さんは、いまのように現場で1人きりで戦わなければならない場面も多かったと思うのですが、綾野さんの存在に、支えられたり、救われたりした部分も大きいですか?

齋藤「それはもう…。剛さんは、撮影が始まると僕のことも1人の役者として接してくださるのですが、会うたび『おはよう』って言いながらハグしてくださいますし、お芝居の段取りをした後も、剛さんの方から近寄ってきて『よかったよ』って、ハグしてくださって。それだけで一瞬で疲れが全部吹き飛んでしまうくらい、僕は本当にうれしくて…」

綾野「狂児と聡実を生きる上では、どうしても噛み合わない芝居をし続けなくてはならないので、撮影外では自分たちのパーソナルや、体温を感じられる距離感が大切だと思いました。撮影中はどこか孤独です。だからせめて『一緒の船に乗っているよ』『僕も一緒に漕ぎ続けるからね』という想いを、伝えたかった。それが今回はたまたま“ハグ”という形になったのだと思います。組は各部署も含めて経験者が多いですから、『自分だけが何もわかっていないんじゃないか』と思い不安になります。ですが実は誰も正解なんて分かっていない。なぜなら一緒に作っていくものです。潤くんが今回それを学び、今後更に役者という仕事に魅力を感じ、夢や目標を持ってそれを叶えていく姿を変わらず見つめ続けたいです。そしてぜひ皆さんにも彼を見つめ続けていく証人の1人になってもらえたら幸いです。僕自身も、そうやって皆さんに育てていただきましたから。お互い成長した姿で、また必ず共演したいです。『正欲』での潤くんの存在感も、本当にすばらしかったですし、彼が出演する作品は、チームメイトの活躍を目にするように『いいよ!』『いいね!』と思いながら観ています」

――綾野さんに、ご自身の出演作を見守られている気分はいかがですか?

齋藤「めちゃくちゃうれしいです。でも…ちょっと照れます(笑)」

――齋藤さんも、綾野さんの出演作をいろいろとご覧になっていますか?

齋藤「もちろんです!ただ、(R+18の)『花腐し』だけは、ちょっとまだ観られていなくて…。でも『幽☆遊☆白書』は、必ず観ます!」

綾野「18歳になってからですね(笑)」

齋藤「僕自身はめちゃくちゃ観たいんですけど…」

■「剛さんとご一緒する時間は、僕にとってすごく貴重な時間です」(齋藤)

――綾野さんの出演作品は膨大ですし、大人向けの作品もありますからね(笑)。

齋藤「剛さんが芸能活動を始められたのは、20歳くらいの時でしたか?」

綾野「21歳の時」

齋藤「そこからものすごく沢山の経験を積んでいらっしゃる剛さんを前にして、僕がこんな言葉を簡単に口にするのは、なんだかおこがましいような気もするんですけど…」

綾野「全然そんなことないよ」

齋藤「僕としては、『剛さんの背中を追いかけて行きたい』という気持ちがありまして…。今回の作品では、剛さんと一緒に過ごさせていただく時間がとても多かったので、間近にいることでしか得られないものを、自分の目でたくさん盗めたらと思っていたんです。こういう取材の現場もそうですが、剛さんとご一緒する時間は僕にとってすごく貴重な時間なんです」

綾野「うれしいです。ありがとう」

(するとここで綾野が、取材に同席していた編集担当が着ていた服の柄に目を留めて…)

綾野「それって、もしや『THE NOVEMBERS』のTシャツですか?」

――あ、そうです!

綾野「いいですね~。大好きです。つい最近、東京でワンマン公演がありましたよね。ぜひ潤くんにもいつか彼らのライブを見てほしいな。一度聴いたら絶対、琴線に響くと思うから」

齋藤「ノー…ベンバーズ?」

綾野「あとで詳しく教えるね」

――いまのように、綾野さんが普段聴いている音楽や観た映画について、「この曲いいよ」「この映画観ておいた方がいいよ」と、お2人で話したりすることもあるんですか?

綾野「そう言われてみるとあまりそういう会話はしていなかった気がします。『これは教えておかなきゃ』みたいな意識もなかったので。そういった意味では僕ら自身も、本当に狂児と聡実のように、対等でフラットな関係だったのだと思います」

――齋藤さんの中には、綾野さんに聞いてみたかったことがきっとたくさんあるのでは?

齋藤「あ…、はい。あの…僕の希望を、ちょっと言ってもいいですか?」

綾野「もちろん!」

齋藤「(小声で)…剛さんとカラオケに、行きたいです…!」

綾野「アハハ(笑)。ぜひ。“カラオケ行こ!”」

取材・文/渡邊玲子


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