岐阜県は「おもてなし450年」 織田信長にまつわるエピソードとは?

岐阜県は「おもてなし450年」 織田信長にまつわるエピソードとは?

1月9日(火) 11:55

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岐阜県に関する歴史や魅力、独自の風習について、作家・文献学者の山口謠司さんが語った。

山口さんが登場したのは、J-WAVE『GOOD NEIGHBORS』内のコーナー「PLENUS RICE TO BE HERE」。オンエアは10月30日(月)~11月2日(木)。同コーナーでは、地方文化の中で育まれてきた“日本ならではの知恵”を、山口氏が解説していく。ここではその内容をテキストで紹介。

また、ポッドキャストでも過去のオンエアをアーカイブとして配信している。山口さんが岐阜を訪ね、現地の人から聞いたエピソードの詳細が楽しめる。

・ポッドキャストページ

織田信長が建設した岐阜城…おもてなし450年!

今回、山口さんは本州のほぼ中央に位置する岐阜県をテーマにあげた。面積は全国第7位の広さを誇り、7つの県に囲まれた数少ない内陸県のひとつだ。

山口謠司:岐阜のシンボルでもある、岐阜城は金華山の山頂に建っています。岐阜市の北側、現在の山県市出身の政治家に大野伴睦という方がいらっしゃいました。大正から高度成長の時代にかけて、日本の政治を牽引した方でしたが、俳句を作る人としても有名でした。

この大野伴睦が残した句に<天そそる/金華の城や/風光る>というものがあります。金華山山頂にはこの句碑があります。織田信長が建てた岐阜城、そのまま残っているわけではありませんが、岐阜城の上から望んだ天下というものはどのように映っていたのか、訪れることで、つい考えてしまいます。

山口さんによると「1984年から、岐阜城のあたりが考古学的な発掘をされている」という。織田信長が建設した当時の岐阜城というのはどういうものだったのか、3Dで再現もされているそうだ。

山口:今でも岐阜城の下のところに、丸い石がたくさん落ちているんですけど、それらは池を飾っていた小さな丸石だそうです。岐阜城の上からは滝が流れていて、その下に丸石があって、湖面から魚が泳いでいく姿がものすごく美しく光っていたそうです。そんなことが3Dで再現されていますが、信長が岐阜城で再現したかったのは、中国の山水画を現実にしたらどんな風になるのかなということ。それを実行したそうです。

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山口謠司コメント:これは、もしかしたら、池の底にあった小石かも!

山口さんは岐阜で「おもてなし450年」と書かれたポスターが貼ってあったのを見かけたという。

山口:信長は岐阜城に多くの人を招いたそうです。その中でも、いちばん有名な人は、ポルトガルから来たカトリック司祭の宣教師であるルイス・フロイス。このフロイスは戦国時代の日本のことを歴史書「日本史」に書いております。この「日本史」を読むと戦国時代の方々がどんな風に頑張っていたのかがよくわかります。

ところで、毎年、イタリア・ローマには、日本や中国から「どんなことが起きてますよ、こんな事件がありましたよ」という情報を集めて印刷する「カトリック通信」があります。フロイスは、この「カトリック通信」の中にも、織田信長のことを書いています。その中では「岐阜城というところは、まるで聖書に書かれたバビロンのようだ」と言っているんです。バビロンというのはシュメール語で<神の門>。金で飾られたこの岐阜城は、まさに神様の門のような異様な雰囲気をしていたのではないかと思います。

フロイスは信長に招かれて、鮎をご馳走になったそうだ。その鮎を獲るための鵜飼を、岐阜城のお庭から見ていたという。
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山口謠司コメント:「おもてなし」で国際交流!さすが、信長!

山口:岐阜といえば長良川で、長良川といえば鵜飼です。鵜飼による鮎漁は信長のおもてなしから450年以上伝えられている技術なんです。鵜飼をする人たちのことを鵜匠と呼びますが、長良川にいらっしゃる鵜匠の3人は、宮内庁の式部職・鵜匠という宮中から頼まれた職業として任命されているそうです。

なぜ、鮎を鵜で獲るのか──。どんないいことがあるのかと言いますと、鮎というのはすぐにダメになってしまう魚なんです。魚はストレスがかかると、胆のうから苦い味を出してしまいます。ところが鵜の中にそのままパカっと入ってから吐き出させることで、鮎は傷つきません。それをすぐに締めると、とっても新鮮な形で、人に提供することができる。苦味がまったくないと言われています。
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山口謠司コメント:右の山の上に、岐阜城が見えます!長良川!

鵜飼の技を見て、その鮎をご馳走になる。山口さんは「フロイスなんかが見れば、日本の不思議な伝統文化に見えたに違いありません」と語る。

山口: 450年前のおもてなしを通じて、日本ならではの文化、それを世界に向けて発信した人──それが信長であり、フロイスだったのかなと思います。岐阜城を眺めながら<人間五十年/下天の内をくらぶれば/夢幻の如くなり>と思うのは、誰でも岐阜城に行くと考えることなのかなと考えたりもしました。

郡上八幡でいただいた朴葉ずし

山口さんは岐阜県の中濃地域にある「郡上八幡」を訪れ、「これほど清々しくて気持ちの良い気が流れているところは日本国中を探してもほとんどない」と感じたという

山口:<雲の行き来にまた山隠す/郡上は山/また山の中>という詩があります。これは明治から昭和前期に活躍した詩人、童謡作家の野口雨情が、郡上八幡の風景をうたったものです。

野口雨情の手がけた詩というと、やっぱり<カラスなぜなくの>という歌を思い浮かべますね。ほかにも<赤い靴はいてた女の子>という歌もあります。悲しみをいっぱい含んだような、歌を書いたのが野口雨情なんですけど、郡上八幡の一番中心街に橋がございまして、その橋のところにこんな歌碑が書いてありました。

<今夜逢いましょ宮ヶ瀬橋で/月の出るころ上るころ>。宮ヶ瀬橋という橋がかかっているところなんですけど、なかなかこういう詩が書ける人はいないのではないかと思います。シンプルな言葉で、なんとも言えない淡く酸っぱい恋の逢瀬を書けたのも、野口雨情だったのです。
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山口謠司コメント:郡上八幡は、不思議なくらい清々しい気で満ちていました。

山口さんは郡上八幡でお店に入り、朴葉(ほおば・ほうば)ずしを食べたそうだ。

山口:郡上八幡では朴葉が獲れるそうです。朴葉といえば、大体中に味噌を入れて、飛騨牛かなんかを入れて、それを七輪で焼くような、そういう料理を思い浮かべますが、朴葉すしというものがあります。酢飯にきゃらぶき、紅生姜、ちょっと人参なんかも入っていましたが、要するに何を入れてもいいそうです。五目寿司を作って、朴葉で包んでいるんですね。温かい五目寿司を朴葉で包むので、朴葉の香ばしさがご飯に染みて、とってもおいしい。実際に食べてみると、朴葉の香りが鼻腔に広がっていきます。

そのお店で働く方が「郡上八幡は良いところよ」と言いました。「ここのご出身ですか?」と聞くと、「私は馬籠の出身」だと。「郡上八幡はよそ者を優しく迎え入れてくれるし、適当に放っておいてもくれる。あんたも都会暮らしが嫌になったら、ぜひ郡上八幡にいらっしゃい」と仰ってました。

7県に囲まれている岐阜には、おいしいものがたくさん

山口さんは岐阜に、昔から1度行ってみたかった場所があるという。

山口:寝物語という地名がついた長久寺村というところです。県境ファンにとってはよく知られている場所なのかもしれません。岐阜県不破郡関ヶ原町と滋賀県米原市長久寺という県境です。

JR東海道本線・柏原駅で下車、徒歩15分と書いてあります。僕は車で行きましたけど、江戸時代の浮世絵・歌川広重が描いた「木曽海道」というシリーズがあります。その59番目の宿場町・今須宿があったところです。寂れた場所ですが、寝物語という地名があった場所です。

そこには「近江・美濃・両国・境・寝物語・近江国・長久寺村」と書かれた大きな石碑が建っていたそうだ。

山口:古い大きな石碑です。その石碑から1本だけ幅20センチもないくらいの溝がツーっとありました。白くて、角張った石が溝の下には敷いてありました。水は流れておりません。

この溝が県境なんです。溝を辿って行ってみると、栗の木が1本、そしてその栗の木から落ちたばっかりのまるまるとした栗が落ちていました。この県境。とっても重要なところなんです。
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山口謠司:溝が一本流れています。これが文化の分かれ道!

山口謠司:溝が一本流れています。これが文化の分かれ道!

近江国と美濃国、つまり滋賀県と岐阜県の県境「寝物語」は東日本と西日本を隔てるラインなんですね。この東の岐阜までは金でお金の計算をする江戸の文化が強かった。一方、近江は銀本位制です。商人は金なんて使いません。銀で商品取引をするのですが、大阪の銀文化が強かったのが近江です。つまり金本位制と銀本位制がこの小溝で分かれているんです。

山口さんは旅の終わりのご馳走か、岐阜市にある地元で有名な割烹料理店「匠味 平野」を訪れたそうだ。

山口:ここでは、楽しいお話と一緒に、おいしいお料理をいただきました。郡上八幡を流れる吉田川で獲れた鮎の天日干しです。それに添えてあったのが、銀杏でした。この銀杏がおいしいんです。

「この銀杏は愛知県祖父江町の銀杏ですよ」とうかがい、地図を見てみると、そこは愛知県と岐阜県の県境にあります。この県境に木曽川が走っていますが、岐阜からその木曽川を渡ったら、すぐに祖父江町があり、祖父江町は銀杏の日本一の名産地なんです。

岐阜という県は、長野県・愛知県・滋賀県・石川県・福井県・富山県・三重県という7県に囲まれているんです。県境ごとにおいしいものがいっぱいです。川には天魚・鰻・鮎などおいしいお魚がたくさん。岐阜のおいしさは日本一かもしれないと思いながら、帰って来ました。

(構成=中山洋平)

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