『ラストサムライ』公開から20年!“ケン・ワタナベ”の『GODZILLA ゴジラ』、『ザ・クリエイター』へと続くハリウッド史を振り返る

『ラストサムライ』から始まった渡辺謙のハリウッドでの活躍を振り返る!/[c]Everett Collection/AFLO

『ラストサムライ』公開から20年!“ケン・ワタナベ”の『GODZILLA ゴジラ』、『ザ・クリエイター』へと続くハリウッド史を振り返る

12月5日(火) 12:30

ハリウッドを志す日本出身俳優の道を切り拓き、その可能性を自らの手で押し広げた渡辺謙。いまでは世界中の映画ファンが知る日本を代表する国際的スターだが、そのきっかけとなった『ラストサムライ』(03)の公開から今年でなんと20年(2003年12月6日に日本公開)!そこで本コラムでは、『ラストサムライ』から始まった世界の“ケン・ワタナベ”の輝かしいハリウッド映画史を振り返っていきたい。
【写真を見る】“武士道”を体現する勝元盛次を演じた『ラストサムライ』でアカデミー賞候補に!

■“武士道”を体現した『ラストサムライ』で世界を魅了!

『ラストサムライ』はトム・クルーズが製作と主演を務めたハリウッド製時代劇。明治維新後の日本が舞台の本作は、日本政府に依頼され、西洋式の戦術を教えるために来日した戦争の英雄、ネイサン・オールグレン(クルーズ)と、政府軍と敵対する侍たちの長である勝元盛次との友情を通して、失われつつある“武士道”の精神を描いたものだった。

渡辺はネイサンと双璧をなすもう一人の主人公とも言える勝元役をオーディションで勝ち取り、英語が自然に話せるようになるまで猛特訓して撮影に臨んだようだが、武士団を率いるその堂々たる風貌と西洋人の視点から映る異彩ぶりは圧巻!ネイサンを魅了し、彼に影響を与える人間力を感じさせる存在感で観客の心もつかみ、アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞の助演男優賞にいきなりノミネートされるという快挙を達成。世界にその名を轟かせた。

また、勝元の忠臣、氏尾を演じた真田広之と共に、日本人が見ておかしいと思うような描写を正すアドバイザー的な作業も自ら率先して行ったという。そうした、一つひとつの妥協しないきめ細やかな献身が、ハリウッドの映画関係者との信頼と絆を強くしていったのだろう。

■クリストファー・ノーラン、クリント・イーストウッド監督作に続けて出演

その証拠に、2005年にはハリウッド進出第2作として、『ダークナイト』(08)、『ダークナイト ライジング』(12)へと続くクリストファー・ノーラン監督の『バットマンビギンズ』に出演。ヒマラヤに本部を置く「影の同盟」のリーダー、ラーズ・アル・グールを白い髭を生やした謎めいた風貌で体現し(彼には実はある秘密があったが…)、人間の“闇”を独特の緊張感で作り上げていた。

さらに同年には、スティーヴン・スピルバーグ製作、ロブ・マーシャル監督による『SAYURI』で、主人公の芸者に扮した中国のチャン・ツィイーと共演。その勢いは留まることを知らず、2006年には“ケン・ワタナベ”の名を印象づける決定打となった、クリント・イーストウッド監督の『硫黄島からの手紙』への出演を果たした。


太平洋戦争最大の激戦地と言われる「硫黄島の戦い」を、『父親たちの星条旗』(06)との二部作で日米双方からの視点で描いた日本側の作品にあたる本作。渡辺が演じたのは、約2万2千人の日本兵たちを率い、防衛の先頭に立って戦った実在の人物、栗林忠道中将。ほかにも二宮和也、伊原剛志、加瀬亮、中村獅童といった日本を代表する俳優たちが出演したが、撮影現場の渡辺は役柄同様、彼らを牽引するリーダー的な役割を実践したという。時には、アメリカと日本という国民性だけではない、日本人でも世代によって戦争に対する意識が違うということをイーストウッド監督に自らの言葉で説き、栗林という男がどんな想いを抱えながら硫黄島で生き、死んでいったのかを自らの肉体で表現してみせた。

■ノーランの熱望を受けた『インセプション』で物語のキーマンに

こうして振り返ると、社会的なメッセージが強い作品とエンタメ作品にバランスよく出演しているのがよくわかる。たまたまそうなっただけなのだろうが、仕事を共にした監督から期待と信頼を寄せられているのは確かで、2010年にはノーラン監督との2度目のタッグとなる『インセプション』に出演した。

本作は眠っている人間の潜在意識に侵入し、アイデアを盗む産業スパイの男たちが危険なミッションに挑むSF大作。脚本も書いたノーランに「ケンをイメージしながら書いた役なんだ」と口説かれたというから、渡辺がどれだけ気に入られているのかがよくわかる。出演シーンが少なかった『バットマンビギンズ』とは違い、レオナルド・ディカプリオ演じる主人公に仕事を依頼し、行動を共にするキーマンとも言える人物に命を吹き込み、アクションにも果敢に挑戦。観る者を撹乱させる“ノーラン・ワールド”の住人に完全になりきっていた。

■ハリウッド版『ゴジラ』で“怪獣王”と対峙!

このように誰もが真っ先に思い浮かべる日本人を代表する顔になった渡辺。それを象徴していたのが、2014年のハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』への出演だ。本作で彼が演じた芹沢猪四郎博士はゴジラの研究者であり、理解者であるだけではなく、1954年公開の『ゴジラ』へのオマージュを感じさせる存在(同作に登場した芹沢大助博士、メガホンをとった本多猪四郎監督を連想させる役名にそれがくっきり!)。日本が誇る世界的な“カイジュウ”と対峙しても、見劣りしない日本の俳優はケン・ワタナベしかいない!この判断に異を唱える者はいないはずだし、渡辺はファンの期待を裏切ることなく、その重責を日本人にしか出し得ないゴジラを慈しむ表情で全うした。

■『追憶の森』&『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』で人間の生と死に向き合う

この頃の渡辺はとにかく引っ張りだこで、国内外の大作や話題作に次々に出演していた。『GODZILLA ゴジラ』と前後するように、マイケル・ベイ監督の『トランスフォーマー ロストエイジ』(14)と『トランスフォーマー/最後の騎士王』(17)に二刀流の侍型オートボット、ドリフトの声で参加。イーストウッド監督の傑作西部劇を日本でリメイクした『許されざる者』(13)の主演に続き、同じく鬼才、李相日が吉田修一による問題作を映画化した『怒り』(16)にも主要人物の一人として出演し、観る者の心を鷲づかみにした。

さらに、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(97)、『ミルク』(08)などのガス・ヴァン・サント監督の『追憶の森』(15)も見落とすわけにはいかない。自殺の名所として知られる富士山麓の青木ヶ原樹海が舞台の本作で渡辺が演じたのは、死に場所を求めてそこにやってきたアメリカ人男性アーサーが出会う日本人のタクミ。同じように死のうとして森に入ったものの、考え直し、妻子の元へ戻ろうとする彼は、ケガを負い、助けを求めたアーサーに影響を与える重要な役どころだった。

決してバジェットの大きな作品ではないが、『ダラス・バイヤーズクラブ』(13)でアカデミー賞主演男優賞に輝いたマシュー・マコノヒーがアーサーを演じ、『21グラム』(03)、『キング・コング』(05)などのナオミ・ワッツも参加し、人間の生と死の問題に真摯に向き合うヒューマンなテーマもあって国内外で話題に。大作だけではなく、こうした社会的意義のある作品にも前のめりで参加するところに、渡辺謙という俳優のスタンスを感じ取ることができる。

そして、芹沢博士役を続投した『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(19)のクライマックス…。ゴジラに急接近した芹沢博士が最後に取る決死の行動は、そんな渡辺が魂を込めて演じたからこそ説得力があった。博士の最後の言葉も、「最後は母国語の日本語で言うに決まっている」という彼のアイデアを採用したもの。それが功を奏し、悲壮感と迫真が入り混じったリアルな言葉になっていた。

■AIたちのリーダーを熱演した最新作『ザ・クリエイター/創造者』

ノーランら名匠に再び声をかけられるところからも、役者としての渡辺への信頼度の高さが感じられる。一度キャスティングした俳優を積極的に起用してこなかった『GODZILLA ゴジラ』のギャレス・エドワーズ監督でさえ、日本でも撮影された最新作『ザ・クリエイター/創造者』(23)に渡辺をオファーしていた。しかも、人間と戦うAI軍団のリーダー的存在であるハルンという役どころ。つまり人間ではないキャラクターを託されたわけだが、頭の後ろ半分から機械部分がむき出しになっているハルンを強面の顔と繊細な芝居でまんまと体現してみせた。ロボット兵たちを率いた戦闘シーンなどではセリフに日本語を織り交ぜ、ハルンたちAIが人間に近い存在であることを自然に伝えていたのも印象的だった。

■日米合作ドラマ「TOKYO VICE」は続編が決定!

そんな渡辺の最新出演作として、多くのファンが待望しているのが日米共同制作のドラマ「TOKYO VICE」のシーズン2だ。1990年代の東京を舞台に、日本の大手新聞社に就職し、警察担当記者となったアメリカ人の青年ジェイク(アンセル・エルゴート)が、特ダネを求めて裏社会へと踏み込んでいく様をスリリングに描いたクライムサスペンス。


渡辺が扮したジェイクに影響を与える片桐刑事も、出演シーンが少なかったシーズン1とは違い、全10話からなる今回は大きな動きを見せるはず。撮影も全米映画俳優組合のストライキに巻き込まれることなく、すでにすべて終了しているとのこと。“ケン・ワタナベ”の迫真の芝居が、世界中のファンの心を再び熱くするのは間違いない。

文/イソガイマサト


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