パリッコ仕事が進まず、飲むしかない

パリッコ仕事が進まず、飲むしかない

11月17日(金) 17:00

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基本的に家でも仕事ができるフリーライターである自分は、妻は日中勤めに出ているので、娘が保育園を休んだ際、昼間、子供の面倒を見ることが多い。「今日は遊べないよ」と念を押してもなかなかうまくはいかない。育児、仕事、そして酒の同時進行の一日。

立て直せないTO DOリスト

これまでにも何度か書いてきたことだけど、子供というのは体調を崩しやすく、たとえば一度熱が出ると、大事をとってその後数日は保育園を休ませなければいけなくなる。すると、その間に予定していた自分のスケジュールが、目に見えてガタガタと崩壊していってしまう。

そもそもがなまけ者の僕は、日々、その日の原稿締め切りをなんとかこなすのが精一杯の人間だ(というか、どうしても間に合わず編集者さんに迷惑をかけてしまうこともしばしば……)。ただ、基本的に家でも仕事ができるフリーライターであり、妻は日中勤めに出ているので、娘が保育園を休んだ際、「今日はおれが、家で仕事しながらぼこちゃんを見てるよ」と提案することは多い。もちろん、外せない取材などが入っていれば妻に仕事を休んでもらうことになるので、せめてそういう予定がない日は、というくらいなんだけど。とにかく、1日でもそういう事態が発生すると、そこが起点となってスケジュールへの影響はどんどん大きくなってゆく。立て直すのもひと苦労というか、正直、日々、立て直せないTO DOリストが常にあるような状態だ。これもまた、子供が小さな今のうちだけのことなんだろうけど。

シウマイ工場見学の翌日

ところで僕は、駅弁ファンのご多分に漏れず、崎陽軒の「シウマイ弁当」のファンだ。ここ数年、僕の誕生日の夕食は、ありがたいことに妻が、崎陽軒の「おうちでジャンボシウマイ mini」を手配してくれ、それを食べるのが定番になっているほど。ちなみに、おうちでジャンボシウマイ miniとは、ケーキのように巨大なシウマイをカットすると、なかにおなじみのシウマイが22個も入っているというインパクトメニュー。ジャンボシウマイは「入口のないかまくら」とでも言うような構造になっていて、そのぶ厚い皮もシウマイの具でできており、味は同じながら、その皮の食感が豪快でなんともうまいのだ。

ちょっと話が逸れたが、そんなこともあり、先日家族で、崎陽軒横浜工場まで工場見学に行った。それ自体はすごく楽しく、最後に試食させてもらったできたてシウマイも絶品だった。ただ朝、時間に余裕を持って車で家を出たらけっこう早めに着いてしまい、工場見学の前にすぐ近くにあるIKEAへも寄ったりしたら、あそこって子供にしてみたらテーマパークのようなものなのだろう。娘が広大なフロア内のショールームひとつごとにひとしきりはしゃぎ、おもちゃ売り場でまたはしゃぎ、としていたのもあって、だいぶ体力を使わせてしまった。そもそも、長時間の車移動というのも、子供にとっては疲れるものだろうし。

というわけで帰り道から夜にかけてはぐったりしてしまい、翌朝も「なんかつかれちゃった……おなかもいたいかも」と言っている。そこで、熱などはないものの、あまり無理をさせるのも心配なので、保育園を休ませ、僕が一日見ていることにした。

さて、ここからが長い一日の始まり。

ポケカ長期戦の果てに

平日だから当然、僕はするべき仕事がある。「パパはお部屋に一緒にいるけど、お仕事してるから、今日はぼこちゃんとは遊べないよ。いいね?」と念を押し、娘も素直に「うん、わかった」と言っている。そこでTVでアニメ動画を見ていてもらったり、お絵描き、絵本、おもちゃなどで遊んでいてもらったりするものの、子供がある程度落ち着きのないのはしかたのないことだ。だいたい3分に一度くらいの割合で、「みて!」「きいて!」「てつだって!」系の言葉が飛んでくる。もしくは、妙に甲高い声で謎の歌を歌いだしたりする。考えてみればすごい頻度だ。そのたび、いったん仕事が中断される。

僕のデスクワークのなかで大きな割合を占めるのは、原稿の執筆と、写真の選別加工。ライターといっても原稿だけを書いているというわけではなく、そこに添える写真を大量に撮影したなかから選んだり、それを1枚1枚調整加工するという作業に、意外と多くの時間を要する。

で、その写真の作業中はまだいい。考えることはあまりなくて、ただ視覚的な情報をもとに、慣れた作業をするだけなので。一瞬中断したってすぐに戻れるし。しかし、原稿を書くとなるとそうはいかない。そもそも、横でアニメの音が流れているだけで集中はできていない。いくら僕の書く文章が、「今日はなにを食べました。なにを飲みました。美味しかったです」という、はたから見るとなんの内容もない、子供の作文のような文章だからと言って、そうなんだからどうしようもない。

娘には申し訳ないけれど、原稿を書いている最中に話しかけられたりすることが続くと、若干イライラしてしまうことだってある。強めの口調で「パパお仕事してるって言ったよね!?」とか言って、直後に後悔したりする。そりゃあ娘にしたらつまんないよな、こんな時間。

午後2時ごろ、朝は玉子焼きしか食べなかった娘がやっと「おなかすいてきたかも」と言うので、簡単に、豚肉とほうれん草とあぶらあげ入りのうどんを作ってあげると、美味しいと言ってよく食べた。とりあえず元気が戻ったようで良かった。そして、朝からしきりにくり返し、僕がなんとかスルーしてきたセリフをまたも言う。「ぱーぱ、ポケカやろ?」。ポケカとは、「ポケモンカードゲーム」の略で、もうずっとポケモンのアニメにハマっている娘が、ついに足を踏み入れてしまった世界。先日スターターセットっぽいものが我が家にも導入され、主に妻がルールを調べて一緒に遊んであげながら、目下夢中になっているのだった。

僕はややこしいゲーム類がものすごく苦手なので、「パパ、やりかたわかんないよ。たぶん覚えられないよ」と言っても「だ〜いじょうぶ!ぼこちゃんがおしえてあげるから」などと言われ、さすがにずっとひとり遊びをさせておくのもかわいそうだし、食後、「1回だけね!」と念を押して、一緒にやることにした。

すると確かに、娘はルールを把握しているように見える。「はい、つぎはここからひいて。たねポケモンがでたらここにおいてね」「ルールわかってきた?」「あ、そのポケモン、しんかできるよ!」などと言われつつ、なんとなく僕も、ゲームの流れがわかってきたような気がする。ただ、そんな気がしたものの、30分経っても40分経っても決着がつかないばかりか、だんだん引けるカードがなくなってきて、ゲームはこう着状態になってきた。完全に展開がない。これ、やりかた合ってるのか?それでも子供は遊びに対する集中力があるから、楽しそうにカードを引いたり出したりしている。一方集中力のない僕は、なんだか頭が熱くなってきて、意識が朦朧としだし、仕事をしないといけない焦りもあるから、ぐんぐん精神力が削られてゆく。

今日はだめだこれ。正直もう、飲むしかない。せめて一杯だけでも……。

なぜか憤然と立ち上がり、「パパちょっと飲みもの取ってくるね」と言ってグラスにチューハイと氷を入れて戻り、ぐびりとひと口。ぐいーん!と、さっき削られたいろいろのメーター値が回復するのがわかる。あぁ、助かった……じゃないんだよ!まだ仕事が山ほどあるんだっつーの!

それからしばらくして、どう考えても決着のつかないポケカに関しては「今日は引き分けってことにして、今度またやろ」で、納得してもらうことができた。チューハイによって気分はだいぶ変わったものの、仕事に対する集中力だけは著しく落ちた状態で、最後の気力をふりしぼり原稿に戻る。

そろそろ昼寝でもしてくれないかな、と思いつつ見ると、娘はさらに元気いっぱい。また午前中と同じ状況に戻り、僕はちびちびとチューハイを飲みながら、たびたび娘の話し相手をしつつ、亀の歩みで原稿を書き進める。酒、育児、仕事の同時進行。あらためて、きっとこの時期だけの、そして酒を愛するフリーライターという特殊な生業ならではの時間なのだろうと思う。

いつか娘が手がかからなくなり、毎日いくらでも仕事し放題ということになったら……たまにこの日を思い出して寂しくなり、やっぱり僕は、台所にチューハイを作りにいってしまうんだろうな。

***

パリッコ『缶チューハイとベビーカー』次回第45回は、2023年12月1日(金)17時配信予定です。

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Credit:文・イラスト=パリッコ
OHTABOOKSTAND

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