ヤクルトの主力47人に聞いた「増やしたいもの、減らしたいもの」〜投手編
ヤクルトの主力に聞く「今シーズン、自分のなかで増やしたいものと減らしたいもの」の投手編は、23人の選手に聞くことができた。ベテランから中堅、若手、さらに先発からリリーフまで、それぞれのポジションによってさまざまなコメントが飛び交った。
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3年連続ヤクルトの開幕投手を務める小川泰弘
【先発投手陣の目標は貯金】新球・ワンシームに挑戦しているエース・小川泰弘は、「勝ち星を増やして、負けを減らして貯金をつくる」と語る。
「先発は長いイニングを投げないといけないので、技術も必要ですけど、勝つためには体と心のコントロールが大事だと思っています。そのために、自分の体としっかり向き合ってやっていきたい。去年は8勝8敗で貯金ゼロだったので、8個くらい貯金をつくりたいです」
左のエース候補・高橋奎二は「減らしたいのは球数」と笑った。
「増やしたいのは試合数で、そのうえでゲームをつくる数をもっと多くしたい。先発が長いイニングを投げれば中継ぎの負担も減るので、そこを意識したい。長いイニングを投げるために何をしたらいいのか。ケガをしない体づくりやスタミナを、投げて覚えていきたいと思っています」
サイスニードは、昨年はチームトップとなる9勝をマーク。ドーナツ好きでも知られている。
「先発した試合の勝利数を増やしたいですね。自分に勝ちがつかなくても、結果としてチームが勝てばそれでいい。ドーナツは食べすぎると"デブ"になっちゃうので、みんなが思っているほど食べてないんですよ(笑)。減らしたいのは、登板日の雨です(昨年は4試合が雨で中止)。オネガイシマス」
プロ22年目、43歳の石川雅規は今年もキャンプ初日にブルペン入り。目標とする200勝まであと17勝となっている。
「個々の数パーセントの積み重ねという意味では、やっぱり勝ち星ですよね。昨年の6勝よりひとつでも多く、負けの数をひとつでも少なくすれば、チームの貯金も増えるので。そのためにコンディションをしっかりつくって、チームの競争に勝って自分の場所をつかまないといけない。とにかく勝ちたいんで(笑)」
高梨裕稔は、昨シーズン前半は白星を重ねるも、最終的には7勝にとどまった。
「昨年の後半は四球が多かったので、しっかり減らしたい。そうなれば球数は少なくなり、投球回は増え、ゲームをつくる回数も増えると思います。ひと言でいえば、安定感を増やしたいです。そういったパフォーマンスを多く出せるように、今は無駄な力みを減らすことを意識して投げています」
【ローテ入りを狙う若手投手】金久保優斗への首脳陣からの期待は高く、キャンプのブルペンではコーチ陣に囲まれてピッチングをする光景が続いた。昨年はシンカーに取り組むも「そのことで真っすぐがダメになってしまいました」と不本意なシーズンを過ごした。
「今年はシンカーを減らすのではないですが、新しい取り組み方をして改善できた感じがあります。去年はほかにも力を抜いて投げることにチャレンジしたのですが、逆効果なところがありました。自分の一番の武器は真っすぐなので、今はとにかく力を入れて投げる。そこを増やしたいというか、戻していきたいです」
小澤怜史は、昨シーズン途中に育成から支配下登録された。二軍ではリリーバーだったが、一軍では先発起用。サイドからの強い真っすぐを武器に2勝を挙げた、ローテーション候補のひとりだ。
「今は先発か中継ぎか、両方を見据えて調整しています。勝ちを増やして負けを減らしたいので、キャンプではカットとツーシームにチャレンジして、スライダーも曲がりを小さくしてゾーンの中で操れるようにやっています」
市川悠太は昨年、一軍の舞台で初登板を果たした。5年目の今季は浦添キャンプに参加し、持ち球のフォークのほかに、「小さい変化のボールがなかったので、シュートやカットボールの練習に取り組みました」と話した。
「自分は三振をバンバンとれるタイプではないので、芯をずらしたり、しっかり空振りをとれるようにしたい。それができれば防御率や被安打率も減らせると思います。プロ初勝利を挙げて、それが2勝、3勝と勝ち星を増やし、チームの3連覇に少しでも貢献できればと思っています」
プロ2年目の山下輝は、左ヒジの不安でキャンプ途中に離脱となったが、「少しずつ形をつくっていって、試合数、イニング、球数を増やしていきたい。目標はもちろんローテですので、うまく自分に向き合いながらやっていきたい」と話した。
髙津臣吾監督が「チームで速くて強い球を投げられる数少ない投手のひとり」と期待を寄せているのが、高卒2年目の竹山日向で、初めての一軍キャンプを完走した。
「まずは一軍でたくさん投げられたらいいなと思っていて、そのために一軍でも二軍でも、四球の数を減らしたい。キャンプではブルペンでの取り組み方についてだったり、石川さんやいろんな方に聞いてみたいです。そして多く投げるために、ほかの人にないものを増やしていきたいです。僕はボールの強さやキレが持ち味だと思っているので、しっかり枠内に収めるように練習して、試合で勝負していきたいです」
新人の吉村貢司郎(ドラフト1位/東芝)は、即戦力として大きな期待を寄せられている。オープン戦初登板では2回無失点。真っすぐと変化球を巧みに操り、クイックの非凡さもあり、総合力の高さを見せつけた。
「大前提として、これまでにやってきたことをしっかり出せる準備をこのキャンプでしてきました。そのなかで真っすぐの見直しをしていて、球の精度や再現性を高くできるように取り組んできました。実戦ではバッターとしっかり勝負したいので、無駄なボールを減らしてストライクで勝負する。そういうピッチングをしていきたいです」
【3人の新外国人投手】今年、ヤクルトには3人の新外国人投手が加入した。自己紹介と今シーズンの抱負について聞いた。キオーニ・ケラは、リリーフとしてメジャー通算243試合に登板。150キロを超すボールが武器で、9回を任されることが期待される。キャンプでは朝早くから「体を温めるため」とマシン相手に打ち込みをしたり、キャッチングをしたり......一風変わった早出練習をしていた。
「自分は気の強いピッチングというか、攻めのピッチングが強みです。このチームには若い選手が多いので、これまでの経験を伝えたり、そういうところでも貢献していきたい」
ディロン・ピーターズは、先発ローテーション入りが期待される左腕投手だ。キャンプでは、石井弘寿コーチと身振り手振りを交えて話し込む姿を何度も見た。
「石井コーチには、日本のバッターやチームの特徴などを教えてもらいました。早めに情報を得ておけば、あとになって苦しまないと思うので。自分のピッチングの特徴は、闘争心を持ってバッターを圧倒することです。先発として長いイニングを投げることに集中して、2ケタ勝利と規定投球回は達成したい」
ライネル・エスピナルは、キャンプでは伊藤智仁コーチのスライダーを学ぼうとするなど、日本野球にアジャストしようと練習の日々。宿舎に戻る時には、常にフルーツを手にしていた。
「長所は高めの真っすぐとチェンジアップです。チームに貢献するため、先発すれば7イニングは投げたい。そのためには健康でいることが大事だと思っています」
【目標は一軍定着と登板数の増加】長谷川宙輝は「増やしたいのは自信をもって投げることです」と笑った。強いボールが武器の左腕は2021年9月に胸郭出口症候群の手術。昨年6月に二軍で実戦復帰した。
「自信を身につけるために、自主トレでは量と質を意識した練習をしてきました。減らしたいのはケガと不安です。自分はネガティブな発想が多いんで......(笑)。不安な要素を少しでも減らして自信をもって投げることができれば、一軍に近づけるんではないかと思っています」
尾仲祐哉は昨年10月に阪神を戦力外となり、新天地で新しいシーズンを迎えている。
「右打者のインコースを攻めるピッチングを増やせたらと。それができれば自然とヒットや失点も減らせて、投球の幅も広がると思います。減らしたいのは失投です。追い込んでから真ん中へいくことが多かったので......」
2年目の柴田大地は、見ている側も力が入る力投型の投手だ。一軍キャンプには途中合流。それは二軍キャンプでの状態が評価されたことでもある。
「昨年の登板数は1試合だけだったので、まず一軍に定着して、登板回数を増やしたい。そのためには四球と同じミスを減らし、ゾーン内に強い球を投げて、しっかりした投球内容を増やせればと。40試合登板を目指します」
【頼もしいリリーフ陣たち】スワローズのブルペン陣は、昨年12球団トップとなる31勝を記録した。これは試合中盤の粘りと踏ん張りを証明する数字で、これを支えたのが大西広樹、久保拓眞、木澤尚文だった。3人は「今年は勝ちパターンでも投げたい」と意気込む。
今年の浦添キャンプで、見るからにやる気がみなぎっていたのが大西だった。ブルペンでは「ナックルカーブいきます」「ワンシームいきます」など、何種類もの新球に挑戦。
「増やしたいのは力です。力負けしない力、球の力、シーズンを通して戦える体の力。全部です。スピードも去年のこの時期に比べたら増していますが、試合でその真っすぐがどう見られるかが大事です。減らしたいものは、弱気な自分です。むちゃくちゃ緊張しいなので空回りしないように。ランニングとか、しんどい時こそ元気を出してやっています」
左腕の久保は、昨年チームがコロナ禍により大量離脱したなか一軍昇格。取り組んでいたシュートが威力を発揮し、日本シリーズのマウンドにも立った。
「登板数は背番号(61)を目指しています。去年は左打者に投げることが多かったので、もっと右打者との対戦も増やしたいところです。そのために右打者へのチェンジアップとカットボールに取り組んでいます。今年はホールド数(昨年は7)を意識して、最低でも20ホールドに届くくらい、勝っている場面で投げさせてもらえるよう信頼を増やしていきたい」
木澤は150キロを超えるシュートを武器に、昨年中継ぎでプロ初勝利を挙げると、チームトップタイの9勝をマーク。3年目を迎えるシーズンの設計図を理路整然と言葉にした。
「昨年を振り返った時、増やしたいものは初球のストライク率と奪三振率です。全体的に与四球率は減ったのですが、初球のストライク率はまだまだ改善できる数字だと思っています。勝ちパターンで投げるという目標のなかで減らしたいものは、対左打者への被打率です。昨年はそこが高かったので。奪三振率が高いことが大事というのは、日本シリーズでのオリックスのリリーフ陣を見て感じました。そのように増やすものを増やして、減らすものを減らせば、自ずと勝ちパターンに入れるのかなと。あとは実戦のなかで反省と試行錯誤を繰り返しながら、まだまだここからという感じです」
【ポスト・マクガフは?】昨年オフ、これまでスワローズのクローザーに君臨していたスコット・マクガフが退団。髙津監督は新クローザーを誰にするか明言していないが、新外国人のケラ、石山泰稚、清水昇、田口麗斗が有力候補に挙がっている。
石山は「個人的には登板数を増やしたい。50から60試合は投げたい」と話した。
クローザー経験も抱負なベテラン右腕は、朝は誰よりも早くランニングで体を動かし、キャンプ中のブルペンでは一番乗りと最終日のトリを飾った。
「僕は中継ぎですが、球数を減らしたい。球数が多すぎると次の日に影響が出ますし、それが登板数にもつながるので。今年はフルに一軍にいて、どんな時でも使ってもらえる信頼感のあるピッチャーになりたいと思っています」
セットアッパーの清水は「今年は開幕が1週間遅い分、キャンプではじっくりやれています」と、第2クールまでブルペンに入ることを我慢した。
「増やしたいことですか?なかなか難しい質問ですが、投げるイニングを8回から9回に......ですね。減らしたいのは防御率です。去年は課題としていた被本塁打が1本だったので、今年は防御率0点台を目指していきたい」
田口は「競争心というものを増やして、自分の思うように体を動かせるように体脂肪を減らしたいですね」と笑顔をみせた。
昨年、貴重な中継ぎ左腕は"火消し"として無死満塁のピンチの場面などでマウンドに送り出され、役割を見事に果たしてベンチへ帰還した。
「クローザーを狙いにいく気持ちでやっていけば、高いレベルで競争ができるでしょうし。この前の投手会では石山さんに『競争したいです!』って宣戦布告しました(笑)。新外国人のケラもいて、清水もいますし、競争心を強く求めていきたいなと思います。今年はプロ10年目になるので特別なシーズンにしたいですし、いい1年にしたいなと思います」
髙津監督に選手たちから聞いたことをいくつか伝えると、こんな言葉が返ってきた。
「たとえば選手の声にあった初球ストライク率とか盗塁を増やしたいというところも、自分の目標として、目標達成のためにそれを考えるだけでも成長していると感じます。みんなができる、できないでなく、そうやって考えることでチーム力って大きくなるでしょうし、意識を変えることがチーム力のアップにつながると思っています」
今年のキャンプを見て、そして選手の話を聞いて感じたことは、練習にも考えにも隙がないということだった。スワローズのチーム力は、一昨年よりも、昨年よりも強固になっている。
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