日本シリーズで巨人相手に衝撃の4タテ 「野球観を変えた」当時の西武の強さの理由を辻発彦が語る

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日本シリーズで巨人相手に衝撃の4タテ 「野球観を変えた」当時の西武の強さの理由を辻発彦が語る

3月29日(水) 17:03

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辻発彦が語る日本シリーズ激闘の記憶(中編)

前編:辻発彦が明かす伝説の走塁の真実はこちら>>

1980年代から90年代にかけて、西武「不動のセカンド」として走攻守で存在感を示し、チームの黄金期を支えた辻発彦氏。中編の今回は、巨人を4タテした1990年の「衝撃の日本シリーズ」について語ってもらった。



90年の日本シリーズで巨人を4タテし、日本一を達成した西武ナイン





【リーグ優勝は最低限のノルマ】 ──巨人と対戦した日本シリーズは、87年の次は90年でした。

出場した10回の日本シリーズはすべてに思い出はありますが、4勝0敗でストレート勝ちした90年が一番印象深いです。4連勝して日本一になった日が、私の誕生日(10月24日)だったことで、よく覚えているというのもあります(笑)。

──90年の巨人は、ペナントレースで2位に22ゲーム差をつけましたが、西武も独走でした。前年の89年はブライアント(近鉄)の4連発などで西武は優勝を逃しますが、90年は2位に12ゲーム差をつけて優勝。89年の悔しさがあったのでしょうか。

結構な大差でしたね。当時、チーム内に"リーグ優勝"は最低限のノルマ的な雰囲気がありました。日本シリーズに勝ってこそ、やっと「よし、優勝したぞ!」という気持ちになりました。だから、リーグ優勝しても日本シリーズに負けたら、「今年のシーズンは何だったのだろう......」という感じでしたね。90年に関しては、89年のペナントレースのことがあったので、最後まで油断しないようにという気持ちは強かったです。

──90年は巨人の斎藤雅樹が2年連続20勝をマーク。ほかにも、桑田真澄14勝、宮本和知14勝、木田優夫12勝、香田勲男11勝と、2ケタ勝利が5人もいました。シリーズ前の対巨人のミーティング内容はどんなものでしたか?

やはり、斎藤は手こずるだろうなというところでした。ただ、初戦は槙原でした。槙原は83年、87年と西武との日本シリーズで場数を踏んでいたし、好投していたイメージがあります。桑田は87年のシリーズで対戦しましたが、宮本、香田、木田は初顔合わせに近かったです。

──このシリーズ、辻さんはトップバッターとして大活躍します。第1戦から4戦まですべて初回に出塁しました。

初戦、槙原の立ち上がりを打ち崩して勝ったのは大きかったですね。私が一塁戦を破る二塁打を放ち、2番の平野謙さんが送って、3番・石毛宏典さんはセカンドライナー、4番・清原和博が四球で二死一、三塁。無得点に終わるかなと思いきや、オーレ(・デストラーデ)がカウント3ボール0ストライクからライトへ3ラン。このホームランが大きかったですね。

──槙原選手の初球、143キロのストレートをバントの構えで揺さぶった。そして2球目、1球目と同じようなシュート回転した内角146キロの球をライトへ二塁打。中尾孝義捕手が外角に構えていたのに、"逆球"のような形で内角に入りました。それを辻さんは狙いすましたように、右方向に持っていきました。狙っていたのですか?

いや、今でこそ話しますが、狙ったのではなく、あっちへいってしまったのです(笑)。差し込まれたんです。もともと私は二塁手の頭上や右中間方向に......というイメージで打席に臨んでいました。そういう打撃なので、インサイドからバットを出した時に差し込まれた分、角度がついて一塁線にいったと思うんです。だから、狙いすまして逆方向に持っていったわけではないんです。

【4戦連続の第1打席出塁】 ──4連勝の日本シリーズ。終わってみれば、第1戦の1回表がすべてだったといっても過言ではありませんでした。その3ランを誘発した、辻さんの安打はすごく貴重だったと思います。

日本シリーズの初戦というのは、スタメンの実績があってもやはり誰でも緊張します。簡単に引っ張ってボテボテの打球でアウトになったら、トップバッターを任された意味もなくなってしまいます。いろんな球種を投げさせるとか、四球を選ぶとか、出塁することが一番の仕事ですから。そういう気持ちがとくに強かったので、引っ張りにはいきませんでした。

──デストラーデ選手の3試合にわたる初回の先制打はたしかに大きかったですが、辻さんが「日本シリーズMVP」でもよかったと思います。

ですよね(笑)。もしかしたら、MVPをいただけるのではないかと期待していました。第3戦まで初回に安打を放って、すべて生還。4戦目も得点こそ結びつきませんでしたが、宮本和知から四球を選びましたし......。チームは4勝0敗でストレート勝ち。私が審査員だったら、辻選手をMVPに選んでいます(笑)。

──第1戦から5対0、9対5、7対0、7対3と、圧倒的なストレート勝ちでした。セ・リーグでは大差でペナントレースを制したのに、日本シリーズでは惨敗。西武の野球に対して、巨人の選手会長だった岡崎郁選手の「野球観が変わった気がする」というコメントが印象的でした。

覚えています。終わってみたら圧倒的な勝利でしたが、やっていた時はまったく余裕はなかったです。4連敗もあり得るのが日本シリーズですから。でも、岡崎選手の気持ちはわかります。何もできなかったという悔しさなんでしょうね。西武ナインとしては巨人相手に4連勝ですし、しかも私の32歳の誕生日を祝ってくれる形になって最高でした。

──ただ94年の日本シリーズは、長嶋茂雄監督の巨人に2勝4敗で破れました。長嶋監督にとっては初の日本一で、巨人が日本シリーズで西武に勝ったのも初めてでした。巨人ナインは「西武の呪縛から解けた」と口々に語っていました。

94年は初戦で11対0の大差で下して、幸先のいいスタートを切ったんですが......そのシリーズは槙原が絶好調で、第2戦で完封負け、第6戦でも完投で敗れました。槙原はMVPを獲得したのですが、あのシリーズは本当にすばらしかった。このシリーズのあと、森祇晶監督はユニフォームを脱いだのですが、86年からリーグ3連覇、そして90年からリーグ5連覇。さらに3年連続日本一を2回と、すばらしい監督でした。

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