スペインを代表する俳優、ペネロペ・クルスとアントニオ・バンデラスが母国の映画で共演を果たした「コンペティション」のトークショー付き試写会が3月9日、都内で行われ、「ほとりの朔子」「淵に立つ」などの深田晃司監督が登壇した。
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【動画】「コンペティション」予告編
本作は、現代映画界を爽やかに皮肉った業界風刺エンターテイメント。「ル・コルビュジエの家」「笑う故郷」などのガストン・ドゥプラットとマリアノ・コーンが監督を務め、知られざる映画製作の過程を臨場感あふれる手法で描く。
現在、岡山県で新作の脚本を執筆しているという深田監督は「映画業界を風刺している作品なので、登壇するかどうか実はすごく迷いました。この映画の終わりに自分が登場するのも一つの風刺なんじゃないかと深読みしちゃって(笑)。でも、作品が本当に面白かったのでお話したいと思いました」と明かす。
劇中では、クルス演じる鬼才監督のローラが、破天荒な演出方法で俳優たちを戸惑わせるシーンが登場する。深田監督は「風刺映画なので誇張はされていますが、リアリティはあると思います。ぶっちゃけ、ローラの演出スタイルはパワハラですが(笑)。今の時代だからそう言えるだけであって、俳優をラップでぐるぐる巻きにするまではいかないでも、これに近いものを求める監督もいると思うんですよね。傍から見たらハチャメチャなんだけど、彼らにとっては『ものをつくるためにはこれくらいクレイジーにならなきゃいけないんだ!』と当たり前になっちゃっていたりするんです」と私見を述べる。
そのうえで「映画監督に必要なことは『何がいいか、悪いかのジャッジをしなければならないこと』。手を挙げるという動作でも、まっすぐピンと挙げるのか、肘を曲げながら挙げるのかといろいろなやり方がありますが、正解を決めることができる唯一の存在が監督。その正解に俳優を導くために頑張り過ぎちゃうと、知らず知らずのうちに本作のように狂気の沙汰になってしまうんですね」と判断力の重要性を語る。
また、日本の監督の“やりすぎエピソード”として、黒澤明監督が現場で良い形の雲がでてくるまで撮影を中断する“雲待ち”をしていたという話を聞いた深田監督は「ちょっと狂気を感じますが、憧れはありますね。なぜかというと、雲を長時間待てるということは、それだけ製作日数と予算があるから。予算が少ない現場では天気を待つこともできないので羨ましい」とリアルな製作舞台裏を明かす。撮影前のリハーサルについても「本作では何日もかけてずっとリハーサルをしていますが、日本映画だとリハーサルなんてほとんどできないんですよ。例えば、ダルデンヌ兄弟は5週間のリハーサル期間を経てから撮影に挑むらしいんです。それだけリハーサルという時間は、映画の世界観を作り出したり、監督と俳優がなにかを共有するのに必要な時間だということです。そしてその時間は長編映画 1本作れるくらい濃密で面白い時間でもあると思うんですよね」と話していた。
「コンペティション」は3月17日から公開。
【作品情報】
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コンペティション
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