アレックス・ラミレス氏インタビュー
WBC2023メンバー
3月8日に開幕するWBC。栗山英樹監督率いる「侍ジャパン」は、大谷翔平など一部のメンバーが先行で発表されたが、最終メンバーの発表は1月下旬になる予定だ。日本代表のユニフォームに袖を通すのは誰になるのか。現役時代はヤクルトや巨人、DeNAなどで活躍し、DeNAの監督も務めたアレックス・ラミレス氏が、WBCの侍ジャパンのメンバーを予想した。
DeNAのエース今永昇太と、侍ジャパンに内定した日系人選手のラーズ・ヌートバー
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【「スモールベースボール」にこだわる必要はない】――いよいよ今月下旬に、WBCに臨む日本代表メンバー30人が正式に決定します。ぜひ、ラミレスさんが選ぶ「ラミレスジャパン」のメンバーについて伺いたく思います。その前に、横浜DeNAベイスターズ監督時代、交流戦などで対戦した栗山英樹監督の印象を教えてください。
ラミレス2012年から2021年まで、実に10年も北海道日本ハムファイターズの監督を務め、就任1年目にいきなり優勝し、2016年には日本一にも輝きました。投手に関しても、野手に関しても、その選手の調子を引き出すことが上手で、戦略的な監督だという印象がありますね。特に私が「すばらしい」と思うのは、選手との関係性です。彼は選手を信頼して、選手は監督の信頼を意気に感じて期待に応える。その関係が良好だったからこそ、10年間も監督を務めることができたんだと思います。
――短期決戦、国際大会に臨む際の心構えについてですが、普段通りの戦い方を心がけるべきなのか、まったく別の戦い方をするべきなのか。どのように考えますか?
ラミレス国際大会だからといって、これまでの栗山監督のスタイルをガラリと変える必要はないと思います。もちろん、侍ジャパンのメンバーは各チームを代表する選手ばかりなので、積極的に盗塁を仕掛けたりバントを多用したりといった、いわゆる「スモールベースボール」を徹底できるかどうかという点に疑問がないわけではありません。ただ、すべての選手の能力が高いのでヒットエンドラン、ランエンドヒットで揺さぶりをかける攻撃は可能です。
――小技を多用して1点をもぎ取る「スモールベースボール」的な戦術は今でも通用し、侍ジャパンが目指すべきスタイルなのでしょうか?
ラミレス一部のアメリカ育ちの日系メジャーリーガーを除けば、侍ジャパンのメンバーはほぼ全員が日本野球を学んで育ってきているので、もともとスモールベースボールは身についているので「まったくできない」ということはないでしょう。だから、必要に応じてきちんと対応はできると思いますが、代表候補として名前が挙がっているメンバーを見ると、ちょっとアメリカ野球に近づきつつある気はしていますね。
【先発三本柱はダルビッシュ、大谷、今永】――それでは、「ラミレスジャパン」のメンバーを教えていただきたいのですが、まずは投手編。先発3投手の名前を挙げてください。
ラミレス先発1番手はダルビッシュ有(パドレス)を挙げますね。2番手は大谷翔平(エンゼルス)で、目先を変えてサウスポーを選びたいので、3人目は今永昇太(DeNA)。3人の先発を選ぶなら、この3投手にします。
――メジャーリーガー2名に、かつてDeNAで共に戦った今永投手。それぞれの選出理由を教えてください。
ラミレス経験、実績、そしてチームの柱として、ダルビッシュは文句なくナンバーワンでしょう。私が監督なら、開幕戦は彼に託します。初戦で大谷をDHで起用し、2戦目は先発を大谷に任せる。勝ち進んだ後の準決勝、決勝もこの2人を軸にしたいですね。3人目は、山本由伸(オリックス)の名前を出したいところですけど、昨年の日本シリーズでの負傷後の経過がよくわからないこともあるので、私としては今永に任せたい気持ちが強いです。
――今永投手の持ち味、長所はどんなところでしょうか?
ラミレスやっぱり、メンタリティですよ。どんな状況、どんな試合であっても万全の調整をしてくるのが今永です。そして、誰に対しても恐れることのない強いメンタルを持っています。彼が優れているのはセルフコントロール術。球数制限がある中でも、彼ならば6回、もしかすると7回まで投げられる技術がある。頼りになる存在です。
――続いて、中継ぎ、抑えを各1名ずつ挙げてください。
ラミレス普段はリリーフ専門ではないけれど、今回のWBCでは青柳晃洋(阪神)を中継ぎとして起用したいですね。球数制限がある中でロングリリーフできる人材は貴重だし、彼の場合は下手投げで相手の目先を変えることができて、クイックも速いので適任だと思います。
あとは山﨑康晃(DeNA)、松井裕樹(楽天)、平良海馬(西武)、このあたりから抑えを選ぶことになるのでしょうか。強いてひとりを選ぶなら、平良を推します。大勢(巨人)も面白い存在ですが、まだプロでの実績は1年だけなので、ここではあえて外したいと思います。
【チームの大黒柱・村上宗隆を中心にオーダーを組む】――続いて、"扇の要"となるキャッチャーはいかがでしょう?
ラミレス報道では中村悠平(ヤクルト)、甲斐拓也(ソフトバンク)、森友哉(オリックス)の名前が挙がっていますが、私もこの3人がいいと思います。スタメンとしてひとりに絞るならば甲斐です。彼がマスクを被って、ピッチャーがある程度クイックができるのならば、相手の足を警戒する必要はなくなります。それはすごく大きいと思いますね。バッティングを考えたら森なのかもしれないけど、私なら甲斐です。
――続いて、内野手を各1名ずつお願いします。
ラミレスまず、「サード・村上宗隆(ヤクルト)」は外せないですね(笑)。もちろん、4番バッターとして。彼は別格として、ポイントはセカンド。山田哲人(ヤクルト)と菊池涼介(広島)がずっと代表メンバーだったけど、世代交代して牧秀悟(DeNA)がいいと思います。個人的に、牧はセ・リーグ、日本球界を代表する打者だと思っていますから。
――サードとセカンドから決まりましたが、ファースト、ショートはどうなりますか?
ラミレスファーストは山川穂高(西武)か浅村栄斗(楽天)になるのかな?守備を考えると浅村のほうがいい気もしますが、長打力が魅力で速球に強い山川をファーストで起用したいです。悩むのはショートなんですよ。ずっと坂本勇人(巨人)が出場していたけど、やっぱり今回もそうなる可能性が高そうですね。
――では、外野手3名をお願いします。
ラミレス外野手は名選手揃いだけれど、真っ先に名前を挙げたいのが吉田正尚(レッドソックス)。そして鈴木誠也(カブス)、3番目には柳田悠岐(ソフトバンク)というところですが......せっかくなので日系人選手のラーズ・ヌートバー(カージナルス)も選びたいんです。映像を見る限りでは足も速いし、守備もいい。1番バッター向きの選手なんですよ。それにしても、本当に悩むなぁ。
――DH枠もあるので、それを考慮に入れるとどうですか?
ラミレスいや、DHはピッチングをしない日の大谷が入りますから。大谷が投げる時は吉田ですかね。仕方ないですが、ひとまず柳田を外すことにします。難しい選択ですよ(笑)。
――では、あらためて「ラミレスジャパン」のスタメンオーダーを発表して下さい。
ラミレスでは、発表します!
1番......ヌートバー(センター)
2番......牧秀悟(セカンド)
3番......大谷翔平(DH)
4番......村上宗隆(サード)
5番......鈴木誠也(ライト)
6番......吉田正尚(レフト)
7番......山川穂高(ファースト)
8番......坂本勇人(ショート)
9番......甲斐拓也(キャッチャー)
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これが、私の選ぶ「ラミレスジャパン」のスターティングオーダーです。とっても強そうですね(笑)。ぜひ、栗山監督には優勝目指して頑張ってほしいです!
(対戦がイヤだった投手:最強助っ人・ラミレスが欠場を直訴。9連続三振を喫したエース、イライラしたスローカーブの使い手も」>>)
【プロフィール】
アレックス・ラミレス
1974年10月3日生まれ、ベネズエラ出身。1998年にインディアンスでメジャーデビューし、パイレーツを経て2001年にヤクルトに入団。その後、巨人、DeNAでプレーし、2014年にはBCリーグ・群馬ダイヤモンドペガサスに入団した。同年10月に現役を引退。日本での14年で首位打者、本塁打王、打点王、最多安打など多くのタイトルを獲得した。2016年シーズンからDeNAの監督を務め、2017年シーズンは日本シリーズにも進出。2020年シーズンをもって監督を退任したあとは、バラエティ番組やYouTubeなど活躍の場を広げている。
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