荻上直子監督「人生最高の脚本」と自負映画『波紋』に筒井真理子、光石研、磯村勇斗、江口のりこら実力派集結

映画『波紋』ティザービジュアル (C)2022 映画「波紋」フィルムパートナーズ

荻上直子監督「人生最高の脚本」と自負映画『波紋』に筒井真理子、光石研、磯村勇斗、江口のりこら実力派集結

11月29日(火) 9:00

女優の筒井真理子が主演を務め、光石研、磯村勇斗、江口のりこらが共演する荻上直子監督最新作『波紋』が、2023年初夏に公開されることが決定。特報、ビジュアル、キャスト&監督コメントが解禁された。

【動画】震災、老々介護、新興宗教、障害者差別が須藤家に縮図となって現れる映画『波紋』特報映像

長編映画デビュー作『バーバー吉野』(2004)でベルリン国際映画祭児童映画部門特別賞を受賞し、『かもめ食堂』(2006)の大ヒットにより日本映画の新しいジャンルを築き、『めがね』(2007)ではベルリン国際映画祭でザルツゲーバー賞を受賞。2011年には、第61回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞、2017年に『彼らが本気で編むときは、』で日本初のベルリン国際映画祭テディ審査員特別賞を受賞するなど、国内外で高評価を獲得してきた荻上直子監督。

本作は、そんな荻上監督が長年温めてきた、「人生最高の脚本」「私の中にある意地悪で邪悪な部分を全部投入したような映画になりました」と語るオリジナル作品。主人公・須藤依子は、今朝も1ミリ違わず砂に波紋を描いている。庭に作った枯山水の手入れは、依子の毎朝の習慣であった。“緑命会”という水を信仰する新興宗教に傾倒している彼女は、日々の祈りと勉強会に勤しみながら、ひとり穏やかに暮らしていた。ある日、長いこと失踪したままだった夫、修が突然帰ってくるまでは―。

震災、老々介護、新興宗教、障害者差別。世の中で起こっている得体の知れない闇が須藤家に縮図となって現れ、全てを押し殺した依子の感情が発露される時、映画は絶望からエンターテインメントへと昇華する。

主人公・須藤依子を演じるのは、筒井真理子。失踪した依子の夫・修に光石研、2人の息子・拓哉には磯村勇斗。そのほか、新興宗教“緑命会”の代表を努める橋本昌子役のキムラ緑子、信者である小笠原ひとみ役の江口のりこと伊藤節子役の平岩紙が、絶妙な笑いを呼ぶキャラクターを体現。さらに、依子のパート先のスーパーの迷惑客・門倉太郎役を柄本明、スーパーの清掃員・水木役を木野花、依子の隣人・渡辺美佐江役を安藤玉恵が務めるなど、個性派俳優陣が顔を揃えた。

特報は、依子(筒井)が夫・修(光石)に対し憎悪を剥き出しにするシーンからスタート。そして修の「俺、さっさと死ぬわ」という一言を皮切りに、不穏な音楽が流れる中登場人物たちが次々と映し出され、最後は甲高い声で笑う依子と「絶望を、笑え」というキーフレーズで幕を閉じる。

ビジュアルは、紫色のタイトルの周りに、キャスト陣がモノトーンで配置されたもの。主人公の依子を中心に起こっていくさまざまな絶望が波紋のように広がる様子を表現している。

本作の脚本について、主演の筒井は「読んだ時、監督が醸し出す穏やかな空気の中に潜む日常の些細な棘、ビターな社会風刺が溶け合っていて目を見張りました」。光石は「『女性は怖し』。60年間、女性は聖母マリアだと信じて生きてきましたが、音を立てて崩れて落ちました」。磯村は「ひしひしと波紋のように迫り来る心理的恐怖を感じました。特に、筒井真理子さん演じる母、須藤依子を中心に、家族や取り巻く人物達のやり取りは、怖いのだが、思わず笑ってしまうところが多く、荻上監督の描く世界は面白いなと、一気に引き込まれました」と、それぞれ語っている。

映画『波紋』は、2023年初夏全国公開。

<キャスト・監督コメント全文>


■筒井真理子(須藤依子役)

最近は“壊れてゆく女性”の役が続いていたので、荻上監督の作風から想像するとご一緒させて頂ける機会はないかと思っていました。ですのでとても嬉しかったです。脚本を読んだ時、監督が醸し出す穏やかな空気の中に潜む日常の些細な棘、ビターな社会風刺が溶け合っていて目を見張りました。演出も人間の細部を見抜く力が的確で、身をゆだねることができ安心でした。

いまは先の見えない不穏なものに覆われているような時代ですが、是非この映画を観て絶望に絡めとられず前を進む気持ちになっていただけたらと思います。

■光石研(須藤修役)

久しぶりに荻上組へ参加させて頂き、凄く嬉しかったです。監督は以前と変わらず、穏やかに粘り強く、俳優に寄り添い演出をしてくださり、安心して身を委ねる事が出来ました。

脚本に関してはただ一言、「女性は怖し」。60年間、女性は聖母マリアだと信じて生きてきましたが、音を立てて崩れて落ちました。

■磯村勇斗(須藤拓哉役)

はじめに脚本を読んだ時、ひしひしと波紋のように迫り来る心理的恐怖を感じました。特に、筒井真理子さん演じる母、須藤依子を中心に、家族や取り巻く人物達のやり取りは、怖いのだが、思わず笑ってしまうところが多く、荻上監督の描く世界は面白いなと、一気に引き込まれました。

そして今作では、手話が必要な役でした。新たな言語に触れる機会を頂き、現場でも一つ一つ丁寧に確認しながら作り上げていきました。

早くこの作品が皆様のところに届くのが楽しみです。

■荻上直子監督

その日は、雨が降っていた。駅に向かう途中にある、とある新興宗教施設の前を通りかかったとき、ふと目にした光景。施設の前の傘立てには、数千本の傘が詰まっていた。傘の数と同じだけの人々が、この新興宗教を拠り所にしている。何かを信じていないと生きていくのが不安な人々がこんなにもいるという現実に、私は立ちすくんだ。施設から出てきた小綺麗な格好の女性たちが気になった。この時の光景が、物語を創作するきっかけになる。

日本におけるジェンダーギャップ指数(146ヵ国中116位)が示しているように、我が国では男性中心の社会がいまだに続いている。多くの家庭では依然として夫は外に働きに出て、妻は家庭を守るという家父長制の伝統を引き継いでいる。主人公は義父の介護をしているが、彼女にとっては心から出たものではなく、世間体を気にしての義務であったと思う。日本では今なお女は良き妻、良き母でいればいい、という同調圧力は根強く顕在し、女たちを縛っている。果たして、女たちはこのまま黙っていればいいのだろうか?

突然訪れた夫の失踪。主人公は自分で問題を解決するのではなく、現実逃避の道を選ぶ。新興宗教へ救いを求め、のめり込む彼女の姿は、日本女性の生きづらさを象徴する。くしくも、本映画の製作中に起きた安倍元首相暗殺事件によりクローズアップされた「統一教会」の問題だが、教会にはまり大金を貢いでしまった犯人の母と主人公の姿は悲しく重なる。

荒れ果てた心を鎮めるために、枯山水の庭園を整える毎日を送っていた彼女だが、ついにはそんな自分を嘲笑し、大切な庭を崩していく。自分が思い描く人生からかけ離れていく中、さまざまな体験を通して周りの人々と関わり、そして夫の死によって、抑圧してきた自分自身から解放される。

リセットされた彼女の人生は、自由へと目覚めていく。

私は、この国で女であるということが、息苦しくてたまらない。それでも、そんな現状をなんとかしようともがき、映画を作る。たくさんのブラックユーモアを込めて。

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