実写映画で改めて感じる”ハガレン”のメッセージとは。『鋼の錬金術師』完結編を原作ファンがレビュー!

映画“ハガレン”を原作ファンがレビュー!荒川弘も「エドそのもの」と山田涼介を絶賛/[c]2022 荒川弘/SQUARE ENIX [c]2022 映画「鋼の錬金術師2&3」製作委員会

実写映画で改めて感じる”ハガレン”のメッセージとは。『鋼の錬金術師』完結編を原作ファンがレビュー!

6月24日(金) 10:30

荒川弘による大人気漫画を実写映画化した『鋼の錬金術師』。2017年から約4年の時を経て、5月20日に続編『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー』が、6月24日より後編『鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成』が公開となった。
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新作の二部作公開にあたって、期待と不安が入り混じり、筆者を含め複雑な感情になった原作ファンも多いはず。さらに今回は完結まで描くということで「あの膨大な物語を?どうやって!?」と戸惑いもあった。が、実際に完結編二部作を観てみると、スクリーンに映える仕上がりで、想像以上にイイ。それどころか、後編ではグッと涙ぐみさえしてしまった。今回は原作ファンである筆者が、映画版二部作を観た感想をレビュー。原作ともアニメとも違う、リアルな世界に落とし込んだ実写映画ならではの魅力を、様々な視点から紹介する。後半では、原作者・荒川弘が本作を観た感想コメントもたっぷり掲載!

※以下からは『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー』『鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成』のストーリーの核心に触れる記述を含みます。

■原作をリスペクトしつつ、映画として完成させた物語構成

今回メインとなるのが、原作でも人気のキャラクターであるスカーにまつわる物語と、大ボスとも言える“お父様”とエドの最終決着だ。原作読者ならば、“お父様”の元にたどり着くまでにエドとアルがどれだけの苦難を乗り越えてきたかを知っているだけに、再び「どうやって映画の尺でまとめるのか?」という疑問が頭をもたげてくる。

となると、大胆なエピソードのカットが気になりそうなものだが、今作を実際に観ると「この話をちゃんと描いてくれてありがとう」という気持ちになる。つまり、原作で肝になるエピソードをメインに据え、それぞれがカルマから解放されるシーンを丁寧に描いていく構成なのだ。どうしてもストーリーが駆け足になる点は否めないが、なぜエドが“お父様”にたどり着き、目的を果たすことができたのか、という点が自然に描かれている。

■3次元ならではの迫力に圧倒される、CGと美術

前作『鋼の錬金術師』の最大の違和感はおそらく、国際色豊かなキャラクターを日本人が演じている、ということだったのではないか。ハガレンの絶妙な世界観は、漫画だからこそ描き切れていた、という部分がある。しかしながら、今回はその違和感がだいぶ払拭されている。観る側がキャラクターのビジュアルに慣れたという点はあると思うが、前作のように実際に海外で撮影を行ったわけではないのに、今回のCGやセットで作られた背景のほうがキャラクターになじんでいるように感じられた。それぞれのビジュアル自体も、衣装やヘアメイクがより原作に近い形にアップデートされている。また、モブとなるような登場人物も少なく、メインキャラクターだけで構成されていたこともあり、物語への没入感が高まった。

さらに、錬金術を使用するシーンの迫力、あり得ない規模でのアクションシーンが臨場感を増す。特に、エドとスカーの戦闘シーンには息を吞んだ。


■渡邊圭祐のリン&グリード、新田真剣佑のスカーの作画の良さ

前作と比較しても、キャラクター個々の強さがさらに際立たせられているのも、ファンとしてはうれしい。完結編では新たなキャラクターが多く登場したが、物語のキーパーソンとなったのが、復讐に命をかける男スカーと、シン国の第12皇子のリンだ。この2人にピタリとイメージがハマッた渡邊圭祐、新田真剣佑の“作画”がすばらしい。

リンを演じるのは渡邊圭祐だ。アジア系の風貌のキャラクターなのだからハマるのは当然かといえば、もちろんそうではない。渡邊はリンの、無邪気だが気品あふれる振舞い、器の大きさとユーモアさを兼ね備えたキャラクターを見事に体現していた。特に、キング・ブラッドレイとの対決では皇子として、王とはなんたるかを証明するような戦いぶりが強く心に残る。同時にホムンクルスのグリード役も演じているが、二役の演じ分けは必見。グリードに関してはキャラクターとしてはもちろんのこと、渡邊本人の魅力が上乗せされていることもあり、リアリティがありながらも原作キャラクターの魅力を十分に発揮させた仕上がりとなっている。これは『復讐者スカー』で存分にリンとしての朗らかさや、エドとの対話のテンションの差を観客にアピールしていたことで、グリードとの対比が明確になっていたように思う。

そしてスカーを演じるのが新田真剣佑。イシュヴァール殲滅戦で国に理不尽に故郷を焼かれ、大切な人を奪われたスカーは、戦争に参加した国家錬金術師を次々に暗殺していく。大切なものを失くして復讐に狂う、純粋さと狂気を孕んだ役どころを演じたら、いま新田真剣佑の右に出る者はいないのではないだろうか。エキゾチックな風貌もキャラクターにマッチしており、なによりエドにとっての強敵と位置付けられるスカーの肉体を見事に再現していた。狂気を感じさせながらも、奥底に漂う悲しみが覗くその瞳。映画館で目が合えば一気に引き込まれる。

このほかにも、どうやって実写化するのかと不安も大きかったアームストロング少佐だが、山本耕史がびっくりするほど見事に再現。二次元色の強いキャラクターだけに、ファンとしては「なにか違う…」というモヤモヤが残りそうなものだが「いや、たしかに3次元になったらこうなる!」と納得させられるパワーがある。またアームストロング少佐の姉・オリヴィエを演じるのは栗山千明だが、こちらもお見事。個人的に、栗山演じるオリヴィエに発してほしいセリフがありすぎた。しかし上映時間には限りがあるので、どのようなシーンがピックアップされているかぜひ期待して観てほしい。

また、後編に欠かせない人物、セリム・ブラッドレイ(プライド)を寺田心が演じている。セリムの、わざとらしいほどに子どもらしい演技にはさすがの一言。かと思いきやプライドの時の、すべての人類を見下すのような傲慢で尊大な態度。これには荒川先生も「プライドを演じた心くんもすばらしかった。悪い心くん、すごく良いです(笑)」と太鼓判。こちらも楽しみにしていてほしい。

■舘ひろしと内野聖陽、荒川先生も大好きな“おっさん”たちの偉大さ

エドたちの目の前に立ちふさがるキング・ブラッドレイ(ラース)を舘ひろし、エドとアルの父親であるヴァン・ホーエンハイムと“お父様”の二役を内野聖陽が演じる。スクリーンに現れた瞬間から、「実写になったらこうだよね」という姿をまさに体現している二人だ。キング・ブラッドレイの孤独と圧倒的な威圧感。それは“大総統”としてはもちろんのこと、“最大の敵”のひとりとして立ちはだかる姿としても抜群である。特に「私の城に入るのに裏口から入らねばならぬ理由があるのかね?」と戦場で二刀のサーベルを抜く姿には痺れる。勝てる気がしないし、自分が兵士だとしたらその場で腰を抜かすだろう。最大の見せ場であるリン(グリード)との戦闘では、実写映画ならではの熱を伝えてくれるシーンとなっている。

そして、もはやヴァン・ホーエンハイムを演じるのはこの人しかいなかった、と思わせるのが内野聖陽だ。苦悩を抱えながらも長く静かな戦いを続けていたホーエンハイム。しかし、どこかチャーミングなキャラクターを覗かせる塩梅が絶妙である。軽くなりすぎず、かといって悲壮になりすぎず。後編の『最後の錬成』ではもうひとりの主役と言っても過言ではない。

原作者の荒川弘も「おっさんを描くのが楽しい」とよくコメントしているが、まさにそんな描いていて楽しい“おっさん”がしっかりと具現化されているのではないか。年輪がある人間は奥が深い。キング・ブラッドレイとホーエンハイムにも深く刻まれた年輪があるように、それを自然と感じさせる俳優にしか演じられない役だったように思う。


■本物のエドとして生きていた山田涼介

完結編二部作を鑑賞後、改めて前作を観直してみた。原作では“お父様”にたどり着くまでにさまざまな出会いと別れ、戦いを乗り越えてエドは成長をした。もちろん尺の決まった映画ではすべてを描けるわけがなく、それらをすっ飛ばして完結編を迎えて納得できるのか?と思ったのだが、それが納得できたのは山田涼介によるエドの完成だった。肉体的な部分では、葭原プロデューサーも「山田さんは半年以上前からパーソナルトレーナーを付け、主に肩回り、胸筋を鍛えていました。その結果、前作の衣裳が入らず、作り直しとなりました」と言うほど、劇的な変貌を遂げた。

そして山田は外見だけでなく、エドとしての精神的な成熟も垣間見られた。エピソードがなくても空白を埋められる、観ている側が、エドの成長を自然と補完できるだけの演技力と存在感で観客を納得させたのだ。自身も原作の大ファンであるという山田の中に、エドとしての経験が演じずとも蓄積されていたのかもしれない。山田が掛けていた今作への想いが、スクリーン越しにも伝わってくる。

原作者の荒川弘も「山田くんは見ている途中から、山田涼介という名前がどっかに飛んで行ってしまうくらいエドでびっくりしました。体のつくりから仕草すべてが、エドそのものでした。クライマックスのシーンは完璧の一言。若かりしホーエンハイムの全部諦めているような表情や、若いお父様のムキムキ具合がエドとはまた違って、一人三役を演じ分ける山田くんの役作りは本当にすごかったです。原作にこんなに忠実に作り込んでくれて。ありがたいですね。本当にお疲れ様でした!」と語っており、キャラクターの生みの親から見ても、完璧なエドワードだったようだ。

また「最後の錬成」では若き日のホーエンハイムと、完全体となった“お父様”の三役を演じている。感情豊かなエドに対し、無の“お父様”。この対比を演じ切っている山田涼介に大きな拍手を送りたい。そして、いまの山田涼介だから演じられたのではないか、と思わずにはいられない、ラストの迫力あるエドと“お父様”の対決を観るためだけに、映画館を訪れても損はないはずだ。

■“ハガレン”とは、なにを描く物語だったのか?

「鋼の錬金術師」が都度、読者に問いかけてきたのは「命とはなにか?」ということだ。エドとアルの旅は“命”を求めることから始まった。自分たちが犯した過ちで多くのものを失ったエルリック兄弟が、たくさんの人との出会いと別れを経験し、ホムンクルスという存在を知り、時には命の誕生も目の当たりにして旅をしていく様子は、人間の定義や命の尊さといった“死生観”を、お説教ではなく自然に考えさせてくれる物語だった。

いま、現代世界は混迷を極めている。丁寧に描かれたイシュヴァール殲滅戦の悲劇、戦場から端を発した復讐。ハガレンでは、大切な人を奪われ復讐心に駆られるスカー、マスタング、ウィンリィを通し、勇気をもって復讐を“しない”決断を下した3人を丁寧に描いた。そして「誰かにとっての誰かの命の価値」を問い続けた。そんな物語だからこそ、いまこの時代に実写映画化された意味があるように思う。映画の結末は原作を知っている人でも、改めて人と人の繋がりを強く感じられる仕上がりになっている。無理に、とは言わない。が、原作ファンとしてもぜひ観ておくべき作品であることはお伝えしたい。

■「原作にこんなに忠実に作り込んでくれて、ありがたいですね」(荒川弘)

「ジェットコースターに乗っているみたいでした!感動するシーンがつながっていて、全編見どころだらけでした。オープニングも意外なところから始まって、おもしろいと思って見ていたら、そのまま2時間あっという間で楽しませていただきました。

山田くんは見ている途中から山田涼介という名前がどっかに飛んで行ってしまうくらいエドでびっくりしました。体のつくりから仕草すべてが、エドそのものでした。クライマックスのシーンは完璧の一言。若かりしホーエンハイムの全部諦めているような表情や、若いお父様のムキムキ具合がエドとはまた違って、一人三役を演じ分ける山田くんの役作りは本当にすごかったです。原作にこんなに忠実に作り込んでくれて。ありがたいですね。本当にお疲れ様でした!

内野さんはキーパーソンであるホーエンハイムとお父様を、一人二役で演じ切られていて、とにかくすごかったという言葉しか出てこないです!プライドを演じた心くんもすばらしかった。悪い心くん、すごく良いです(笑)。3から初登場のオリヴィエさんは、もう登場シーンからさすがでした!そして、やっぱり今回もシン組は3人ともカッコよかったです。クライマックスに向けての大総統とスカー、エドとお父様の一騎打ちは、アクションはもちろん、CGや音楽も相まってすごい迫力でした。

アルが戻ってくるシーンは連載初期からどうしようかとずっと考えていたので、実写で描かれているのを見ながら原作を描いていた時のことも色々と思い出してしまい、もう感無量でした。ラストはいつあのセリフを言うのかニヤニヤしながら見ていました。気持ちよく見届けることができました!」

文/ふくだりょうこ


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