日本人の2人に1人がかかり、3人に1人の死亡原因となっている「がん」。40代、50代になるとさまざまな体調不良が出てきて、ふと「がんかも……?」とよぎることもあるのではないでしょうか。皆さんは女性がかかるがんのうち、死亡原因の1位となっているものをご存じですか? 消化器内科・内視鏡内科医師の里村仁志先生に聞きました。
40代から罹患率が上昇するがん
国立がん研究センターがん対策情報センターの資料(2015年)を見てみましょう。これは、大腸がんにおける女性の年齢階級別罹患率です。
40代から少しずつ増加していることがわかります。女性がかかるがんといえば、「乳がん」が思い浮かびますが、死亡原因では「大腸がん」が1位となっています。「かかるがんでは乳がんが1位なのですが、死亡原因となると大腸がんが1位です。乳がんは触診でわかるので早期発見しやすいのですが、大腸は体内を検査しないと診断できないのも原因の一つでしょう。
男性の場合は肺がん、胃がんが高い死亡原因となりますが、女性は喫煙や飲酒がそれほど多くないことが一般的なので、大腸がんが上位にあがっていると思われます。
また、一般的に40代を過ぎると太りやすくなる女性が増えますが、
大腸がんは肥満も原因の一つとされています。肥満に至るまでの運動不足や食習慣が大腸がんを誘引していると考えられます」(里村先生)。
コーヒーが予防に「この20年で大腸がんによる死亡数は1.5倍に拡大していて、生活習慣の欧米化(高脂肪・低繊維食)が関与していると考えられています。
予防としては食習慣の改善、運動習慣などほかの病気への対策と変わりはないのですが、
女性に関してはコーヒーの飲用に効果があるという研究結果があります」(里村先生)
大腸がんとは?
それでは、大腸がんとはどんな病気なのでしょうか。
「大腸(結腸・直腸)に発生するがんのことを指します。
良性のポリープががん化するものと、正常な粘膜から直接発生するものの2種類があります。約85%はポリープががん化するものです。
ステージ0、ステージIの
早期ではほとんど自覚症状がありません。しかし、進行すると
・ 血便(便に血が混じる)・下血(腸からの出血により赤または赤黒い便が出る、便の表面に血液が付着する)・下痢と便秘の繰り返し・便が細くなるといった症状が見られるようになります」(里村先生)
進行すると全身に転移「大腸の粘膜に発生した大腸がんは次第に大腸の壁に深く侵入し、やがて大腸の壁の外まで広がり腹腔内に散らばったり、あるいは、大腸の壁の中のリンパ液や血液の流れに乗って、リンパ節や肝臓、肺など別の臓器に転移したりします。転移が死亡原因となります」(里村先生)。
大腸がんの早期発見の方法は?年1回の「便潜血検査」が有効
早期ではほとんど自覚症状がないとなると、どのように発見できるのでしょうか。
「
現在、大腸がんの早期発見で最も有効な手段は『便潜血検査』です。健康診断や人間ドックに組み込まれていると思いますが、
年に1回、40代を過ぎたら必ず受けてほしい検査です。普通は便の中に血液は混ざっていないため陰性ですが、血液があると陽性になります。肉眼ではわからない、便に潜む血液を調べることができます。
早期治療でほぼ完治大腸がんは早期に治療すれば『治りやすいがん』の一つです。がんが粘膜下層の浅い部分にとどまっている早期がんなら、治療後の5年生存率は9割以上で、ほぼ完治が見込めます。しかも、早期なら負担の軽い内視鏡治療で済みます」(里村先生)
「便潜血検査」が陽性=「がん」ではない「便潜血検査」で陽性と診断されたらどんな病気の可能性があるのでしょうか。
「検査で陽性が出ても、大腸がんの可能性は数パーセント。ポリープか痔であることがほとんどです。検査で陽性が出た場合、主に以下の病気の可能性があります。
・ ポリープ・痔・憩室(腸粘膜にできる袋状のもの)・潰瘍性大腸炎・クローン病・細菌性腸炎・大腸がんなど検査で陽性が出たら放置せず、必ず精密検査を受けましょう」(里村先生)。
陽性反応が出たら必ず精密検査を受けて「一般的な精密検査は、全大腸内視鏡検査または大腸CT検査です。全大腸内視鏡検査とは、いわゆる大腸カメラです。腸を空にした状態で、肛門から直径1cmほどの内視鏡を挿入して、大腸の内部を調べます。ポリープがあればそのまま切除することも可能です」(里村先生)。
まとめ大腸がんと聞くと不治の病と思っていましたが、早期発見、早期治療をおこなえば完治できるといいます。一番大切なのは年に1度の「便潜血検査」。これまでさぼっていた、という人も40代を過ぎたら必ず受けるようにしたいですね。
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取材・文:midoライター歴25年。35歳で第1子、38歳で第2子出産。最近、たるみが加速して二重あごが悪化。身長153㎝なのにLサイズの服が少しきつくなってきて……人生最後のダイエットを計画中。
監修者:医師 里村仁志先生 里村クリニック院長(埼玉県さいたま市南区大谷口5320-1)。消化器疾患が専門。2003年 獨協医科大学医学部卒業、2005年獨協医科大学第1外科、2016年さいたま赤十字病院外科を経て、現在に至る。
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