ニルヴァーナの赤ちゃんジャケットだけじゃない。次にコンプライアンスで消えるCD

NIRVANAの名盤『Nevermind』

ニルヴァーナの赤ちゃんジャケットだけじゃない。次にコンプライアンスで消えるCD

10月9日(土) 15:53

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 ロックバンドNIRVANAのアルバム「Nevermind」。裸の赤ん坊が印象的なジャケットだが、これが性的搾取にあたるとして提訴された。音楽業界には、他にも近しい危うさを抱えるアルバムがあるのではないか。もしそうしたアルバムが裁判の末に発売禁止になるとしたら、名盤が闇に葬られるかもしれない。

 今回は、ニューウェーブユニット「ロマンポルシェ。」やDJとしても活躍する掟ポルシェ氏に、そうした「危機的な名盤」を紹介いただき、音楽評論家のハシノ氏に解説を語ってもらった。

◆NIRVANAのアルバムが訴えられた

 まずは、NIRVANAのアルバム「Nevermind」について教えてください。

ハシノ 1991年リリースの2ndアルバムです。ハードロック・ヘヴィメタルが中心だったアメリカのロックシーンをグランジ一色に塗り替えたほどのインパクトでした。全世界で4000万枚以上売れたらしいですね。

掟 みんながあのアルバムによって金銭的な恩恵を受けているのに、「なんで俺だけチ●チ●まで見せたのに一銭ももらえないんだ」って話ですよね。

 確かに、気持ちはわからなくはないですが……。

掟 でも提訴した彼自身、何度もあれと同じ構図で写真を撮ったりして、胸元に「Nevermind」ってタトゥーまで入れてるんですよ(笑)。いままでメチャメチャ乗っかって来たじゃねえかっていう。ただ、例えば野球場に行くと「スタジアム全員が俺のおチ●チ●を知ってる」と思うのが嫌だったと話をしていますね。

◆世間が許さなかったスコーピオンズの「ヴァージンキラー」

 他にも似たような境遇になったアルバムはありますか?

掟 スコーピオンズの「ヴァージンキラー」。少女のヌードが出ているジャケットで、タイトルを暗喩するようなデザインでした。

ハシノ 西ドイツが誇るハードロックバンドですね。日本でも、昭和のロックファンの心は鷲掴みにされました。「恐怖の蠍団」などの原題を無視したおどろおどろしい邦題でも有名です。

掟 発売当初から物議を醸し、アメリカでは早々にメンバーの写真に差し変わりました。ニルヴァーナの件と違うのは、当事者ではなくて、世間が許さなかったというところですよね。ボーカルのクラウス・マイネがジャケットのモデルの少女が成人した後に会った時、「私にとってはいい思い出」だと言っていたと聞きます。

 日本のクリエイションというバンドのアルバムにも、子供の性器が写っています。

ハシノ 内田裕也プロデュースの1stアルバムですね。往年のプロレスファンにはザ・ファンクスの入場テーマ曲としても有名です。

掟 発売当時はテレビでも裸の子供が出てくるシーンはよくありましたし、このジャケットも一度も問題視されたことはないと思います。ニルヴァーナの場合は「売れた」というのが大きいんですよ。

 爆発的に売れて、何度も再発されているにもかかわらず「あの赤ちゃん」にだけはお金が入らない。彼が裁判の末に求めているのが、ジャケット写真の使用差し止めなのか、金銭的な和解なのかはわかりませんが、これによって意外なものまで将来的に「ダメ」になってくる可能性が出てきたのは事実です。

◆人間の乳首がダメなら動物も……

 どんどん厳しくなっているコンプライアンスに、今後ひっかかりそうなジャケットはありますか。

掟 今は人間だけですけど、厳しくなっていくと「動物の乳首もダメ! 猥褻!」と言い出す人も出てくるかもしれない。そうなったら、ピンク・フロイドの「原始心母」もダメになってしまいます!

 これはどんなアルバムなんですか?

ハシノ 典型的なプログレッシブ・ロックのアルバムで、1曲目の「原子心母」が25分もあって、レコードだとA面全部がこの曲で占められています。ジャケットをデザインしているのは松任谷由実のジャケットも手がけているヒプノシスというデザイナー集団です。

掟 これに「『俺、乳牛のオッパイに興奮するから何枚も買ってるよ!』みたいな人が出てきたらどうする!」っていうクレームが、決してつかないとは言えない。恐ろしい時代になってきました!

◆乳牛もダメ!? 犬にサングラスは動物虐待!?

 マニアの性癖も鑑みながらジャケットを作らないといけませんね。

掟 今は、Youtubeでも収益化のガイドラインでは男の乳首もNGですよね。これはAIによって「乳首」と判断されたものが、通報されます。このAIが今以上に厳しくなったら、あらゆる乳首がNGになるかも。

 だとするとフランク・ザッパ の「レザー」もダメですね。

ハシノ 同じく乳牛ですもんね。このアルバム、レコード会社と揉めた挙げ句、リリース前の音源を全曲ラジオでオンエアしてしまったという逸話のあるアルバムなんですよ。

掟 ザッパ でいうと「ゼムオアアス」も危ないかも! 犬がサングラスと女性用の服を着せられてるジャケットですけど「動物虐待を助長してる!」って言い出す人が出てこないとも限りませんよ!

ハシノ 確かに(笑)「ゼムオアアス」は80年代のアルバムで、後に有名になるギタリストのスティーヴ・ヴァイが参加している1枚です。
  
 動物が写っているのもいくつも思い浮かびますね。

掟 UFOの「ノーヘビーペッティング」も猿が出てます。猿のお尻の赤い部分がギリギリ見えてませんけど、お尻の赤みがちょっとでも見えたらNGになる時代がもうすぐそこまで来ています! 恐ろしい!

 このバンドは初めて知りましたけど、もうすぐNGになるかもしれませんね(笑)

ハシノ UFOは、ギターテクニックと奇行で有名なマイケル・シェンカーが看板だったハードロックバンドですね。ちなみにこれもジャケットデザインはヒプノシスですよ。

◆まさか、ご本人のアルバムまで……

掟 似たような構図で、俺のバンドの「孫」っていうアルバムも危ない。児童ポルノだと誰かが言いだしたらもうアウトかもしれません。

 この子が、ネバーマインド的に訴え出るかもしれませんね(笑)

掟 この子が胸に「ロマンポルシェ。」ってタトゥーを入れたら危険信号! しかも、ロマン優光のメイクをさせてるので、児童虐待が指摘されるかも。メイクのマットな質感も浜崎あゆみさんを参考にしてるので、浜崎あゆみさんからも訴えられるかもしれなくて、気が気がじゃないです!

 ちなみにこちらはどんなアルバムなんですか?

ハシノ 「孫」はもう廃盤になってますけど、SMAPなどにも楽曲を提供しているサワサキヨシヒロ作曲の「全裸で書いたラブレター」などが収録されているアルバム。ロマンポルシェは、ニュー・ウェイブと説教を組み合わせるという斬新なスタイルでおなじみですね。

◆ザ・フーは立ちションでアウト!?

 ザ・フーの「フーズネクスト」はどうですか?

掟 立ちションは立派な犯罪! 終わった後っぽいですが、かなりグレーです! この四角いコンクリートの塊が何かの聖地的なモニュメントだったらまずいですね。

ハシノ リリース当時(71年)としては画期的なシンセサイザーを取り入れた「ババ・オライリー」と「無法の世界」をはじめ、名曲揃いのアルバムです。ピート・タウンゼントはもっと壮大なアルバムにしたかったけど、メンバー全員に反対されて曲を削ったらしいです。

 所有者が訴え出るパターンもありますね。

掟 「お前か! あのションベンの跡をつけたのは!」と大問題に! 他に当事者からの訴えがないから大丈夫なジャケといえば、俺が大好きなカーカスっていうバンドのファーストアルバムですね。

ハシノ 元祖デスメタルバンドで、後のメタルバンドに絶大な影響を与えていますね。カーカスがいなければ現在のメタルシーンはもっと違う姿になっていたはずです。

掟 これは、医学書から取ってきた死体写真のコラージュなんですよ。ここから、死体ジャケットブームも生まれました。死体に「俺の死体を使うな!」とは言われないのでセーフな事例。親類からの「これうちのじいちゃんじゃん!」という訴えがあれば、今後どうなるかはわかりませんが……。

◆裁判によって音楽は聴けなくなるのか

 これらのアルバムが、発売禁止になると聴けなくなりますね。

掟 そこを心配するのはサブスク文化の人だけですよ。俺は好きな音楽を「所有していたい」と思うんで、CDやレコードで買って持っています。音楽家が何か事件を起こしたらその作品まで聴けなくなるってのは、自分には耐えられないです。

ハシノ サブスクで手に入るのは、公開された曲を聴く権利ですもんね。2019年に電気グルーヴの曲が聴けなくなったように、サブスクの楽曲は儚い存在なので、好きな楽曲は所有しておくべきだと思います。

◆音楽は所有するもの

 掟ポルシェ氏が「俺は好きな音楽を『所有していたい』と思う」は音楽好きの真理ではなかろうか。聞けなくなるのはその音楽を「持っていない」からに他ならない。

 本当に好きな音楽は市場から消えても、持っていれば聞き続けることができるのだ。サブスクに慣れきった我々には少々耳が痛い言葉なのかも知れない。

取材・文/Mr.tsubaking

【Mr.tsubaking】
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。



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