ハロプロから虹のコンキスタドール、#ババババンビと#2i2 続・ドラムがカッコいいグループはカッコいい|「偶像音楽 斯斯然然」第65回

ハロプロから虹のコンキスタドール、#ババババンビと#2i2 続・ドラムがカッコいいグループは……

ハロプロから虹のコンキスタドール、#ババババンビと#2i2 続・ドラムがカッコいいグループはカッコいい|「偶像音楽 斯斯然然」第65回

9月11日(土) 12:00

今回は、7月31日に公開した本コラム第62回の続編となる、“カッコいいドラムを聴かせるアイドルグループ”の第2弾。前回取り上げたグループをさらに深掘りしつつ、新たに冬将軍が“ドラム”という観点で気になったグループの魅力について、想いのままに綴る。

『偶像音楽 斯斯然然』
これはロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

先日、ドラムがカッコいいアイドルについて触れた。ロックバンドでもアイドルであっても、ドラムがカッコいいと楽曲はカッコいい、そこにこだわるアイドルはカッコいいという話だ。

そもそも私がアイドルにハマる大きなきっかけとなったのはハロー!プロジェクトであり、もちろん楽曲と歌、パフォーマンスに魅せられたわけだが、同様に惹かれたのはオケのクオリティの高さとそれを演奏するプレイヤーだ。楽曲を聴いて、“このドラム、カッコいいな”と思い、クレジットを見たら、とんでもないドラマーの名前が!ということが何度もあった。ロックバンドのように固定メンバーではないぶん、楽曲によってジャンルに特化した得意なプレイヤーが叩いている、という面白さである。そうやってクレジットを調べるのも、アイドルソングの愉しみ方の1つだ。

モーニング娘。「ここにいるぜぇ!」(2002年)
Dr. 村石雅行

名ドラマーによるハロー!プロジェクトの名曲を挙げれば、モーニング娘。「ここにいるぜぇ!」(2002年)の村石雅行は外せない。ほかにも「Memory 青春の光」(1999年)のクリス・パーカー、プッチモニ「青春時代1.2.3!」(2000年)は佐野康夫、メロン記念日「This is 運命」(2001年)のそうる徹、藤本美貴「涙GIRL」(2003年)の長谷川浩二などなど、挙げていくとキリがない。

モーニング娘。「恋のダンスサイト」(2000年)
編曲:ダンス☆マン

ハロー!プロジェクトといえば、モーニング娘。「LOVEマシーン」(1999年)、「恋のダンスサイト」(2000年)などの編曲で、一躍その名を轟かせたダンス☆マンの作る日本人離れしたファンクからアラビアンといった、多国籍なリズムも外せない。Berryz工房「ジンギスカン」の原曲イメージを損なうことなくアイドルポップスに仕立て、あたかもつんく♂が作ったハロプロソングのように聴こえる本カヴァーは、ダンス☆マンの真髄というべき業だろう。

Berryz工房「ジンギスカン」Mongolian Dance Shot Ver.(2008年)
編曲:ダンス☆マン

さて、今回は先日のドラムがカッコいいアイドルソングについて、補足追記的な意味を込めて進めていきたい。

改めて触れておきたい#ババババンビのドラム
「ドラムがカッコいいグループはカッコいい」記事で、#ババババンビの「恋するうさぎちゃん最強伝説」をなんとなく聴いてみたら、重心低めのドラムを土台とした、がっつりとしたバンドサウンドに驚いたという話を書いたのだが、ほかの楽曲も聴けば聴くほどいろいろな発見があった。

#ババババンビ「恋するうさぎちゃん最強伝説」

7月27日にリリースされた1stアルバム『強く儚い大馬鹿者たち』では、現メンバーの7人体制で録り直された既存曲を軸に構成されており、新たなミックスとマスタリングが施されて格段に音がよくなっている。その中でドラム、バンドサウンドという観点から注目すべきは、「青春ギルティ」だ。ドラムが扇動するバンドアンサンブルのカッコよさを堪能できる楽曲である。

#ババババンビ「青春ギルティ (7人ver.)」

甘酸っぱいメロディと散りばめられたピアノがたまらない楽曲だが、タイトにキマるドラムがいいフックになっている。冒頭サビからのスネアの捲し立て、そこからバックビートを聴かせたイントロ、AメロBメロの緩急具合いにハッとさせられ、2番Aメロのピタッと止まるブレイクもグッとくる。間奏の破壊力、ギターソロより目立っているのではないかというほどの暴れん坊フィルは同曲の大きなハイライトで、そこから一変して流麗なDメロへの導きも素晴らしい。さらにさらに落ちサビからのラストサビの展開、《思いを伝えて ひとつになる》でビシッと止まり、ためてためて……からの、《あれから僕等は 青春ギルティ》で一気に取り戻していくショットとともに、猛り狂うグルーヴの波はなんだか胸に迫るものがあり、この上ない昂揚感に見舞われる。

聴けば聴くほどに深いドラミング。叩いているのは遠藤勝彦というドラマーだ。

#ババババンビ、#2i2のビートを担うドラマー・遠藤勝彦
遠藤勝彦は日本の伝統文化である殺陣、日本舞踊などと生演奏が融合した新感覚パフォーマンス集団・破天航路のメンバーである。とは言いつつ、私も今回調べてはじめて知ったのだが、これはすごい……生でライブを観てみたい。

The showcase of HATENKOHRO 2020

そして、遠藤は#2i2でも叩いていた。ちょうど『リズム&ドラム・マガジン』で特集されているではないか。

#2i2では#ババババンビとは打って変わって、ツインペダルの高速ハードコアスタイル。

the Focus - ドラマーの足元に大接近!#9 遠藤勝彦[綾野ましろ、#ババババンビ、#2i2]

ペダルを踏む動きに一切無駄がなく、且つブレない両足の軸が見事である。

#2i2は、以前にも触れたがバンドサウンドながらもそこへ寄りすぎない無機質なデジロック具合いが絶妙。それでいて、歌を主軸においたプロダクトが見事。

#2i2「Live and let live」

最新シングル「Live and let live」は、BPM240越えの高速ビートに乗るカウンターメロディが炸裂する、デジタルハードコアチューン。大砲のごとく乱れ打たれるドラミングは圧巻である。歌の難易度も高く、リズムとアクセント位置を見失いそうになるメロディを歌いこなす様に感服。実際にライブを観て、いい方向に印象が大きく変わった#2i2だが、彼女たちのステージを何度か観るうちにわかったのは、急速的な成長を遂げているということだ。デビュー曲「FATE」(2021年2月リリース)はライブで聴くと、音源とは比べものにならないほど、各々のボーカルスキルが上がっていることがわかる。

子鹿だと思っていると噛まれるぞ
成長という部分では、#ババババンビも同様である。名刺代わりとなるアルバム『強く儚い大馬鹿者たち』は初期曲の新録ベストというべきものでもあり、それ以降にリリースされた楽曲も興味深いものばかりだ。これまたタイトなドラムがバチバチにカッコいいデジロックナンバー「星形」、海外トレンドのダンスミュージックをバンビ流アイドルポップスで迎合していく「常勝MYGAME」といった、グループの懐をどんどん広げていく新曲が次々と投下されており、ますます目が離せなくなっている。

#ババババンビ「星形」

“子鹿だと思っていると噛まれるぞ”、とはよく言ったもので(いや、私が勝手に言ってるだけだが……)、ピンク色を貴重とした目立つウェブサイトのデザインであったり、“顔面偏差値が云々〜”といった、アイドル&芸能界的なプロモーションの印象が強い#ババババンビだが、『強く儚い大馬鹿者たち』のCDアートワーク、ブックレットには一切アー写なしの硬派さを見せていたりと、音楽に対する真摯な姿勢は随所から滲み出ている。

もちろん、メンバー自身の魅力も忘れてはならない。歌い出しや落ちサビといった要所を担うことの多い、岸みゆのあざとさとクールさが共存するハスキーな倍音成分を持った歌声は稀有な存在だ。滑舌は曖昧ながらもきちんと言葉が届き、いい感じにフラット気味の鳴らし方をする芳醇なボーカルに惹きつけられる。さらには魔王・吉沢朱音の牛丼5人前を悠々平らげる食べっぷり……ではなく、ほとんどの楽曲で作詞に携わっている彼女の作家性だ。「カノン」のサビ《赤! 白! 黄色! 桃色! 緑! 青! 紫!》は、2回目だけ《青! 黄色! 桃色! 緑! 赤に紫に白!》と法則性を無視してくるセンスに脱帽。《にっちもさっちも並べバーニャカウダ》だったり、ワードセンスも突飛であり、かつフレーズとリズムに対する言葉の置き方がすごい。言葉の魔術師である。

虹コンのライブで度肝を抜かれた
前回触れたNEO JAPONISM主宰<NEO合戦>で、初めてライブを観て衝撃的によかったのが、虹コンこと、虹のコンキスタドールである。虹コンは“水着で夏曲をよく歌っているグループ”という、ある意味極端に偏っているイメージしかなかった。ライブは数年前に観たことがあるはず……申し訳ないが、その程度の印象だったのが正直なところだ。

今年2021年4月に元WILL-O’の桐乃みゆが虹コンへ加入した。私がWILL-O’をプッシュしていたことは、当コラムの読者や私個人Twitterフォロワーであればご存知のことだったと思うが、それを受けて虹コンが琴線に触れたかといえば、そういうわけではなかったのだ。であるから、<NEO合戦>の時も、“桐乃みゆ、元気かな”程度に最初の1、2曲だけ観て、ほかのステージへ行くつもりでいた……のだが、ドアタマから一気に身も心も持っていかれ、終始見入ってしまい、終わる頃にはスタンディングオベーション状態だった。

虹コンの何がよかったのか? もう、すべてである。楽曲もキャッチーで音響も心地よく、歌えるメンバー、いや、バカウマな歌唱メンバーがいながらも、そこに頼ることなく大人数を活かしたステージには迫力も煌びやかさもあって、1人ひとりがキラキラしていて……。アイドルという芸術の総合エンタテインメントがそこにあった。

抜群によいアレンジとサウンド、そしてドラム
中でも、印象的だったのはやはりオケの素晴らしさだ。生バンドを軸にきっちり仕上げたアレンジと音のよさ。きちんと作り込んで細部まで丁寧にミックスされたオケが申し分ない音響で鳴り、各楽器の分離感も申し分ない。特にドラムは抜けとサウンドともに、抜群によかった。

虹のコンキスタドール「世界の中心で虹を叫んだサマー」

私の心を一気に持っていった1曲目は「世界の中心で虹を叫んだサマー」だった。桐乃加入後1発目の曲ということでMVは観ていたはずなのに……。うーむ、どうやら最初の寸劇と水着による視覚的情報量の多さで聴覚部分はよく覚えていなかったようだ……。しかしながら、ステージで観たそれは、華やかなホーンアレンジ、言葉のリズムで緩急をつけていく平歌と鮮やかなサビメロのコントラストが壮観だった。2番の平歌はアクセントをズラしたり、間奏のブレイクも気持ちよく、ギターソロからのCメロといい、後奏的に挟み込まれるメロといい、爽快で絶妙な作りを持ったアイドルポップスのサマーソングとして隙のない曲だった。それこそ冒頭で紹介したような、どこか往年のハロプロソングのノリに通ずるところもある。

そしてなんといっても、この楽曲のはじけるような雰囲気を担っているのはドラムである。抜けのよいカラッとしたスネアが心地よく、ハイハットが踊り、前のめりなリズムが迸る躍動感を支配していく……。さらに、そのリズムを時折グイッと引き戻すのがベースで、これがまた絶妙なグルーヴを作っている。誰がプレイしているのかと思えば、ドラマーは田中航。神保彰主宰のドラムコンテストでグランプリの経験を持つ、洗足音楽大学卒業の新進気鋭のドラマー。Little Glee Monsterに雨宮天、フィロソフィーのダンスなど幅広いサポート活動をしている。

Wataru Tanaka「神保彰 ドラムコンテスト 2013」

そして、ベースはIKUOだった。おお、そりゃすごいわけだ。

しかし、この曲だけではなく、ライブで次から次とくり出される楽曲も明瞭な響きを持っていた。生バンドを軸とした躍動感に溢れる曲ばかりで、すっかり魅了されてしまった。追々制作周りを調べていったのだが、知れば知るほど納得と驚きの連続であった。

虹コンのグルーヴを作っている錚々たるドラマーたち
まず、多くの楽曲を手掛けているのは村カワ基成、作詞はNOBE。そこに加えて、浅野尚志も多く関わっている。ポップロック、バンドサウンドに強い制作布陣であることに納得。驚いたのはドラマーに錚々たるメンツが名を連ねていたことだ。

「ずっとサマーで恋してる」(2018年)
Dr. 松原"マツキチ"寛(Superfly、ゆず……)

エッジの効いたホーンと勢いあるバンドサウンドの絡み合いが心地よい夏曲「ずっとサマーで恋してる」。手数多めで乱れ打ちながらもムラのないショットがすさまじいドラミングであるが、これはSuperflyのサポートでお馴染みの、松原"マツキチ"寛。図太いスネアと細かいパッセージがラウドに響く「響け!ファンファーレ」は、Ra:INのドラマーで、最近ではLOUDNESSのサポートも務めた、西田竜一。

「響け!ファンファーレ」(2019年)
Dr. 西田竜一(Ra:iN. PUNISH, LOUDNESSサポート)

ほっこりとした冬曲「ふたりのシュプール」。音数の少ない中で、音の鳴っていない間合いを見据えながらの的確なビートを刻むのは日本を代表する名手・佐野康夫。ヘヴィロックチューンの「本命ショコラティエ」は、BABYMETAL神バンドの“青神様”こと、青山英樹だ。超絶ベースラインを奏でるIKUOとの絡みがすさまじい。

「ふたりのシュプール」(2017年)
Dr. 佐野康夫

「本命ショコラティエ」(2019年)
Dr. 青山英樹(BABYMETAL、B’z、吉川晃司……)、Ba. IKUO

聴けば聴くほど、調べれば調べるほど、次から次へと出てくるドラマーにたじたじである。<NEO合戦>で聴いた、ウッドフープかと思わせる極上のスネアがたまらなく、日本人離れした抜群のグルーヴをはじき出していた「†ノーライフベイビー・オブ・ジ・エンド†」。こちらはダンス☆マンの編曲ということで、さすがの神業である。

虹のコンキスタドール「†ノーライフベイビー・オブ・ジ・エンド†」
編曲&プログラミング:ダンス☆マン

虹コン楽曲のクオリティは、こうした制作陣営の充実度と若手から大御所まで、名うてのプレイヤーによって作られているわけだが、さらにはレコーディング&ミキシングエンジニアによる統一性が図られている。アイドル楽曲は、一般的にクリエイターが作曲編曲からレコーディング〜ミックスダウンまで一括して制作することも多い。しかし、虹コンは異なるクリエイターが制作した複数の楽曲を、同じエンジニアがレコーディング&ミックスダウンしているのである。クリエイターがミックスまで行なう、楽曲を完成まで持っていくことは制作面では効率的であるものの、反面でクリエイター各々の作風による音像の違いなどの差が出てしまうことがある。その差をマスタリングで整えるわけだが、聴感上の質感や音圧はある程度揃えられるものの、やはりマスタリングだけでは限界があるのも事実だ。虹コンはそうした異なるクリエイターによる楽曲であっても、同じエンジニアが手がけることによって、音像が揃えられているのである。レコーディングエンジニアはアルバム『レインボウグラビティ』(2020年)からYGQ、ミキシングエンジニアは一貫として西陽仁という、でんぱ組inc.でもお馴染みの布陣である。個人的に“おっ”と思ったのは西で、SILENT SIRENを結成当初から支え続けているエンジニアだからだ。

私感だが、洋楽をなぞっていているだけでは辿り着けないJ-POP/J-ROCKらしい丁寧なミックスのバンドサウンドは、SILENT SIRENが国内最高峰だと思っている。ボーカルの抜け方と、シンセなどの上モノの鳴り、各楽器の位置とバランス、ドラム配置やシンバルの余韻に至るまで、とにかくクリアで細部まで行き届いたサイサイのサウンドは、音源はもちろんのこと、ライブでも極上なのだ。虹コンの明瞭なバンドサウンドが心地よくスッと入ってきたのも、聴き慣れた安心と信頼の西陽仁ワークスだからなのかと、なんだか嬉しくなった。

せっかく虹コンの魅力に気づいたので、最後に別の観点から触れておきたい。抜群の歌唱スタイルで魅了する清水理子である。

清水理子の天性のボーカルスタイル
今さらながら、初めてステージで聴いた彼女の歌は、歌唱力や表現力以前に声の飛ばし方がズバ抜けていると感じた。声量で押していくのではなく、声と言葉を遠くまで届けるのが実にウマい。大人数であっても彼女のパートと声は突き抜けるように耳に入ってくる。天性としてアイドル向きのボーカルスタイルだなと感じた。

そして、ソロデビューしていたことを知った。

【清水理子】スタジオLIVEミュージックビデオ「あなたへ」

西陽仁の楽曲だ。感情の込め方を含め、安心して聴ける歌。非の打ちどころのない歌唱である。

【清水理子】スタジオLIVEミュージックビデオ「ツグム。」

ウマい、ウマすぎる……。アップテンポの楽曲では発声が全然違う。倍音の出し方をコントロールできるのか。先ほどとは打って変わって、ハスキー気味にしたり艶っぽさを出したり、凛としてみたり。只野菜摘による詞世界にシンクロしていくような声色が見事。そして、歌っている表情もたまらなくいい。これはとんでもないボーカリストがいたものだ……。正直、彼女の存在に今まで気づかなかったのが恥ずかしい。

虹のコンキスタドール、恐るべし……。


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