松本隆と振り返る、トリビュートアルバム『風街に連れてって!』

Rolling Stone Japan(ローリングストーン ジャパン)

松本隆と振り返る、トリビュートアルバム『風街に連れてって!』

8月13日(金) 16:00

日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出していく。2021年7月は松本隆トリビュートアルバム特集。第3週は、7月14日リリースの松本隆トリビュートアルバム『風街に連れてって!』の収録曲前半を松本隆本人とともに振り返る。

田家秀樹(以下、田家)こんばんは。FM COCOLO「J-POP LEGEND FORUM」案内人、田家秀樹です。今流れているのは、「夏色のおもいで」。1973年に発売されたチューリップのシングルですが、歌っている方はいきものがかりの吉岡聖恵さんです。7月14日発売された、松本隆作詞活動50周年トリビュートアルバム『風街に連れてって!』 からお聞きいただいております。



今月2021年7月の特集は「松本隆トリビュートアルバム」。これまでに書いた曲は約2100曲。No.1ヒットは50曲以上。トップ10入りシングルは150曲以上。総売上枚数は約5000万枚と、日本を代表する作詞家・松本隆さん。去年から今年にかけてが作詞家生活50周年ということで、7月14日にトリビュートアルバム『風街に連れてって!』が発売にされました。トリビュートアルバムとはなんなのか? という問いの答えのような傑作が誕生しました。今月は4週間に渡って、このアルバムをご紹介。そして、改めて作詞家・松本隆さんの功績について辿る1ヶ月です。

先週と先々週はアルバムのアレンジャー・プロデューサーである亀田誠治さんに、このアルバムの全曲について語っていただきました。今週と来週はその裏返しということになるんでしょうね、トリビュートアルバムの曲を聴いてから原曲についての話をしてみよう。普通は、こういう番組は原曲を聴いてから新しいバージョンを聴くのですが、その逆をやってみよう。この曲は元々こうだったんだよ、という特集です。

田家:今回のアルバムで、改めて松本隆さんを再認識したという方もいらっしゃるでしょうし、今回登場しているアーティストのファンの方には原曲を知らない方もいらっしゃると思うので、そういう方のための特集でもあります。こういう曲だったんだ、松本さんってこんな人だったんだという時間になればと思っています。今週と来週のゲストは、松本隆さんご本人です。よろしくお願いいたします。

松本隆(以下、松本):よろしくお願いします。

田家:今回の収録はアルバム発売直前に行われていますが、今の心境というのは今までのご自身の作品の発表の時と違うものはありますか?

松本:普段カバーってほとんど気にしないんです。いつの間にか作ってていつの間にか発売されるという感覚なんですけど、今回は皆の本気度がすごいので。かなり本人も巻き込まれていますね。

田家:先週と先々週のゲスト、亀田誠治さんが「全亀田を注ぎ込んだ」と仰っていました。

松本:そういう亀田君の松本愛がすごくて(笑)。かなりタジタジですね。

田家:アルバムは今流れている、吉岡聖恵さんの「夏色のおもいで」で始まっているんですが、この始まり方にはどんなことを思われました?

松本:ほとんど僕は口を出していません。マネージャーに「松本さんはトリビュートを捧げられる側の人間なんだから、発言権はありません」って言われて(笑)。彼の中で僕がタイトルと曲順を決めることは評価しているみたいで。それだけやらせてあげるっていう感じで、曲順はちょっといじったんですけど。レコード会社の案は「きみてん(君は天然色)」始まりだったんだけど、ついこないだロンバケ40周年(『A LONG VACATION』/大滝詠一)があったばかりで、ロンバケの一曲目も「君は天然色」だったので、同じになっちゃうなと思って。代わりに、チューリップの「夏色のおもいで」を一曲目に持ってきたんです。それはなぜかというと、「夏色のおもいで」はイントロがついてないんです。オリジナルにはカウントがあったと思うんだけど。なので、今回は人の声で始まったらいいなと思って、そしたらこの曲は聖恵さんの「きーみー」がすごく素直でギミックがなくて良くて。はっぴいえんどが解散してから作詞家としてやっていくか1ヶ月くらい迷った時期があって。それから最初にやった曲が「夏色のおもいで」だったんで。

田家:はい。

松本:この曲の歌詞を作っているときは、自分はいい詞を書く人間としては評価されているんだけど、売れる詞を書く人間としては誰もまだ評価していないわけで。それを得ないといけないから、どうやったらヒット曲というのは自分にも書けるんだろうかって結構悩んだんだよ。一週間くらいね(笑)。

田家:どうやったらヒット曲を書けるのか悩んだ曲です。まずは原曲をお聞きください。原曲はカウントから始まっています、チューリップで「夏色のおもいで」。



田家:この曲の歌詞を一週間くらい悩んだと(笑)。

松本:こういう詞ができたけど、売れるんだろうか? 売れたらいいなと思って。そしたら一作目にしていきなりベスト10に入っちゃって(笑)。もっと大事なのは、この「夏色のおもいで」をどういうわけか筒美京平が「この詞はいい、この人に会いたい」と言ってくれて。それで京平さんの仕事場まで行ったのね。豪華なマンションで、今までとは別世界のお金持ちの作曲家がいてさ。カルチャーショックだったよね(笑)。

田家:まさに50年の始まりの曲がアルバムの1曲目になっております。お聴きいただいたのは、1973年チューリップのシングル、2021年7月14日発売のトリビュートアルバム『風街に連れてって!』から、吉岡聖恵さんが歌う「夏色のおもいで」でした。



田家:今流れているのはトリビュートアルバム『風街に連れてって!』2曲目、「君は天然色」。歌っているのは川崎鷹也さんです。川崎さんが歌ったのを聞いたときにはどう思われました?

松本:本当にトップで声が伸びて芯もあるし、シンガーとして言うことなしですね。こんな新人がこれからデビューするので詞を書いてくれってもし言われたら、喜んで書きますね(笑)。

田家:1981年、大滝詠一さんのアルバム『A LONG VACATION』の中の曲です。川崎鷹也さんはSNS世代の象徴で、バイラルチャートという言葉を僕はこの人で知ったんですけど、ストリーミング再生のランキングで。

松本:僕は今でもわかりません(笑)。すごい数なんでしょう?

田家:この曲は大滝さんの曲の中で最もカバーされている一曲ですもんね。ロンバケの40周年の時に、松本さんが色々なエピソードをお話しになっていて、その中で松本さんが妹さんを亡くされた時のエピソードもありましたね。

松本:妹は生まれた時から心臓が弱くて、いつ死んでもおかしくないと言われていて。それでも26歳まで生きたんですけど、その年に大滝さんが新しいアルバムの歌詞を書いてくれって言ってきて。妹はほぼ同時期に亡くなってしまって、僕も詞を書けなくなって。それで、一回直電で断ったんです。そうしたら、書けるようになるまで待つからということで(笑)。

田家:大滝さんとは、1973年のはっぴいえんどの3枚目のアルバム『HAPPY END』の「外はいい天気」以来のコンビで。歌詞のやりとり最初電話で行われたと大滝さんは話してましたね。

松本:あの頃はファックスがなかったかもね、よく覚えてないけど。(鈴木)茂の「砂の女」とかは完全にファックスがない時代で、アメリカでずっと電話で話して。当時のアメリカの国際電話ってものすごい値段で、一曲分の歌詞を組むのに15万円とか。今だと考えられないよね、今はメールでタダなんだから。大滝さんの時はどうだったろうね。

田家:「カナリヤ諸島にて」を電話で初めて聞いたときは身体が震えたって大滝さんが仰ってました。

松本:あの人はあまり本人を褒めないからね(笑)。

田家:そういうアルバムのレコーディングの最初の曲はこれだったという記述もありました。お聴きいただくのは、大滝詠一さんのオリジナル版「君は天然色」です。



田家:今回川崎さんと大滝さんの声の違いが、こんなに歌の表情を変えるのかという印象でもありました。

松本:大滝さんのは永遠の青春ですよね。でも本人は当時30歳を超えていて、恥ずかしそうに歌っていたんだけど、鷹也くんは歌詞の主人公の年齢にぴったりですごく合ってる(笑)。こんなこと言うと天国から怒られるかもしれないけど。大滝さんには大滝さんの良さがあって、鷹也さんの良さもあって。最初、川崎さんにテレビ局の廊下でばったり挨拶されてさ。僕も「君は一生音楽で食えるから」って言ったんだけど、なんであんなこと言ったんだろう。余計なお世話だよね(笑)。でも直感的にそう思ったんだよね。

田家:「魔法の絨毯」はいい曲ですからね。大滝さんは当時いろいろな声色で歌っていたというエピソードもありますけど、大滝さんの歌はどう思われているんでしょうか?

松本:どの声が彼の本当の声かよく分かんない(笑)。彼は最初に会った時から、誰の声でも真似ができると言っていて。最初細野さんはバッファロー・スプリングフィールドをやりたいって言ってたじゃん? だから、大滝さんはスティーヴン・スティルスの真似も上手いし、ニール・ヤングの真似も上手い。だから、どの声が本当の声か分かんないけど、僕が思うにはカスケーズの「悲しき雨音」ってあったじゃん。カスケーズの歌を聞いた時に大滝さんそっくりだなと思って、あれが彼の本当の声だと思う。

田家:そういう話も今度機会があればゆっくりさせていただけたらと思っております。



田家:続いて3曲目「SWEET MEMORIES」。1983年、松田聖子さんの楽曲。作曲は大村雅朗さん。歌っているのは、YOASOBIでikura名義で活動されています、幾田りらさんです。この曲はすごいですね。

松本:根こそぎ持って行かれますね。

田家:聖子さんの曲をこういうトリビュートで選ばれるときは大変だろうなと思いますけどね。

松本:僕は全然選曲にタッチさせてもらってないので(笑)。

田家:1999年の『風街図鑑』はご自身の選曲でしたよね。

松本:あの時も川勝(正幸)くんと僕の娘と二人で選んでましたね。近づくと、「パパはあっち行ってて」って(笑)。風編の方はヒット曲のシリーズで、もう一つマニアックな選曲の街編もあって、そっちは少し口を挟む余地があったんだけどね。

田家:今回はそれ以上にノータッチだった?

松本:話も出てこなかった(笑)。

田家:でもこういう曲を選んだという連絡は来るわけでしょう?

松本:いや、音を録ってからくるよね。どれ聴いてもすごいからさ、ほぼ完成してた。未完成状態で聴いたのは川崎君だけかな。

田家:レコーディングにも立ち会われた曲もあったんですよね。「SWEET MEMORIES」はこうなるか、という驚きもありましたか。

松本:亀田君って現役の時一緒に仕事してないんだよね。ちょうど僕が引き上げてきた頃に彼が入ってきたわけで、そういう意味ではすれ違いだったのね。本当は亀田君と仕事をしたかった(笑)。

田家:1998年に椎名林檎さんのプロデューサーを務めたのが最初という経歴ですもんね。

松本:1998年だと、僕はもうKinKi Kidsくらいしか歌詞を書いてないね。

田家:でもこうやって受け継がれていくんだなという一つの代表的な作品になった感じはありますよね。

松本:彼も極めてはっぴいえんど系だよね。

田家:それでは原曲、松田聖子さんの「SWEET MEMORIES」です。



田家:亀田さんは、大村雅朗さんに出会ってからアレンジャーになろうと決めたらしいですね。大澤誉志幸さんの曲を聴いて。松本さんは大村さんを弟のような存在だと仰っていましたね。

松本:大村くんはすごいアレンジャーだったよ。松田聖子のプロジェクトの中で、僕は詞を書くこと。あとは全部大村くんがやってくれて、100%信頼しているし、間違ったことはほとんどしなかったと思うね。大体アルバムに1、2曲は彼の作曲があって、それにすごく詞をつけられるの。自分ではあんまりそんなに意識して書いてないんだけど、出来上がったらこれいい詞だなと思うと、作曲に大村雅朗って書いてあって。なんだろうなあって(笑)。僕にとって大好きな曲がたくさんあるのね。

田家:この「SWEET MEMORIES」もその一曲だと。

松本:「SWEET MEMORIES」もそうだし、「真冬の恋人たち」、「セイシェルの夕陽」とかね。

田家:「SWEET MEMORIES」は、こんなに大人っぽい歌を聖子さんが歌えるだろうか、と当時は大村さんも松本さんも思われたと。

松本:信濃町のカフェでディレクターの若松宗雄さんに、大村くんのカセットテープに入っているデモテープを聞かされて。「これ聖子歌えるの?」って訊いたよね。ジャズだから。でも、CMもジャズっぽい感じで仕上げたいからということで、じゃあ一応詞を書いてみようって書いてみたら、すごく良くなって。両A面だったけど、最初はA面が「ガラスの林檎」でB面は「SWEET MEMORIES」だったけど、曲の人気が出てきてB面じゃ済まなくなって、これをひっくり返さないといけないと暴動でも起きるんじゃないかってくらいチャートにも上がってきて(笑)。

田家:なるほど。

松本:若松さんもひっくり返さないと連続一位が止まるんじゃないかとドキドキしたりしてさ。たぶんひっくり返してももう一回1位取れるよって言ったら本当に取っちゃって。それくらい良い曲だと思います。

田家:大村さんのカセットを聞いて、松本さんが書いた、英語の部分が日本語のままの原詞が発見されて。それが彼女の40周年記念版として発売されました。お聞きいただいたのは「SWEET MEMORIES」でした。



田家:1979年の竹内まりやさんの歌「SEPTEMBER」、今回はエレファントカシマシの宮本浩次さんが歌っております。この曲はいかがですか?

松本:最高ですよ。褒めるしかないですね。

田家:改めて思ったのですが、女性が歌う曲に書く詞と男性が歌う曲に書く詞は、やはり違うところがおありになるんでしょう?

松本:基本的には違うんだけど、宮本くんは完全に女のままの詞で歌えちゃう。あれはやっぱり新人類なんだよね。

田家:まりやさんと同じように歌ってるところもありますもんね。

松本:それでいて全然自分らしさも出してるしね。

田家:この曲の作曲は林哲司さん。林哲司さんは、まだ作曲家としてあまり実績がない時に松本さんが起用されたんですよね。

松本:よく覚えてないけど、重要な作曲家だったよ。松原みきさんの「真夜中のドア」で再評価されて、僕はとても嬉しい。

田家:聖子さんでは新しい作曲家を起用していった。松本さんが新しい人を起用することで聖子さんの音楽のグレードが上がっていったという評価もありますが、新しい作曲家に対してのアンテナはずっとあったという。

松本:いやそんなものはなくて、僕は自分の詞に合う曲をつけてくれる人が好きで。合わない人もいるんだよ、当然。そういう人にかち合わないように生きたいなと思って、はっぴいえんど系の人は皆合うじゃん。筒美京平さんもこっちに渡ってきた人だし、てっちゃん(林哲司)とかは最初からこっち側にいるみたいだし。そういう自分がやりやすい人たち、あとは僕の生きるポリシーとして、自分が得したら周りの人も潤わないといけない、そういう方法論で20歳から生きてるから。僕はドラムだったから、縁の下の力持ちで良かったわけだよ。

田家:なるほど。宮本浩次さんのカバーした「SEPTEMBER」も元々はこういう曲でした。竹内まりやさんで「SEPTEMBER」。



田家:これも改めて思ったんですが、一曲の中で映画のように始まるストーリー、あなたを思って飛び乗る電車から始まる、しかも年上の人に会いに行く。この流れ。

松本:よく歌ってくれたと思う(笑)。結構やばいシチュエーションなんだけど、さらっとまりやさんが歌ったので成立してますね。僕の場合は色というのが非常に重要で。この曲は辛子色から始まっているけど、僕は高校生の時から辛子色のシャツが好きで、それにブリティッシュグリーンのコールテンのジャケットを合わせて、細身のジーンズというのが好みで。高校生の時はほとんどそういう格好をしていて。辛子色に関しては思い入れがあるわけ。自分の青春の色なのね。

田家:なるほど。そして9月はさよならの国、10月は黄昏の国という小説もあったなと思ったんですが、私一人傷つくことが残された優しさ、というのがセンシティブな感じですね。

松本:良いよね、僕はこの詞は好きだよね。



田家:お聞きいただいているのは、トリビュートアルバム『風街に連れてって!』の5曲目「Woman ”Wの悲劇”より」。歌っているのは池田エライザさん。原曲は1984年の薬師丸ひろ子さんで、作曲は呉田軽穂、ユーミンですね。レコーディングではこの曲に立ち会われたそうですね。

松本:なぜか、マネージャーがこれには来てくれって言っていて。プロモーションビデオを撮っていたので、僕の絵が欲しかっただけっていう(笑)。

田家:亀田さんは「なんであの曲だけお見えになったのかな?」って言ってました(笑)。亀田さんが感心されていたのは、松本さんが「これがいい、ここがいい」って言うのがドンピシャなんだと。

松本:僕は歌い手に口を出さないようにしようと思ってて、ワンポイントしか言わないのね。あの時に言ったのは、サビがちょっと小川みたいだったから、その川はちょっと違うから具体的に言ったほうがいいかもということで中国の長江って知ってる? って訊いて。彼女は知らないっていうから、それで終わったんだよね。でも戻ってチラッと振り返ったら、スマホで調べていて「松本さんこれですか?」って言っていて、今はそれで通じちゃうわけよ、世代が違っても。昔はGoogleもないからそれを説明するのもすごく大変だったけど、今ってもうそれだけでいいわけ。そうしたら、彼女の中でイメージがバーンって出来て、それからは曲が長江にしか聴こえなかった(笑)。

田家:それで「これだよ!」と。

松本:昔から確かに僕がワンポイントアドバイスすると、コロッと歌が変わるのね。

田家:魔法の一言ですね。

松本:今日は魔法の一言出ないんですか? って言われたりね。出ると場外ホームラン打ったりするんだけど(笑)。

田家:この曲にはわたしもあなたも出てこなくて、男か女かも分からない。眠っている人が死んでいるのか生きているのかも分からない。

松本:もしくは自分を投影しているのかもしれない。

田家:先に相手を眠らせた心中の歌かもしれない。

松本:それは考えすぎかもしれないけど、相手が死んじゃって添い寝するという韓ドラがあって。もちろん僕が曲を書いた方が先だけど(笑)。時々韓ドラ見てると、やられたなあって(笑)。

田家:ペ・ヨンジュンなら知っていると韓ドラファンの方は、改めてこの曲を聴いて、情景を想像してみてください。薬師丸ひろ子さんで「Woman ”Wの悲劇”より」。



田家:ユーミンこと呉田軽穂さんは、自分が人に書いた曲の中でこの曲が一番好きだと。

松本:それはあるかもね。僕はまだ、一つ絞れって言われたら無理だけど。

田家:薬師丸ひろ子さんの浮遊感と池田エライザさんのミステリアスさもちょっと違いますもんね。

松本:薬師丸さんは完全にスピリチュアルじゃない? エライザさんはちょっと肉感があるよね。血と肉がある気がする。エライザは完璧だよ。あの若さで歌も上手いし、ビジュアルもスタイルもいいし、セクシーだし知的。会話も上手いし。

田家:長江を調べたからこの歌が生まれました。お聞きいただいたのは、薬師丸ひろ子さんの「Woman ”Wの悲劇”より」でした。



田家:6曲目「セクシャルバイオレットNo.1」。歌と演奏はBz。1979年、桑名正博さんが歌っております、作曲は筒美京平さんです。この曲について思うことは?

松本:カバーなんだけど、彼らのために作ったような感じだよね(笑)。

田家:亀田さんはご自分でBzに手紙を書いたんだと。

松本:亀田くんはすごいよね。直電とか直筆で手紙書いたりさ。相手も断りにくくなる(笑)。

田家:Bzにお願いしようと言った時も、スタッフの皆さんが凍りついて。無理に決まってるでしょうという表情だったと言っていました(笑)。

松本:Bzはほとんど人の歌なんて歌ったことないでしょう? 二人だけで生きてるような純粋な人たちだから。

田家: Bzのお二人が電話に出られて松本さんが「実は俺バックで弾いてるんだよ」と。それではオリジナルも聴いていただきます。桑名正博さんで「セクシャルバイオレットNo.1」。



田家:「セクシャルバイオレットNo.1」は、松本さんが初めてシングルチャートで1位をとった曲。思い入れはあるでしょうね。

松本:このトリビュートの中で筒美京平作曲がこの曲だけなんだよね。彼は、僕の詞が好きで、最初にこの詞を書いた人に会いたいという話になったのがチューリップに書いた詞だったしさ。自分ではできないけど、本当はやりたかったことの一つにロックバンドというのがあるんだと思うんだ。彼は僕と出会うまでグループサウンズの作曲をやってたじゃない。絶対自分では言わないけどバンドに対する憧れとかあるんだと思うんだよね。そういう意味で、「セクシャルバイオレットNo.1」をBzが歌ったって聞いたら、天国ですごく喜んだと思うよ。

田家:なるほど。松本さんが男性ボーカリストを選ぶときの基準の一つが、バンド出身かどうかだと。

松本:そんなことないよ。皆違うから(笑)。桑名くんはファニー・カンパニーで有名だったし、あのときは阿久悠さんがCharをやっていて、桑名を京平さんがやっていたので、阿久悠VS筒美京平みたいな図式になって、代理戦争みたいで負けられないって言っていて(笑)。そのあとC-C-Bとかも出てきて、異常に可愛がっていたよ(笑)。凝ったコーラスとかつけてさ、面白いなと思いながら横で見てた。本当はビーチ・ボーイズがやりたいのかなとか思って。

田家:筒美京平さんと松本隆さんのバンド愛が結実したような一曲をBzが歌った「セクシャルバイオレットNo.1」。原曲は桑名正博さんでした。後半はまた来週語っていただきます。今日はありがとうございました。



田家:FM COCOLO「J-POP LEGEND FORUM」、7月14日に発売になりました、松本隆作詞活動50周年トリビュートアルバム『風街に連れてって!』を1ヶ月間にわたってご紹介しています。今週と来週のゲストは、松本隆さんご本人です。今流れているのは、この番組の後テーマ、竹内まりやさんの「静かな伝説(レジェンド)」です。

今週と来週はこのアルバムの中の曲を聴いてから原曲に戻ろうという趣向でやっております。当時は全然知らなかった、生まれてなかった方もいらっしゃるわけで。今回のアルバムの歌を歌っている方のファンの方にも、こんな曲が当時あった、松本さんはこういうことをやってきたんだよという話が伝わればいいなと思いながらこういう構成にしました。と言いながらも、僕らもこのアルバムで色々な発見をしてるんですよね。時代と切り離して新しい歌として聴くという、本当にいい機会になってると思います。例えば、「SEPTEMBER」と「Woman ”Wの悲劇”より」の2曲の歌詞の違いと共通点に改めて気付いたりもしたんです。つまり、「SEPTEMBER」は情景とか心の動きとかストーリー性が1曲の中に書き込まれてますが、「Woman ”Wの悲劇”より」は書き込んでない。書き込まない中で、ストーリーをどう伝えるかということでいうと、この「Woman ”Wの悲劇”より」は松本さんの作詞家としての凄みみたいなものを物語った曲だなとも思いました。でも、これは1984年に書かれている。すでに40年近く経っているんですけど、全然古さを感じない。特に言葉というのは、流行語や言い回し、比喩、死語なんかも生まれるわけで。松本さんの詞には、それがないなあと強く思わされる今回のアルバムでもあります。気をてらってないと言いましょうか。作詞家がヒットを狙うときは、気をてらったり、引っ掛けやあざとい仕掛けがあったりするものですが、松本さんの詞にはそれがないと断言しちゃいましょう。今週は前半をお聞きいただきましたが、アルバム後半の彼の話も新しいアルバムの聴き方を教えてくれるのではないのでしょうか。


左より松本隆、田家秀樹

<INFORMATION>

田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。
https://takehideki.jimdo.com
https://takehideki.exblog.jp

「J-POP LEGEND FORUM」
月 21:00-22:00
音楽評論家・田家秀樹が日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出す1時間。
https://cocolo.jp/service/homepage/index/1210

<リリース情報> 



松本隆作詞活動50周年トリビュートアルバム
『風街に連れてって!』

発売日:2021年7月14日(水)
初回限定生産盤(CD+LP+豪華特典本):10000円(税抜)
通常盤(CDのみ):3000円(税抜)
全曲配信予定

=収録曲=
1.「夏色のおもいで」吉岡聖恵
(作曲:財津和夫 オリジナルアーティスト:チューリップ 1973年リリース)
2.「君は天然色」川崎鷹也
(作曲:大瀧詠一 オリジナルアーティスト:大滝詠一 1981年リリース)
3. 「SWEET MEMORIES」幾田りら
(作曲:大村雅朗 オリジナルアーティスト:松田聖子 1983年リリース)
4.「SEPTEMBER」宮本浩次
(作曲:林 哲司 オリジナルアーティスト:竹内まりや 1979年リリース)
5. 「Woman”Wの悲劇”より」池田エライザ
(作曲:呉田軽穂 オリジナルアーティスト:薬師丸ひろ子 1984年リリース)
6. 「セクシャルバイオレットNo.1」Bz
(作曲:筒美京平 オリジナルアーティスト:桑名正博 1979年リリース)
7. 「スローなブギにしてくれ(I want you)」GLIM SPANKY
(作曲:南 佳孝 オリジナルアーティスト:南 佳孝 1981年リリース)
8. 「キャンディ」三浦大知
(作曲:原田真二 オリジナルアーティスト:原田真二 1977年リリース)
9. 「風の谷のナウシカ」Daoko
(作曲:細野晴臣 オリジナルアーティスト:安田成美 1984年リリース)
10. 「ルビーの指環」横山剣(クレイジーケンバンド)
(作曲:寺尾 聰 オリジナルアーティスト:寺尾 聰 1981年リリース)
11. 「風をあつめて」 MAYU・manaka・アサヒ(Little Glee Monster)
(作曲:細野晴臣 オリジナルアーティスト:はっぴいえんど 1971年リリース)
ALL SONGS 作詞:松本 隆 プロデュース:亀田誠治

トリビュートアルバム特設サイト:https://columbia.jp/matsumototakashi/


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