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【「本屋大賞2019」候補作紹介】『愛なき世界』――「葉っぱラブ」リケジョに恋する男性の片思いは成就する?

2月25日(月) 19:00

 BOOKSTANDがお届けする「本屋大賞2019」ノミネート全10作の紹介。今回、取り上げるのは三浦しをん著『愛なき世界』です。

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 『舟を編む』『風が強く吹いている』など、私たちに専門的分野の知られざる世界や、夢に向かって一生懸命になる大切さを教えてくれる三浦しをん作品。本書『愛なき世界』もまた、そうしたエッセンスが詰まったステキな小説です。

 今回、描かれるのは「植物学の研究」と「愛」。東京・文京区にあるT大学のそばに店を構える洋食屋「円福亭」で働く見習い料理人・藤丸陽太とT大学の生物科学研究室との交流から、植物学や研究に熱中する研究者たちの姿が描かれます。殺し屋のような見た目の教授や、イモにゾッコンの老教授など個性的キャラクターも物語を引き立たせます。

 物語は客として来たT大学教授の松田が、円福亭に研究室へのデリバリーを頼むことから動き出します。配達先で藤丸は、自分より少し年上、20歳半ばくらいの女性大学院生・本村と出会い、大きく心を揺さぶられます。

 本村は黒髪を一つに束ねた髪型に、Tシャツにジーンズにゴム草履という飾り気のない出で立ち。Tシャツは「かわいい」という理由で、葉っぱの表皮にある穴「気孔(きこう)」をプリントするほどの熱の入りよう。それもそのはず、研究室では光合成のメカニズムを研究しており、その対象は「葉っぱ」、さらに彼女の研究対象は「シロイヌナズナ」。

 本村は藤丸が食事を配達する度に、楽しそうに葉っぱについて語ったり、ときには実験にも参加させるほど仲を深めていきます。そんな植物を愛する本村に、藤丸は恋をしてしまいます。とはいえ、彼女は植物をこよなく愛する女性で一筋縄にはいかない様子。

 「植物には、脳も神経もありません。つまり、思考も感情もない。人間が言うところの『愛』という概念がないのです。それでも旺盛に繁殖し、多様な形態を持ち、環境に適応して、地球のあちこちで生きている。(中略)だから私は植物学を選びました。愛のない世界を生きる植物の研究に、すべてを捧げると決めています」(本書より)

 作中には、多くの専門的な実験風景も出てきますが、植物学の知識がない人にもわかりやすく書かれており、読者を置いてきぼりにしないのはさすがの一言。果たして藤丸の想いは成就するのか、本書を手に取り恋の結末を確かめてみませんか?



『愛なき世界 (単行本)』
著者:三浦 しをん
出版社:中央公論新社
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