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ランディ・オートン 現在進行形のレジェンド――フミ斎藤のプロレス講座別冊レジェンド100<第99話>

6月15日(金) 8:31

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 ランディ・オートンは、ハートをさらけ出すことのできるプロレスラーである。

 クリス・ベンワーを下して世界ヘビー級王座を初めて手に入れたオートンは、黄金のチャンピオンベルトを大切そうに抱きかかえて、リングの上でわんわん泣いた(2004年8月15日=カナダ・トロント)。

 これがライブのオーディエンスとPPV視聴者が目撃した“サマースラム04”の感動的なフィナーレだった。

 エア・カナダ・センターに集まった1万7640人の大観衆のスタンディング・オベーションのなかを一歩ずつたしかめるような足どりでバックステージに戻っていったオートンは、観客からはみえない場所でまた泣き崩れた。

 入場ランプのすぐ裏にはその日、イベントに使用されたテレビ中継用の機材、ケーブル、大道具などが無造作に置かれ、オートンは狭いスペースにしゃがみ込んで肩を震わせて泣いた。

 携帯電話を手に持ったステファニー・マクマホンがオートンの姿をみつけて足早にかけよってきて、その携帯電話をオートンに渡した。

 無言のままそれを受けとったオートンは、下を向いたまま10ケタくらいのボタンを急いで押した。暗記された電話番号だった。

 電話の向こう側にいるのは、どうやらカンザシシティーに住む父親“カウボーイ”ボブ・オートンらしかった。

 オートンは、ちいさな携帯電話に顔をくっつけて、たったいまチャンピオンになったことを父親に報告していた。これは観客にみせるためのドラマのワンシーンではなかった。

 ルーキーとしてダーク・マッチ(テレビ収録なし)でWWEのリングにデビューしたのは2001年10月。髪はいまよりもやや長めだった。

 それから1カ月後に肩を脱臼して長期欠場し、復帰後はまたファーム落ち。2002年4月に“スマックダウン”で再デビューした。次世代スーパースターにもちょっとした挫折があった。

 プロレスが純粋な競技スポーツであっても、純粋な競技スポーツとは異なるスポーツ・エンターテインメントとされるジャンルであっても、競争を勝ち抜いた者だけがチャンピオンになれるという大原則になんら変わりはない。

 プロレスラーはライフ・ストーリーを観客とシェアする。オートンはキャリア4年、24歳でチャンピオンベルトを腰に巻いた。

 オートンの祖父“ビッグO”ボブ・オートンはルー・テーズと闘い、父“カウボーイ”ボブ・オートンはハルク・ホーガンと闘った。ふたりとも実力派のレスラーではあったけれど、世界チャンピオンにはなれなかった。

 オートンはもちろん祖父オートンのプロレスを生で観たことはないし、父親がロディ・パイパーやポール・オーンドーフといっしょにホーガンと因縁ドラマを演じていたころはまだ小学生だった。

 サード・ジェネレーションのオートンにとってプロレスは生まれながらにしてそこにあった現実であり、祖父と父が歩んできた道であり、みずからも歩いていく長い道のりである。

 オートン家とオートン家とリンクしてきたたくさんの人びとの物語がプロレスというエンドレスな大河ドラマのうえでつながっていて、オートンはそのいちばん先のまだだれも踏んでいないところをてくてくと歩いている。

 プロレスラーがいて、リングがあって、プロレスの試合がある。リングのまわりにはいつもそれを見守る観客がいる。

 手に汗握るプロレス。感動的なプロレス。まじめなプロレス。おもしろおかしいプロレスもある。プロレスが人生で、人生がプロレス。

 プロレスラーになるために生まれてきたオートンは、これから30代のオートン、40代のオートン、中年のオートン、トシをとったオートンをずっと観客にみせていくのである。

●PROFILE:ランディ・オートンRandy Orton

1980年4月1日、テネシー州ノックスビル生まれのミズーリ州セントルイス育ち。ハイスクールを卒業後、海兵隊に入隊。1年後に除隊しWWEと契約。ファーム団体OVW(オハイオ・バレー・レスリング)で1年間、トレーニングを積みメイン・ロースター昇格。そのレスリング・センスとスター性は天性のもので、自他ともに認めるWWEの次世代の主役といわれた。WWE世界ヘビー級王座通算9回、世界ヘビー級王座通算4回、合計13回“世界”のベルトを獲得。インターコンチネンタル王座、WWE・USヘビー級王座、WWE世界タッグ王座と併せグランドスラム達成。トレードマーク技はRKO。

※文中敬称略

※この連載は月~金で毎日更新されます

文/斎藤文彦



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