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普通の子たちがなぜ凶悪事件を…危ない親子関係の傾向

6月15日(金) 8:46

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 少年犯罪が起きるたび、その家庭環境が問題にされます。自分の子育てに不安を感じてしまう親もいるのでは…。

 いくつもの少年事件を取材してきたジャーナリストの草薙厚子さんの近著『となりの少年少女A』は、1997年に起こった神戸連続児童殺傷事件「少年A」の事件をはじめ、この20年で起きた世間を震撼させた凶悪な少年事件をまとめたものです。

 彼らの家庭環境に、なにか傾向はあるのでしょうか?(以下、草薙さんの寄稿)  

◆普通の子が突然犯す、動機のわからない事件

 昨今の少年事件の問題は、事件がより「特殊性」を帯びていることと、動機の「不明瞭化」なのである。周囲には「普通の子ども」とみられ、補導歴も全くないような青少年たちがなぜ、突然大事件を起こすのか。果たして親は子どもの異変に本当に気づかなかったのだろうか。

 世間を震撼させた少年事件を例にとって、少年少女Aたちの家族環境はどんなものだったのか、事件から垣間見えた家族の特徴を3項目に大きく分類してみた。

◆1.子どものシグナルに、見て見ぬふりをする親

●佐世保で同級生を殺した高一少女の家庭

 凶悪少年事件ではこのケースが最も多くみられる。

 2014年、佐世保市内で一人暮らしをしていた高校一年生の女子生徒が、仲良しの同級生をハンマーで殴打し、首をタオルで締めて殺害した「佐世保高一同級生殺害事件」。実は彼女の言動や行動からは、事件を起こすまでに何回も危険シグナルが出ていたのだ。

 この女子生徒は小学5年生の時、下校途中に見かけた猫の死体に惹きつけられ、猫を殺すようになる。また6年生の12月には、同級生にいじめられた腹いせに、相手の給食に漂白剤と洗剤を混ぜ合わせた液体を入れたことが発覚し、学校で大きな問題になった。この事件は、親にとって初めて露見した危険シグナルだったのだ。

 学校側からはカウンセリングが必要ではないかと提案されたのだが、父親が反対して、適切な対応は取られなかった。彼女の家族は地元でも名が知れた名家だったこともあり、近所や仕事先での風評を恐れたのだろう。誰でも自分の娘が「異常」であることは認めたくないし、地域社会の目もある。しかし、見過ごした結果、妄想はますますエスカレートしていった。

 2014年2月、睡眠中の父の頭を金属バットで数回殴打するという計画を実行、幸い全治二週間で済んだのだが、なんと父親は警察には届けず、関係者にも内々に収めるように求めたのである。そのため事件は表に出る事はなかった。そして5ヶ月後、殺人事件を起こしてしまう。この事件は親としての機能不全が最悪の結果を招いたケースといえるだろう。

●母親にタリウムを飲ませた16歳少女の家庭

 また2005年、劇薬の「タリウム」を食品に混入させ、母親が弱っていく様子を観察日記としてネットに上げていた「伊豆タリウム少女母親殺害未遂事件」。この事件で母親は植物状態になり、その数年後に亡くなっている。母親は娘の部屋に動物の標本や化学薬品があることには気づいていたが、娘が化学部に所属しているからだと信じきっていた。

 この母親は知らずにタリウムを摂取してしまった後、突然、体に異変があらわれ、日々体が弱っていき、病院にも通ったのだが原因がわからず、一向に回復しない。そのため、「もしかして自分の娘が毒物をいれたのではないか」という疑念を夫に漏らしたところ、「まさか、そんなことはないだろう」と否定されたのだ。父親は今でもこの時の判断をとても後悔しているという。この時点で気づいていれば、二度目のタリウム混入はなかったかもしれなかったのだ。

◆2.日常的に子どもを虐待する親、干渉しすぎる親

●同級生をカッターナイフで刺殺した11歳女児の家庭

 2004年、小学校6年生の女子児童が、誰もいない教室内で同級生をカッターナイフで殺害した「佐世保小六女児同級生殺害事件」。小学生が教室で同級生を殺害したのは、戦後初の事件だった。

 この加害女児は、家で父親から虐待を受けていたことが明らかになっている。パソコンをつけっぱなしにしていたことで殴ったり、酒を飲むと躾(しつけ)と称して叩いたりしたこともあったという。病気で体が不自由だった父親は、それが愛情の一環としての躾だと思い込んでいたのである。一方、守ってくれるはずの母親は、言葉で厳しい躾をしていたため、味方になってくれることはなかった。女児は逃げる場所がなく、ホラーものの世界に傾倒していった。

●自宅に放火して母・兄妹を殺した16歳少年の家庭

 また、2006年、名門私立高校に通う16歳の男性生徒が、自宅に火をつけて継母と異母兄妹の3人が死亡した「奈良自宅放火母子3人殺人事件」。母親は「継母」だったことから、原因は長男と継母の確執だとする報道が乱れ飛んだが、実際には勉強部屋を「ICU(集中治療室)」と名付けた父親の度を超えた体罰のスパルタ教育が原因だった。

 男子生徒は父親から日常的に殴る蹴るなどの暴力を受けており、父親に対しての憎しみが放火の動機だった。その後の審判では、幼少期から続く父親の暴力によって持続的な抑うつ状態だったとことが明らかになっている。

◆3.子どもの異変に気付かず、放任したままの親

●老女を殺したエリート女子大生の家庭

 名古屋大学の女子大生・19歳による老女殺害事件では、祖母は加害者をとても溺愛していた。幼い時から厳しくしつけられたその反面、祖母からはグランドピアノをプレゼントされた。彼女はピアノを習っていて、地元のコンクールに出場するほどの実力があった。

 勉強も成績がよく、中学時代は常に学年トップテンに入っていた。しかし、中学三年になった頃から彼女の興味は特異なものに傾倒していった。服装が男っぽくなり、言葉遣いも自分のことを「俺」と呼ぶようになった。また、学校にはハサミやカッターナイフを持って行くようになり、この頃、殺害の際に使用した「手斧」をホームセンターで購入している。猫を虐待するようになり、それからさらに「人を殺してみたい」という衝動が抑えられなくなっていった。

 また、前述の「佐世保高一同級生殺害事件」の加害女子生徒は、高校に入って再婚した継母と暮らすことを拒み、マンションで一人暮らしをはじめた。驚いたことに父親は月100万円を生活費として渡していたのだ。しかしAはほとんど学校に行くことはなく、一学期の出席日はわずか3日だった。Aは高校に行く代わりに図書館に通い、過去の少年事件や少年審判について調べ始めた。そしてその3ヶ月後に、同級生の友人に対して殺害計画を実行した。

 どちらも「放任」という、極端な家族関係が見て取れる。

◆全員が「発達障害」と診断…それだけが原因ではない

 これらの少年少女Aによる数々の事件は、全て動機が不可解な事件なのだ。実は加害者は全員、発達障害の診断を下されているのである。しかし、こういった特殊な事件の場合、障害が要因のすべてではない。発達障害という特性に、環境的な要因、誘発される刺激的な体験などが加わり、また、親が危険シグナルを察しても対応策を取らないまま時間が経過していき、妄想を抑制するものが周囲になかったという場合にのみ起こったケースなのだ。

 信じられないかもしれないが、これらの事件は全て「貧困」「家庭崩壊」「怨恨」が原因で引き起こされたものではない。周囲とのコミュニケーションがうまく取れず、不適応を起こして、それがエスカレートしていったのである。昨今の少年事件は、生育環境には何の不自由もなく、恵まれていた中で起こった事件が多いのが特徴である。

「少年少女A」のような悲劇を繰り返さないため、専門家による精神医学的なアドバイスを受け、放任せず、また過干渉になりすぎず、なるべく早い時期から他人に共感する情緒をしっかりと教え込むことが重要なのだ。

※『となりの少年少女A』には「神戸連続児童殺傷事件」「佐世保小六女児同級生殺害事件」「伊豆タリウム少女母親殺害未遂事件」「奈良エリート高校生放火殺人事件」「佐世保高一同級生殺害事件」「名古屋大学女子学生老女殺害事件」「フロリダ州パークランド高校銃乱射事件」とその他の少年事件も再検証をしている。

<文/草薙厚子>



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