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仮想通貨の税逃れは難しい!? プロ投資家と税務署の果てしない戦い

2月5日(月) 8:51

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 昨年12月、仮想通貨に投資する人々の間に衝撃が走った。国税庁が仮想通貨による利益は「雑所得」とすると発表したからだ。確定申告の期限が目前に迫るなか、一部の投資家はあの手この手で徴税から逃れようとしている。「億り人」が考える節税&脱税スキームとは!?

◆「税務署にバレるはずがない」プロ投資家のマル秘手口とは

 仮想通貨長者たちに共通するのは軽いノリで手を出した仮想通貨への投資が大化けした結果、税金の心配をしなくてはならなくなった。わずか半年前、仮想通貨への課税について国税庁は立場を表明しておらず、投資家の間でもほとんど話題になっていなかった。

 しかし、1年以上前から仮想通貨への課税を予見していた投資家もいる。これまでに仮想通貨で2億円の資産を築いたというY氏(45歳)もその一人だ。

「私は1年半前にビットコイン取引を始めましたが、それ以来、ずっとタイの取引所でトレードしています。当時、日本ではすでに仮想通貨取引所が登録制になるという噂があり、そうなると税務署に情報が筒抜けになることを予想していました。ちなみにタイは非居住者でも比較的簡単に銀行口座がつくれますし、CRS(※1)にも加盟していないのでバレずに堂々と現金化できますよ」

 さらにもう一人。海外に資産を分散して管理しているという富裕層の投資家・M氏(53歳)も、最初から海外の取引所を利用しているという。

「仮想通貨はいくつか口座を持っていますが、欧米やアジアの複数の国の取引所を使ってます。含み益は出てますが、まだキャッシュアウトしていない。海外にはビットコインATMもあるし、個人間で現金と仮想通貨を交換することもできる。デビットカードを発行してくれる取引所もあるので、国内での現金化には困りません。税務署に知られようがありません」

 Y氏やM氏の手口について、仮想通貨に詳しいある国際税理士は「確かに海外の業者であれば、日本の税務署に情報開示する義務はない。日本に現金を持ち込んで高額な車や家を買ったり、国内の銀行口座に入金でもしない限り、捕捉されにくい」と話す。

 しかし、すでに国内取引所を通じて多額の含み益が出てしまった投資家たちの間でも、“抜け穴”となり得る方法が存在するようだ。

「仮想通貨投資家の間で、課税回避のために海外移住を試みる動きは確かにある」と明かすのは、税理士法人ファシオ・コンサルティング代表社員・八木橋泰仁氏だ。

「日本の所得税法では、海外に1年以上居住する予定で出国した人は『非居住者』となり、納税義務がなくなるんです。長期旅行などでは認められませんが、例えば1年以上、留学や就労など海外に定住する予定で出国し、その後に保有する仮想通貨を売却したとしても、その売却益は日本では課税されないことになっている。’15年7月に始まった『国外転出時課税制度(※2)』(いわゆる出国税)では、海外移住者が1億円を超える株式含み益に対して課税されることになっているが、現状では、仮想通貨は対象外となっています」

 ただ、越えなければならないハードルもある。

「1年以上の予定で海外に居住する場合でも、生活の本拠が海外にあることが客観的に認められなければなりません。海外移住後も日本の法人から給与を受け取っていたり、頻繁に帰国しているような場合は否認されることもあります。この方法を検討するのは課税所得が大きい人でしょうから、当局も簡単には認めてないでしょう。また、海外で現金化した後に日本に持ち帰るのも認められない可能性もある。もし真剣に検討するなら、税理士に確認しながら慎重に行うべきでしょうね」

 つまりそれまでの生活をかなぐり捨てて日本を出国し、売却益は二度と日本に持ち帰らないくらいの覚悟が必要となるわけだ。これで数億円の税金が浮くとすればやる価値はあるかもしれないが、ほとんどの「にわか長者たち」はきちんと納めるしかなさそうだ。

《プロ投資家が目論む“税逃れ”》

●海外の取引所・ウォレットを使ってるから絶対バレない

●独身だし1、2年海外に出て非居住者になれば納税しなくてもいい

●海外取引所で購入して国内で相対で現金化しました

●CRS未参加国の口座に入金し、日本のATMで下ろして現金化する

◆ブロックチェーンの解析をすれば全部バレる

 トラスティーズ・寺田松崎会計事務所パートナーの寺田芳彦氏は、国税の本気度についてこう話す。

「昨年に日本の居住者が仮想通貨取引で得た収益は18兆円ともいわれ、このすべてに課税できれば9兆円は下らないという試算がある。財政健全化のため政府が本腰を入れるのも無理はないでしょう。例えば国税庁が各業者に対し、『昨年、大きな利益を得た投資家のトップ100人の情報を開示しなさい』というやり方をする可能性もあります。ただし、税務署もすぐに全員を一斉に調査できる訳ではない。昨年、利益を出した人や仮想通貨の乗り換えを行った人でも、たとえリスト化されてもすぐにはお声が掛からず、2年後ぐらいに“お尋ね状”が来ることも予想されます。この場合、過去にさかのぼって申告漏れを指摘されることもあり得ます」

 海外の取引所は調べようがないと先ほど述べたが、もし国税庁が本気になれば、ブロックチェーン(※3)を解析することも始めるかもしれない。

「仮想通貨の取引において、確かにブロックチェーンそのものは個人情報と紐づいていないため、すぐに誰の取引かを判定しづらいといえます。しかし、海外ではブロックチェーンの履歴を洗い出し、マネーロンダリングなどの検出を行うシステムの提供を行う企業も現れている。国税が採用するかどうかは別として、ブロックチェーンの履歴をトレースすることは、技術的には難しくないのです」

 そうなれば、仮想通貨は誰がどれだけ持っているか、たちどころにわかるようになる。

 さらに、仮想通貨に関連する徴税逃れに対し、国際的な連携も模索され始めている。米財務省のムニューシン長官は1月12日にG20が緊密に協力して「ビットコインのウォレットが『スイス銀行』の口座にならないようにする」と発言している。これは、仮想通貨のウォレットを、秘匿性と守秘性の高い資産隠しの手段にはさせないという宣言と取れる。

 仮想通貨事情にも詳しい近畿大学法学部教授の道野真弘氏もこう解説する。

「新しい決済手段として注目されている仮想通貨ですが、投機対象となってしまっている現状では企業側も採用に消極的にならざるをえない。今後、企業の経済活動を後押しするために各国で国際的な連携が進められ、ある程度の管理が行われることが予想されます。その結果、相場が安定する可能性もある。実現すれば法整備も進み、今ある税務上のさまざまな抜け穴も封じられるのではないか」

 国内外で強まる包囲網により、仮想通貨は法定通貨以上に透明性が高まりつつある。こうした流れは、バブルを崩壊させる新たな引き金となるかもしれない。

【用語解説】

※1 CRS

共通報告基準。世界的な租税回避の阻止を目的に、非居住者の金融口座情報を自動的に交換する制度。日本を含む101の国と地域が参加。海外に銀行口座を持つ者を税務署は容易に捕捉できる

※2 国外転出時課税制度

’15年7月以降に海外に転出する富裕層を対象に、資産の含み益に対して課税する制度。出国時に株式、投資信託、未決済の信用取引などの時価の合計が1億円以上ある人が対象

※3 ブロックチェーン

分散型台帳技術や分散型ネットワークとも呼ばれる。仮想通貨においては、取引ごとに固有のIDが記録され、その情報は遡及的に変更することはできない。誰でも参照することが可能

【寺田芳彦氏】

公認会計士・税理士。トラスティーズ・コンサルティングLLPパートナー。三菱UFJ信託銀行、KPMG税理士法人を経て現職。国際税務などを専門

【八木橋泰仁氏】

税理士法人ファシオ・コンサルティング代表社員。仮想通貨の収支自動計算ツールの提供も開始。https://cryptolinc.com

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