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【今どき絵本作家レコメンズ特別編】『ねずみくんのチョッキ』作者なかえよしをさん&上野紀子さんインタビュー

11月9日(木) 10:30

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【今どき絵本作家レコメンズ特別編】『ねずみくんのチョッキ』作者なかえよしをさん&上野紀子さんインタビュー
「これぞ次世代の名作!」と思えるような素晴らしい絵本を紹介すべく、100人以上の絵本作家を取材した経験を持つ筆者が、独断と偏見からいちおし絵本作家にフォーカスする、「今どき絵本作家レコメンズ」。

今回は特別編として、世代を超えて愛されるロングセラー絵本『ねずみくんのチョッキ』作者、なかえよしをさん・上野紀子さんご夫婦へのインタビューをお送りする。『ねずみくんのチョッキ』の発売から43年。今年8月には、34作目となる新作『ねずみくんといたずらビムくん』が出版された。累計400万部を超える人気シリーズはどのように生まれたのか。知られざる制作エピソードや作品に込めた思いを伺った。


なかえ よしを(中江 嘉男)
1940年、兵庫県生まれ。日本大学芸術学部美術科卒。大手広告代理店のデザイナーを経て絵本作家に。『いたずらララちゃん』(絵・上野紀子、ポプラ社)で第10回絵本にっぽん賞、『ねずみくんのチョッキ』(絵・上野紀子、ポプラ社)で第6回講談社出版文化賞絵本賞を受賞。その他、『こねこのクリスマス』(絵・上野紀子、教育画劇)、『宇宙遊星間旅行』(絵・上野紀子、ポプラ社)など作品多数。

上野 紀子(うえの のりこ)
1940年、埼玉県生まれ。日本大学芸術学部美術科卒。1973年、『ELEPHANT BUTTONS』(Harper&Row社)で絵本作家デビュー。夫・なかえ氏との作品「ねずみくんの絵本」シリーズ(ポプラ社)をはじめ、『ちいちゃんのかげおくり』(文・あまんきみこ、あかね書房)、『ぼうしをとってちょうだいな』(文・松谷みよ子、偕成社)など多数の作品で絵を手がける。
■夫婦二人三脚で続けてきた絵本作り

『ねずみくんのチョッキ』 作:なかえよしを 絵:上野紀子(ポプラ社)

お母さんが編んでくれた、かわいいチョッキ。
“ちょっときせてよ”と動物の仲間たち。
あらあら、チョッキがどんどん伸びて……。

―― 『ねずみくんのチョッキ』が発売されたのは1974年。3年前には、シリーズ40周年を記念して、神奈川近代文学館で「なかえよしを+上野紀子の100冊の絵本展」が開催されました。今や、親、子、孫と3世代にわたって愛されるロングセラーとなりましたが、どのように感じてらっしゃいますか。

なかえさん(以下、敬称略): 自分たちとしてはただただ一冊一冊、作ってきただけなんですけどね。気づいたら40周年を迎えていた、という感じ。何でもこつこつ続けていくと、積み重なっていくものですね。

上野さん(以下、敬称略): こんなに長く続くだなんて、思ってもみませんでした。『ねずみくんのチョッキ』を作ったのはもう随分昔のことなのに、小さい頃に読んでもらったという方が、今は親になって子どもに読んでいる……そんな話が聞けるなんて、本当にうれしいことですね。

―― お二人の絵本作りは、なかえさんがお話を考え、ダミーを作って上野さんに渡し、上野さんが絵を仕上げる、という分業スタイルだそうですね。

なかえ: 本当は文章も絵も一人でやった方が、うまくまとまると思うんですけどね。でも僕らは長年一緒にやってきたから、やりやすいですよ。他の作家とやるとなると、絵で表現できるところまで文章化されていたりして、無駄が多かったりするんです。文章を削ってくれとも言いにくかったりして。でも僕らはいつも一緒にいるので、余計な気をつかう必要がない。そういう意味ではすごく楽です。

できあがったダミーは、一番最初に上野に見せます。上野のOKが出たら編集者に回す、という流れです。

上野: これはちょっと変じゃないですか、なんてこともありましたよね。最近はないですけど。

―― 「ねずみくんの絵本」シリーズは、どれも起承転結がはっきりしたお話が多いように感じますが、お話はどのように考えられるのでしょうか。

なかえ: まずオチから考えますね。星新一さんのショートショートみたいな、最後の1行であっと驚かせるような作品が好きなので、絵本も起承転結でオチのある話がいいと思っているんです。読者に「やられた!」と思わせるようなオチが考えられたら、もう90%はできたようなもの。あとは、そのオチをより効果的に見せるように、話を組み立てていけばいいわけですから。



―― お話の題材は、大きな事件も大冒険もなく、身近な事柄ばかりですね。

なかえ: 旅先の風景なんかを描いたりすると、ねずみくんの世界ではなくなってしまうんですよ。だから、なるべく子どもにとって身近なことや、簡単なテーマを描くようにしています。でもシリーズがこうも長く続いていると、それがなかなか難しい。ねずみくんは冒険していないけれど、作家にとってはこれこそが冒険で、納得のいくオチができあがるまでは辛い日々が続きます。

■絵本の中のねずみくん、身長は何センチ?
―― 「ねずみくんの絵本」シリーズは文章も絵もシンプルで、極限までそぎ落とされていて、引き算の美を感じます。このあたりはやはり、こだわりがあるのでしょうか?

なかえ: そもそも主人公の名前からしてシンプルですからね。ねずみだから、ねずみくん。ぞうが出てくればぞうさん、あひるが出てくればあひるくん。こういう名前の付け方だから、さるが2匹とか出てこれない(笑) そんなわけで、だいたい動物は1匹ずつしか出てきません。

文章はほぼ会話だけでシンプルに表現しています。ねずみくんがどんな服を着ているか、何をやっているか、といったことは、絵で描けますからね。絵も背景は描かないようにしているのですが、シンプルな分、表情は細やかなところまでこだわっています。

上野: 空白が多いから楽なように思われるかもしれませんが、ねずみくんひとりを描くだけでも、表情やポーズなどが場面によって違うので、結構大変なんです。どの程度笑っているのか、どの程度驚いているのかというのを、なかえからその都度、説明してもらいます。ときにはなかえがモデルとなって、その表情や動きを再現してくれることもあるんですよ。実際に見てみるのが一番わかりやすいですからね。

なかえ: ねずみくんは小さいから、細やかに描き込むのは大変でしょうね。ねずみくんの身長は、2.6cmなんですよ。どのページでも、ほぼ同じサイズ。だから、ぞうさんとの大きさの違いがよくわかるんです。

―― そういえば、ねずみくんの顔のアップを見たことがありません。いつも同じサイズだからですね。2.6cmというのは、上野さんが決められたのでしょうか。

上野: 最初に描いたのがそのサイズだったんです。どうしてこんな小さく描いちゃったのかしらって思って(笑) 最近は、さすがにそのサイズで描くのは難しくなってきたので、ねずみくんとねみちゃんだけ少し大きく描いて、印刷の際に縮小してもらっています。でも、ときどきバランスが狂ってしまうこともあって……なかえに「ねずみくん、太っちゃってるよ」と指摘されて、描き直したこともあります。



―― 40年以上も同じキャラクターを描き続けるというのは、大変なことなのでしょうね。

なかえ: 描いている本人も気づかぬうちに、ちょっとずつ変わってきている気がしますね。僕はやっぱり一番最初の、『ねずみくんのチョッキ』のねずみくんがいいなと。最初のは、耳の形が微妙に真ん丸じゃないんです。今のは耳が真ん丸で、ミッキーマウスみたい。そっちの方が好きという読者の方もいるかもしれませんけどね。

画材は最初、鉛筆1本だけだったんです。モノクロで描いて、チョッキは印刷所で色指定。鉛筆1本でやれるなんて、こんないい仕事はないですよね。高い油絵の具とか、買う必要もないし(笑)

上野: 鉛筆1本しか持っていないような言い方をしますけど、油絵の具も持ってますよ(笑) あと、チョッキの赤は、今は赤鉛筆で描いています。

なかえ:『ねずみくんのチョッキ』のときは四つ足だったぞうさんが、最近は二本足になっていたり……シリーズを続けていると、そんなちょっとした変化があるものです。とくにおかしいとは言われないので、まあいいかなと。でも、ねずみくんが小さくとも一生懸命がんばっている姿を描く、という部分は、これまでも、そしてこれからも変わらないと思います。

■シリーズ最新刊は『ねずみくんといたずらビムくん』

『ねずみくんといたずらビムくん』(ポプラ社)

見慣れない子にであったねずみくん。
その子の名前はいたずらビムくん。
ビムくんにいたずらされた動物たちが次々やってきて……

―― 最新刊『ねずみくんといたずらビムくん』では、ねずみくん以外のねずみのキャラクターが登場したことにとても驚きました。ビムくんのキャラクターは、いつどんな風にして生まれたのでしょうか?

なかえ: 次はどんなお話にしようかと考えていたときに、ふと思い浮かんだんですよ。新しいキャラクターが登場すると、気になるでしょう? マンネリ気味の「ねずみくん」シリーズに、新しい風を吹かせたいと思ってね。名前は「BAD MOUSE(バッドマウス)」の“B”と“M”で、ビムくん。悪いねずみなんです。黒いねずみだから、「BLACK MOUSE(ブラックマウス)」でもありますね。

―― 『ねずみくんといたずらビムくん』以外にも、これまで『また!ねずみくんとホットケーキ』や『へんし~ん ねずみくん』などでいたずらをテーマにされていますが、子どものいたずらについて、どのように思われますか?

なかえ: いたずらには、2種類あると思うんですよ。いいいたずらと、悪いいたずら。

悪意があってやるいたずらは、相手を傷つけたりもするから、やっぱりよくないですよね。でも、知恵を絞って工夫した、かわいげのあるいたずらっていうのもあるじゃないですか。最近では、恋人へのサプライズプロポーズなんかも流行っているでしょう? 婚約指輪をあげるのに、いろいろ工夫したりして。あれも一種のいたずらですよね。そういういたずらは、まぁいいんじゃないかなと。いたずらされた側が「やられた~」って苦笑いするようないたずらならね。そのためにはやっぱり、創意工夫が必要ですよね。

『ねずみくんといたずらビムくん』では、見て楽しい、絵になるいたずらにしようと知恵を絞りました。ビムくんがどんないたずらをしたのか、絵本で見てもらえたらうれしいです。

■知識を詰め込むよりも、創作する力を培おう
―― なかえさんの創作の原点は、どこにあると思われますか。

なかえ: 小さい頃、野山を駆けまわって遊んでいたことでしょうか。絵本のない時代に育ったので、絵本を読み聞かせてもらったという記憶はないんですよ。その代わり、自分が生きていた場所がそのまま絵本の世界のようなものだった。田んぼに指を突っ込んでカニを獲ったり、家ではウサギやメダカやカメを飼っていたりしてね。

自然の中で遊びまわっていると、当然のようにいろいろと工夫するようになる。やみくもに遊んでいるだけだと、けがをしますからね。暴れまわったりもするけれど、それなりに気をつかって暴れまわるんです(笑) そういう中で自然と、工夫する知恵や生き抜く力を学んできたように思います。

―― 昔の子どもと今の子どもの違いについて、どのように感じてらっしゃいますか。

なかえ: パソコンがない時代とある時代とで、全然違いますよね。勉強だって、僕の時代は大してやらなくても平気だったんですよ。勉強っていうのはできるに越したことはないけれど、知識ばかり詰め込めばいいってもんじゃない。知識は調べれば得られるんだから、丸覚えする必要なんてないんですよ。僕なんかは知識がない分、想像力でカバーしています。知識に頼れない分、工夫するんですよね。そういう、工夫する力、何かを作り出す力というのを、もっと遊びの中で身につけていくといいんじゃないかと思います。

―― 最後に、『ねずみくんといたずらビムくん』に続く次回作のご予定は?

なかえ:最近はほぼ年に1冊のペースでシリーズの新刊を出しているので、そろそろ考えなくちゃいけないんですが、まだアイデアが出てきていません。年内には案を出そうと自分で締め切りを設けているので、もう少し追いつめられれば出てくるんじゃないかな(笑) これからもねずみくんとねみちゃんの活躍を見守っていただけたらうれしいです。


加治佐 志津加治佐 志津
ミキハウスで販売職、大手新聞社系編集部で新聞その他紙媒体の企画・編集、サイバーエージェントでコンテンツディレクター等を経て、2009年よりフリーランスに。絵本と子育てをテーマに取材・執筆を続ける。これまでにインタビューした絵本作家は100人超。家族は漫画家の夫と2013年生まれの息子。趣味の書道は初等科師範。

「【今どき絵本作家レコメンズ特別編】『ねずみくんのチョッキ』作者なかえよしをさん&上野紀子さんインタビュー」記事詳細はコチラ


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