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【ドラマレビュー】『渡る世間は鬼ばかり』最新特別編に垣間見たせつなさ

9月27日(水) 10:00

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【ドラマレビュー】『渡る世間は鬼ばかり』最新特別編に垣間見たせつなさ
この夏はドラマを一切見られなかったので、10月からのクールは何を見ようと早々に調べていたところ、今年もあのドラマのスペシャルが放送されることが判明し、「鬼が帰ってくるよ!!」とドラマ好きの友人に即報告したのは一ヵ月ほど前だったろうか。

――そう、TBS系ドラマ『渡る世間は鬼ばかり』、通称「渡鬼」だ。

脚本・橋田壽賀子、プロデューサー・石井ふく子コンビによる本ドラマ、1990年に初回シリーズがスタートし、そこから全10シリーズ、通算放送回数500回を超える超ご長寿ドラマシリーズだ。

2011年の連ドラシリーズ終了後も、1~2年に一度のペースでスペシャル放送として帰ってきているので、ドラマは見たことがなくとも、タイトルや出演者くらいは知っている、という人も多いのではないかと思う。

まったく見たことがない人のために簡潔に説明すると、「岡倉大吉・節子夫婦と、5人の娘たち(弥生、五月、文子、葉子、長子)が、それぞれの嫁ぎ先で繰り広げる愛憎渦巻く人間模様」という感じ。

「渡る世間に鬼はいない」をもじったタイトルから分かるように、渡鬼の見どころといえば、とにかく家族を巡る人間関係の面倒くささだ。


筆者も小学生のときに初回シリーズを親と一緒に何となく見ていたのだが、当時全盛期だったトレンディドラマとはあまりにも毛色が違うので、得も知れぬ違和感を抱きつつも、嫁姑、小姑、離婚に再婚、二世帯同居や介護、夫の脱サラからの起業、借金など、次から次へと湧いて出てくる家族の諸問題に、「私にはよく分からないけど、大人にはこんなことが日々あるのかあ」などぼんやり考えていた。

しかし、脚本の巧みさは小学生でも惹き込まれるものがあって、極端なまでの登場人物の多さ、やたらと一人のセリフまわしが長いこと、前回までを見ていなくてもすぐ理解できるような状況説明の多さ、そして何よりも「そんな言葉を今どき使う人いる?」みたいな死語や独特の言葉遣いを面白がっているうちに、渡鬼フリークになってしまった。

そう、渡鬼はいちいち突っ込みながら見るというよりは、その突っ込みどころをどこまで
愛せるかがカギのネタドラマなのだ。


さる9月18日(月・祝)に放送された3時間(!)スペシャルは、何とワンオペ育児にフォーカス。

五月(泉ピン子)の長男、眞(えなりかずき)が子どもを授かるも、仕事の忙しさにかまけて家庭を顧みず、ワンオペ育児に疲れ果てた妻に出ていかれる……というところから物語が動き出す。

俺が稼いでいるんだから文句はないだろう、という態度を取っていたと反省している眞に、「専業主婦の立場で夫に育児参加してもらおうなんて間違っている、あなたが反省する必要はないし、文句を言われるくらいだったら離婚してやりなさい」と苦言を呈する。

中華料理店の「幸楽」に嫁ぎ、朝から晩まで休みなく家業を手伝いながら、2人の子どもを育て上げた自負がある五月のこの発言は、完全に橋田先生の意見の代弁ということだ。

どうやら、橋田先生は男性の育児参加を推進したり、ワンオペ育児に苦しむ母親を助けようという最近の風潮に物申したいようで、「昔は子どもを背中におぶって畑仕事にも出ていたのに、今どきの母親は1人で子育てするくらいで弱音を吐いて生っちょろい」という強烈なカウンターなのだ。

育児に対する世代間ギャップの描写によりお茶の間をざわつかせることが、今回のドラマの目的のようで、橋田先生流アンチテーゼをたっぷりと堪能した。

もちろん渡鬼は古典的なホームドラマなので、ブラックな結末には発展しない。

ネタバレしてしまうと、眞たち夫婦はこれから協力して子育てしていこう、と手を取り合い、五月は夫の勇(角野卓造)に、「昔と今じゃ時代が違うんだよ」「子離れしなきゃダメだ」ともっともな意見で説き伏せられたのち、これからは自分のしたいことをして過ごす!と姉妹5人で初の海外旅行に出かけるなど、大団円を迎える。

これがネットで見た話であれば、「子育てに理解のない姑ひどすぎ!」とバッサリ斬られてしまうのだろうけど、これまでの渡鬼の歴史を思うと、「ああ、五月さんも『あなたはよく頑張ってきたわね』って言われたかっただけなのかなあ……」なんてせつない気持ちにもなってしまった。

「幸楽」は渡鬼における主戦場で、姑&小姑による嫁いびりに耐えながら必死に働き、夜の営業が終わっても、「お夜食こしらえます」(“こしらえる”は「渡鬼語」と呼ばれるドラマには欠かせない頻出ワード)と、まだ家族のための仕事が待っている。たまに実家に帰れば、そちらでのトラブルに巻き込まれて、まさに渡る世間は鬼ばかり……。

昨年のスペシャル放送では、「幸楽」の改装のためにしばらく休みをもらうものの、働きづめの人生だったばかりに趣味もない、友だちもいない、姑も今やリハビリ生活で遠くに行ってしまったからいがみあう相手すらいない、で孤立してしまった五月が、結局「これしかない」と他のラーメン屋にバイトに出るというエピソードがあって、これまためちゃくちゃ切なくなる話だったのだ。


橋田先生が「ワークライフバランス」という言葉を知っているのかはさだかではないが、良かれと思って家事育児仕事をばりばりこなしてきた結果が今だとしたら、少しは褒めてほしいだろうし、褒められなかったせいで、嫁のワンオペ育児に矛先が……と思うとずいぶん悲しい話だ。

伏線を回収するとか、行間を読むようなドラマではないので、今回もソファーに寝っ転がりつつ、友人と実況を楽しみながらゲラゲラ笑っていたが、渡鬼で描写されるテーマがどれもこれも馴染みのある、身に覚えのあるものになってきているな、とここ最近のスペシャル放送を見ていると感じる。

あと10年ほどしたらさらに身につまされることも増えてくるのだろうか?

……と言いつつ、御年90歳を超える、脚本・橋田壽賀子&プロデューサー・石井ふく子コンビ。橋田先生にいたっては、嫌というほど仕事もしてきたから、やり残したこともない、と引退を示唆するような発言も少し前に話題になっていた。

20数年続いているので、キャストも高齢化して、訃報も幾度となくあったし、今度こそ
最後か?と噂されながらも今年まで続いている。

だけど、時折しんみりしながらも、お決まりの展開や渡鬼語に無邪気に笑っていたいので、できれば来年も、それ以降もスペシャル放送をよろしくお願いします、と祈っている。

真貝 友香(しんがい ゆか)真貝 友香(しんがい ゆか)
ソフトウェア開発職、携帯向け音楽配信事業にて社内SEを経験した後、マーケティング業務に従事。高校生からOLまで女性をターゲットにしたリサーチをメインに調査・分析業務を行う。現在は夫・2012年12月生まれの娘と都内在住。

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