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「TPP11」は不発に終わる? タフな対米交渉を乗り切れるカードとなるのは甘い幻想

5月20日(土) 6:00

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明日、ベトナム・ハノイで開催される閣僚会合で早期発効への一致を目指す、米国抜きの環太平洋連携協定「TPP11(イレブン)」。

日米交渉の有利なカードとして期待が高まる中、『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏は、これは不発に終わるだろうと予測する。

* * *

環太平洋経済連携協定(TPP)を、11ヵ国で発効させようというアイデア――「TPP11」に一部で期待が高まっている。

トランプ米大統領が離脱を宣言したことで、3年もかけて交渉してきたTPPは空中分解状態となっていた。しかし、せっかくの多国間の枠組みを腐らせるのは惜しいと日本政府が音頭を取り、アメリカ以外の11ヵ国での早期発効の道を探り始めたのだ。

その思惑ははっきりしている。トランプ政権はTPPに代わる新たな枠組みとして、日本に二国間の自由貿易協定(FTA)の締結を迫っている。

この日米交渉はハードなものになるだろう。何しろ、トランプ大統領は二国間FTAのほうが「アメリカファーストになる。日本からもっと多くのものを得られる」と公言し、TPPから離脱したのだ。FTAの交渉ではTPPよりもさらにアメリカ有利のものを提案してくるはず。そこで日本政府は「TPP11」というカードで対抗し、対米交渉を少しでも有利に進めたいと狙っているのだ。

例えば、牛肉。実は、日豪間にはすでに二国間FTAがあり、豪州産牛肉のほうが米国産よりも関税が低い。そのため、日本国内で米国産のシェアが落ちている。「TPP11」が早期発効すれば豪州産牛肉の関税はさらに下がり、米国産がより不利になる。アメリカの生産者にとっては死活問題だ。

日米交渉にはまだまだ時間がかかる。トランプ政権の人事が遅れて通商政策を担当する主要ポストも定まっていないため、本格交渉スタートの時期さえはっきりしていない。その間にも日本国内では、米国産牛肉より豪州産牛肉が売れる状態が続く。

そうなれば、日本にも勝機が見えてくる。焦(じ)れたアメリカがTPPと同じレベルの関税率で日米FTA交渉を妥協してくる可能性がある。さらに、二国間交渉が長引けば、「離脱を撤回し、TPPに復帰したほうが早い」となって、トランプ政権がTPPに戻ってくることも期待できる、というわけだ。



だが、残念ながら、「TPP11」カードは不発に終わるだろう。トランプ政権が安易に日米二国間交渉で妥協したり、TPPに出戻りすることはない。

なぜか? 「アメリカファースト」はトランプ大統領の最も大切な公約。もし、日米FTA交渉でTPPより有利な投資・貿易ルールを引き出せなければ、その公約を破ることになる。トランプ大統領にすれば面子(メンツ)丸潰れで、支持者も失いかねない。

それでなくても安倍政権はトランプ大統領から「こちらの言いなり」と思われている。いくら日本が「TPP11」カードで揺さぶりをかけても、そんなことで気弱になることはありえない。

11ヵ国が一枚岩でないことも、安倍政権にとってはマイナス材料だ。ベトナムやマレーシアなど、経済規模の小さい参加国はこの新協定に懐疑的だ。アメリカ抜きのTPPでは大幅な輸出拡大は望めないからだ。そのことはトランプ政権もよくわかっている。「TPP11」の早期発効は困難と見透かされ、交渉のテーブルで米側から逆ネジを食らうのがオチだろう。

このカードがあれば、タフな対米交渉を乗り切れるというのは、甘い幻想にすぎないのだ。

●古賀茂明(こが・しげあき)













1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して2011年に退官。近著に『国家の暴走』(角川oneテーマ21)。インターネットサイト『Synapse』にて「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中 【関連記事】
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