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『はらぺこあおむし』作者、色の魔術師エリック・カールさんの世界

4月28日(金) 10:00

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『はらぺこあおむし』作者、色の魔術師エリック・カールさんの世界
世界的ベストセラー『はらぺこあおむし』で知られるアメリカの絵本作家エリック・カールさんの展覧会が4月22日、世田谷美術館でスタートした。開催に先駆けて21日に開かれた報道内覧会と開会式には、来日したエリック・カールさんご本人も登場。「自分の作品がここまでたくさん展示されることは滅多にない」と、日本での大規模展覧会の開催に喜びを表した。


『はらぺこあおむし』(原題: The Very Hungry Caterpillar)の初版は1969年。あおむしが食べたかのような穴あきのしかけがこの絵本の最大の特徴だが、当時のアメリカでは採算がとれないという理由から、こういったしかけ絵本の造本は難しかったという。そこで編集者がラフスケッチを持って日本を訪れたところ、偕成社の当時の社長・今村廣氏の力添えにより、日本での印刷・製本が実現。めでたく出版の運びとなったそうだ。日本では1976年に、もりひさしさんの訳で偕成社から出版されている。

赤ちゃんも穴に指を入れておもちゃ感覚で遊ぶことができるし、食べ物の名前や数、曜日などを楽しみながら覚えることもできる。おすすめは、硬くて丈夫な単行本サイズのボードブック版。わが家でも息子が赤ちゃんの頃から繰り返し読んできた思い出深い一冊だ。

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ボードブック『はらぺこあおむし』

作:エリック・カール 訳:もりひさし(偕成社)
今回は、エリック・カール展の開催とご本人の来日を記念して、『はらぺこあおむし』以外のおすすめ絵本を3冊紹介したい。

■父と娘の心温まるファンタジー『パパ、お月さまとって!』
お月さまと遊びたい娘から「パパ、お月さまとって!」とリクエストされたパパ。長い長いはしごを持ってきて、高い高い山へ運んで、上へ上へと登って月に会いに行くけれど、月はあまりにも大きすぎて……。あっと驚く斬新なしかけがユニークなロングセラーだ。

冒頭には「娘サースティンへ おもいでをこめて!」の一文。表紙カバーの袖には、エリック・カールさんと大人になった娘さんのツーショット写真とともに、娘さんが3、4歳の頃に「パパ、お月さまとって!」と言い出したことがきっかけでこの絵本が生まれたというエピソードが紹介されている。

上下左右に広がるダイナミックなしかけで、はしごの長さや山の高さ、月の大きさをみごとに表現。月の満ち欠けについて自然と学べるのも魅力のひとつだが、子どもの無茶な願いごとにも耳を傾け、力を尽くす父の深い愛情を描いた、心温まるファンタジーでもある。娘を持つパパの読み聞かせにうってつけの一冊だ。

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『パパ、お月さまとって!』

作:エリック・カール 訳:もりひさし(偕成社)

■虫の音がきこえる本『だんまり こおろぎ』
こおろぎの「コロコロ、リリリ……」という鳴き声は、2枚の羽をこすり合わせることで出る音だそうだ。でもこの絵本の主人公のこおろぎぼうやは、小さな羽をいくらこすっても音が出せない。

ばった、かまきり、せみ、はちなど、いろんな虫たちがこおろぎぼうやに声をかけてくれるのだが、あいさつを返したくて懸命に羽をこするものの、どうにも音が出ないのだ。でも、最後の最後に仲間の女の子を見つけて……。

サブタイトルの「虫の音がきこえる本」の通り、最後に音が鳴るしかけが施されている。筆者は息子の通う保育園で、3歳の子どもたちを前にこの絵本を読み聞かせしたことがあるのだが、こおろぎの鳴き声を耳にしたときの子どもたちの驚きようといったら! 目を丸くして音の鳴るページを見つめていたかと思うと、次の瞬間には「どうして音が鳴るの!?」「また聞かせて!」と絵本の周りに群がってきた。

ずっとだんまりを続けていたこおろぎが、最後の最後にやっと鳴く。こおろぎの歌声は、最後まで絵本に見入っていた子どもたちへのご褒美のようだ。

実際のところ、こおろぎの中でも鳴くのはオスの成虫だけで、主にメスへの求愛のために鳴くのだとか。シンプルなストーリーの中に虫の生態まで盛り込まれているところがさすがだ。

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ボードブック『だんまり こおろぎ』

作:エリック・カール 訳:工藤直子(偕成社)

■いわむらかずおさんとの共作『どこへいくの? To See My Friend!』
親日家のエリック・カールさんは、日本人作家との共作絵本もつくっている。お相手は、『14ひきのあさごはん』などの「14ひきのシリーズ」で知られる絵本作家いわむらかずおさんだ。

出会いは2000年1月、いわむらかずお絵本の丘美術館で開催された、エリック・カールさんといわむらかずおさんのトークショー。すぐに意気投合したふたりは、トークショーの翌日に一緒に絵本をつくることを約束したそうだ。

横書きの本は左に開く、縦書きの本は右に開く、という本の構造の特性を生かしてつくられたのは、絵本の表と裏からそれぞれストーリーが始まり、真ん中で終わるというユニークな絵本。エリック・カールさんの描いたページは英語、いわむらかずおさんの描いたページは日本語で、セリフは対訳関係になっている。エリック・カールさんといわむらかずおさん、それぞれの魅力を一度に味わえる贅沢な一冊だ。

「どこへいくの?(Where are you going?)」「ともだちにあいに!(To see my friend!)」の繰り返しや、友だちが友だちを呼んで、どんどんにぎやかになっていくというストーリー展開はシンプルでわかりやすく、小さな子から楽しめる。

この絵本を読んだ君たちも、僕らみたいに、国や言葉、文化の違いを越えて仲良くなれますように……そんなメッセージが伝わってくる絵本だ。

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『どこへいくの? To See My Friend!』

作:エリック・カール、いわむらかずお(童心社)
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「エリック・カール展 The Art of Eric Carle」は、アメリカ・マサチューセッツ州にあるエリック・カール絵本美術館の全面協力を得て、『はらぺこあおむし』や『パパ、お月さまとって!』をはじめとした選りすぐりの絵本原画やラフのほか、立体作品や舞台衣装のデザインなど、絵本以外の作品もあわせて約160点を展示。色彩豊かなエリック・カールさんの世界にたっぷりと浸れる内容となっている。今回紹介した3作品の原画も展示されているので、興味のある方はぜひ足を運んでみてほしい。

東京・世田谷美術館での開催は7月2日(日)まで。その後は京都と岩手にも巡回を予定している。詳しくはエリック・カール展ウェブサイトへ。

エリック・カール展
http://ericcarle2017-18.com/


1929年生まれのエリック・カールさんは、今回が6回目の来日で、6月には米寿を迎える。青少年時代をナチス政権下のドイツで過ごしたという過去を持つが、“色の魔術師”と呼ばれる通り、その作風は彩りにあふれ、見るものをハッピーにさせる。内覧会でお見かけしたその姿はとてもチャーミングで、押し寄せた報道陣ににこやかに手を振り、場を和ませてくれた。


展覧会スタートのタイミングとあわせて、新作『エリック・カールのイソップものがたり』も出版された。今後もまた新作を、とつい期待してしまうが、まず何よりお元気で、長生きしていただきたいものである。

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『エリック・カールのイソップものがたり』

再話・絵:エリック・カール 訳:木坂涼(偕成社)

加治佐 志津加治佐 志津
ミキハウスで販売職、大手新聞社系編集部で新聞その他紙媒体の企画・編集、サイバーエージェントでコンテンツディレクター等を経て、2009年よりフリーランスに。絵本と子育てをテーマに取材・執筆を続ける。これまでにインタビューした絵本作家は100人超。家族は漫画家の夫と2013年生まれの息子。趣味の書道は初等科師範。

「『はらぺこあおむし』作者、“色の魔術師”エリック・カールさんの世界」記事詳細はコチラ


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