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中野雅之が語る、BOOM BOOM SATELLITESの20年

4月21日(金) 18:00

中野雅之が語る、BOOM BOOM SATELLITESの20年
BOOM BOOM SATELLITES(以下:BBS)が歩んだ約20年は、デビュー直前の川島道行の脳腫瘍の発覚により"生きるなら何をするか"を考えるとことから始まり、以来つねに緊張状態の中にあったという。

「本当にスリリングで、エキサイティングな時間でした」ー中野雅之

先の3月1日にリリースしたベストアルバム『19972016』は、その活動の軌跡をCD4枚・計56曲という膨大な楽曲群によってたどることのできる、アーカイヴ的な作品となっている。
そのすべての作業を終え作品を手放した今、中野雅之が語る現在の心境と、BBSとしての活動の本質とは。

―2010年にベスト盤『19972007』を出した際、中野さんは"「過去の作品を聴くと、当時の自分は未熟だったと思ってしまうから聴いていて辛くなる」と拒み続けたが、聴き直した結果「客観的に面白い音楽だなぁと感じられた」"と仰っていましたが、今回はどうですか? 2010年とはまたぜんぜん違ったモチベーションだったと思うんですけど。
 
そうですね。前回とは全く違います。前回は10周年だからという意味合いが強かったのですが、今回はもっとシンプルに、アーカイヴという意味で手元に置いてずっと大事にし続けてもらえるようなものを最後に作っておかないといけないという使命感があって。
 
―収録曲全56曲をマスタリングしてみて、BBSが作ってきた音を改めてどんなふうに感じましたか?
 
やっぱり普遍性があるんだなって。56曲の中には20年近く前のものから去年リリースされたものまであるんですけど、最初から筋が通ったものがあったのかなって思います。この流行り廃りがあるシーンの中で、僕らの音楽はあまり古さを感じないんですよね。それは、つねに普遍性を勝ち取ろうとしていたからで。100年経ったときに価値があるかどうか、ということをずーっと考えてやってきたので。
 
―なるほど。でもその普遍性みたいなものって、一体何なんでしょうね?
 
ビートミュージックって、昨日作られた音楽が今日古くなっていることが起きるシーンで、1年2年経って聴くと"わぁ、ダサいな"って思っちゃうのが宿命づけられてるジャンルなんですよ。ケミカルブラザーズの1stアルバムとか、今聴いたらひっくり返りますよ。
 
―ハハハハ(笑)。
 
"聴けね〜"みたいな(笑)。冗談抜きで。ただ、それがいいところでもあるんですよね。ヒップホップはその典型ですけど、つまり週刊誌感覚というか、読み捨ていくものの良さでもあるわけで。ただ自分はそこから距離置きたかった。だから、ちょっと矛盾してるんですよ。読み捨てられていくことが良しとされているシーンに首をつっこんでいるのに、読み捨てられるのはイヤだ、と。10年20年後もしっかり読み応えのある、深くドンと突き刺さってくるものを作っておきたい。それは何なんでしょうね? 多分、欲張りなんだと思いますし、クリエイターとしてのエゴというか、自意識がすごく強いんだと思う。
 
―なるほど。
 
それと、今の10代、20代の子はライナーノーツのクレジット欄から、盤を掘っていくなんてことはまずしない。YouTubeのおすすめとか、SoundCloudとかそういうところのリンクを辿っていくだけで、音楽を知ったことになる。それをもう否定しようがないし、そうすると、50年代60年代の音楽も何もかもが全部並列にある状態なんです。で、そのなかで何が良いか、何をピックアップするかはむしろ変な入れ知恵がされてしまって染まってしまっている大人なんかよりもよっぽど純粋なわけですよ。だから、全部がテーブルの上にバーッと並べられて"はい、あなたは何聴きますか?"っていう状況は今のあるべき姿なのかもしれないな、とも思うんですよね。そこにはアニソンもあるし、アイドルもあるし、60年代のヒッピー臭いやつとかもあって。ただ、それだと予備知識を得ることができないわけじゃないですか。60年代はベトナム戦争があって、スライ&ザ・ファミリー・ストーンはレイシズムと関係がある、とか。そういう裏付けみたいなものが取っ払われたときに、ちゃんと価値がある音楽かどうかというのが僕はやっぱり気になるんです。
 
―そういう時代の物語性みたいなものから離れた普遍性だと。今回のベストアルバムのタイトルにしても前回のベストに続き『19972016』という数字だけですが、これも物語性みたいなのを持たせたくなかったから?
 
そうですね。楽曲単位では、たとえば川島君が最後にリードヴォーカルを務めた曲『LAY YOUR HANDS ON ME』は、すごく深い意味を持ってくるけれども、何十曲も詰まっているものに物語性が強いタイトルはふさわしくないような気がしますね。僕もやっぱり、"いやぁ、すごい音楽シーンって変わったな" "世の中変わったな"っていう感覚なんですよ。自分が子供の頃から比べてもそうですし、デビュー当時と比べてもそうです。で、時代に置いてかれた方がいいのか、置いてかれない方がいいのか分からないし、なんとなく過ごすしかないんですよ。ただ、音楽が起こす、不思議な効果にはやっぱりまだ惹かれるので、そこだけ見てればいいかなって。あっ、ぜんぜんどうでもいい話をしていいですか?
 
―どうぞ(笑)!
 
先日、すごく寒い日に近所の居酒屋に入って、お湯割りの焼酎飲んでいたんです。そこのお店、いつもすごく中途半端な音楽かける店で。ジャミロクワイとか(笑)。
 
―今かよ! みたいな(笑)。
 
そうそう(笑)。で、その日もそういう音楽がかかっていたんだけど、いきなりCDが飛んだと思ったらぜんぜん違うタイプの音楽がかかりだしたんです。EDMっぽいんだけど、造りが素人臭くて、歌も英語風だけどちゃんと歌えてない。"これ何だろう?"と思ってShazamで検索したら、アーティストっていうか完全に自主制作の盤だったんです。ホームページとYouTubeに動画がアップしてあって、あとはほぼ手売りに近い通販をやってるだけの人で。僕はプロなので、それっぽいけど稚拙な、そこに至ってない音楽のクオリティってすぐに気がつくんですよ。でも、盤がかかるってことはそういう音楽にわざわざお金払って買ったってことでしょう。"ああいうのも並列にある、こういう時代を生きているんだな〜"って焼酎飲みながらしみじみ思いましたね。昔はレコードを出すこと自体が大変で選ばれた人しか出せなかったけど、今は、誰もが発信者になれる。そういう状態は、僕はあまり好きじゃないです(笑)。
 
―BBSのリリースの歴史は1997年に始まるわけですが、Windows95という言葉があるくらいですから、ちょうどインターネット時代、SNS時代の幕開けと共に始まったバンドなんですよね。
 
そうですね、デビューした頃にmixiとかも出てきたかな。
 
―だからある意味、なんでも並列に置かれてしまう時代であり、昨日作った音楽が古くなってしまうビートミュージックというジャンルにいるという、一番消耗されてしまう可能性の高いところで凛と残っているのは、楽曲のクオリティの高さだけでは語れないすごい奇跡だったのかなぁと。
 
まあ、根性でしょうね(笑)。約20年の間に、シーンのトップに立ったかと思えば、急にアンダーグラウンドに行ってしまう人がいたり・・・結局、それぞれの場所で過ごしていて、誰が勝った負けたでもないと思うけど、自分たちが音楽活動を続けるために歯を食いしばってやってきたというのは確かです。
 
―今回の特典映像の中で中野さんが"僕と川島君のやってきた何かがここに詰まっていると思います"みたいなことを仰っていたと思うんですが、それはつまり、音だけではなくて、その歯を食いしばっていたものの残像も楽曲には詰っていると?
 
それは客観的にはわからないですけど。いつからか"クリエイティヴな作業をするときの苦痛は音楽の作品からは感じ取れないようにしたい"というふうに思うようになっていたんです。ただ、どっちにしたって僕と川島君がやることだから、僕のありよう、川島君のありようがにじみ出てきて当然だと思うし、それが楽曲とか作品の魅力を邪魔したりとかすることは無いと思うし。むしろそれが魅力的なものというか、作品を後押しするものだったんじゃないかなって、そう思いたいですね。
 
―ベスト盤を通しての印象ですが、最初の10年間の作品を収録したDISC1、2のアタックティヴなサウンドに対して、08年以降の曲を収録したDISC3、4では壮大な抜け感みたいなのがあって、サウンドに無限の広がりを感じると同時に、川島さんの声とかヴォーカルもそうした無限の空間に呼ばれているように感じました。その変化というのは?
 
それはやっぱりバンドの歴史だと思います。川島君の人生の変化もバンドの変化と結びついているけども、外的な要因もやっぱりあって。震災があったのも、ひとつの大きな転機になったし。ただ、川島君が病気じゃなかったとしたら、またぜんぜん多分違うバンドの歩みがあったんだろうと思いますね。僕は惰性で続けることが出来ない性格の人間なので、つねに違う魅力を、違う意義を見出ださないとって考えていた。川島君ってすごい寂しがり屋で、解散みたいな"別れ"がとにかく嫌な人だったんです。そうなると僕は"バンド解散という別れをしたくないんだったら、次に何やるか考えないと! 俺は同じもの作りたくないから"って川島君にすごい突きつけることになるんですね。"今、何考えてる?""おまえ今、何歳?""何したい?"って、すごい問い詰めていたと思います(笑)。
 
―でしょうね(笑)。ところで、DSIC3、4の曲順はどうやって決められたんですか?
 
何も考えていないというか、そんなに作為はないです。ただ、『LAY YOUR HANDS ON ME』をどこで聴かせるかはすごく大事だなと思っていました。例えば中盤ぐらいに聴かせると、むしろ作為を感じそうだなと思って。言うなれば川島君はこの曲で旅立ったようなところもあるんで、スパンって最初に聴かせちゃっていいんじゃないかなって。
 
―最後の曲は『NARCOSIS』ですが、この曲はBBS最後の作品『LAY YOUR HANDS ON ME』の最後に収録されている曲であり、川島さんが息を吸いこむ音で終わるんですが、これで締めるというのにもやっぱり特別な意図が?
 
僕にとってあの音は川島君を近い場所でリアルに感じる音なんです。どうしても喪失感っていうのは僕にもファンにも当然あるので、聴き方によってはドキっとすることもあるかもしれないし、いろんな感じ方があると思うんですけど、実際はシンプルに音の面白さですね。いろんなところに一瞬で連れていかれる。
 
―そうですね。ほんの1、2秒の音だけで何かを喚起するっていうのはすごいですよね。
 
そうなんですよ。一般的に音楽と言われているもの、つまり多くの人にとってのポップスですね。それはイントロがあって、平歌あって、ヴァースあって、コーラスあってっていう楽曲の構造のことなんだけど、それを音楽の全てだと思っている人が多いわけじゃないですか。でも、アカデミックな視点で言えば、音の断片だったり、ノイズだったり、芸術としての音というのもある。そんな中で、このバンドでは"音"というもの自体の面白さを伝えていきたいところが一貫してあったので、精神作用としてのトリップ、違う場所にトランスポートさせられてしまうような音のマジックみたいなものを体験させたいと。
 
―まさにそれは僕もBBSの音楽に対して思っていたところです。BBSの魅力の1つは、さっき仰っていた根性みたいな、実はものすごく人間臭い部分です。それともう1つはやはり、音という表現への圧倒的なこだわりです。このある意味真逆な2つの要素が『NARCOSIS』の最後の音に凝縮されていて、その音をもって活動が終わるというのもすごいなぁと。
 
ただ実験を繰り返すような研究者的なアーティストでいることを拒んでいるところがあるし、その一方で、ただポップスのフォーマットの中で受け入れられることだけを追求していくことも拒んでいて。結局のところ、どっちも好きなんですよ。ポップスにすごく感動させられることももちろんあるし、音の可能性をストイックに掘り下げてくれるものもやっぱり好きですし。
 
―そこが20年一貫して変わらない、普遍性の部分なのでしょうね。
 
やっぱり年齢とともに、クリエイティヴ自体のモチベーションが下がる人が多い気がするんです。"アルバム出ました!"って言われても、"聞かねーよ、そんなもん"っていうことになっちゃう人やバンドが多い。でも、絶対自分はそんなことにはなりたくないと思っていて。川島君もそうだったと思うんだけど、最後の2年、3年は、あと何曲作れるか、アルバムをフルで作ることは出来るのか、という状態だったから・・・でも、不謹慎だと思われても仕方ない言葉ですけど、それってすごいスリリングで、エキサイティングでもあったんです。ずっと緊張していたし。悲しいとか、残念だとか、悔しいとか、そういうのは当たり前にあるんですけど、"これをどう、その作品に落とし込むか"とか、"川島君の人生をどう終わらせることができるか"とか、そういうことを毎日考えていました。まあ、後にも先にもそんな経験をすることはないだろうし本当に、貴重な経験をしました。だから、これは誇りですね。


 
―考えてみたらBBSというバンドはずっとそうしたスリリングな環境に身を置いていたんですね。
 
そうかもしれないです。デビューの直前に、川島君が脳腫瘍になったわけなんで。それで川島くんは甘ったれたこというわけです。生きるか死ぬかみたいなことを言い出して大喧嘩になったこともあった。親がどうのとかいろいろぐちゃぐちゃ言い出したんですよ。だから"やっぱ、どう生きるかを考えないと、親に失礼だよ"って言ったんです。"生きるなら何をするか"というところからデビューしている、そんなバンドいないですからね(笑)。だからこれからバンドをやってみようとか、自分もアーティストになってみたいという人には参考にならないですね(笑)。
 
―スーパーレアケースですもんね(笑)。
 
本当にかなり特殊だと思うし、最終的には文字通り川島くんのことを看取ることまでやったわけで。そこまでの関係性を持ってひとつの音楽を作ったり、ライヴ1本に挑んだりする人間関係ってほとんどないと思うので、面白いですよね。面白いと言ったら川島くんに悪いけど。興味深いです。どういう縁だったのかなって。あんまり科学的な話じゃないけど、やっぱり川島くんが生まれ変わったらどこかで会って、また一緒にやる機会とかあったらいいなって思うんです。僕がどこかで生まれ変わって、川島くんも生まれ変わって、会ってしまったらヤバいですよね、また面倒くさいことになるじゃないですか(笑)。
 
―またあのヒリヒリした日々が再び繰り返されるっていう。これは答えていただかなくても大丈夫ですが、最後に川島さんと交わした言葉って何だったんですか?
 
川島君の病気は徐々に機能を奪われていくので、最期はしゃべれなくなっていたし、ご飯も食べられなくなっていたんです。でも、いよいよ亡くなっていく時間を待つだけっていう状態になった時に、悟ったような、全部自分の運命を飲み込んでいるような顔をしているように見えたんですよね。世間的には40半ばで亡くなるのは短くて、残念で、かわいそうだと思われるけど、僕はその顔を見た時はそういうふうには思わなくて、人生をまっとうしたなって思ったんです。音楽家としてもそうだし、家族にも囲まれている。子供もまだ小さいし、もちろん大きくなるのを見たかっただろうし、もっとたくさん家族と時間を過ごしたかっただろうと思うんですけど、みんなに送り出されて、担がれて送り出されている感じがすごくあったので。最期、たぶん川島くんはありがとうって言ってくれたんです、手を振って。もう声が出なかったのでわからないんですけど、ただなんとなく、直感的にそう感じた。僕も心の中で思っていたのは、ありがとうとか、そのくらいシンプルなことでした。
 
―僕らとしても、BBSがまっとうした時間を最後まで見届けられたという思いです。今後は、やっぱり中野さんはソロ活動か、違うプロジェクトを始動するかという感じですか?
 
ソロかぁ(笑)。うーん、どうですかね。まだ決めきれていないので、来た話をやっちゃう感じかなぁ。今、あるアーティストと"ちょっと中野さん曲つくりましょうよ""ああいいよ、作ろう、作ろう"って感じで曲を作っているんですけど、それも楽しいんですよね。人とやって勉強になることも多いし。でも、やっぱりいつかは自分自身の音楽を作らないとな、とは思っていますよ。
 
―楽しみにしています。そういえば、今回の限定盤の映像が面白くて。本当にライヴでMCしないんですね。
 
MCはやらない。意地でもやらない(笑)。
 
―でも、いつかまたソロで、自分の音楽でライヴをやる時がきたらMCはしなきゃいけないと思いますよ(笑)。
 
ふふふ(笑)。ライヴをやる人間としてカッコよくいれればいいけど。
 
―微力ながら応援させていただきます。
 
ありがとう。
 


Now On Sale
『19972016』
【初回生産限定盤】(4枚組CD+Blu-ray)
SRCL-9211 ¥7,200(税込)
 
『19972016 -19972007 Remastered-』
【通常盤】(2枚組CD)
SRCL-9216 ¥3,600(税込)
 
『19972016 -20082016-』
【通常盤】(2枚組CD)
SRCL-9218 ¥3,600(税込)
 
Live
2017.06.18
 「FRONT CHAPTER - THE FINAL SESSION - LAY YOUR HANDS ON ME SPECIAL LIVE」
新木場STUDIO COAST
OPEN/START : 18:00/19:00
TICKET:¥10,000(+1drink)
 
BOOM BOOM SATELLITES
ブンブンサテライツ 1990年に結成した中野雅之(プログラミング/ベース)と川島道行(ヴォーカル/ギター)からなるエレクトロニック/ロック・バンド。1997年にベルギーのレーベルからデ
ビュー、国内外で人気を博す。2016年10月9日、川島が脳腫瘍のため逝去。3月1日に中野がマスタリングを担当したベストアルバム『19972016(初回限定盤)』『20082016(通
常盤)』『19972007-Remastered-(通常盤)』を発売。
http://www.bbs-net.com/
 
 
 
 
 
 
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