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外国人記者たちが明かすトランプショック 「今のアメリカはローマ帝国衰退期のパンとサーカス状態」

11月12日(土) 6:00

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11月8日(日本時間9日)、世界は“トランプショック”に激震した。日本では主に安全保障やTPPへの影響が懸念されているが、ドナルト・トランプ氏の米大統領選勝利を、他の国はどう受け止めたのか?

連載コラム「週プレ外国人記者クラブ」のレギュラーコメンテーターである、各国ジャーナリストたちに聞いた。

***

まずは、今回の大統領選を精力的に取材してきた米誌「フォーブス」のジェームズ・シムズ氏。共和党とトランプ氏に辛らつな言葉を投げかける。

「1割か2割の確率でトランプ氏勝利の可能性はあると見ていましたが、正直、まさかの結果です。ヒラリー・クリントン氏はワシントンDCやニューヨークという“村”の村長。エスタブリッシュメント(政治経済支配層)に対する地方の国民の反発、怒りが高まっている現状を読み取れず、規定路線を敷いた民主党の大失敗です。

一方の共和党はさらに罪深い。かつての共和党にはもっと寛容さがありましたが、ここ20年で変質してしまいました。特にオバマ政権になってからは、オバマケア(医療保険制度改革)を廃案にするため政府閉鎖という事態を招くなど、議会の膠着(こうちゃく)状態をつくり、献金者のウォール街や企業のみに耳を向け、ワシントンに対する人々の怒りを増強させた。そして、ポピュリズムに走った終着点がトランプ大統領の誕生です。

トランプ氏は勝利宣言で、『アメリカは分断で負った傷を癒やさなければならない』『今こそ国民がひとつになって結束する時だ』と言っていました。それはそうですが、『フザけるな』という感じです。差別的暴言等で、あなたが分断を助長したのではないか。

日本の大抵の報道を見ると、勝利宣言では言葉が柔らかくなっていたので安心できるかも…というような論調ですが、それは文面を追っているだけにすぎません。

建国以来、約240年間、アメリカはよく頑張りました。今のアメリカ社会は、衰退が始まった一世紀の古代ローマ帝国の“パンとサーカス”(愚民政策)状態かもしれない。

トランプ氏が勝ってしまった今、新政権のスタッフ及び官僚機構が、彼に変なことをさせないこと、そして、より良い方向に導くことを期待します。絶大な権力を持つ大統領はちょっとした発言でも市場に大きな影響を与えます。しかし、感情で動くトランプ氏がその助言を受け入れるかどうか…。

日本への影響としては、TPPはアウトで、安全保障では日本などの同盟国に負担増を求めてくるのは確かでしょう。またトランプ氏は『日本が輸入牛肉にかけている高関税への対抗措置として、日本がアメリカに輸出する自動車に高関税をかける』と主張していましたが、日本の自動車メーカーはほとんどアメリカで生産しているので、影響は少ないのではと思います。

TPPに加え、トランプ氏はNAFTA(北米自由貿易協定)離脱にも言及しています。ホンダのフィットやマツダのデミオなど日本の小型車はアメリカへの輸出に関税がかからないメキシコで生産されていますから、アメリカがNAFTAを離脱すれば、日本のメーカーにとっては厳しい事態になるでしょう」

アイルランド出身で英紙「エコノミスト」のデイビッド・マックニール氏も、トランプ勝利に対する複雑な心境を吐露(とろ)する。

「この結果は予想しませんでしたが、選挙までの期間、アメリカではまさに『Brexit』(イギリスのEU離脱)と似たようなことが起こっていたので、トランプ氏が当選する不安はありました。

イギリスは中央銀行や保守党、あらゆる利権組織が人々の怒りの度合いを読み誤っていた。それと同様のことがアメリカでも起きていたと言えます。2008年の大統領選でバラク・オバマ氏を支持した有権者らは、8年の任期を通しても、まるで事態が変わらないことに怒りを感じてトランプ氏に希望を託したのです。

私自身も、『エコノミスト』としてもこの結果には驚いています。自由貿易や自由競争市場、技術や人の移動の自由を推進している『エコノミスト』やその読者にとっては、雇用を米国内に取り戻し、壁で隔てて移民の流入を防ぐと主張する保護主義的なトランプ氏が当選したことは“大惨事”だと見ています。『アメリカ・ファースト』という彼の政策はイギリスだけでなくグローバル経済に大きなインパクトを与えるでしょう」

同じイギリスメディアでも「ガーディアン」紙のジャスティン・マッカリー氏は、少し違う視点でこう語る。

「結果は半分予想していたので、それほど驚きもしませんでした。イギリスも『Brexit』で保護主義的な流れにあるし、クリントン候補の人気が伸び悩んでいたことから、トランプ氏が勝利することは考えられました。

フロリダ州の結果が出たあたりから、選挙関連の記事はトランプ氏勝利を前提に組み立てていました。まずは株式市場をウォッチした。投票が始まってから数時間は好調でしたが、フロリダ州の結果が発表された頃から動きが変わった。『ガーディアン』では、『トランプ氏フロリダ州獲得;株価大きく変動』『世界が闇に包まれた日』などの見出しが付いた記事が掲載されました。

イギリスの現政権にとっては『Brexit』の後押しになるため、好意的な結果と言えます。短期的には反移民政策など共通していることもあり、新たな英米関係ができるかもしれない。しかし長期的にはシリア、ロシア、中国、そしてEUなどとの外交政策、自由貿易などあらゆることで歯車がかみ合わなくなる可能性は高いでしょう」

そして最後に、韓国紙「朝鮮日報」の金秀恵(キム・スヘ)氏。やはりトランプ氏の存在は、隣のならず者の脅威と重ねずには見られないようだ。

「トランプ氏が大統領になる可能性は高くないと思っていました。共和党候補になった時も驚きましたが、支持率が上がるたびに日本では『これ以上は伸びないでしょう』と言われていて、私も同様に考えていました。そして、当選したことは非常に驚きました。

『朝鮮日報』は一面で『怒る白人、米国をひっくり返す』という大きな見出しとトランプ氏が満面の笑顔をした写真を掲載しました。

韓国はTPPに加盟していませんが、トランプ氏の貿易観や経済観は危険だと見ています。また韓国内の米軍基地の問題も大きく、北朝鮮に対してどういう対応を取るか、または取らないかが重要となってくる。直接的ではなく、米朝の関係性で韓国に大きく影響するでしょう。

今後、各国で首脳会談を開くと思われますが、他の大統領とは違い、トランプ氏の今後は予想がつかない。北朝鮮の金正恩総書記に似ている。このふたりが核兵器を保持する国のトップであるという危険性は無視できません」

●後編⇒『中国語で「床破」と訳されるトランプ次期大統領。フランスでは極右政党が選挙戦略を踏襲?』

(取材・文/松元千枝、週プレNEWS編集部) 【関連記事】
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