Amebaニュース

「本当に危険な薬物」から人々の命を守る? アメリカで巻き起こる大麻解禁ブームの真実

6月21日(火) 6:00

提供:
今年2月、元プロ野球選手の清原和博氏が覚せい剤取締法違反の罪で逮捕されたことをきっかけに、再び世間の大きな注目を集めることとなった「薬物」の問題。

一般に「ハードドラッグ」と呼ばれる覚醒剤やヘロイン、コカインなどがじわじわと日本社会を蝕(むしば)む一方で、従来の法規制の網を逃れた「脱法ハーブ」などの広がりも、ここ数年大きな社会問題となっている。

そんな中、年間4万7千人もが薬物の過剰摂取で命を落としている「麻薬大国」のアメリカで、なんと「大麻(マリフアナ)の合法化」が進んでいるという。

なぜ、アメリカは大麻解禁に動きだしたのか、大麻は本当に危険なのか? アメリカの麻薬問題に詳しいジャーナリストの矢部武氏が現地取材を基に、その背景に迫ったのが『大麻解禁の真実』だ。矢部氏に聞いた。

―アメリカで近年、大麻使用の合法化が進んでいると知り、驚きました。いつ頃から、この動きが始まったのでしょう?

矢部 カリフォルニア州で、医療用の大麻が合法化されたのが今から約20年前になります。画期的だったのは、2012年にコロラド州とワシントン州で嗜好(しこう)用の大麻が合法化されたことです。その後、オレゴン州など2州が嗜好用大麻を合法化していて、その数は今後さらに増えるものと思われます。

―その背景には何があるのでしょうか?

矢部 主に3つの理由があります。ひとつは90年代以降、「医療用大麻」の合法化と普及が進み、その幅広い医療効果が明らかになってきたこと。

ふたつ目は、その過程で大麻の持つ健康への害が、多くの人が考えているよりもはるかに小さいことが証明され、たばこやアルコールと同様に一定のルールを設ければ、そのリスクは十分にコントロールできるものだということがわかってきた。

そして3つ目が、大麻の所持や使用を禁止したり、犯罪者を取り締まったりするための社会的、経済的なコストが大きすぎるという点です。アメリカで薬物関連の逮捕者は年間150万から160万人に上り、そのうち半数近くが大麻で捕まっていますから、その社会的コストは莫大(ばくだい)です。









―そもそも、本当に大麻は安全なのでしょうか? 麻薬や覚醒剤など、他のドラッグと大麻では何が違うのですか?

矢部 アメリカでは「ハードドラッグ」や「処方薬」などの過剰摂取で年間約4万7千人が亡くなっていますが、大麻の過剰摂取が原因で亡くなった人は報告されていません。大麻には致死量がないといわれています。私が取材した薬物専門医も「大麻を吸って深刻な病気になったり、命を落としたりという話は聞いたことがない」と言っていました。

また、米国医学研究所(IMO)が行なった依存性に関する研究によれば、使用者の中で依存症になる人の割合が最も高いのはたばこで32%、次にヘロイン23%、コカイン17%、アルコール15%と続き、大麻は最も低い9%です。

それに、何回もふかし続けるたばこと違い、1、2回の吸引で十分な効果が得られる大麻は煙が気管や肺に与える影響もたばこよりも小さいので肺がんになるリスクも低いのです。

―ただ、大麻を吸っての運転とかは危なそうですよね?

矢部 もちろん、大麻を吸うと反応が緩慢になるので自動車の運転は危険ですし、酒やたばこと同じように未成年への健康リスクはありますから、合法化に際して一定の制限は必要でしょう。コロラド州では21歳未満の使用を禁止しています。

こうしたルールさえ守れれば、大麻はそれほど危険なものではありません。それをヘロインや覚醒剤、コカインと同様のハードドラッグと見なすのはおかしいということに多くの人が気づき始めているのです。

―それではなぜ、大麻の使用は長年にわたって禁止されてきたのでしょうか?

矢部 アメリカで大麻の使用を禁止する法律が制定されたのが1937年です。一説によれば、これは33年に廃止された「禁酒法」(消費のためのアルコールの製造、販売、輸送を全面的に禁止した法律)で仕事を失った連邦捜査官に、新たな「取り締まり」の対象を与えるために作られたともいわれています。

また、戦後の日本で大麻が全面的に禁止されたのも、このアメリカの法規制がそのまま日本に「輸入」されたからです。

ちなみに、アメリカの大麻禁止法はその後、69年にいったん廃止されますが、ゴリゴリの保守派だったニクソン大統領が70年に「薬物規制法(CSA)」を制定し、大麻を禁止しました。その際、大麻の健康へのリスクは低いという報告書を強引に握り潰(つぶ)したといわれています。

「薬物規制法」による薬物の危険度を示す分類では、大麻はヘロインと共に最もリスクが高いグループに分類され、その下のコカインや覚醒剤よりも危険だということになっている。こうした矛盾が明らかになってきたからこそ、今、アメリカで大麻解禁への動きが広がり始めているわけです。









―アメリカでの変化を受けて、将来、日本でも大麻が解禁される日が来るのでしょうか?

矢部 日本では大多数の人たちが大麻をヘロインや覚醒剤のようなハードドラッグと同じようなものだと考えていますし、そうした認識が変わるにはまだまだ長い時間が必要でしょう。しかし、医療用の大麻についてはできるだけ早期に認めるべきではないか、というのが私の考えですね。これまでの研究で、医療用大麻には非常に大きな臨床応用の可能性があることが明らかになりつつあります。

すでに大麻の成分を使用したてんかん治療薬がイギリスの製薬会社によって実用化されている他、多発性硬化症、糖尿病、アルツハイマー病などの治療への応用も期待されています。医療用大麻の合法化によって、こうした新薬の開発を積極的に進めることは、超高齢化社会を迎えている日本にとっても大きな意味があるはずです。

また、大麻に対する根拠のない偏見や誤解を取り除き、「本当に危険な薬物」と「そうでない薬物」の違いをより多くの人たちが認識することが大切です。

それが、覚醒剤やヘロインといったハードドラッグはもちろんのこと、脱法ドラッグや脱法ハーブなどの「本当に危険な薬物」から人々の命を守ることにもつながると思うのです。

(インタビュー・文/川喜田 研 撮影/岡倉禎志)

●矢部武(やべ・たけし)









1954年生まれ。ジャーナリスト。70年代半ばに渡米し、アームストロング大学大学院で修士号を取得。ロサンゼルス・タイムズ東京支局記者などを経てフリーに。アメリカの銃社会、人種差別、麻薬などを取材するほか、教育・社会問題にも精通。著書に『60歳からの生き方再設計』『ひとりで死んでも孤独じゃない 「自立死」先進国アメリカ』(共に新潮新書)、『携帯電磁波の人体影響』(集英社新書)など

■『大麻解禁の真実』









宝島社 1300円+税









日本ではタブー視される大麻合法化がアメリカで進む実情を著者は徹底取材。大麻のほか、日本でも問題になった危険ドラッグやアメリカの対麻薬戦争の現場、日本の薬物対策の遅れた現状など。









【関連記事】
清原容疑者の覚醒剤は北朝鮮からの横流し密売品だった?
清原騒動にホリエモン×ひろゆきが異議あり!「逮捕よりも賢い麻薬規制があるのでは?」
髪を切ったら大麻がもらえた? 神戸・トンデモ美容師の“レベルが違う”接客サロンが摘発!
旅人マリーシャの世界一周紀行:第78回「自由の国・アムステルダムで禁断のアレしちゃいました!」
疲労の原因はすべて脳にあった! 最新研究からわかった自律神経の矛盾とは…
週プレNEWS

コラム新着ニュース

編集部のイチオシ記事

おすすめの記事

コラムアクセスランキング

注目トピックス

アクセスランキング

写真ランキング

注目の芸能人ブログ