Amebaニュース

糖質制限ダイエットに成功して急逝した第一人者「桐山秀樹さん」の教訓

3月2日(水) 12:19

 ある作家の急逝が波紋を呼んでいる。ノンフィクション作家・桐山秀樹さんが、2月6日、心不全で世を去っていたのだ。「糖質制限ダイエット」の第一人者として知られただけに、62歳の「早すぎる死」について考察すれば、そこには様々な“教訓”が見えてくる。

 ***

 これまで50冊以上の著書を物してきた作家にしては、その死の伝わり方は“静かな”ものだった。全国紙に訃報が出たのは、死後10日経ってから。しばらくの間、「不慮の事態」は、関係者の間で秘められていたワケだ。

「顔色が悪いとか、気分が悪そうとか、一切ありませんでした。だから、ただただ驚いて、私の方が臥せってしまっていて……」

 そう絞り出すように語るのは、パートナーで文芸評論家の吉村祐美さんである。

「警察の方から連絡を受けたのは2月6日の午後7時頃でした。前日の5日、桐山は神戸のマンションから上京し、仕事を終えて、常宿にしているホテルにチェックインしましたが、そこでも、いつもとまったく同じ様子だったそうです」

 異変は翌6日に起こった。チェックアウト時刻は13時。しかし、それを過ぎ、更に2時間、3時間と時計の針が回っても、桐山さんの姿は見えなかった。

「ホテルもさすがにおかしいと思い、午後5時頃、鍵を開けて中に入ったそうです。そうしたら、パジャマ姿でベッドの上に倒れている桐山の姿があった。スーツもベッドの近くにあったそうなので、出かける準備中に倒れたのだと思います。連絡を受けて私も駆けつけ、翌日、署で遺体と対面しました。眠っているような表情で、苦しそうなところは一切ない。ふっと目を覚ますのではないかと錯覚してしまうほどでした」

 死亡推定時刻は9~10時。医師は死因を「心不全」とだけ説明したという。

■糖尿病で“スーパー制限”

 桐山さんは1954年生まれ。大学卒業後、雑誌記者を経てフリーの物書きになった。ホテルの世界に通じ、その業界では知らぬ人のいない存在であったが、一般にも広く名を知られるようになったのは、「糖質制限ダイエット」に出会い、その“成功体験”を発表し始めてからだ。

 生前の桐山さんは、本誌(「週刊新潮」)にもその“中身”を熱く語っていた。2011年の取材ではこう述べている。

「始めたのは昨年の5月です。その頃、僕は長年の不摂生が祟って、身長167・8センチで体重が92キロもあり、医者には糖尿病で、痩せなければ命に関わると言われた。そんな時に糖質制限のことを知りました」

 言うまでもなく、糖質とは、タンパク質、脂質と並ぶ三大栄養素の一つで、炭水化物から食物繊維を除いたものを指す。この「制限」とは、すなわち、食事の際に米やパン、蕎麦やうどんなどの主食の摂取量を減らすことを示すのだ。

「このダイエットには3つのやり方があり、三食すべて炭水化物を摂らないことを『スーパー制限』、朝夕食に抜くのは『スタンダード制限』、夕食だけを『プチ制限』と言う。僕は『スーパー制限』を行っていますが、お腹はすきません。肉や魚を食べる分には差支えがないのですから。お酒も日本酒やビール、白ワインはダメですが、焼酎やウイスキーはOK。これで僕は、1カ月で15キロ、3カ月目には20キロ近く痩せていました。満腹にしながらダイエットできるのだから、不思議ですよね」(同)

 糖尿病についても、3カ月後には“問題なし”と診断されるレベルにまで改善。しかし、その後も亡くなるまで6年近く、桐山さんは「スーパー制限」を続けた。その間、「糖質制限ダイエット」について20冊近くの本を著している。

 こうした桐山さんの活躍もあって、今では「糖質制限」は、最もメジャーなダイエット方法と言われるまでに。その「第一人者」が突然死したのであるから、その健康法に、何らかの“原因”を見る声が上がったのも頷けるのだ。

■悪玉コレステロールが……

「一般論として言えば、過剰な糖質制限が、心不全に結びつくことは十分に考えられます」

 と述べるのは、新潟大学の岡田正彦・名誉教授(予防医学)である。

「炭水化物を摂らないダイエットは、それ以外ならいくらでも食べても良い、というのが売り。しかし、炭水化物を食べない代わりに、その不足したカロリーを補うため、長期間に亘って肉を多めに摂取したらどうなるでしょうか。タンパク質と共に脂肪も大量に摂取することになりますが、動物性脂肪の中には、パルミチン酸と呼ばれる、飽和脂肪酸が多く含まれています。これが体内に入ると、悪玉コレステロールを増やす働きがあるのです」

 いささか難しい説明であるが、悪玉コレステロールが登場すれば、人体に芳しくない影響が生まれることは想像に難くないだろう。

 岡田名誉教授が続ける。

「悪玉コレステロールは、血液の中に蓄積し、血管の壁を厚くします。これが動脈硬化で、心筋梗塞の要因となる。さらに、コレステロールが血管の壁を守る『内皮細胞』を傷つけると、それを修復するために血栓が出来ることがある。この血栓も、心筋梗塞の要因になるのです」

 もちろん、「糖質制限」がゆるやかで、期間が短ければ、代わりに脂肪を摂取する総量も少なくて済む。血管に与えるリスクもそれほど高くならないはずだ。

 しかし、先に述べたように、桐山さんのケースは、「スーパー制限」。この場合、主食は抜きでも、葉物野菜などには若干の糖質が含まれていることなどから、一日の糖質摂取量は、60グラム程度はある。だが、それでもこれは一日に成人男性に必要とされている量の3~4分の1に過ぎず、不足は大きい。桐山さんはこれを6年近く続けていた。

■糖質制限ダイエットで脳梗塞

「心不全で亡くなったわけですから、血管に問題があったのは間違いない。その上、過剰な糖質制限を行っていたのですから、両者に関係のある可能性は十分に考えられます」

 そう後を受けるのは、心筋梗塞、脳梗塞などの予防に詳しい「真島消化器クリニック」の真島康雄院長である。

「私のクリニックにも、糖質制限ダイエットを行い、重篤な状態になった患者さんが来ることがあります。例えば、ある60代の男性は、徹底した糖質制限を3年2カ月行っていた最中、脳梗塞になった。幸い一命を取りとめ、リハビリを始めたのですが、その後も変わらず、糖質制限を行っていたのです。再発予防として、うちに来たのですが……」

 血管を調べてみると、明日にでも脳梗塞を再発してもおかしくないレベルの“厚さ”であったという。

「話を聞くと、炭水化物を摂取しない代わりに、トンカツなどの揚げ物をたくさん食べ、酒も毎日のように呑んでいたのです。これでは血管に『プラーク』、すなわち劣化した油がたまり、血管の内壁が厚くなっていってしまう。糖質制限ダイエットの落とし穴は、炭水化物を食べない代わりに、不足分を補うため、他は多めに摂取してよいと誤解してしまうところ。別の60代の男性患者も、“ご飯を食べない”ことを徹底していましたが、やはり肉類の摂取が多く、いつ脳梗塞を起こしてもおかしくない状態でした」(同)

 桐山さんがかつて糖尿病だったことは先に述べた。もともとリスクを抱えていたところに、更に血管を傷める可能性のある糖質制限を行ったのだから、悲劇との間に繫がりを感じてしまうのは、穿ち過ぎだろうか。

「特集 糖質制限ダイエットに成功して急逝した『桐山秀樹さん』の教訓」より

「週刊新潮」2016年2月25日号 掲載


【関連記事】
喫煙よりも「寿命」を縮める!? 「座り仕事」がもたらす悪夢とは
誰でも簡単 一日5分で美しいボディラインを作る「ひきしめ風呂メソッド」
「10年後破綻する人」はどんな人か 経済ジャーナリスト・荻原博子さんに聞く
【がん治療】「妻のおせっかい」「夫の冷たさ」ががん患者を悩ませる
明るくて感じが良い「あの人」が苦手 それ、「人間アレルギー」が原因です
デイリー新潮

国内新着ニュース

編集部のイチオシ記事

この記事もおすすめ

国内アクセスランキング

注目トピックス

アクセスランキング

写真ランキング

注目の芸能人ブログ