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潜入! プロフェッショナルの部屋 昭和の情景に感じるノスタルジー ジオラマ作家・山田卓司のアトリエで生まれるドラマ

8月31日(月) 5:00

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山田卓司TOP
あらゆる分野で活躍している人の仕事場をのぞこう!という連載企画「潜入! プロフェッショナルの部屋」。第9回は、ジオラマ作家の山田卓司さんのアトリエにお邪魔しました。
18歳から模型雑誌『月刊ホビージャパン』の誌上で模型誌ライターとして活躍してきた山田さん。往年の人気番組「TVチャンピオン」の企画で開催された「プロモデラー選手権」では5度の優勝を果たし、懐かしい昭和の情景を描いたノスタルジーもののジオラマを得意とすることで知られています。そんな山田さんのアトリエは、とある模型ミュージアムの一角にありました!

■もの作りの現場が伝えるメッセージ山田卓司作品が集まる浜松ジオラマファクトリーの内観 山田卓司作品が集まる浜松ジオラマファクトリーの内観。
静岡県浜松市にある「浜松ジオラマファクトリー」。ここにはノスタルジーものをはじめ、ミリタリーものやゴジラ、ウルトラマン、エヴァンゲリオンなどの人気キャラクターを題材にした山田卓司作のジオラマ70点以上が展示されています。
展示作品「昭和40年秋の夕食」。山田さんが得意とするノスタルジーもののジオラマ。 展示作品「昭和40年秋の夕食」。山田さんが得意とするノスタルジーもののジオラマ。
当時流行した「シェー」をする子ども。古き良き時代の夕食がここに! 当時流行した「シェー」をする子ども。古き良き時代の夕食がここに!
見ごたえたっぷりのミュージアムを奥へと進むと、出口の手前に棚で仕切られた一角があります。そこが山田さんのアトリエでした。
浜松ジオラマファクトリー内にある山田卓司さんのアトリエの見取り図。数字は撮影場所を指しています。 浜松ジオラマファクトリー内にある山田卓司さんのアトリエの見取り図。数字は撮影場所を指しています。
アパートのワンルームほどのスペースに道具や材料がところ狭しと置かれています。(撮影場所1) アパートのワンルームほどのスペースに道具や材料がところ狭しと置かれています。(撮影場所1)
山田さんは作品制作の真っ最中。作業机の上には、フィギュア制作に使うヘラなどの道具や樹脂粘土といった材料が並べられており、その手元には武士のフィギュアが横たわっていました。
山田さん「今作っているのは、三方原合戦という浜松で起きた徳川家康と武田信玄の戦の5つの場面を描いた『三方ヶ原合戦立体絵巻』の一部です。すでに完成させたのですが、より良い作品に仕上げるために武士のフィギュアを追加で制作しているんです」
武士のフィギュアのディテールをチェック。(撮影場所2) 武士のフィギュアのディテールをチェック。(撮影場所2)
ヘラを駆使してフィギュアの顔を成形中。(撮影場所3) ヘラを駆使してフィギュアの顔を成形中。(撮影場所3)
樹脂粘土で成形されたフィギュアは、そのままでは柔らかいので、熱して固める必要があります。
山田さんフィギュアを焼くために使うのが棚のオーブンですね。また、プラモデルなどを塗装した場合は、その横にある食器乾燥器で乾燥させます
写真左がオーブン。右が食器乾燥器。一般的に売られている家庭用です(撮影場所4) 写真左がオーブン。右が食器乾燥器。一般的に売られている家庭用です(撮影場所4)
乾燥させたフィギュアを土台と組み合わせていくことで、ジオラマは完成します。その制作期間は作品ひとつあたり1カ月ほど。一方で、「三方ヶ原合戦立体絵巻」の制作には、大きさと歴史的なディテールを追及するために、ひとつの場面におよそ2カ月をかけたそうです。
山田さん「想像上のものであればイメージで作りますが、大体はよりどころとなる資料を参考にすることが多いですね。歴史ものはもちろん、ロボットや怪獣などのキャラクターにも、それぞれ元になる世界があるので、調べてわかる範囲は盛り込んでいくんです」
甲冑の資料や昭和の写真集が棚代わりのダンボールの上に山積みに。(撮影場所5) 甲冑の資料や昭和の写真集が棚代わりのダンボールの上に山積みに。(撮影場所5)
こうして山田さんの作品の数々が、このアトリエで作られてきました。でも、どうしてアトリエを浜松ジオラマファクトリーに構えているのでしょう? 山田さんは「僕の作品が飾ってあるだけで良かったのかもしれませんが」と前置きしてから語ってくれました。
山田さん「どうせだったら制作の現場まで見せて、遊びにきたお子さんたちに興味を持ってもらえたらと思ってね。ものを作るのって面白いんですけど、つらいこともいっぱいあります。何気ない身の回りのものだって、きっと誰かが苦労したり悩んだりしながら作ったものでしょう? もの作りは楽しいだけじゃないとか、ものを大事しなきゃとか、いろんなメッセージが僕の仕事を通じて伝わるといいなと思ったんです」
そのため、アトリエには仕事の様子をいつでも誰でも見られるように、のぞき穴が設置されています。
写真奥の壁のスリットがのぞき穴。(撮影場所3) 写真奥の壁のスリットがのぞき穴。(撮影場所3)
のぞき穴は結構ぱっくりと開いていますね。視線が気になりそうなものですが……。
山田さん仕事をしているとね、まったく気にならないんですよ。誰がいても視界に入りません。だからどきどき、ふとのぞき穴のほうを向くと、じいっとのぞき込んでいる人がいることに気づいて、驚くことはありますね(笑)」
この日も、興味津々な様子でのぞき込む子どもたちの姿がありました。さて、彼らは山田さんの作業を見て何を感じたのでしょう?
■ジオラマはドラマがあるから面白い!展示作品「模型少年の日々」。山田さんの少年時代をモチーフにしたジオラマ。 展示作品「模型少年の日々」。山田さんの少年時代をモチーフにしたジオラマ。
古き良き昭和ノスタルジーを描いたジオラマを数多く手掛けてきた山田さん。そのきっかけは「TVチャンピオン」で昭和のジオラマを制作したことでした。
山田さん「戦車やロボットはよくジオラマの題材になりますが、マニアックなものですよね。テレビ番組で作るならもっと一般的なものがいいだろうと考えたときに、ふと昭和の時代を作ったらどうだろうと。ノスタルジーというのは、どんな人も持っているものだと思うんですよ。それに昔の建物は現代よりも模型的なディテールが多くて、かたちも面白い」
さらに昭和のジオラマを題材に選んだ理由のひとつに、リアルな作品を作りたいという思いがあるそうです。
山田さん「僕はノーマン・ロックウェル(市民生活を描いたアメリカの画家)や『アメリカン・グラフィティ』という映画に描かれたようなベトナム戦争前のアメリカの風景も好きなんですけど、もしそれをジオラマにしたら、『007は二度死ぬ』みたいになってしまうと思うんです」
『007は二度死ぬ』みたいになってしまう……とは、どういう意味でしょうか?
山田さん「あの映画の舞台は日本なのですが、誰が見ても日本ではない(笑)あれは変な日本です。僕がアメリカを題材にすると、日本人にはアメリカに見えても、アメリカ人には例えるなら背広を着たちょんまげの人物が登場する奇妙な作品に見えてしまうと思うんです」
日本人だからこそ、リアルな昭和を描くことができるということですね。あらためて山田さんのジオラマを眺めていると、昭和という時代のリアリティーが漂ってくるようです。
展示作品「終戦の思い出」。当時の人の様子からバイクなどの道具類までディテールが光るジオラマ。 展示作品「終戦の思い出」。当時の人の様子からバイクなどの道具類までディテールが光るジオラマ。
山田さん「だたし、細かくリアルに作ることは大事なのですが、それは目的ではなく手段です。例えば、映画では時代考証が重要とされますが、あくまで場面のリアリティーを損なわないためのもの。お客さんは別に時代考証を見ているのではなく、そこで繰り広げられるドラマを見ているんです
「単にかたちにするのではなく、その先にあるドラマを作り出すことができるのがジオラマの面白さ」であると、山田さんは続けます。
山田さん「コーラの精巧なミニチュアを作ったとしましょう。みんなは『へえ、よくできてるね!』と驚きますが、それでおしまいです。ジオラマにはコーラという記号があればいい。コーラをテーブルに、その近くに汗だらだらの子どもの人形でも置けば、遊び疲れた子どもが家に帰ってきてコーラを飲もうという場面が現れてくるじゃないですか。そういったドラマを喚起させる装置(=ジオラマ)を作ったほうが僕は面白いと思うんですよ」
子どもに何かを渡す外国人。「ギブミーチョコレート」とねだるシーンが浮かび上がってきませんか? 子どもに何かを渡す外国人。「ギブミーチョコレート」とねだるシーンが浮かび上がってきませんか?
古き良き時代のドラマを生き生きと描く山田卓司作品は、これから先も人々の心の内にあるノスタルジーを刺激し続けるのでしょう。その誕生の現場に、あなたも遊びに行ってみてはいかがですか?
山田卓司
1959年生まれ、静岡県浜松市出身。1978年専門学校在学中に『月刊ホビージャパン』で執筆活動を開始。卒業後は東京の制作会社で工業模型の制作に従事し、1988年にフリーのプロモデラーとして独立する。1994年から2000年にかけて「TVチャンピオン」(テレビ東京)の「プロモデラー選手権」で5度優勝し、近年は模型雑誌で作品を発表しながら、商品原型やイベント用ジオラマを制作する。作品展も多数開催。

取材協力
浜松ジオラマファクトリー
http://www.hamamatsu-diorama.com/
※記事中の情報は取材当時のものです。


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