音楽経験のない96歳のフレッド・スタボウ氏によって、亡き妻への悲痛な思いを込めて制作された曲『愛しのロレインよ(原題:Oh Sweet Lorraine)』が、9月4日付けの米ビルボードで、42位という驚愕の数字を記録した。これは、55年間のビルボード史上、最も歴史的な快挙である。それまでの、最高齢トップ100入りの記録は、アメリカ最高のヴォーカリストと称されるトニー・ベネットが、85歳(2011)にしてボブ・ディランの67歳という記録を大幅に塗り替え、樹立したものであった。フレッドは、この巨匠たちが作った記録をさらに10歳以上も更新してしまったのである。
ネット上では突如現れたスーパーおじいちゃんの話題でもちきりの模様だ。フレッドと同じ1917年生まれの有名人といえば、アメリカ第35代大統領、ジョン・F・ケネディや、SF作家のアーサー・C・クラークなどがいる。
「おお、ロレイン。もう一度あの楽しい日々をともに過ごせたらいいのに。愛しのロレイン、人生というものはたった一度きりなんだ」
『愛しのロレインよ』のタイトルにもあるロレインとは、フレッドと73年間をともにし、今年の4月に病で亡くなった、彼の妻である。この曲が、ここまでヒットしたのには曲の制作過程をおさめ、YouTubeにアップされたドキュメントクリップにあるといっても過言ではない。長年二人三脚で歩んできた妻への一途な思い、彼の実直なキャラクター、曲ができてゆく過程は、見るものに感動を与えて離さない。YouTubeにアップしたドキュメントクリップは瞬く間に世界に広まり、たったの2カ月で300万回の再生を超した。
「はじめてロレインに会ったのは、1938年、ドライブインでウェイトレスをしていた彼女を見かけた時だったよ。一目惚れだった。その後、2年して結婚し、3人の子どもと、4人の孫に恵まれたんだ。ロレインとは、ずっと一緒にやってきたんだよ」
ドキュメントクリップの中でフレッドはそう語っている。
『愛しのロレインよ』ができたのは、妻の死に打ちひしがれる中、ふと書き留めた短いフレーズがきっかけであった。「彼女にぴったりの詞が浮かんだ」と、書き留めたのだ。そして、ちょうどその頃、地元イリノイ州のスタジオが、新しい才能を発掘しようと、新聞にコンテスト開催の広告を出していた。
フレッドどの出会いをコンテストを主催のグリーン・スタジオ代表のジェイコブ・コルガン氏はこのように語っている。
「オンラインでの受付だったから、参加者は、曲のデータやビデオをアップするようになっていたのだけど、フレッドは手書きの歌を送って来たんだ。手紙には短い歌詞と、妻への想いがしたためられていたんだ。しかも、手紙の最後にこう書いてあったんだよ。『追伸。私は歌いません。みなさんを怖がらせたくありませんからね、はっはっは』ってね。これにはまいったよ。でも、曲にこめられた背景を知って行くうちに、熱いものがこみあげてきたんだ。これはどうしても曲にしなくちゃってね」
フレッドは、コンテストでは勝てなかったけど、多くの人々のハートを掴んだ。グリーン・ショー・スタジオはフレッドの為に無償で曲を作ることを提案した。もちろんその時は、曲がヒットするとは、まったく期待していなかったわけだが。
歌が苦手だというフレッドのために、一流のミュージシャンを使って演奏し、コルガン氏が歌をつけ、デジタルサウンドのアレンジをした。完成した曲を初めて聞いた時、フレッドは感激のあまり泣き崩れてしまったという。2カ月経った今でも、曲は順調に売れ続けている。皆がフレッドとロレインの愛に感動している証であろう。
おかげでフレドは、いつまでも曲の中でロレインに語りかけられるのだ。
Oh Sweet Lorraine I wish we could do The good times All over again
愛しのロレイン、もう一度あの楽しい日々をともに過ごせたらいいのに……
動画は→http://www.youtube.com/watch?v=KDi4hBWsvkY&feature=player_embedded
(アナザー茂)
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