Amebaニュース

元探偵が明かす、個人調査の実態と個人情報漏れの予防法

9月24日(月) 20:15

「携帯照会」の実態明らかに 番号もとに住所割り出す
(朝日新聞デジタル 2012年8月3日(金)11時48分配信)

「ウレぴあ総研」でこの記事の完全版を見る【動画・画像付き】

今年の8月。こんな見出しのニュースが話題になりました。記事の内容は、ソフトバンクとNTTドコモ関連会社の従業員が顧客データを探偵社に漏らし、あいついで不正競争防止法違反(営業秘密侵害)の疑いで逮捕されたというものです。

皆さんの中に読んだ人がいても「ふーん。怖いな」という感想がせいぜいだったのではないでしょうか。事実、わたしの知り合いにこのニュースを教えてもどこか他人事のような反応ばかりでした。いまどきは実名登録必須のSNSがもてはやされる時代です。個人情報がちょっとバレたから何なの?‥‥そうですね。普通の人はそういう認識ですよね。

じゃあこれは知ってますか?ということで、元探偵のわたしが「個人情報はどこまでバレるのか」を少しだけ詳しく語らせてもらいましょう。

<※すべての探偵社がこの記事と同じ方法で調査していることを断定するものではありません。あくまで一個人の限られた職業経験に基づく記述です>

■“探偵は尾行と張り込み”という間違ったイメージ

ドラマや小説の影響でしょうか。探偵といえば尾行と張り込みばかりやってる先入観がいまだに強いようです。でも本職の人間からしたら「何十年前のハナシだよwww」って感じです。もちろん尾行や張り込みは今でもやります。けれどそれら(行動調査と呼んだりします)は調査が大詰めになった最終段階でやるものです。いつもやっていたら人員と時間がいくらあっても足りません。第一、調査費用がかかりすぎて依頼者が先に音を上げてしまいます。

大体、尾行や張り込みなんて、ぶっちゃけド素人でも一ヶ月ほど特訓したら十分実戦レベルになれます。決してプロだけの特別なスキルじゃないんですよ。

プロの探偵が素人と決定的に違うのは行動調査じゃなくて‥‥「データ調査」なんです。データ調査は浮気調査のように写真の証拠提出がいらない案件、人探しや個人信用調査(借金の調査)で特に真価を発揮するプロだけの手法です。現代の探偵はこれを駆使して、事務所から一歩も出ずに依頼を解決してしまえるのです。

■パズルのような組み合わせで個人データを暴く

データ調査には沢山の種類があります。冒頭で引用したニュース記事は 携帯番号→契約者の氏名・住所という調査に使うタイプでしたね。他にはこんな種類があります。

●自宅電話番号から→契約者の氏名・住所
●氏名、生年月日から タイプ1→サラ金とクレジットカードの使用歴、事故歴(返済遅延や自己破産)
●氏名、生年月日から タイプ2→職歴(社会保険に加入している職歴のみ)
●氏名、住所から→生年月日、世帯主名、本籍地(転居数年以内なら引っ越し先まで出ます)
●氏名、本籍地から→戸籍記載事項(住民票の移動履歴も全部まとめて出せます)

とても多すぎて書ききれません。まだまだ他には銀行口座の預金残高を出したり、名字だけから本人の住所候補地を絞り込んだり沢山の情報ルートがあるんです。

探偵は依頼者からコレコレを調べたいんですと言われたら、頭の中でパズルを組み立てるように調査方法を考えていきます。例えば「旦那の携帯に浮気相手らしい番号が登録されていた。この人の素性を調べて下さい」みたいな依頼ですね。これ非常に多いです。

この時はオーソドックスに携帯番号→契約者氏名・住所 というルートを使えば一発で解決します。そこから得られた氏名・住所をもとに本人を尾行し、決定的な浮気の証拠写真やビデオを撮るまでが大体1つのミッションですね。証拠を取ってから後は法務のプロ、弁護士さんに引き継ぎますので。

気の利いた探偵ですと、尾行前に追加でデータ調査を提案したりもします。住所と氏名以外に、依頼者にとって得になる情報‥‥皆さん何か分かりますか? ちょっと考えてみて下さい。

正解の一例は「浮気相手の女性が未婚か既婚か?」です。これは依頼者も心情的に絶対欲しい情報なので高い確率で食いつきます。依頼追加で探偵が儲かります。じゃあ既婚かどうかはどう調べるのか‥‥これも上に書いた●マークの手法を組み合わせたパズルですね。要は戸籍情報までたどれば、その相手の婚姻歴(過去に離婚したかどうかまで!)を詳しく知ることができるわけですよ。

携帯番号から氏名と住所は出ていますから、その2つから住民票データを取り寄せます。これで本籍地がわかりますので、続いて本籍地と氏名から戸籍データを取り寄せればいいわけです。依頼者は「携帯番号」「住民票」「戸籍」と3回分の調査費用を負担しなければいけませんが、うまくいけば浮気相手の家族構成や弱みまでがっちり握れるのです。

もっと必要だったら借金歴や預金残高まで暴いて、どのくらい慰謝料がブン取れそうか把握しておいてもいいですね。メールの内容から相手も会社員とわかっている場合、職歴調査で勤務先を知っておくのも有効。退社したところをすぐ尾行スタートしたい時に役立ちます。このへんは依頼者の予算とやる気(浮気相手への怒り)次第です。ここまで全部データ調査ですから、尾行や張り込みと違って相手に悟られることが一切ありません。浮気相手の女は自分の個人情報が筒抜けなのも知らずに、旦那と禁断の逢瀬をかさね続けるわけです。奥さん側の弁護士から「内容証明郵便」というキツ~い一発が届けられる日まで……

■実在する“情報屋”とは?

冒頭に挙げた朝日新聞さんの記事。よく取材されてるなと思いました。でもわたし、ちょっと気になったんです。まるで携帯会社の社員が顧客データを直接探偵社に流しているような解説イラストが。「間に入る情報屋さんが抜けてるなぁ‥‥」って。もちろん探偵が情報提供者から直接データを得ているケースもありますが、外部の情報屋を利用している探偵社が多いのも事実です。

ハードボイルド小説の世界だけではありません。現実にも情報屋は存在しています。情報提供者と探偵社の間に入って様々なデータを右から左へ流す「個人情報の問屋」みたいな人達がいるんですよ。彼らが何者なのかは探偵もあまり知りません。情報屋ごとに社会保険データに強い、住民票データに強いという得意ジャンルがありますから、組み合わせて調査の役に立てています。

この情報屋って、本当に謎なんですよ。探偵を開業してメールアドレスやFAX番号を公開しますよね? そうするといつの間にか「個人情報売りますよー」って向こうからコンタクトが来ます。じゃあすぐ調査に使うかといえば、そうでもありません。「この情報屋は本当に使い物になるか」の見極めが先決です。ここから探偵社と情報屋の知恵くらべがはじまるのです。



探偵は会社用の携帯でも何でもいいですけど、あらかじめ契約者のわかっている携帯電話を用意します。それを黙ったまま情報屋に「これの契約者を調べて下さい」と依頼します。もちろん正規の情報料を支払います。

きちんとした情報屋なら、企業の内通者等を使って正確なデータを返してきます。いいかげんでケチな情報屋はコストがかかるデータ調査をせず、その番号に直接電話して本人から聞き出そうとします。これを電調(でんちょう)と言って、確実性が落ちるし相手に不要な警戒心を抱かせるので、探偵にはあまり好かれていない調査法です。安いんですけどねw。「あなたの契約番号から先月分の料金を多く引き落としすぎました。返金したいので念のため契約者様の氏名と住所をお教え下さい」‥‥こんな感じで聞き出すわけですね。ちゃんとデータ調査を依頼したのに、こんな電調をやるような情報屋はダメダメです。もう二度と頼みません。こうした水面下での知恵くらべが終わって、探偵社は初めてその情報屋を信頼するのです。

ところで探偵がわざわざ情報屋を中継して個人データを得るのはどうしてでしょうか? 携帯会社の不良社員を直接買収した方がコストは安く付きますよね。これにもちゃんと理由があります。1つの理由はご想像のとおり、いちいち不良社員を探し当てて交渉する手間が惜しいからです。時間と費用のトレードオフになるわけです。

もう1つの理由の方が重要です。もし何か個人データ絡みで面倒なトラブルがあって捜査機関に事情を聴かれた時でも「いや。うちは情報屋を名乗る業者からデータを買ってただけですから。どうやって調べてたかなんて知りませんよ」とシラを切るため。要するにリスク対策ですね。不良社員を直接買収するのと、メールやFAX経由で情報屋からデータを買っているだけでは、探偵社の潜在的に抱えるリスクは雲泥の差になりますから。

わたし達は子供のころから悪徳商法や誘拐犯の手口を色々教えられます。「知っていることが身を守ることになるのよ!」と大人は言います。でも裏の社会では「あえて知らないこと」が身を守ることになったりするんです。こんなふうに探偵は情報屋をうまく利用しながら、尾行や張り込み等の行動調査も組み合わせて、日々の難解なミッションに挑んでいるのですね。

■無防備な生活には危険がいっぱい

ほんとに一部だけですけど、ちょっとした電話番号等からありとあらゆる個人データを他人に握られてしまう舞台裏を書いてきました。すぐには信じられないかも知れませんが、これがわたしのいた世界の日常です。

カンの良い方はおわかりでしょうが生年月日って皆さん気軽にSNSで書いてますよね? あれ凄く危ないんですよ。「パズルのような組み合わせで個人データを暴く」 [ http://ure.pia.co.jp/articles/-/9303?page=2 ] で解説したように、個人データ調査で生年月日は重要なキーになります。名前はその気になれば変えられますけど、生年月日は変えられません。あなたに一生つきまとう、個人を識別するキーです。その怖さをどうか忘れないで下さい。プロフィールページに直接書かなくても、日記で「今日は21回目の誕生日!」なんて書いてしまったら生年月日を暴露したのも同じです。誰がどこであなたの個人データを狙っているか分かりませんよ。

よく探偵をやっていた頃こういう話をすると「えー私の情報なんで誰も欲しがらないよー」って笑いながら言われました。でもですね、わたしは探偵時代に沢山の依頼を処理してきました。そのなかには、芸能人でも何でもない四十代の地味なおばさんに惚れ込んで、詳しい個人データを知るために二百万円以上つぎこんだ猛者(もさ)を知っています。こういうのは理屈じゃないんです。それに、既婚者と楽しく話してるだけで浮気相手と勘違いされたり、人違いの逆恨みで誰かにつきまとわれる可能性だってあります。

「あなたの個人情報の価値を決めるのはあなた自身じゃない。調べる側の人間である」
とくに自衛手段の乏しい若い女性等は、この言葉を心に刻んで下さい。

■個人データ漏れへの対処法

最後に。これだけ簡単に個人情報がバレるんだったら防御法が無いんじゃないの?という質問があると思います。
答えは「YES。完璧な防御法なんてありません」

どんなに企業がコンプライアンスを強化しても、管理システムを使うのは人間です。どこにだってお小遣いが欲しい不良社員はいますし、そんな彼らを抱き込もうとする情報屋・探偵はいくらでもいます。社員逮捕のニュースを見る限りソフトバンクとドコモの契約者情報は卸値、末端価格とも一時的に跳ね上がったと思いますけど、どうせまた新しいルートが開拓されて情報売買が再開されるでしょう。いまの時代、個人情報はどうやっても漏れ放題なんですよ。

だからわたし達がやれる最大の防御法は漏れてから慌てるのではなくて「漏れる量を減らす」こと、つまり予防に尽きます。

●データ調査の手かがりを漏らさない
・不特定多数が見るところに年齢、生年月日、住所等がわかる情報を書かない
・場合によってはダミー情報(間違った生年月日)を混ぜておくのも有効
・ブログの日記に載せる写真は、自家用車のナンバーや表札が写り込んでいないか入念にチェック
・Twitterで帰宅時刻、行きつけの店等の話題をつぶやかない(どうしても言いたい場合はリスク覚悟で)

●不審な電話やメールに警戒する
・電話料金を引き落としすぎた、宅配便の伝票が破れてしまった、同窓会名簿を作成する等、不審なことを言う相手に個人情報を話さない
・このような連絡はあなた自身だけでなく実家にされるケースも多いので、家族にも情報を漏らさないよう徹底的に言い含めておく

どうせプロにかかれば情報が漏れるんだから、そんな対策やっても無意味では?と思う人もいるでしょう。でも、そういう人は「調査コスト」の問題を忘れていませんか。

探偵も慈善事業でやっているわけじゃありませんから、あなたの個人情報を欲しがる依頼者は多額の報酬を払わなければいけません。携帯番号調査、職歴データ調査‥‥内容にもよりますが一件あたり10万円を超えるのがザラです。もし依頼者があなたの携帯番号しか知らなかったら、必要な情報にたどり着くまで余計な出費を強いられることになります。例えば携帯番号→住民票→戸籍データ と3回調べるだけで軽く30万円。しかも調査の数が増えれば増えるほど、途中のどこかで「データがうまく出てこなくて調査失敗」になる可能性が上がっていきます。

だから余計な情報を漏らさない=相手に無駄な手順と出費を強いる‥‥ことは、わたし達一般人がプロ探偵のデータ調査から個人情報を守れる、数少ない有効な手段にもなるのです。

その上で、どうしても日常生活や仕事の中で漏れてしまう情報に関しては、リスクを理解して上手に付き合っていかなければなりません。無人島暮らしでもしない限り、どうやっても他人との接点は出来てしまうものですから。

「個人情報は必ずバレるものである。
その前提で、他人に公開するプライバシー量を適切にコントロールすること」


最低限これだけは知っておいて欲しいと思います。


投票受付中

関連リサーチ実施中!
もし身近に探偵がいたら聞いてみたい話は?  [ http://ure.pia.co.jp/articles/-/9400 ]


【関連記事】
もし身近に探偵がいたら聞いてみたい話は?[リサーチ]
ウレぴあ総研

エンタメ新着ニュース

編集部のイチオシ記事

この記事もおすすめ

エンタメアクセスランキング

注目トピックス

アクセスランキング

写真ランキング

注目の芸能人ブログ