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消えてしまった13代目前田敦子?〈「AKB0048」河森正治総監督に聞く1〉

7月12日(木) 11:00

「超時空要塞マクロス」のリン・ミンメイ。「マクロスF」のランカ・リー&シェリル・ノーム。アニメ史に残るアイドルたちを生み出してきた河森正治が、国民的アイドルのAKB48を題材に、まったく新たなアイドルの姿を描く「AKB0048」。芸能が禁止された近未来の世界で、伝説のアイドルAKB48の名前と魂を受け継いだAKB0048が、弾圧勢力と戦いながら、様々な星のファンへ歌を届けに行くという、斬新な設定で話題の作品です。最終回(第13話)まで残り2話と、クライマックス真っ直中の今、河森総監督にインタビュー。前後編の前編は、「AKB0048」の企画立ち上げ時のエピソードから語って頂きました。
あ、7月から放送がスタートした地域の人はネタバレもあるので注意。11話までを見てから、また読みに来て下さい!

ーー元々、僕はAKB48に関してはあまり興味も知識も無くて。河森監督の新作ということで、「AKB0048」を見始めたんです。
河森 本当に? ありがたいですね。そういう人の感想を、あまり聞けてないので(笑)。
ーー逆に「AKB0048」を見始めてからAKB48にも興味を持って。ドキュメンタリーを見たり、ネットで調べたりしました(笑)。
河森 すごい理想的なパターンだなあ(笑)。逆に、AKB48ファンの人がアニメに興味を持ってくれたりとか、そういう相互乗り入れが起きたら嬉しいと思っていたんですよ。
ーーメカやバトルといった、河森監督テイストが織り込まれていて、AKB48を知らないアニメファンの僕でも、すごく物語に入りやすかったです。ただ、AKB48を題材にしたアニメを作る場合、他にもいろいろな選択肢はあったと思うのですが。どういった経緯で、現在のような作品になったのでしょうか?
河森 最初、キングレコードの大月(俊倫)プロデューサーから、AKB48をモチーフにしたアニメを作れないかというお話が来まして。それで、いろいろ考えたんですけど、なにしろ現実に活動中のグループじゃないですか。しかも、アイドルでありながら、バックステージの様子まで、ファンに見せているグループ。
ーー僕も、ドキュメンタリーを見て、そこに驚きました。
河森 2、30年前のアイドルの場合はバックステージが謎に包まれてたから、そこをアニメで描くという作り方もできたんですけど。AKB48の場合、裏を見たければ、ドキュメンタリーを見れば良い。だから、視点を変えて、AKB48というコンセプトがもってる面白さはなんだろうということから考えていきました。当時は、僕もそんなに詳しい方じゃなくて、選抜メンバーの2、3人くらいは知ってるみたいな状態で。
ーー「AKB0048」が始まるまでは、僕も同じくらいの知識でした。
河森 でも、調べていくと、すごく面白くて。ライバル関係でありながら、チームワークを大事にしてたり。バックステージがハードだったり。しかも、今の日本で、あの年代の女の子が突っ込まれてる場所とは思えないくらいのハードさ(笑)。
ーーそこまで、ハードなのですか?
河森 単に物理的にハードということなら、アスリートなどもそうなんですけど。精神的にあそこまで追い込まれてる集団って見たことない(笑)。そのハードさと、可愛らしいアイドルというイメージのギャップが、あまりにも大きかったんですね。そのギャップの大きさをアニメでも表現したいと思ったのですが、そのまま描くだけでは、AKB48の場合、縮小再生産にしかならないんですよ。なぜなら、秋葉原の劇場に行けば、ほとんど毎日でも実際の活動を目の前で見れてしまうから。なので、アニメらしくデフォルメしようと考えたんです。そのための舞台として、芸能が禁止されている世界という設定は、わりと早く思いつきました。裏は戦場みたいという感覚を描くために、本当に戦火のある時代にしたかったんですよ。その設定で描けば、やっと(実際のAKB48と)同じくらいのハードさになるかなと(笑)。
ーー命がかかってるか、かかってないかの違いくらいですか(笑)。
河森 そうそう。物理的に命がかかってるのか、精神的に命がけなのか、みたいな(笑)。ただ、AKB48と軍隊で、根本的に違うことがあって。軍隊は上からの命令で動くじゃないですか。でも、AKB48の場合は、軍隊並にハードなんだけど、自分で考えて動け、なんですね。お題は出るけど、そこにどうアプローチして、どうクリアーするかは、ほとんど本人たちに任されてる。そこはすごく共感できました。
ーーでは、舞台を未来にして、AKB48のメンバーの名前を"襲名する"という制度にしたのは、なぜですか?
河森 まず未来にすることで、ライブシーンの描き方の自由度が上がるんですよね。16人のメンバーを、(秋葉原にある)250人収容の劇場の中で描くと、どこにも逃げ場がないわけですよ。どの方向にカメラを向けても、かならず(多くの)人が映っちゃう。だから作画の労力がすごくかかるんだけど、その割に、派手にも見せられないという。
ーー未来の方が、制約が少なくなるんですね。
河森 はい。未来に舞台を移す時、AKB48のメンバー本人がタイムスリップするとか、コールドスリープされていて、起きたら別の時代といった手もありました。でも、実名で本人が出てると、いろいろと気を使うじゃないですか。見ている人からも、「あっちゃんは、そんな事しない」とか言われるだろうし。それは、嫌だなと思っていろいろと考えていて。ちょうどその時期、「劇場版 マクロスF 恋離飛翼〜サヨナラノツバサ〜」を制作中で。主人公の早乙女アルトが、元歌舞伎役者という設定だったんですね。それで、「あ、襲名だ」と思いついて。キャラクターに、AKB48のメンバーの名前を襲名させれば、本人が持ってるポジションの面白さも描ける。例えば、高橋みなみさんだったら、キャプテンポジションの面白さ。大島優子さんだったら、元気で活発でやんちゃな面白さ。そういうことがキャラクターの属性として使えるし、本人じゃないって言い訳もできる(笑)。
ーーなるほど。
河森 それで、13代目前田敦子に突然指名された女の子がヒロインの話を考えて、企画を提出したら、ゴーサインが出たんです。
ーー9人の研究生たちが主人公になっている現在の作品とは、かなり違いますね。
河森 はい。企画が通ってから、初めて劇場へ行ったり、握手会に行ったりといろいろ直接取材をしたんですけど。劇場の公演を見ていて、メンバーが忙しくて来れない時にアンダー(代役)で入った研究生の子の動きが、すごく良かったんですよ。研究生の子でも、こんなにすごいんだと驚きました。そんな事があったので、すでに襲名しているメンバーを中心に描くよりも、研究生で入った子たちが上を目指す、そのプロセスを描く方が面白いし、“成長を見せる”というAKB48のコンセプトにも合うと思ったんです。最初は、研究生3人くらいに競わせるつもりだったのですが、最終的には9人になって。自分たちの首を絞めてしまいました(笑)。
ーーこの襲名システム、最初はキャラ設定として面白いなと感心していたのですが。物語が進んで、たかみな(5代目高橋みなみ)と、75期研究生の東雲彼方の関係が描かれる中、この作品のドラマ部分の核を成す設定なのだと分かってきました。
河森 そう、核になるんですよね。襲名制という現実のAKB48にはないシステムを持ち込んで、そこをどう描けるかが勝負という部分もありました。そのあたりについて、脚本の岡田(麿里)さんや監督の平池(芳正)さんと相談していた時期、たまたまHKT48 の旗揚げ公演初日と、広島の握手会を取材に行ったんですね。そこで、運営スタッフの人から聞いたエピソードがすごく面白くて。ある出演メンバーが体調不良でステージに出られなくなって。急遽アンダーに指名された子が、そのメンバーのダンスや歌を急いで確認し、衣装を着て、開演を待ってたんです。そうしたら、開演直前に、体調を崩していたメンバーが戻ってきて、「衣装を脱いで」と。
ーー9話(Stage9「キモチリレーション」)で描かれていた、たかみなと彼方のエピソード、そのものですね!
河森 メンバーは高橋みなみさんでは無いんですけど、あれは実話だったんですよ。そのエピソードが、僕たちの描こうとしていた襲名メンバーとアンダーの関係に対して、すごいヒントになって。握手会のスタッフルームの端っこで椅子を借りて、その場でものすごい勢いで岡田さんと構成会議をしました(笑)。その話を聞いたことで、7話以降が激変したんですよね。元から襲名メンバー対アンダーの話は考えていましたが、そこのテンションが一段階レベルアップしたという感じです。その時に聞いて、もう一つ面白かった話があって。AKB48の衣装って、基本的に1つの曲のそれぞれのポジションに対して、衣装は1着しか作らないらしいんですね。最初にその曲をやるメンバー用に作られた衣装を、みんなが着回すんです。
ーー予算が少ない体育会系の部活みたいですね(笑)。
河森 そうそう。だから、背の高いメンバーのアンダーに小さな子が入ると、ブカブカだったりするんです。その衣装には名前が書かれてるんですが、研究生から上がって行って、初めて自分の名前が書かれた衣装をもらえることは、彼女たちにとってすごく大きな事で。まだ自分の服をもらえずアンダーで出る時は、人の名前がついた服を着て、ステージに出てるんです。これって、ほとんど襲名じゃないかと思って。現実のAKB48の中でも、あたかも襲名のようなことが行われていたと分かって、心理的バックボーンを得られましたね。
ーーすごい偶然ですね。
河森 いろいろな偶然が重なっていくのも、たまらなく面白いんですよね。偶然といえば、前田敦子さんの件もそうです。前田敦子という存在は強すぎて、彼女と大島優子さんのライバル関係を、そのままアニメに持ち込むと、研究生にスポットが当たりづらかったんですね。しかも、前田敦子さんは、キャラクターとして描くのがすごく難しい。何をしでかすか、何を言い出すか分からない。それがたまらなく良いと思うんですけど。その何を言い出すか分からない部分って、本人にすごく依存してるので。例えば、大島優子さんであれば、わりと典型的なキャラクター像として描けるんですけど。だから、13代目前田敦子は消えてしまって不在という設定にしたんです。そうしたら、まさかね……(笑)。
ーー前田敦子さんが、突然、卒業宣言してしまったと。
河森 しかも、アニメのオンエア直前。「知ってたんですか?」って言われたけど、知るわけがない(笑)。
ーーまさに、何を言い出すか分からない魅力が、発揮されたわけですね(笑)。
河森 発揮されましたよね。その時、僕らもたまたま、(ライブ)会場のさいたまスーパーアリーナにいたので、愕然としました(笑)。でも、しばらく愕然とした後、本当に襲名制にしていて良かったな、と。そういう、もしもの時に備えての襲名制でもあったのは、事実なんですけど。まさか、前田さんとは思わなかった。そこがやっぱりAKB48面白いところ。何が起きるか分からないですよね。
(丸本大輔)

(後編へ続く)
今作の主人公は、本宮凪沙ら9人の研究生たち。「小説や漫画と違って、アニメの場合、その画面の中にいる子は基本的に省略できない。そこにいたら映るし、映るなら描かなくてはいけないんですね。しかも、ちょっと映る場合でも、ポーズがその子らしくないだけで違和感を感じる。研究生が9人もいるのは、思ったより大変です(笑)」(河森総監督)
AKB48メンバーの名前を襲名するために重要なのが、魂の性質。実力は充分にある75期研究生の東雲彼方が、2年経っても襲名できないのは、魂の性質が“高橋みなみ”に最も近いため。彼方の憧れの存在で、現在の“高橋みなみ”であるたかみな(5代目高橋みなみ)は、偶然その事実を知ってしまい、彼方に

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