毎日歯を磨いているのに、いつの間にやら黄ばんで汚れが目立ち、気付けば通常の歯磨きでは汚れが落ちないほどになっています。自分できれいにする方法はあるのでしょうか。
歯学博士で口腔(こうくう)衛生・口腔外科がご専門の江上歯科院長・江上一郎先生にお話を伺いました。
■歯を掃除しているのは唾液(だえき)
――歯の汚れの原因となるものを教えてください。
江上先生 コーヒー、紅茶、お茶、赤ワインなどのドリンク、鉄分が多い食べ物、それに、タバコのヤニなどです。茶渋(タンニン)、ポリフェノール、カテキンなどの色素が歯の表面に沈着するのが主な原因です。
――歯磨きでは落ちないのでしょうか。
江上先生 ある程度の汚れは歯磨きで落ちています。ただし、歯の汚れを防いでいるのは、歯磨きよりも、唾液(だえき)の働きによるところが大きいのです。食べ物が口に入ってくると、唾液(だえき)が消化を促すのはもちろんのこと、唾液(だえき)が歯や口の中全体を洗浄します。
歯の表面は、「エナメル質」というつるつるの表層で覆われています。唾液(だえき)がこのつるつる面を掃除しているのです。
ですが、食生活や歯の表面の傷が原因で、ぬぐい切れなくなった汚れは蓄積されていきます。
――「歯を白くする」という市販の歯磨き粉で汚れは落ちるのでしょうか。
江上先生 研磨剤が多く入っている歯磨き粉の場合、一時的に歯の汚れを落とすことはできます。陶器の汚れをイメージしてください。茶渋が付着した白い陶器は研磨剤を使えばその汚れを落とすことができますが、ごしごしと磨くうちにだんだんと表面に傷が増えて、汚れがなかなか落ちにくくなります。
歯の汚れもそれと同じです。傷がつくと汚れの上に新たな汚れが付着し、取れにくくなるのです。
――自分で歯の汚れをケアする方法はあるのでしょうか。
江上先生 コーヒーや紅茶、お茶、タバコなどを口にした場合は、軽く歯磨きをするか、水で口をゆすぎます。外食時には、これらを飲んだ後には、水で軽く口をゆすぐようにして飲むとよいでしょう。
ただしそれは、「歯が汚れたら掃除をする」という対症療法です。本来、「歯が汚れにくい体質」にすることが大事なんです。
そのためには、歯磨きばかりに気をとられるよりも、「唾液(だえき)の力を身に付ける」ということを意識してください。
口腔(こうくう)内が乾きやすい「ドライマウス」という症状がありますが、これになると、唾液(だえき)の分泌が少ないがために歯の掃除ができなくなります。また、口臭の原因にもなります。
ドライマウスは、睡眠不足、過度の緊張などが原因で起こりますから、ストレスをためない生活を送るよう心がけましょう。
また、日ごろから、歯ぐきを軽くマッサージするということを習慣にすると、唾液(だえき)の分泌を促すことにつながります。
――歯医者さんで、簡単に汚れをとる方法があると聞きましたが。
江上先生 専用の機械を持っている歯科医院では可能です。超微粒子のクリーニング剤と水をジェット噴流のように歯に吹き付けて、手早く汚れを取り去ります。エナメル質を傷つけることもありません。
事前に、その機械を導入しているかどうかを歯科医院に問い合わせてください。
また、費用は、治療の一環の場合は一部保険適用されることもありますが、基本は保険適用外で、3,000円~1万円となります。合わせて事前に問い合わせてみましょう。
――ありがとうございました。
江上歯科さんで、機械での歯面清掃を見学、体験しました。自分では磨けない歯の裏側、歯間、歯の根元のしつこい汚れが一瞬で確実に取れていく様子が見てとれ、歯のケアにとても良さそうと実感、かつ気分も爽快(そうかい)でした。これなら、美容院に行く感覚で定期的に通えばいいかも、と思った次第です。
また、日ごろから、なるべく汚れが付着しない歯をキープする、汚れがついてもさっと流れるよう、唾液(だえき)の力を促すようにすることが大事なようです。
監修:江上一郎氏。歯学博士。専門は口腔(こうくう)衛生。歯科・口腔外科の江上歯科院長。
江上歯科 大阪市北区中津3-6-6 阪急中津駅から徒歩1分、御堂筋線中津駅から徒歩4分 TEL:06-6371-8902 http://www.egami.ne.jp/
(海野愛子/ユンブル)
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