意外と若いんですね。2000年生まれの「業務スーパー」にねほりはほり!

定番ねほりはほり!

世の中にたくさん存在する定番商品やブランド。多くの人々から支持されているのには理由があるのはなんとなくわかるけど、改めてどんな魅力があるの? まだ気づいていない魅力があるんじゃないの? なんでも知りたがりなAmeba編集部員が、好奇心全開で企業の担当者にねほりはほり聞いていく連載企画。

記念すべき第1回は、キロ単位の大容量食材に「安っ!」を連発するほど激安で、Amebaユーザーのド定番「業務スーパー」通称「業スー」にフォーカス。

ブロガーもたくさん話題にしているし…

Amebaとは同じ「緑」が目印! ということで勝手に親しみを感じたAmeba編集部は、2020年で20周年を迎えた業スーのお祝いも兼ねて兵庫県の神戸物産本社に突撃取材してきました。

神戸物産本社の前で編集Mが笑顔で手を上げている写真

なんでも知りたガールのAmeba編集Mが、ねほりはほり突撃〜

ねほはほポイント1: 相当無理したでしょ?急成長の裏側

編集M

業務スーパーさん、20歳おめでとうございます! 勝手ながらお祝いをお持ちしました。Amebaのマスコットです。業スーの緑の看板と同じ緑なのでちょうどいいなと思いまして。

花房さん

ありがとうございます!!

花房さん(写真右)と市位さん(写真左)が笑顔でAmebaくんグッズを持っている写真

取材に応じてくださった神戸物産の花房さん(写真右)と市位さん(写真左)。勝手なお祝いをめちゃくちゃよろこんでもらえた!

編集M

スーパー業界で20歳って結構若いですよね。

花房さん

業務スーパー自体はまだ20年ですが、その前身としては1981年に神戸物産の創業者が開業した食品スーパー「フレッシュ石守」というのがあるんですよ。

編集M

あ! こちらの本社のとなりにあったスーパーですね。来るときに拝見しました。「業務スーパー」の看板はあるのに「フレッシュ石守」ってどういうこと? って不思議に思っていたんです。

花房さん

でしょうね(笑)。

「フレッシュ石守」開業当時は生鮮品をメインに扱っていましたが、同じことをやっていても競合の大手スーパーさんにはとても太刀打ちできず、淘汰されることは明白でした。

そこで、製造に進出したり海外の大手企業との取引を強化したりするなかで蓄積されたノウハウを活用し、フランチャイズ形式のスーパーにシフト。それが2000年に始めた「業務スーパー」なんです。

2000年に兵庫県三木市に誕生した業務スーパー1号店の写真

これが兵庫県三木市に誕生した業スー1号店の超貴重な写真。昭和感が漂っていますが平成真っただなかの2000年です(提供:神戸物産)

編集M

1号店の開業から20年で約900店(※2020年10月時点で879店)まで急成長していますけど、相当無理をしてきたんじゃないですか?

花房さん

はい、それはもう(笑)。現在の店舗増加数は年間約30店舗ずつですが、2000年代前半の急成長期には年間100店舗ほどをオープンさせていました。

編集M

えーっ! 100店舗も!?

花房さん

平均すると3日に1店舗をオープンさせていたことになります。開店のためにスーパーバイザーは常に出店準備に追われて、事務所にいる時間はなかったくらいでした。

考えている花房さんの写真

いまではちょっと考えられない…

花房さん

それに、当時は商品の発注も書類の処置もすべてアナログで手作業。ですから、まさに目が回るほどの忙しさだったと思います。

編集M

リアルに相当無理してたんですね…。それにしても年間100店舗というスピード感は異常です。

花房さん

独自のフランチャイズ戦略によって、いまでは900店舗に迫るまでに成長できたと考えています。

ねほはほポイント2:取って付けたような「一般のお客様大歓迎」…なんで?

編集M

全国に展開するまでに成長し、一般のお客様に支持されているのはわかります。「業務スーパー」といいながらもはや一般のお客様の利用の方が多いのではないですか?

花房さん

あくまでフランチャイズ加盟店さんへのヒアリングベースではありますが、現在では9割ちかくは一般のお客様ですのでその予想は当たっていますね。

編集M

全国に展開するまでに成長し、一般のお客様に支持されているのはわかります。「業務スーパー」といいながらもはや一般のお客様の利用の方が多いのではないですか?

花房さん

そこが創業者のこだわりです。扱っている商品の多くが業者用の大サイズということであれば「『業務スーパー』でいこうと思うんやけど、どないや?」という、ちょっとした家族会議で決まったらしいですよ。しかもお正月の席で。

編集M

利用者が業者だからではなく、「扱う商品が業務用サイズ」だから「業務スーパー」とは…!

花房さん

そうなんです。業者の方が使うような大サイズ、かつ卸値のような安さで買える商品を扱うスーパー、ということで「業務スーパー」。シンプルですよね。

編集M

シンプルすぎて逆にわかりづらさもありそうです。

花房さん

それは確かにありました(笑)。通常、スーパーの新規オープン時って開店イベントやセールで行列ができるじゃないですか。

編集M

できますね。

花房さん

それが、業務スーパー1号店をオープンしたときはその盛り上がりがまったくなかったそうです。それはひとえに…

編集M

「業務スーパー」というネーミングのため。

花房さん

そうです。扱う商品ベースで命名はしたものの、創業者にとってはこれが盲点になったのでしょうね。

編集M

シンプルにそうでしょうね。

花房さん

それで、1号店オープン日の夜に看板屋さんにすぐに電話をして「一般のお客様大歓迎」を書き足したらしいです。

編集M

なるほど! なんとなく違和感というか、無理やり感のある「一般のお客様大歓迎」のウラにはそんなドラマがあったんですね。

開店当時はなかった「一般のお客様大歓迎」という文字が書き足された業務スーパーの看板の写真

取って付けたような「一般のお客様大歓迎」に納得

花房さん

とはいえ、オープン当初の数年は、業者さんの比率が多かったのは事実です。それが徐々に地元の口コミで一般のお客様も増えてきて、いまとなっては9割が一般のお客様になりました。

編集M

一般客の比率が高まっているのであれば、「業務スーパー」を改名することが議論になったのでは?

花房さん

数年前には、店名をわかりやすくしたり、ロゴをもっとオシャレにしたりという社外からの提案もありました。しかし、業務用の大サイズを安くご提供するというスタンスは開業以来変わりませんので、「業務スーパー」という屋号は変えずにここまでやってきました。

編集M

ブログやSNSでは「業スー」が定着していますし、ここまでくれば変える必要もないですね。逆に変えられると困ってしまいます。

花房さん

そこまで浸透してご愛顧いただいているのは、本当にありがたいことです。

ねほはほポイント3: 安い…安い…安すぎる…激安の謎

編集M

業務用の大サイズを安く提供するのはわかりますが、それにしても安すぎませんか?

花房さん

店舗数を約900まで伸ばせたことで、これまで以上に大量に製造したり仕入れたりしても1店舗あたりの在庫数が過剰にならず、ロスを少なくすることができています。

業務スーパーはほかのスーパーさんとはスタイルがちょっと違っていることも影響しています。

編集M

といいますと?

花房さん

一般的には少ない需要をつぶさに拾っていって商品を取り揃える、売り切れ状態を回避するために在庫を確保するのですが、私たちは完全に割り切って売れ筋商品だけに絞り込んでいるんです。

お豆腐のパッケージを利用したチョコレートケーキ、チーズケーキの写真

お豆腐のパッケージを利用したチャレンジングなケーキシリーズもいまでは立派な売れ筋に

花房さん

ですから、いち商品あたりの販売個数は他社さんに比べて多いと思います。なかには売れるかどうか未知数のチャレンジングな商品もありますが、基本的には売れるものだけを約900店舗に分散して展開しているので過剰在庫もロスも少ないんですよ。

編集M

なるほど。

花房さん

あとはそもそも賞味期限の長い商品をメインに扱っていることも、過剰在庫・ロス軽減を実現できている理由かもしれません。

創業当初の「フレッシュ石守」で生鮮品を扱うことのむずかしさを体験したことで、業務スーパーでは賞味期限の長い食品をメインに取り扱うようにしましたから。

こちらに視線を向けた花房さんの写真

花房さん

「食品ロスは神様への裏切り」という創業者の理念が会社全体に根づいているので、特別な取り組みというより仕入れや製造計画でロスが出ない仕組みが自然とできあがってきた感じです。

編集M

確かに、業スーの人気商品はどれも賞味期限の長い、しかも定番の必需品ばかりです。

しつこいようですけど、あまりに安すぎます! うちの編集部の独身男子なんて、あまりの激安に「なんかヤバイんちゃうの?」と失礼な疑いを持っていますよ。

花房さん

「安くて質のよいものをお届けする」のが私どものモットーではありますが、正直、そういうご意見もありますね。ホームページではしっかり宣言しているのですが…

編集M

そこはもっとアピールした方がいいですよ!

花房さん

そうなんですよ。ですから、店内には安全安心をうたったPOPを設置するようにしています。まずはお買い物いただくお客様にご理解いただくことが大切ですから。

業務スーパー内に掲載されている輸入経路が記載されたPOPの写真

花房さん

今後も製造や検査体制など、食の質管理や安全安心への取り組みなどをどんどん発信できればと考えています。

ねほはほポイント4: やりすぎ商品誕生の背景

編集M

ネットでは牛乳パックに入ったデザートや豆腐パックに入ったケーキなど、インパクトのあるオリジナル商品が話題です。ちょっとやりすぎなアイデアって誰の発案なんですか?

紙パックのドリンクのようなパッケージで販売されているプリンやババロアなどのデザートの写真

○○味のドリンク…ではなくしっかりデザートなんです

花房さん

アイデアマンであり勉強家でもあった創業者の発案がきっかけになっています。

そうしたチャレンジ精神は現在の社長も社員も受け継いでいるので、誰かひとりの…というより、先ほどの食品ロスと同じく自由な発想も会社全体に根づいている文化のようなものです。

編集M

確かに、自由な社風でないと「牛乳パックに水ようかん」という発想があったとして、それを商品化して売ってしまうことはなかなかできなさそう。

花房さん

普通は「お前なに考えとんねん!」ってなりますよね(笑)。社内でも本当に売れるのか? という声も一部ありましたが、トップが「おもしろいね。売ってみてダメだったらやめればいい」と判断して踏み切ったんです。

編集M

「ダメだったらやめればいい」って簡単にいいますけど…

花房さん

スピード判断ができるのも、製造と小売どちらも自社でやっているからこそですね。

編集M

ちなみに、ダメだった・失敗した商品のなかで印象的だったものはありますか?

花房さん

めっちゃあります(笑)。そうですねぇ。デザートではないのですが、牛乳パックに入ったプロテインドリンクがありました。商品としてはよかったのですが、なかなか売れなくて…

編集M

それ、いまコンビニで普通に売っていますよね。定着するもっと以前のチャレンジですか?

花房さん

そうなんです。どうも先取りしがちで(笑)。

輸入品でもそうで、「ハルヴァ」というトルコなど中東圏のお菓子を7-8年前に売り出したんですけどまったく売れませんでした。

編集M

いまだったら結構売れそうです。

花房さん

実際、終売してから問い合わせが増えたこともあってリニューアルして再販したところ、おかげさまでじわじわ売れています。

ねほはほポイント5:どうしても知りたい!中の人イチオシの高コスパ品

編集M

どの商品もお得すぎるのですが、原価などを加味して「なかでもこれは超お得」「社員・従業員が本当におすすめ」な商品をこっそり教えてください!

花房さん

社内報で社員インタビューをしても、5食入りの冷凍うどん1.8斤の天然酵母食パンなど、一般のお客様に人気なものと同じ商品が出てくるので、どうしてもおなじみの売れ筋ばかりになりますね。

お客様にも社員にも人気な「天然酵母食パン」が陳列されている写真

1.8斤の天然酵母食パンは業スー中の人にも人気

花房さん

これといって目新しい情報でなくてすみません。逆にお客様のほうがよくご存知で、勉強になることばかりです。

編集M

そこをなんとか! 原価の割にお得な商品が知りたいです。

花房さん

そうですねぇ。これからの季節商品ですが「鍋の素」シリーズは他社さんの商品に比べて破格だと思います。通常価格で税抜き97円です。おかげさまで売れ行き好調につき品薄ですので、お客様にご迷惑をおかけしてしまったらすみません。

税抜き97円と激安で販売されている人気の品「鍋の素シリーズ」が陳列されている写真

安い…安い…安すぎる…

ねほはほポイント6:激安な業スーでさらにお得情報をキャッチする方法

編集M

もっとお得に買い物できる裏技などあれば教えてください。

花房さん

のぼりはチェックしてほしいですね。

編集M

のぼり?

花房さん

業務スーパーは郊外型店舗が多いので、車で移動されるお客様の目線を意識したんです。あえてのぼりでお買い得情報を発信するのも業務スーパーならではじゃないかなと思います。のぼり戦略はずっと以前から続けています。

車で移動されるお客様の目にも止まるようお買い得商品の名前を記載したのぼりの写真

いち商品のためだけにのぼりをつくってしまう。ある意味思い切った業スーの“のぼり戦略”

花房さん

あとは店内のPOPやポスターですね。今月限定の値下げ商品をご紹介していますので、店内の販促物は注意してご覧いただけるとよいかと。

編集M

お得情報を得るためにはまず来店。シンプルですね。

ほかのスーパーはアプリやSNSを活用してお得情報を発信していますが、業スーではどうですか?

花房さん

今後はネットやアプリを使った販促も考えたいのですが、たくさん販促費をかけるよりも安くていい商品の提供に力を入れたい! という思いのほうが強いですね。

編集M

社長さんのインタビューで「今後はお惣菜やお弁当などの中食に注力したい」とありました。

中食といえば、同業のスーパーだけでなくコンビニや外食デリバリーなど競合ひしめく市場。業スーならではの強みや戦略を教えてください。

花房さん

惣菜事業として「馳走菜(ちそうな)」という店舗があります。

業務スーパーに併設している店舗が多く、店内調理なので温かいできたてを提供できること、ボリューム満点で値段が非常に安いことが強みです。

唐揚げやポテトサラダなどが入ったボリュームのあるお弁当が税別298円で販売されている写真

このボリュームで298円(税別)! 安い…安い…安すぎる…(再)

編集M

“大容量で激安”は業スーの最大の強みですもんね。

花房さん

そうですね。業務スーパーがこれまでにつちかった取引ルートをいかして中食で使う材料も安く仕入れられますし、自社グループ工場で製造している商品を材料として使うこともできます。

1枚約400グラムのボリューミーなチキンカツが税別148円と激安で販売されている画像

花房さん

目玉商品で「ジャンボチキンカツ」という15時以降の限定メニューがあるのですが、これもグループ内に養鶏場があって飼育から加工まで一貫してできるから、1枚約400gで148円(税別)という破格のお値段で提供できているんです。

編集M

安っ!

花房さん

各店舗には最終の「揚げる」工程だけすればいい冷凍状態で届きますので、こうしたオペレーションの簡略化もお安く提供できる強みです。

冷凍なので保存も効きますし、売れ行きを見ながら店頭に並べる個数を決められる。廃棄ロスを出さない業務スーパーのポリシーが中食でも徹底されています。


「取材中、一体何度の『安い』をいっただろう」…そう思いながら、せっかくなので本社から歩いてすぐの直営店の店内も見学させていただきました。

カゴを持ち、店内の商品を見ている編集Mの後ろ姿の写真

見学なのにちゃっかりカゴ。買う気満々の編集M

激安販売されていた「鍋の素シリーズ」を複数手に持つ編集Mの写真

花房さんが教えてくれた高コスパ商品「鍋の素」。寄せ鍋やちゃんこなどの定番のほか、鶏白湯や塩鍋といったトレンドにもしっかりキャッチアップしたラインナップに悩みまくる編集M

冷凍食品を手に持ち、商品を見ている編集Mの写真

これから新幹線で東京へ帰ろうというのに、冷凍食品に手を伸ばす編集M

編集Mが購入した「鍋の素」をはじめとする複数の商品の写真

冷凍食品は諦めて見学という名の買い物を済ませた編集M

【編集Mの業スー戦利品】

業スー戦利品の写真
・味噌鍋の素(97円)
・タイ直輸入スイートチリソース(108円)
・タイ直輸入ナンプラー(108円)
※2020年11月5日時点の価格、消費税別


東京にも業スーはあるのに、荷物になっても買って帰らずにはいられない…。業スーの魅力を改めて実感した取材でした。

取材・文AmebaNews編集部

合わせて読みたい記事

編集部のおすすめ記事

Check it

この記事と一緒に読まれている記事