「私、綺麗に貪欲なんです」 がんと闘う美しき女医Rの底力

あの人の底力

新連載「あの人の底力」は、さまざまな困難を乗り越えてきた・乗り越えようとしているAmebaオフィシャルブロガーにインタビューし、困難に直面した時の正直な気持ちやそこから立ち直るきっかけとなった原動力をひもとき、人間が持つ“底力”を引き出して人生のヒントを探る企画です。

第1回は、自身の子宮頸がん闘病のようすだけでなく、子宮頸がんワクチンの重要性や代替医療について、家族や自身を取り巻く温かい人々との日常を前向きに明るくブログ「女医R〜そんな女の独り言〜」でつづる、医師・居原田 麗さんの底力に迫りました。

居原田 麗さんのプロフィール写真

居原田 麗(いはらだ・れい)
麗ビューティー皮フ科クリニック院長(滋賀県草津市、大阪高槻市)で3男1女のママ。2020年2月に子宮頸がん発症、3月に稀な小細胞がんと発覚し現在闘病中。「病気でも闘病中でも、いつも楽しく美しく!!」をモットーに、病気のことや美容医療のエキスパートとして美容情報、家族との心温まる日常を発信している

大好きな仕事再開に向けて…現在がっつり休養中!

ーー現在抗がん剤治療中ということですが、お仕事はどうされていますか?

滋賀と大阪でビューティ皮フ科クリニックの院長をしていますが、3週間ごとの抗がん剤治療に集中するためクリニックはほかのドクターにお任せしています。たまに若いドクターの技術指導をしたりもしますが、基本的にはがっつり休んでいます。

抗がん剤治療中の居原田さんの写真

治療中でも明るくキュートな表情を見せる居原田さん

先が見えなかった当初は仕事をしたいなと思って、抗がん剤の合間に月2、3回は診療に出ていたのですけどね。だんだん抗がん剤が効いてきて、あと2クール(治療の日と治療を行わない日を組み合わせた周期の単位)したらしんどい治療が終わって仕事も再開できると思うと、いましっかり休むことが賢明かなと思っています。

ーーご家族はどうでしょうか?

主人は自分の仕事の傍ら、常に私の治療の予定を最優先事項としてすべてをサポートしてくれています。

子どもたちは、長男が今年中学1年生、次男が小学4年生、三男が小学1年生、長女が保育園の年少さんです。長男は中学入学と同時に寮に入ったので寂しい気持ちはありますが、闘病中の私が身近にいて心配をかけなくてすむので、寮生活を選んでくれて私の気持ちは少し楽になりました。

居原田さんご家族の中学校と小学校の入学式の写真

抗がん剤治療の合間に、長男くんの中学校と三男くんの小学校のダブル入学式へ元気に参加。洋装も和装も素敵!

泣いたのは1日だけ。絶望を“生きる希望”に変えた原動力

ーー子宮頸がんが発覚した当初のお話を聞かせてください。

がんが見つかる半年くらい前から不正出血がありましたが、びらん(ただれたような状態)だから問題なしと様子を見るように言われていました。やはりなんだかイヤな予感がして、再診してみたら子宮頸がんが見つかりました。それが2020年2月で、しかも子宮頸部では稀な小細胞がんだということがわかり…。

とても稀なので予後(病気経過の見通し)に悪いデータしかなく、私が手術をした病院では10年前、同じ病気の方が1年半で亡くなったと聞いて「チーン」って、目の前が真っ暗になりました。一番下の娘がまだ1歳でしたし、1、2年で私が死んだら家族はどうなるんだろうって。

普段は元気が取り柄の私ですが、その日は主人と泣き明かしました。でも、それも1日だけです。

泣きはらした様子の居原田さんの写真

「泣きすぎで目がパンパン。手術に備えて眉アートメイクを入れてもらい、まつエクもとってもらって目がシジミ」と、当時のようすを振り返る居原田さん

ーーたった1日で気持ちを切り替えられた原動力となったものは何でしょうか?

一番は増田陽子先生という、以前うちのクリニックで勤務医をされていたドクターからいただいたたくさんの“生きる希望”のヒントです。それらは抽象的ものではなく、増田先生が留学先のアメリカで学んでいらした機能性医学や栄養療法の知識のこと。

たとえば、美容にもいい高濃度ビタミンC点滴は抗がん剤の副作用を減らす効果が期待できるなど、手術や抗がん剤治療以外の「代替医療」の知識をたくさん与えてくださりました

増田陽子先生(写真左)と居原田さん(写真右)の写真

“生きる希望”のヒントをたくさんくれた恩人の増田陽子先生(写真左)

実は、増田先生が日本に帰国されたのと私の病気が発覚したタイミングが偶然に重なって、増田先生に相談することができたのも運命だと思います。私が1日で絶望から生きるイメージしかない状態に切り替えられた原動力は、増田先生からいただいた具体的な“生きる希望です。

私はもともと、自分に負荷をかけてコツコツ努力することが好きな真面目な“M”タイプなんですよ。ですから、毎日の食事など、自分の努力でいくらでも改善できることで病気に立ち向かっていける「代替医療」はピッタリなんです。

食事だけでなく、体を温めたり日光に当たったり笑ったり…がんを克服するためにできることは、標準治療以外にもたくさんあり努力する楽しみは無限にある!」と思ってから、生きる気力がどんどん湧いてきたんです。

ガッツポーズで笑顔を見せる治療中の居原田さんの写真

居原田さんのブログには、生きる希望に満ちあふれた「ファイティン!」の文字がいつも添えられています

泣いているだけでは何も変わらない。むしろ落ち込むことは免疫にもよくなくて、できることをやらないと命が短くなっていく気がしたので、自分でできることは何でもやっていこうと思い直しました

病気になったのは私でよかった。愛する家族への想い

ーーそういう前向きな居原田さんに対して、ご家族をはじめ周りの皆さんはどう接してくれますか?

家族はもちろん一緒にがんばってくれています。主人は病気になる前からずっと、どんな時でも私と気持ちを同じくしてくれるんです。私が上を向くと一緒に上を向いて進んでくれるし、私が落ち込むと上を向くように導いてくれる、そういうやさしさがあって頼りになる人。

私が病気になってからはさらにやさしく、ますます頼りになる存在です。毎日そばにいてくれて、代替医療のひとつのアロママッサージも、慣れない手つきでやってくれるんです。単にオイルを背中にペタペタ塗ってくれてるだけなんですけど(笑)、そういう気持ちがうれしくて「幸せだな〜」って毎日思います

居原田さん(写真左)と旦那さん(写真右)の2ショット

私のことを本当に愛してくれる主人や子どもたちがいるから、正直、私は自分の人生に悔いはありません。

でも、もし私がいなくなったら、私のことが大好きな主人はどうなっちゃうんだろう、子どもたちをどうやって育てていくんだろう…そんなことを考えると、私と気持ちを同じくしてくれる主人はきっと、私のいまの気持ちも察しているはずで、私よりもずっと辛いはずです。

私は家族が辛いのを見るのがイヤだから「病気になったのは自分ででよかった」と思う一方で、「自分が幸せで悔いはなくても、家族の幸せのために自分はもっと生きなければいけない、そう強く思うんです。

居原田さん、旦那さん、4人のお子さんとの家族写真

綺麗でいたい!美への執着があれば何でもできる

ーー病気と向き合うにあたって、居原田さんが体感したフィジカル面、メンタル面でのアドバイスはありますでしょうか?

フィジカル面に関しては、ドクターの立場だからこそエビデンス(裏付け)がないことを安易にすすめることはできませんので、代替医療についてもブログでは言葉を選んでお伝えするよう心がけています。

ただ言えるのは、食事療法や病気の予防によいとされる食品や食材を選ぶ生活改善は、症状の有無にかかわらずチャレンジしてみる価値があるということ。体は食べるものでしかできませんので、良質なもの、健康によいものを取り入れることで、体だけでなくお肌の調子の細胞にも影響してきます。美容面でもおすすめしたいですね。ちなみに私は有機JASマークが大好きです(笑)。

たくさん並べられた有機野菜の写真

同業のドクター仲間がたくさん送ってくれるという有機野菜たち

私は美容を仕事にしていることもあって、綺麗でいたい」という気持ちがハンパなくて貪欲なんです。がんになってその気持ちはますます強くなり、病院へ行くのにもきちんとメイクをしておしゃれをします。闘病中だから綺麗でいられない…ではなくて、闘病中だからこそ綺麗でいなければならないんです。そういうメンタルでないと、病気に負けちゃいますから。

抗がん剤治療をしているので髪が抜けてしまっていまは丸坊主なんですけど、おかげでいろんなウイッグを試せて楽しいです。地毛だとセットが面倒でかわいく仕上がらない日もあり、逆に気分がのらなかったりもしますけど、ウイッグならセットもスタイリングもしなくて簡単に綺麗になれて気分が上がりますよ。食事に気をつけていることでお肌の調子もすごくいいですし、しっかり食べてもいますから痩せすぎではないいい感じの体型で、いまのほうがむしろ綺麗かもしれません(笑)。

抗がん剤治療で脱毛した居原田さんとウイッグとターバンでおしゃれをする居原田さんの写真

「丸坊主は快適だし楽ちん。なにより、ウイッグやターバンでいろんなおしゃれができて楽しい!」

ーー「女性が美しくあることは、生きることにとてもとても密接」とブログに書かれていましたが、まさにそれを実証されていますね。

私の場合はその欲求がハンパなく強いですが、個人差はあっても「綺麗でいたい」という気持ちは誰しもあると思います。その気持ちこそが、フィジカル面においてもメンタル面においても強いモチベーションになり、支えになると信じています。

クリニックの患者さんやブログの読者さんに対して、そういう信念を発信することが私の使命だと思うし、私にとっての新たなモチベーションにもなっています。

私の命は、人や社会に役立つことに使いたい。

ーー居原田さんは、これからどういう発信をしていきたいですか?

私が病気になって、同じように闘病している方のインスタをフォローしたんです。その方は私よりもずっとポジティブで、いつも明るくて元気をもらっていました。生きる力もたくさんもらいました。残念ながら亡くなってしまいましたけど、私は彼女の生き方が本当に素敵だと思うし尊敬してるし、こういうふうに最後まで生き抜きたいって思っています。そして、今度は私がそういう存在になりたいと強く心に誓いました。

満開の桜を見上げる居原田さんの写真

今年の4月、母校(滋賀医科大学)で自撮りしたという写真。がんに立ち向かう居原田さんの強く凛とした姿と、冬を耐え抜いて満開になった桜の強く美しい佇まいがシンクロしています

だから、髪の毛が抜けてしまったことも含めて、私が闘病していることをポジティブに発信することで「勇気をもらいました」「自分の悩みがちっぽけに見えました」という言葉をいただくことがすごくうれしくて。誰かの人生に少しだけ関われて、ポジティブな気持ちに向かうお手伝いができてるんだって。自分の気持ちを上げるためでもありますけれど、読んでくださるみなさんが元気になれる言葉をこれからも発信していきたいです。

また、罹患者だからこそ、子宮頸がん予防の大切さについても声を大にして発信する使命が私にはあると思っています。日本はまだまだ子宮頸がんワクチン接種率が低いことや、さまざまな情報に惑わされてはいけないことは、まず親御さんが理解する必要があります。

まだ小さいですが私にも娘がいますので、罹患者としてだけでなく、親の立場としてももっと発信しなきゃいけないですね。

居原田さん(写真右)と娘さん(写真左)の2ショット

「自分の娘に同じような苦しみを絶対に味わわせたくない。女の子親の責任としても、子宮頸がんワクチン接種の重要性は声を大にして発信していきたいんです」

ーーこれからの夢を教えてください。

抗がん剤治療はあと2クールあるのでどこまでいい感じになるかわかりませんが、「(がんの)ステージ4から生還したよ!」って状態になったら、家族やクリニックのこと以上に、もっと広い世界でいろんな人のために役立つ活動をしたいです。

私の命は個人的な夢に使うものではなく、子宮頸がんワクチンのことや代替医療のことのように、社会や人に役立てるためにあるんじゃないかって思うんです。お金をかけなくてもみんなが健康で幸せになれる方法はたくさんあって、私も少しずつそれを実践しているので、私の経験をわかりやすく紹介したりボランティアをしたり。具体的に定まっていなくてまだフワフワしていますけれどね(笑)。


オンライン取材中の笑顔の居原田さんの写真

ブログの文章同様、ポジティブで元気でかわいらしいなかに、強い信念と覚悟をあわせ持った居原田さんの言葉ひとつ一つは生命力に満ちあふれていました。美容医療に携わる人間として、がんと闘う人間として、なにより女性として綺麗でいたい」という強い想いと、「人の役に立ちたい」という強い願いが居原田さんの“底力であることはまちがいありません。

気持ちが落ち込んだとき、元気がほしいときは、居原田さんのブログをのぞいてみてください。

取材・文AmebaNews編集部

合わせて読みたい記事

編集部のおすすめ記事

Check it

この記事と一緒に読まれている記事