仲村トオル、俳優36年目でも発展途上「自分で気付いたことが血となり肉となる」

1985年のデビュー以降、数々のドラマ・映画・舞台で活躍しつづけている仲村トオル(なかむらとおる)さん。注目の女優・関水渚さんと共に主演を務めるドラマ『八月は夜のバッティングセンターで。』(毎週水曜深夜1時10分)が放送中。自身も野球経験者だという仲村さんに選手時代、そして若手時代を振り返ってお話を伺いました。

【『八月は夜のバッティングセンターで。』あらすじ】ドラマの舞台はとあるバッティングセンター。わけあって夏休みにアルバイトをすることになった関水さん演じる17歳の高校生・夏葉舞と、「バットのスイングだけで、その人がどんな悩みを抱えているかわかる」という仲村さん演じる元プロ野球選手が、毎回バッティングセンターに現れる悩める女性たちを、「野球論」で例えた独自の「人生論」で解決へと導いていく物語。
  1. 闇雲に素振りをしていた中学時代
  2. 野球から学んだ「迷ったら、止まれ」
  3. 若い時にカチンときたアドバイスも、今では大切に
  4. 俳優生活36年「今も発展途上です」
  • 仲村トオル

    俳優

    1985年、映画『ビー・バップ・ハイスクール』で俳優デビュー。数々のドラマ・映画・CM等に出演。今後も舞台、ドラマの待機作多数。

    1985年、映画『ビー・バップ・ハイスクール』で俳優デビュー。数々のドラマ・映画・CM等に出演。今後も舞台、ドラマの待機作多数。

闇雲に素振りをしていた中学時代

【写真】仲村トオルさんの考える様子

――本作は“野球とドラマ”が融合された作品ということで、仲村さんが演じる伊藤が“LIFE IS BASEBALL”と描かれたユニフォームを身につけているシーンもあります。仲村さんにとって、野球とはどういう存在でしたか?

仲村:僕は昭和40年代生まれなので「気付いたら男子はみんなやっていた」というくらい、野球は国民的スポーツでした。

このドラマに出演することになって色々思い出したのですが、野球ってとても優しいスポーツだなと感じます。小さい子には小さい子なりに担えるポジションもあるし、最後に逆転することも出来る。野球という競技の持つ優しさが、このドラマで悩める女性たちの背中を押してくれるのだと思います。

――中学では野球部と伺いましたが、どんな選手でしたか?

仲村:肩は強かったんですけど、コントロールは悪いし変化球が投げられなかったんです。バッティングに関しては、ただ闇雲に素振りしていました(笑)。素振りをたくさんしていれば打てるようになれるんじゃないかと思っていたのですが、今だったら、もっと違うトレーニングがあったんだろうな…って。野球に関しての後悔はものごくあります。

野球から学んだ「迷ったら、止まれ」

【写真】仲村トオルさんの横顔

――仲村さんが「野球から学んだこと」はなんですか?

仲村:小学校5年の時、9回2アウトで3塁ランナーだったんですが、打者の内野ゴロで迷ってから本塁に走ってアウトになり、それで試合が終了したんです。今でも強烈に覚えてますが、6年生にとって最後の大会なので、申し訳なくて、号泣しながら謝って、それ以来「迷ったら、止まれ」と考えるようになりました。演技でも途中で芝居を止めるわけではないですが、準備段階では立ち止まって考え直します。

――「迷ったら止まれ」すごい教訓ですね。本作では野球と再び対峙することになり、楽しかったでしょうか?それとも緊張しましたか?

仲村:以前、自分が出演した舞台の再演があったのですが、その時と同じような恐怖を感じました。「前より自分が衰えている」ことを直視することになるかもしれない、と。

でも、本作に出演してくださったレジェンドプレイヤーの方に「コントロールって衰えないんですか?」と聞いた時に「リリースポイントを間違えなければコントロールは衰えない」と言われて。僕と同じ世代の仲間たちに伝えたい言葉だ、と感動しました。野球に限らず、仕事でも大事なポイントさえ忘れなければ、まだまだ戦える、と言われたような気がして。

若い時にカチンときたアドバイスも、今では大切に

【写真】仲村トオルさんの襟を正す姿

――仲村さんは、先輩など、周りの方から伊藤の様な“おせっかい”を受けて、考えが変わった経験はありますか?

仲村:映画でもテレビドラマでも、現場で多くの先輩からアドバイスはたくさんいただいたと思うのですが、20代前半の頃はちょっと反発心もあったと思います。でも、その頃にカチンときたアドバイスって、今考えるととても大事な事だったんだなと思えたりします。

生意気な事を思うこともありましたけど、今は全然なくなりました。年上だったり先輩から言われた言葉って、あとから効いてくるのかなと。結局は自分で気付くしかない。自分で気付いたことが血となり肉となるのだと思います。

――先日、共演の関水渚さんにお話を聞いた際、仲村さんのことを「大ベテランなのに始まる前にストレッチや運動をされていて、だから声もすごく通る。その姿をみて、“こういう方とお芝居が出来ているだけですごい”と思った」とおっしゃっていました。

仲村:ありがとうございます。発声のためにストレッチをするというよりは、心を柔らかくするために、身体も柔らかくしておきたいというか。そんな姿を見て、関水さんがそう言ってくれたのかなと思います。

俳優生活36年「今も発展途上です」

【写真】仲村トオルさんの斜め上を見つめる表情

――関水さんの様な若い世代に、活躍する為のアドバイスをするとしたら、どんな言葉を投げかけたいですか?

仲村:僕はほとんどアドバイスというものはしないんです。自分もそうだったと思いますけど、人から言われた事をすんなり受け入れられる人はそれで良いのですが、大切な事って自分で見つけるものだと思っているので。僕自身、今も発展途上だと感じているので「これが答えだよ」なんてとても言えなくて。

本作で様々なレジェンドプレイヤーの皆さんとご一緒して、「諦めないで続けること。その結果、思っていたよりも高みにいける」という勇気をたくさんもらったので、諦めないで続けることは何よりも大切だと思います。

――続けることが大切。長年、第一線で活躍されている仲村さんだからこそ説得力がありますね。

仲村:撮影が終わった後に、素晴らしい共演者の方やスタッフの方とご一緒できて良かったな、楽しかったなと毎回思う一方で、演じている最中に「楽しい」と思ったことはほとんど無いんです。これは役者になって36年目の今でも現在進行系で続いています。若い頃に『あぶない刑事』というドラマで、先輩たちが楽しそうにやっているのを見て、後ろの方で自分も楽しくなっちゃってたことはありましたが。

以前、自分を“無”にして限りなくゼロに違い状態で演じてみて「見たことのない自分が見られた」とできあがった作品を観て、驚いたことがありました。そういう驚きに直面することも僕にとっては役者という仕事の楽しみの一つです。

――ドラマでも、野球への思い入れの深い仲村さんによる伊藤の活躍を楽しみにしています。今日は素敵なお話をどうもありがとうございました!

【写真】仲村トオルさんの笑顔

取材・文中村梢/編集Ameba編集部/撮影長谷英史
ヘアメイク:宮本盛満 スタイリング:中川原寛(CaNN)

水ドラ25「八月は夜のバッティングセンターで。」
毎週水深夜1:10-1:40(ほか) テレビ東京ほか
Paravi、ひかりTV、dTV、Amazon Prime Video にて配信中



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