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技術が進歩しても愛されるドット絵、ドッターに聞くドット絵の魅力って?

6月20日 12時00分


photo by PuyoDead
技術の進歩により、リアルな表現が可能になった映像技術。しかし、常に進化し続ける中で、今でも愛されている昔ながらの技術というものがあります。その中の一つが“ドット絵”です。一つ一つの点(ドット)で作られた絵をドット絵と呼んでいますが、極端にそして簡単に説明するとファミコンの絵、といったところでしょう。新しいものが生み出され続けるこの時代に、何故今もドット絵が愛されているのでしょうか。

一枚の絵として楽しんだり、アニメーションにしたり、ゲームとして利用したり、様々な形で見ることができるドット絵。特にゲームにおいては欠かすことの出来ない表現方法のため、意識せずともドット絵を見ていた人も多いことでしょう。しかし、立体的な表現が容易にできる“ポリゴン”が主流となると同時に、ドット絵は徐々に影を潜めていくようになりました。

ところが、どんなに技術が進歩しても、どんなにリアルな表現が可能になっても、ドット絵ならではの味に魅了される人は多く、最近の3Dゲームやアニメを“ドット絵風”にしたものが作られたり、SNSなどのプロフィール画像にドット絵を使用している人も見かけますよね。また、ゲームのあるジャンルにおいてはドット絵が欠かせない存在でもあります。

現在はCGのみで本物のようなリアルな映画が作られたり、進歩し続ける映像技術には驚かされますが、そんな中でも何故ドット絵は愛されているのでしょうか。ドッター(ドット絵を描く人)として活躍していたありすさんに、ドット絵についてお話を伺いました。


――映像技術が進化し続けた結果、本物にも負けないリアルなCGというものが生まれたと思いますが、その進化の過程の一つであるドット絵に魅了される人が今でもいる理由とは?


ドット絵はひとつひとつドットを手打ちする温かみがあって、私は手作り感があふれるそんなところに魅力を感じ惹かれました。実際、ドット絵は職人の手によって1ドットずつ打ち込まれて描かれているワケですしね。打ち込めば打ち込むほど、作り込めば作り込むほどに、命を吹き込まれたかのように愛らしくアニメーションしたり、そのひとつひとつの仕草はドット絵だけが持つ独特の表現だと思います。


――なるほど…。それではドット絵にあってCGにないもの、CGにあってドット絵にないものは何だと思いますか?


ドット絵とCGはまったく別のものですので、自由度、表現の差は大きいですね。限られているからドット絵で表現するというのではなく、限られている中だからこそドット絵で限界を表現できる。制限は特に無く自由に描けるのなら、ドット絵でなくていいわけです。イメージやモチーフをそのまま、制限無く描けるのはドットには無い部分ですね。
でも、ドット絵でもCGには及ばなくともリアル風に仕上げることはもちろん可能ですよ。限られた色の数と小さなピクセル枠の中でリアルに見せる打ち方をするんですよ。いくつかのテクニックを駆使してリアルに見せるためにデフォルメするって矛盾した描き方をするんです。矛盾した限界の先の表現がドット絵で、CGにはないところかなぁと私は思うんですよ。
CGには2Dだけでなく3Dのような空間的な表現が可能ですよね。物質の質感と、空(カラ)を描くことができるのはCG独自の表現ですね。
ドット絵では質感は描けてもCGほどのリアリティには遠く及ばず、また空間的な、そこにまるで別の空間があるようなもう一つの世界を描くことはCG独特のものかと思います。


――では、ドット絵であることによるメリット・デメリットはありますか?


デメリットとしてはやはり作るのに時間がかかることでしょうか。ドット絵はただただ根気が必要になります。時間は無限にほしいと、多々思いましたね。デザインに修正が入ったので今まで打ったドット絵を丸ごと修正…とか、もう発狂しそうになって叫び声をあげたこともありますし(笑) 物凄く集中するので疲労は想像を絶するものがあります。疲労と徹夜で、もう美容に悪いのなんのって(笑) ノイローゼになるスタッフも居ましたね、本当に修羅場だったんですよ。ドッターという職業になった者の宿命ですね、本当にキツイです。

ドット絵の楽しさであり、メリットでもあるのは、「曖昧な表現」が可能なことでしょうか。その曖昧な表現を作るところが楽しいんです。確かにサイズや色数などの制限は多くあります。ですが、その決まりの中であれば自由に描けるワケです。決まりの中の自由という表現も矛盾してるような曖昧さがありますが(笑)
曖昧な表現というのは、何もあやふやに誤魔化したものと言う意味合いだけではありません。見た目にデフォルメを強く加えたり、色味にメリハリをつけたり、と要素を盛り込める状態が「曖昧」だと思います。その曖昧さを最大限に表現するのはドット絵だけの楽しさです。
また、ドット絵を打つ(描く)ことに関して言えば、気軽に始められるところもメリットではないでしょうか。Windows標準のペイントでも打てますし、無料のソフトで良いものがあると聞きます。なにも、有料の良いソフトがあれば良い作品ができるわけではないです。
必要なのは根気、根性、ドットに対する愛ですね(笑)


――デメリットの“時間がかかる”というのもドット絵衰退の要因として挙がると思いますが、直接携わっていた立場からすると、実際のところはどうだったのでしょうか。


確かに、現代では衰退していますね。ゲームで例をあげれば、まずハードとソフトの両ウェアの進歩により表現法が変わりました。現在ではドット絵で表現する必要性が少なくなってきています。制限されていた枠が拡大し、リアルな表現が可能となり2Dから3Dへ、ドット絵に代わってCGになりました。ただ、ポリゴンにも処理能力の都合等でドット絵が用いられていることが多いですね。低価格なハードウェアや携帯アプリゲームなどでは、処理能力や制限されたピクセル数と色数の都合で今でもドット絵が使用されているなど、まったく需要がなくなったワケではないのですが、すべてをドット絵で表現していたような頂点を極めた時代ではないのが現状です。

製作の話をすれば、例えばドット絵は2Dに限られますが、ポリゴンよりも細かな描写が出来ます。ですが、ドット絵は制作に膨大な手間と時間がかかります。ポリゴンの方が「早く安く」という結果が背景にありますね。もちろんポリゴンも3Dのモデル製作に手間も時間もかかります。ですが、モデルが完成すればアニメーションの製作は圧倒的にポリゴンが優位です。
ドット絵はアニメーションさせるならば必要な枚数分のドット絵を必要な枚数打たなくてはなりません。原画やデザインに修正が入れば、今まで打ったドット絵のすべてを修正しなければならないとか、製作途中でキャラ自体がボツになったのでデータ抹消処分とか、泣ける事もありました。ポリゴンであればたとえ修正が入っても、一部修正で済みますので、こういった面でも製作に時間の差は凄くあると思います。

人材的な面で見れば、業界としてはドット絵全盛期に活躍したようなドッターは現在では少ないのではないでしょうか。製作の際に、高い技術を持つドッターを今揃えるのは難しいことかもしれません。衰退の影には「作らない」とは別に「作れない」という状況も大げさな話ではないかもしれません。ちなみに、私はそこそこレベルのスタッフだったというか、どこにでも居る様なって感じだったですね(笑) 衰退はしてもまったく無くなるということは無いと思いますが、でも、元ドッターの立場で想うと、衰退している現状はとても寂しく思いますね。


――ありすさんは、ちょうどドット絵からポリゴンへの移り変わりを現場で見てきたかと思いますが、ポリゴンゲームが出始めた頃、ドッター仲間ではどのような声が聞かれたのでしょうか。


ドッターと3Dスタッフは仕事上で実は仲が良かったのですよ。先にも少しだけ触れましたが、ポリゴンにもテクスチャにドット絵を使用するのでよく話をしました。その後、ドッター同士での話は決まって、「時代が変わったねぇ」から始まって、今後のドット絵の方向性などについての話などですね。
ドッターはドットを打って描くのが仕事です。ですが、新しい表現法により我々ドッターの舞台も変わるかもしれないなど、ちょっと悲しい話もよくしましたね。実際、その後にコンシューマーゲームという舞台からパチンコなどのちょっと分野の違う舞台へ移っていくスタッフやチームも居ました。
不安は3Dスタッフにもあったようです。表現による違いへの不安と興味の話がメインといったところでしょうか。


――ポリゴンという新しい表現法の登場で対抗意識などは…。


少し競い合う気持ちはありましたね(笑)
「ドット絵だったらこう表現する!」「ポリゴンだとこんなことができる!?」「だったらドット絵はこうよ!」
などと盛り上がって色々遊び心もありましたね。
シリーズ物も増えればドットだけではなく、ポリゴンの物が別にできたりするんですが、仕事の片手間にポリゴンにしか居ないキャラをドットに落とし込んで登場しないキャラを登場させるなんて遊びを時々してましたね。
ドッター同士ではそうやってドット絵の価値を話し合ったことがあります。次世代の表現法についての否定的な話の内容はなかったですね。むしろ、ドット絵とはまったく違う表現法に興味津々でした。


――先ほどお話しがありましたが…今も携帯ゲーム等においてはドット絵が使用されていますが、全盛期と比べてドット絵の印象は違いますか?


私は特にドット絵としての印象の違いは感じますね。
ドット絵自体の解像度はなにも変わりません。表示するものがTVサイズか携帯の液晶かの違いだけ。当時と同じか真似事かといったところでしょうか。全盛期のような活気というか、熱意がないように思えました。
でも、すでに衰退の一途にあるものには、まったく新しいモノを作るよりも更に難しいことだと思います。見た目には何も変わらず、だけど心が違う…あやふやな答え方ですが私はそのように感じます。


――ちなみにありすさんが、このドット絵は凄いと思ったり、印象に残っている作品はありますか?


衝撃を受けたのがATLUS様の作品でセガサターン用ソフトの「PRINCESS CROWN(※1)」というアクションRPGです。デフォルメ、色使い、アニメーション、あれだけ完成された作品は他に出会うことはなかったです。いつか、あの領域に達したいという気持ちは当時ありましたね。すごく勉強になった作品でした。

プリンセスクラウンPSP

※1:「PRINCESS CROWN」は1997年にセガサターン用ソフトとして発売。2005年にはPSPにて移植版が発売されている。


他には…そうですね、SNK(※2)様の「THE KING OF FIGHTERS」シリーズなどの格闘ゲーム。これはですね、凄いんですよ! 何が凄いかって、キャラクターはもちろんですが、ゲーム内に登場するすべてのグラフィック、キャラクターの異常な多さも凄いですが、オープニングのクレジットとかロゴもぜーんぶすべてのシーンをドット絵で打っているんです。凄くないですか? 全部ですよ、全部! コスト、スタッフ、時間的に考えると今じゃ狂気の沙汰じゃないですね。でもですね、昔の製作の仕方そのままを貫き通してるんです。最高のものを作るために一切の妥協をしない熱意というか情熱というか、そこにの誇りを感じます。うまいから凄いのではなく、心意気が伝わるのがドット絵だと思うんです。だから本当に凄いと思うのですよ。

KOF XII 2D DOT GRAPHICS GALLERY(KOF XII 2Dドットグラフィックスギャラリー)

△SNKプレイモアでは最新作「THE KING OF FIGHTERS XII」のドット絵ギャラリーを公開。ゲームで使用されているドット絵やグラフィックの作成過程を見ることができる。

※2:人気格闘ゲーム「ストリートファイター」シリーズを輩出したCAPCOMと2D格闘ゲームの土台を築き上げてきたSNK。2001年に倒産したものの、現SNKプレイモアに引き継がれ、人気シリーズとなっている「THE KING OF FIGHTERS」シリーズは現在も新作がリリースされている。


――最後に、今後はドット絵はどのようになっていくと思いますか?


私はもう業界から引退した身ですので、正直なところ業界でのドット絵が現在どうなっていっているのかはわかりません。衰退の道をたどっているのは間違いありませんし需要こそなくなったもののドット絵自体が無くなることは無いと思います。
ハードとソフトが進化するように、3Dなどの映像技術などはまだこれからどんどん進化していくでしょう。でも、業界で需要がなくなったから終わりというワケではないですし、愛好家たちの手で守られていくのだと思います
ドット絵は進化はもうできないけど、完成されたアートのひとつだと思うんです。誰もが気軽に始められるし、アナログ等の絵に自信のない方でもドット絵はそんな心配は要りません。インターネットが普及した現在なら、誰もが作品を公開してアドバイスをもらいスキルアップもできます。そのドット絵の世界を業界ではなく我々ユーザーが盛り上げていけるアートとして今後は展開していくのではないでしょうか


業界から身を引いたとはいえ、ドット絵全盛期からポリゴン・CGが主流となる時代の移り変わりを現場で見てきたありすさん。今回お話しを伺って、ありすさんの持つドット絵に対する愛情というものがヒシヒシと伝わってきました。辛い業種ではあったとありますが、それでも愛情をたっぷり注いでドット絵を打ってきたドッターがいたからこそ、今でもドット絵に魅了される人がいるのではないでしょうか。

written by トレンドGyaO 編集部
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