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行った気になる世界遺産 (69) 「タージ・マハル」の造形美にも勝る王の愛--完全性の崩壊は憎しみゆえに

7/17(月) 6:00

行った気になる世界遺産 (69) 「タージ・マハル」の造形美にも勝る王の愛--完全性の崩壊は憎しみゆえに
アジアの世界遺産と言えば、「タージ・マハル」を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。インドにある白亜の霊廟は、その美しさで多くの観光客を魅了し続ける一方、日本からだと少し遠いイメージも。今回の登場人物は、カレーレストランを経営する50代社長。先日の研修旅行で訪れたインドについて、行きつけの飲み屋のママに語っています。

○50代社長、かの王と我が身を比べてみる

「しっかしタージ・マハルってやつはスゴいんだよ。巨大で真っ白で、遮るものがなくて。あれにはインド人もびっくりしてたな。ガハハ。きっとママもびっくりするよ。建物だけじゃなくて、その前の庭園もきれいに左右対称になってるんだ。なんかこの世の風景じゃないみたいだったよ。

ほら、写真見てよママ。すごいきれいでしょ。昔の王さまが、愛した妃の死を悼んで贅の限りを尽くして造り上げたんだって。妃は若くして亡くなったらしく、王の悲しみはひとしおだったそうだよ。国が傾く程の金をつぎ込んで、この傑作が完成したとは、今も昔も芸術は金食い虫だねぇ。

しかもこの王さま、後に自分の息子に反逆されて、王位を奪われてしまったんだって。1km離れた別の城に幽閉されて、そこから遠目にタージ・マハルを見る晩年だったらしい。切ないね。妻が出て行って息子がヤンキーの俺なんてまだまだだよ。ねぇママ? えっあんたも結構切ないって? ほっといてくれよなぁ。

そんな左右対称が特徴のタージ・マハルで唯一、対称性が崩れた場所があるんだ。それが、妃の棺が安置されてる部屋。父を憎む息子が、父の棺を無理やり妃の棺の隣に置いちゃったんだって。タージ・マハルの完全性ここに崩壊せり、ってことなんだけど、愛するふたりは死してようやく身を寄せ合うことができたんだ。いい話でしょ。俺も誰かと身を寄せ合いたいよ……ねぇママ? あれ、なんでグラスを下げちゃうの?? ねぇ! 」

激辛カレーなみのママの対応はさておき、タージ・マハルの用語解説、いってみましょう。社長は意外といいところ、見ていますよ。

巨大で真っ白
タージ・マハルは65m四方の大きさを持つ、白大理石の霊廟。庭園を含む敷地は、東西に約300m、南北に約560mに及ぶ。

インド人もびっくり
この社長のカレー愛は深い……。

左右対称
イスラム建築では左右対称で均整のとれた美が重視される。タージ・マハルもまた、建築だけでなく庭園も含め左右対称の構造がとられている。

この世の風景じゃない
4分割された庭園はチャハルバーグ(四分庭園)と呼ばれる、ペルシア起源の様式。この世のものとは思えないのは正しい感想で、イスラム教の聖典「コーラン」に出てくる天上の楽園を再現するための様式である。

妃は若くして亡くなった
ムガル帝国の最盛期を現出した第5代皇帝シャー・ジャハーンの妃ムムターズ・マハルは、1631年に36歳で亡くなった。シャー・ジャハーンの寵愛ぶりはすさまじく、国民に2年間喪に服すことを命じ、彼女のための廟タージ・マハルを建設した。「ムムターズ」がなまって「タージ」となり、この建物がタージ・マハルと呼ばれるようになったといわれている。

国が傾く程の金をつぎ込んで
当時のイスラム世界から優秀な建築家・技術者を集結させ、22年をかけて完成したタージ・マハルには相当な費用がかかったといわれる。遠くフランスやイタリアからも金細工職人や宝石商を招聘(しょうへい)していた。

自分の息子に反逆されて
あらゆる国、あらゆる歴史がそうであるだろうが、ムガル帝国における皇位継承の歴史も家族間の血なまぐさい物語の連なりである。シャー・ジャハーンも自身の3男アウラングゼーブによって幽閉され、不遇の晩年を過ごした。

1km離れた別の城
シャー・ジャハーンが幽閉されたアーグラ城は、タージ・マハルから1km上流に位置する赤砂岩の城。タージ・マハルの白とコントラストをなす「赤い城」である。アーグラ城も世界遺産に登録されており、観光客はふたつの世界遺産を一日で回ることが可能だ。

妃の棺が安置されてる部屋
ムムターズ・マハルの棺の隣にひとまわり大きいシャー・ジャハーンの棺が並ぶ。観覧できる部屋の棺はレプリカで、本物は一般公開されていない地下に同じように安置されている。

○世界遺産データ

『タージ・マハル』。文化遺産。1983年登録。インド。

○筆者プロフィール: 小俣 雄風太(おまたゆうた)

「世界遺産検定」事務局の編集広報部員。自転車ロードレースに魅せられ本場フランスに一年留学。その後イギリスのサイクリングアパレルブランドで広報を務め、世界各地で自転車に乗るうちに世界遺産を強く意識するようになる。検定を通じて世界遺産の魅力と意義を広めたいと奮闘中。

○世界遺産検定とは?
世界遺産の背景にある歴史、文化、自然等の理解を深め、学んだことを社会に還元していくことを目指した検定。有名な観光地のほとんどは世界遺産になっているため、旅の知識としても役立つと幅広い世代に人気。
主催: 世界遺産アカデミー
開催月: 3月・7月・9月・12月(年4回)
開催地: 全国主要都市
受検料: 4級3,000円、3級4,500円、2級5,500円、1級9,700円、マイスター1万9,000円、3・4級併願7,300円、2・3級併願9,500円
解答形式: マークシート(マイスターのみ論述)
申し込み方法: インターネット又は郵便局での申し込み
その他詳細は世界遺産検定公式WEBサイトにて。
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