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剣菱、菊正宗から獺祭まで 1960年以降の日本酒ブームの系譜

4/12(土) 16:00

 現在、販売量はピークの1975年から3分の1に落ち込み、縮小傾向にある日本酒市場だが、これまでの歴史を振り返ると、時代によってブームとなる日本酒があったことがよくわかる。日本酒研究家・松崎晴雄氏の監修のもと、1960年代以降の日本酒ブームの系譜をたどってみよう。

【1960~70年代】「酔うために飲む」昭和の銘酒

 時あたかも高度経済成長真っ只中。バリバリ働く昭和のモーレツ社員は、仕事が終われば味わうことなどそっちのけで酔うために飲んだ。家に帰れば晩酌が日課となり、酒屋は一升瓶が入ったケースを各家庭に届けた。

 当時は級別制度で特級、一級、二級の3段階に区分けされ、一般家庭では飲み応えのある一級と二級が好まれた。辛口をアピールした本格派の「剣菱」「菊正宗」「白鷹」(すべて兵庫)が飛ぶように売れ、文化人やマニアに愛された樽酒の「樽平」(山形)が大ブレイクした。

【1980年代】日本中を席巻した地酒ブーム

 1973年のオイルショック以降、低成長時代に突入した日本経済。世の中が落ち着くに従い、醸造アルコールで3倍に増量した三増酒などへの不信が本物志向を刺激し、本醸造や純米酒が登場。「ディスカバー・ジャパン」をコンセプトに当時の国鉄が大々的にキャンペーンを展開すると、地方の地酒が注目されるようになった。とくに希少価値の高い銘柄は・幻の酒”と呼ばれてもてはやされた。

「越乃寒梅」(新潟)を筆頭に、「一ノ蔵」「浦霞」(ともに宮城)、「梅錦」(愛媛)などが地酒ブームの花形となった。

【1990年代】バブルの到来とともに生まれた吟醸酒ブーム

 バブルが頂点を極める頃から、淡麗辛口の酒を冷やして飲む吟醸酒ブームが到来。新潟の「上善如水」や「久保田」が脚光を浴びた。一方、昔ながらの酒造りの手法である山廃で造られた石川の「天狗舞」や「菊姫」が人気を呼んだ。

 背景にあったのは級別制度廃止後に向けた動きだった。1990年に「特定名称酒」と「普通酒」を分類する制度が導入され、1992年に級別が廃止されると、かつての「特級」「一級」「二級」に「特撰」「上撰」「佳撰」など、独自の名称を付ける蔵元も現われた。

【2000年代】若い蔵元が造る起死回生の銘酒

 ワインや焼酎がもてはやされ、杜氏の高齢化が問題視されるなど、日本酒業界は閉塞感に包まれていた。そんな中、若い世代を中心に「蔵元自らが積極的に酒造りに関わる」という新しい試みが始まった。

 山形の「十四代」を筆頭に、福島の「飛露喜」など、若い蔵人が同年代の若者に向けて独自の銘柄を発信。また、「酒は燗で飲むのが粋だ」と売り出した福島の「大七」も評判を呼んだ。一方、純米酒に似た精米歩合75%の「米だけの酒」も人気を集め、多くの蔵元がラインアップに加えた。

【2010年代】スパークリング、にごり酒、磨かない酒

 欧米で沸く空前の和食ブームを受け、世界市場を視野に入れたブランディングをする銘柄が登場。その筆頭が山口の「獺祭」(だっさい)や愛知の「醸し人九平次」だ。

 一方、ワインや焼酎、ハイボールなどに対抗するため、酸味の効いた酒やスパークリングの銘柄も登場。その先駆け的な存在の「すず音」(宮城)やどぶろくを思わせるにごり酒「生もと(「もと」は酉偏に元)のどぶ」(奈良)、さらには精米歩合80%という昔ながらの日本酒として話題の「紀土」(和歌山)、「亀齢」(広島)など、インパクトのある銘柄が続々と現われている。

※週刊ポスト2014年4月18日号


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