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尼崎連続変死事件の角田美代子、その人物像に迫る

1/5(日) 11:20

 犯人が捕まったにも関わらず、未解決のまま忘れ去られそうになった事件が存在する。尼崎連続変死事件がそれだ。兵庫県尼崎市を中心に複数の家族が長期間虐待、監禁、殺害され、死者・行方不明者は10名以上。日本の犯罪史上、稀に見る大事件でありながら2012年12月、主犯格である元被告・角田美代子が兵庫県警の留置施設で自殺という衝撃の結末をもって幕を下ろしてしまう。

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 全容を解明する機会は永久に失われた。誰もがそう思っていたなか、ようやく一筋の光明が差す。尼崎事件に粘り強い取材で迫ったノンフィクション『家族喰い 尼崎連続変死事件の真相』(小野一光/太田出版)が刊行されたのだ。著者の小野一光は角田美代子の住居近くである阪神電鉄杭瀬駅周辺に何度も足を運び、事件の内容だけでなく美代子の人となり、生い立ちにまで深く踏み込んでいる。事件は何故起きたのか。『家族喰い』における小野の調査から、不気味な未解決事件の真実に迫ってみたい。

 そもそも角田美代子とは一体どんな人物だったのか。1948年、美代子は尼崎市に生まれる。美代子が小学2年のときに両親は離婚し、彼女は父方に引き取られた。左官の手配師をやっていた父は気性が荒く、家に出入りする若い職人たちを力でねじ伏せ、中学の時に美代子が問題を起こしても「どっちみちうちの(美代子)が原因やろ。もうええわ」と突き放したような言い方をする人間だったという。10代の頃に実母に仕事を紹介され働き始めるも、その仕事というのは売春。幼いころから青春期に至るまで、美代子は家族の絆や温もりといったものを知らずに育ったのである。

 美代子は家族の愛情に飢えていた。やがて彼女はその飢えを、どす黒い欲望へと転化させていく。他人の家庭を分断・解体する「家族乗っ取り」を美代子は始めるのだ。

 最初に美代子のターゲットになったのは猪俣家。母の兄の妻であった小春の葬儀に美代子は因縁をつけ、猪俣家の人々を脅迫し西宮市の高層団地に軟禁状態にしたのち給料を搾取、窃盗を強要するなどした。さらに親族たちをわざと挑発して、歯向かってきたものは自分の取り巻きを使って暴行を加え、周囲の人間に恐怖心を植え付ける。追い込まれた猪俣家は崩壊状態を迎えた。ある者はマンションから飛び降り自殺、あるものは心を病んで施設に入り名前を変えて暮らさざるを得なくなる。文字通り家族がバラバラになってしまったのだ。こうして暴力と恫喝により、美代子は複数の家族を破滅へといざなった。

 角田美代子が何よりも卑劣だったのは、乗っ取る家族のメンバーを互いに傷つけ合わせたことだ。「手を下さなければ、自分がやられる」という不安の種を埋め込み、子と親が、あるいは妹が姉に暴力を振るうように美代子は仕向ける。家族の絆がいとも容易く崩れてしまうことに、この事件のやるせなさがある。

 家族同士の傷つけ合いにはもうひとつ悲惨な面がある。「民事不介入」の名のもとに、警察が腰を上げなかったことだ。被害者が上手く美代子の目を盗んで警察に訴えようにも、「家族間の争いで具体的な事件性がない限り動けない」と言われてしまうのだ。こうして事件は2011年に美代子が傷害罪で逮捕されるまで、本格的な捜査がされることは無かったのである。

 尼崎事件における角田美代子の姿を追ってみると、まるで彼女が家族という存在を根絶やしにしようと躍起になっているように思えてくる。美代子は家族を破壊し、全力で否定しようとする。もしそれが家庭という、自分が手に入れることができなかったものへの憧れの裏返しならば、今まで怪物のように報道されてきた角田美代子が、妙に人間臭く見えてくるのだ。もちろん、それで美代子の犯した所業が許されるわけはないのだが。

 角田美代子の死後も、新たな犠牲者が存在する可能性が出てきたり、あるいは事件に関与していると思われる集団が検挙されていないなど、事件はまだまだ続いている。

著者の小野は言う。「忘れられないようにするためには、誰かがしつこくするほかない。」

小野の“家族喰い”の真相を追う調査行に終わりはなさそうである。

文=若林踏

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