Amebaニュース

ジャージが常にはだけているのは、いつ風が吹いてもなびくようにだ「大東京トイボックス」完結記念レポ

10/2(水) 11:00

「完結して、皆さん涙腺が緩んでいるところかと思います。『大東京トイボックス』完結! おめでとうございまーす! 乾杯ッ!!」

かんぱぁーーーい
おめでとーーーー
おつかれさまーー

乾杯の音頭を務めたブルボン小林の発声とともに、主人公・太陽の好物であり、作者うめが自腹で用意した「コイケヤのり塩」とグラスをかかげる150人超のトイボファン。会場の魂は、間違いなく合っていた。

ゲーム業界を舞台にした働く大人たちの群像劇として人気を集め、2012年のマンガ大賞で2位にも輝いた『大東京トイボックス』。「週刊モーニング」連載時(前作『東京トイボックス』)から数えると足掛け8年のロングラン連載となったこの作品も、7月30日に発売された「月刊コミックバーズ9月号」で大円団を迎えた。そして先日、『大東京トイボックス』最終10巻が発売(短編集『大東京トイボックスSP』と同時に9月24日発売)されたことを記念し、9月29日、新宿ロフトプラスワンでトークイベント「仕様を一部変更する!! ナイト」が行われた。

作者「うめ」こと、小沢高広(脚本・演出担当)と妹尾朝子(作画担当)の二人が、ゲストを交えて語り合う4時間超。
第一部はコラムニスト・ブルボン小林による【トイボ・末端通信】。東京FMでレギュラーを持つ、マンガにまつわる“誰も注目しないであろう”末端の情報をすくいあげる番組「コミック末端通信」の出張版だ。
第二部はスタジオG3のモデルでもあるゲーム会社・アクワイアの代表・遠藤琢磨と、サイバーコネクトツー代表・松山洋を交えての【ゲーム屋から見た大東京トイボックス】。
そして第三部は、「ビッグコミックスペリオール」で連載中の『機動戦士ガンダム サンダーボルト』が話題の漫画家・大田垣康男と、『怪盗ルパン伝 アバンチュリエ』が今年、「イブニング」から「月刊ヒーローズ」へと(トイボのように)移籍を果たした森田崇を交えての【漫画家から見た大東京トイボックス】。

コラムニスト、ゲーム業界、マンガ業界。三者三様の視点から、改めて『大東京トイボックス』の魅力を振り返っていく。
魅力と言ってもひとことで言い表せないのが『大東京トイボックス』。ゲスト登壇者がそれぞれ挙げた「好きなシーン」がひとつも被らなかったところがそれを物語っている。それぞれ3つ挙げた中から、ひとつずつピックアップして振り返ってみたい。

《本気で怒るとほほえむんだよねー あの人》(ブルボン小林セレクト/大東京トイボックス2巻・18P)
コラムニスト・ブルボン小林のオススメシーンは、仙水伊鶴が七海姐さんを評したこのセリフだ。
「何気ないセリフだけど、活字になったときにハッと気づかせる力がある。『トイボ』は名言・至言・金言ばかりで、真似したくなるセリフが多い!』(ブルボン小林)
ご存知の方も多いと思うが、ブルボン小林とは、芥川賞作家・長嶋有の別名。芥川賞作家に「真似したい」言わせる『トイボ』の台詞力に、会場も「うんうん」とうなずく人ばかり。

ゲーム業界の二人が選んだシーンは、作り手ならではの「プライド」にまつわる場面だ。
《ゲーム屋だからな》(遠藤琢磨セレクト/大東京トイボックス9巻・P126)
遠藤は「会社を潰しかけたことがある」という自身のエピソードも振り返りながら、「自分の核心を突いているというか。(自分でゲームを作っていても)とどのつまりは、この「ゲーム屋だから」に戻ってくる」と、仕事へ臨むスタンスとともに、このセリフへの気持ちを打ち明ける。
《ったく どいつもこいつも すんなりたぁ作らせてくれねぇみてぇだな》(松山洋セレクト/大東京トイボックス7巻・P68)
そして松山は、ゲームを作る「難しさ」を表した太陽のセリフを抜き出した。
「遠藤さんも私もそうだけど、作ってる側の人間には、本当にこういうことが多い。ゲーム屋としては、おもろいゲームを作りたいだけ。でも、本当にすんなりと作らせてもらえない。もちろん、世の中の流れとか、法律が変わったりとか、自主規制の問題とかもあるんですけど、本当につまんない大人たちの都合で、しかも子供たちにはとてもじゃないけど説明できないようなこと、説明したら殺されるようなことばかり……ホント、今日はこれが一番言いたいんですよ!!」

漫画家チームの二人も、漫画家らしい視点で好きなシーンを解説する。
金田正志の帰還(大田垣康男セレクト/大東京トイボックス7巻・P197)
会場アンケートでも、「好き」と答える人が一番多かったというトイボの名シーンのひとつ。
「悔しいけど、泣かされました」という発言は、同じクリエイターであるからこそ重みがある。

《大丈夫 私が上手に使いこなしてあげるって言ったでしょ》(森田崇セレクト/大東京トイボックス6巻・P61)
「この場面、いい??」という小沢の疑問に対し、森田が待ってましたとばかりに選んだ理由を明かしていく。
森 田「ご夫婦でやってるじゃないですか? その辺の話をやっぱりお聞きしたくて。本の中でも、夫婦二人で漫画を描くことに対しての“馴れ合い”について触れていますよね(※)。もちろん、「イコール」だとは思わないけど、どうしたって重ねちゃうんですよね、お二人を太陽と月山ちゃんに」
※『大東京トイボックス5巻』表2《二人で漫画を描いていると「馴れ合いになりませんか?」とよく聞かれます。この巻はその質問に対するひとつの回答だったりもします》

この森田の発言に対し、「馴れ合いになればいいんですけどね……ひどい罵倒ばかりですよ」と、妹尾がトイボ創作秘話、というよりも愚痴をこぼしていく。

妹 尾「編集とマンガ家でもあることだと思うんですけど……でも、編集者はこんなヒドいこと言わないよなぁと(笑)」
大田垣「妹尾さんは、やり返したりしないの?」
妹 尾「ネームのときに入っていた決めゼリフが、私の絵が入った後に『こういう表情なんじゃ、このセリフじゃないよな』と変わる時が、やり返したことになるんですかね」
小 沢「言った通りに描いてこなくても、こちらの想定よりもいいモノが上がって来たらやり返されたと一緒ですよ。僕は結果として、いいものができあがればそれでいいんで。僕が書いたシナリオを、まんまその絵を描かれちゃつまんないんですよ」
森 田「原作者の人って、みんなそれ言いますよね(笑)」
小 沢「普通、原作者ってシナリオを書いて編集者に渡して、そこからネームができあがったら、その後は口を出せない。でもウチの場合は、最後の最後まで僕が口を出していくので、僕はそこの叩き合いというか、殴り合いがすごく楽しいですね」
妹 尾「本当に“仕様変更”があるんですよ。だから私、G3のスタッフの気持ちがよくわかります」

「仕様を一部変更するナイト」で飛び出した「現実世界での“仕様変更”エピソード」に、ドッと沸く新宿ロフトプラスワン。
そして会場が別な意味で盛り上がったのが、うめ・大田垣・森田による、即興イラスト大会だ。
脚本担当・小沢による月山ちゃん描写までは笑いが絶えなかったが、大田垣・森田の両名がペンを持つと会場は一瞬静まり返り、輪郭ができあがっていくとともに「おぉぉぉぉお」という溜め息にも似た歓声が上がる。

まず大田垣が描いたのが【依田敦史・金田正史】の師弟コンビ。
「これは見ちゃうわ……。すみません。この色紙はプレゼントには出しません! ウチの家宝にします! 凄いなぁ……」と小沢・妹尾の両名も溜め息まじりに語る。

そして森田は、【天川太陽・仙水伊鶴】という宿命の二人を描く。
太陽の髪の毛を描きながら「坊主頭もいいんですけどね。新1巻で坊主って、最初ビックリしましたよ」と森田がつぶやくと、小沢が「新條まゆさんが以前、『いい男には、謎の風がふく』とテレビ番組で言っていたんですが、坊主頭はそれが使えないんですよね(笑)。その代わり、太陽はジャージの前を常にはだけさせているんです。アレは、いつでも風が吹いた時になびけるようになんです」と、またひとつ裏設定を明らかにする。
そして出来上がったイラストを見て、「もし妹尾が倒れたら、続きをぜひ!」とお願いする場面も。

続き?
そう、完結した『大東京トイボックス』だが、実はまだまだ「続き」があることが、この日のイベントで明らかにされた。
小 沢「ドラマ公開にあわせ、続編というわけではないですが、しばらく番外編が『コミックバーズ』に載ります。想定しているのは、若い頃の太陽と仙水の話です。(版元である)幻冬舎からは、ドラマ化の間に単行本一冊あげろ! という無茶な注文が来ています(笑)」

ゲーム業界の二人も、続編にエールを送る。
松 山「今日は完結記念のイベントですが……新しい主人公でも、新しい環境でもいいですから、私たちゲーム業界全体が、東京トイボックスの続編を望んでいます!」
遠 藤「追加取材ならいつでも受けますよ」

10月5日(土)から始まるドラマ版「東京トイボックス」(テレビ東京系※23時55分~)にあわせ、なんだかますます“いい風が吹いている”「トイボ」とうめの二人だった。
(オグマナオト)

【関連リンク】
『大東京トイボックス』最終回『東京トイボックス』ドラマ化決定。うめ緊急インタビュー(エキサイトレビュー) - エキサイトニュース(1/4)
「大東京トイボックス」の企みとは?〈うめ×加藤レイズナ1〉(エキサイトレビュー) - エキサイトニュース(1/5)
「大東京トイボックス」「プリキュア シンドローム!」から見えたリーダーの条件〈うめ×加藤レイズナ2〉(エキサイトレビュー) - エキサイトニュース(1/5)
マンガでしか届かない震災があった『ストーリー311』(エキサイトレビュー) - エキサイトニュース(1/3)
ヤギは解体して食うのだ。沖縄の南の果て『南国トムソーヤ』(エキサイトレビュー) - エキサイトニュース(1/3)
エキサイトレビュー

エンタメ新着ニュース

編集部のイチオシ記事

この記事もおすすめ

エンタメアクセスランキング

注目トピックス

アクセスランキング

写真ランキング

注目の芸能人ブログ