日刊アメーバニュース

「藤井聡太」は何が違う? AI時代の新型天才棋士

2017年06月20日 08時02分
提供:デイリー新潮

 6月17日の「朝日杯将棋オープン戦」予選で藤岡隼太アマ(19)を下し、最多連勝記録「28」まであと1勝に迫った「天才」中学生棋士・藤井聡太四段。その快進撃は、現代将棋を揺るがす「AI」の発展と無縁ではなかった。ベテラン棋士すら圧倒する藤井四段の強さの秘密を、自身もアマ初段の腕前という村上政俊・前衆院議員が「新潮45」7月号で解き明かしている。(以下、「新潮45」7月号掲載「天才『藤井聡太四段』の将棋は何が違うのか」より抜粋)

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 藤井聡太四段の活躍に先立って注目を集めた将棋の話題といえば何といっても人間棋士とAIの対決だろう。最強ソフトとの呼び声が高いPonanzaなどはディープラーニング(深層学習)の手法を駆使して数年の間に加速度的に強くなった。今年開催された第2期電王戦には佐藤天彦名人がタイトルホルダーとして初めて臨んだが連敗。これはいったい何を意味しているのだろうか。

 一将棋ファンとしては無念ではあるが、単純に棋力のみを比較するとAIが人間を既に凌駕してしまっているという冷厳な事実が我々の前に横たわっているといえよう。

 実は、いま日本中を騒然とさせている藤井の登場も、AIの進化・発展と無縁ではないのだ。

■藤井将棋の特徴

 それでは藤井の強さはどこから来ているのだろうか。当初、藤井は終盤に強いという見方が強かった。一局の将棋の流れには大きく分けて3段階ある。序盤、中盤、終盤だ。藤井は詰将棋解答選手権で史上初めて小学生で優勝を飾っている。詰将棋とは王将を最短の手数で詰ますパズルゲームで、終盤の力を養えるためプロアマ問わず人気がある。藤井はプロも多数参加する今年3月の大会で3連覇を達成。飛び抜けた終盤力の持ち主だとみられていた。終盤に秘密ありという見方があったのは、先輩中学生棋士の足跡の影響もあったかもしれない。2代目である谷川の代名詞は光速の寄せ。寄せとは王将を詰ますための手順を指していくことで、その速度が光の如く早いことから呼ばれるようになった。3代目は羽生だ。羽生もデビュー当初は終盤の粘りで逆転勝ちを掴むという展開が多かった。一時代を築いた谷川、羽生といった先輩天才棋士たちも若い頃は序中盤には粗さがあり、ずば抜けた寄せの力や終盤の逆転でトップ棋士へと駆け上がって行ったのだ。

 ところが藤井が対局を重ねるうちに、持ち味はただ単に終盤が強いというだけではないということが明らかになっていった。羽生のデビューの頃と比較しても序盤や中盤の指し手が洗練されており、中学生とは思えない高い完成度を誇っているというのだ。司馬遷の「史記」に先んずれば人を制す後るれば則ち人の制する所と為るという有名な言葉がある。より平たくいえば先手必勝だ。藤井将棋の大きな特徴はここにあるといえる。機先を制する指し回しだ。

 背景にあるのは、現代将棋が直面する変化だ。将棋という疑似戦争を戦う駒には、核兵器級の破壊力を有する飛車、角行と呼ばれる大駒から、文字通り一兵卒の役割を果たす歩兵まで8種類あり、明確な役割分担が存在する。この盤上戦争にいま変革の大きなうねりが押し寄せており、藤井という新星の登場もこうした流れの中で理解することができる。

 現代の将棋においては、戦端が開かれるのが急速に早まっている。昭和の大名人大山の時代には、王将を矢倉に囲って防御を固めた上で、歩兵同士の小競り合いから戦端が開かれるのが作法だった。その後、王将の防御を固めようという流れはさらに強まり、穴熊囲いが大流行する。戦国時代の城郭でいえば、2重3重4重に堀を張り巡らせる構造に例えられよう。後北条氏の小田原城や、豊臣秀吉の大坂城をイメージすればいいかもしれない。王将を取られてしまっては元も子もないのが将棋だとすれば、こうした流れもなるほどと頷ける。

■AIの特長

 ところが現在は、王将の囲いは必要最小限に止めるのが主流になりつつある。本年5月の名人戦第5局などはその典型だっただろう。終盤まで名人佐藤の王将が動いたのは1手のみ、挑戦者稲葉(陽・八段)に至っては居玉(初期配置に王将が居続けること)だった。防御の堅牢さよりも重視されるのがスピード感だ。ここで活躍するのが、駒の中でも飛び道具担当の桂馬だ。例えば歩兵は一マス一マスしか進めないのに対し、桂馬はわずか3手で敵陣に飛び込むことができる。だが桂馬には「桂馬の高跳び歩の餌食」という格言がある。桂馬はスピード感があるものの、ミサイルや弾丸と同じく前方にしか進めず後戻りできないので、活用のタイミングを間違えると簡単に相手に捕らえられてしまう、という意味だ。早い段階での桂馬跳ねはこれまでは否定的に考えられてきた。しかし現在では桂馬を先手先手で活用することで戦端を開いて、場合によっては戦端をこじ開けて機先を制し、一気に相手を攻め倒すという流れができつつある。藤井も、桂馬を従来の感覚からすればかなり早く跳ねることで、自分のペースで戦端を開いてそのまま勝ち切るという将棋を多用。飛躍の原動力となっている。

 開戦のタイミングがこれまでよりも格段に早くなったのには、AIの影響がある。AIが矢倉や穴熊で王将をがっちりと囲うことはまずない。機先を制して攻め切るというAIの特長を藤井はうまく自分のものとしているようだ。ここでも大切なのはAIに同化するのではなく使いこなすという姿勢だろう。

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「新潮45」7月号では、藤井将棋の神髄について、さらに詳しく伝えている。

「新潮45」2017年7月号 掲載


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