日刊アメーバニュース

毒を判別できないフグが増えている…2千年の食文化を守るため、新たな戦いの始まりか!?

2017年06月19日 19時07分
提供:GIZMODO JAPAN

20170614_pufferfish_r.jpgImage: Kankitti Chupayoong / Shutterstock.comトラフグ


パリ協定から離脱してる場合じゃありませんよ。

今、とってもリアルに迫りつつある地球温暖化の影響のひとつに、海水温度の上昇が挙げられています。日本海の温度もご多分にもれず上昇してきている中、毎日新聞によれば、もともと日本海に住んでいた「ゴマフグ」が、水温が上がるにつれて北へと生息地を拡大し、ついには津軽海峡を渡って太平洋に進出していたことを水産研究・教育機構水産大学校の高橋洋准教授がつきとめたそうです。

太平洋には「ゴマフグ」とこれまたよく似た「ショウサイフグ」がもともと住んでおり、ふたつはそう遠くない昔まで同じ種だったせいか天然交配も可能。結果、ゴマフグとショウサイフグの「ハーフ」が大量に発生しているそうです。研究によれば、この「ハーフ」のうち75.6%がゴマフグのメスとショウサイフグのオスの子なんだそう。

さて、ここからが人間(特に日本人)にとって命取りになりかねない事態。ハーフたちと純粋なゴマフグ・ショウサイフグとの間には雑種第2世代の「クウォーター」も発生しているそうです。ゴマフグもショウサイフグも食用とされているものの、この「クウォーター」たち、見た目は純粋な種類とそっくりなくせに体のどこに毒があるのかわからない…。もし、純粋なゴマフグやショウサイフグと間違えられてクウォーターのフグが市場に出回ってしまったら、間違えて食べた消費者がフグ毒による中毒症状を引き起こしかねず、非常に危険です。

フグ毒の正体はテトロドトキシンと呼ばれる神経毒で、経口摂取では青酸カリの850~1,000倍の毒性を持つそうです。フグは種類によって有毒な部位が異なり、間違った調理法では毒に当たって死ぬ恐れもあるのでふぐ調理師という免許がないかぎり扱えません。しかし、厚生労働省によれば、素人調理で毎年50人ぐらいがフグ中毒を起こし、そのうち数人が命を落としているそうです。

ちなみに、フグの一番おいしいとされている部分は肝臓ですが、死亡例が多いことを受けて日本では1984年に全国で一律に禁止されています。それでも「肝だめし」する人が絶えないそうです。

いわば「魚のプロ」である漁師などの漁業関係者は、長年培った経験と勘をたよりにフグの種類を判別しているそうですが、もはや見た目だけでは判別できない雑種にはお手上げ状態。雑種と判別できた場合も、どの部位に毒があるか確定できないので、網にかかっても全部捨てられてしまうとのこと。

Marine Biologyに発表された高橋准教授の研究では、2012年から2014年にかけて茨城県、福島県と岩手県沖で252匹のフグを漁獲し、遺伝子を調べました。その結果、ゴマフグとショウサイフグのハーフが半数以上の149匹、さらに外見は純粋なショウサイフグなのに遺伝子解析では雑種とわかったフグが4匹いたそうです(おそらくクウォーターのフグ)。わからないまま食卓にあがってしまったら、まるでロシアンルーレット…。食品分析開発センターによると、プロでも見分けられない雑種フグの存在は、フグ食の存亡に関わる重大な問題といっても過言ではないそうです。

事態を憂慮した高橋准教授は、科学的な選別システムを開発するために雑種フグの体の特徴と遺伝子情報をペアリングし、データベース化を試み中。将来的には漁業者がスマートフォンなどで撮影した魚体の画像を送ると、模様などの違いによりコンピューターが自動的に雑種かどうかを判断するシステムの実用化を目指していると、別の毎日新聞の記事で語っています。

今後さらに地球温暖化が進み、ますますフグの雑種化が促進されるとしたら、この「鑑別めきき技術」はフグ食文化の存続の救世主になるかもしれませんね。


20170614_pufferfish_tessa_r.jpgImage: KPG_Payless / Shutterstock.comフグの刺身、てっさ


ちなみに、日本人のフグ食文化はざっと2,000年前から続いている歴史ある文化。なかでもトラフグの美味しさは重宝され、いかに毒をもたないトラフグを養殖できるか過去にもいろいろ研究されてきました。エサを工夫して毒がないフグの養殖に成功したケースもあるそうですが、日間加島ふぐ組合のサイトによると、無毒の養殖フグはストレスでお互いの尾びれをかみ合ったり、毒のあるフグと一緒にすると毒を自分のものにしようと襲う行動がみられるとのこと。また毒のあるフグからとった毒素を無毒のフグに与えると、免疫力が上がり生存率が高くなるそうで、フグにとって毒は大事なもののようです。


20170614_kusafugu_r.jpgImage: eye-blink / Shutterstock.comクサフグ


ところで、交雑すなわち悪というわけではありません。養殖に有用な種を作出するという観点から、フグの交配研究もされてきました。科学研究費助成事業データベースに掲載される長崎大の研究によると、興味深いことに種の組み合わせだけでなく、どちらの種が父か母になるかで子供がどちらに似るか影響するそう。残念なことに高級魚のトラフグと、釣りの外道でおなじみの、肉すら弱毒で基本的に食用とされないクサフグの場合。交配させると、父母どちらであろうとクサフグに似るという結果に。簡単な「ウマイ話」はないようで…。


・フグはフグの仲間から毒をチャージしている
・フグの毒が痛み止めのカギ?


Image: Kankitti Chupayoong, KPG_Payless, eye-blink / Shutterstock
Source: 毎日新聞 1, 2, 国立研究開発法人 水産研究・教育機構, 厚生労働省, Marine Biology, 日間加島ふぐ組合科学研究費助成事業データベース
Reference: 一般社団法人 食品分析開発センター, 日本水産学会, Wikipedia 1, 2, 3, 4

(山田ちとら)

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