日刊アメーバニュース

大企業には真似できない? 障がい者も外国人も活かされる人気中古タイヤショップチェーンの職場力

2017年05月14日 10時00分
提供:週プレNEWS

ここまで3回に渡って取り上げてきた宇都宮市の中古タイヤショップチェーン、アップライジングの数々の“ホワイト”な取り組み。そこには、本連載のタイトルでもある「こんな会社で働きたい!」と感じる要素がいくつもあった。

例えば、接客にウソがないこと。大手企業から同社に転職した岩田工さんは「この会社はタイヤの減りが心配な客には『まだ履けます』と正直に伝えてまるっきり商売っ気がない。だからお客様は喜び、社員はウソの営業トークがいらないから気持ちよく仕事ができる」と話した(第2回『人気中古タイヤ店の売らない精神とは?』参照)。

同社は社会貢献活動にも積極的だ。栃木県内すべての児童養護施設に関わり、物資や遊具の差し入れはもちろん、希望があれば就労まで受け入れる。親からのDVに苦しみ、児童養護施設で9年間を過ごした過去を持つ社員Aさんに“父親を許す”勇気を与えたエピソードは特に印象的だった(第3回『アップライジングが実践する社会貢献の本質』参照)。

さらに今、斎藤幸一社長がどうしても関わらなければならないと肝に銘じているのが、障がいを持つ人たちとの付き合いだ。

大手企業の場合、雇用するのは肢体不自由者や視覚障がい者など頭脳明晰な人を雇う傾向が強いが、アップライジング宇都宮店には知的障害と片目の視覚障害を持つ重複障がい者、1級の精神障がい者、発達障がい者などがいる。いずれも普通の企業では採用が難しいが受け入れた。

「僕はその人ができることが絶対にあると思います。片目が見えない人にはまず店舗の掃除をしてもらいました。でも距離感がないから、いろいろなものを落とすんです。それで、タイヤ交換やアルミ交換をやらせてみましたが…これもダメでした。

どうしようかと行き詰りましたが、いやいや絶対にその才能を活かせる仕事があるはずだと諦めませんでした。そこで輸出用のタイヤの仕分けをやらせてみたところ、これがうまくいったんです。すぐに種類やサイズを覚えて、実にテキパキと作業してくれるんです。やっと見つけたと」(斎藤社長)

会社設立時からのスタッフ・増山健太課長(32)も入社するまでは障がい者と接したことがなかった。そのため「ウチは接客業だけど、障がい者は大丈夫かな、ちゃんと働けるかな」との思いがあった。だが今は違う。

「精神障がい者は3級でギリギリ、社員同士やお客様と意志伝達ができると言われていますが、ウチで働くのは1級ですから不安はありました。でも、例えば缶の中に鉛やアルミのクズがたまると、とてもきれいに片づけてくれる。一緒に働くと、仕事を特化しさえすればこちらの声掛け次第で自分たち健常者以上に働くことを知りました」





太田店でも障がい者が働いており、斎藤社長は今後も雇用を増やすという。それは単に「障がい者のため」ではなく、健常者も後期高齢者も外国人(後述)も、多様なバックボーンを持つ人々がともに明るく生きる会社を作りたいからだ。

実際、アップライジングの店舗を視察すると、ちらほらと片言の日本が聞こえてくる。ベトナム人の従業員たちだ。

小学生や養護施設の子どもたち、障がい者などは身近にいた人たちだが、斎藤社長は遠い存在である途上国への寄与も考えている。途上国支援といった場合、大抵の企業がすることは「寄付」。アップライジングでも、タイヤやアルミホイールを1本販売するごとに20円を海外支援に取り組んでいるNPOなどに寄付している。

ただ、それ自体はそう難しい行為ではない。アップライジングは加えて「直接的な」支援に乗り出しており、技能実習生を積極的に受け入れる。当面の支援対象国をベトナムと定め、技能実習生を2016年から毎年3名受け入れているという。

とはいえ、技能実習生を受け入れる企業も少なくはない。そこで何がこの会社特有の支援かというと…。

「技能実習生って日本にはたくさんいますね。でも、彼らが技術を習得して帰国しても、それを活かす場がない。在日中に貯めたお金で家を買って、仕事は日本語通訳をするだけという、とてももったいない生き方をしている人もいる」

だから、と斎藤社長は言葉を続けたーー「彼らが習得した技能を活かすためにベトナムにアップライジング社を設立する」のだと。思わず、本当ですか?と尋ねると、「これは彼らのためだけにするのではありません。今後、日本を巣立つ技能実習生が真に祖国で役立つためのモデル事業にしたいんです」と胸を張った。

実際、ベトナム店立ち上げのために現地を何度も訪問し、合弁会社を作るためのライセンスを取得する一歩手前の段階まできている。もし、それが実現すれば、ベトナムで使い捨てられるアルミホイールがベトナムで再利用されるという、リサイクル社会の構築に貢献することになる。



かくして、高齢者、障がい者、外国人、児童養護施設出身者、引きこもり、元薬物依存症者など多様な背景をもっているアップライジングの社員。そこで、気になることを尋ねてみた。

―リストラとかしたことはないのですか?

「被災地へ炊き出しに行く前のアップライジングには、仕事への態度がどうしようもない人間がいました。解雇かなと思っていたところで、本人からも『もう辞めるつもりだった』と。それだけですね。経費削減のためのリストラはしていませんし、今後もしようとは思いません。

ここ最近、家庭の理由や自分の本当にやりたいことが見つかって辞めた社員もいますが、喧嘩別れではないので会社にちょくちょく遊びに来ています。アップライジングに縁があって繋がったひとりひとりがいるから、皆で人間力を磨いていけるのだと思います」

前出の増山課長もこう総括する。

「楽しい会社です。こういった客商売で他店では売れないとすぐに顔に出てしまいますが、うちはいつも笑顔。社員同士も仲がいい。また社員の意見は直接、社長に言うことができるのもいいところ。ウチの社長はワンマンじゃない。宇都宮店で大切なことを話し合って決めるのは、実は次長、主任、店長、そして僕の4人です。社長の役割は最後にそれを認めるかどうかなんです」

その増山課長が社内の活動でイチ押しだというのが「侍会議」だ。…侍会議?

「月に一度、お菓子を食べ、ジュースを飲みながら、従業員が自由に意見を言い合う会議です。大体、夕方5時半から夜10時半までを使うのですが、すげえ楽しいです。形式ばった会議じゃないから、みんなからいいアイデアが次々と出てくる。これも会社の売り上げアップに繋がっていると思います」

例えば、秋から冬、冬から春にかけてはタイヤの履き替えが必要になる。だが、家屋の事情で脱いだタイヤの保管場所に困っているユーザーは多く、数年前に「タイヤ預かりサービス」を開始するのだが、当初の申し込みは月に2、3人にすぎなかった。そこで侍会議で「何かないか?」とワイワイ話し合ったところ、いろいろな特典をつける「会員制」はどうだろうとの案が出た。

これが当たったのだ。例えば、年会費1万5千円を払うプラチナ会員であれば「1年間、脱着工賃無料」「日時と時間帯予約可能」「窒素ガス充鎮は何回でも無料」「ホイールクリーニング無料」「ラーメン食事券」などの特典が付く(年会費1万円のゴールド会員もあり)。これで募集をかけたところ、昨冬だけで150人、現時点で300人超が会員になった。



おそらく、こんなアップライジングの好況ぶりは他店には羨ましいに違いない。日本初となるドライブスルーでのタイヤ買取りシステムも査定から支払いまでに要する時間は最短で3分から5分。その買取りも14インチなら4本で2800円、16インチなら3600円といった最低価格(2017年5月現在)を明示しているので、安心して売ることができる。もちろん、メーカー品や傷が少なかったり、タイヤの山がしっかり残っているものは、それ以上の高価買取りになる。

客にはジュースを差し入れ、雨が降っていれば、傘をもって車まで駆けつける。外出が難しい高齢者などのため、出張でのタイヤ交換サービスも始めた。

余計な心配ではあるが、これだけ他にないサービスを展開しては、地元の同業者を食ってしまわないかという思いも…。だが、増山課長は「それはない」と断言する。

「実は群馬県に太田店を出店する時も、それは配慮しました。去年なんですが、社訓に従い、社長がライバル会社も『許す』と決めたんです。自分たちだけが儲かろうと在庫を独占するのでなく、むしろこちらから歩み寄って、在庫の共有を呼びかける営業をかけたんです。そうすると、双方にない在庫を補完するという協力関係ができました」

アップライジングは今後、福島県や茨城県への進出も目論んでいるが、出店先では必ず地元業者も潤うWIN―WINの関係を目指すという。

同社を設立して2ヵ月後、斎藤社長は会社をやめて同業者として独立した弟を憎み、その後、招かれた結婚式では「あんなライバル会社は潰す!」と叫んで弟のハレ舞台を台無しにした過去がある。だが、様々な経験を経て、斎藤社長は変わった。人を許すことの大切さを知った。だから今、こう明言するのだ。

「今だったら、袂(たもと)を分けた時の弟の会社とも友好関係を築けたはずです」

この他、昨年だけでも、訪問型病児保育を実践するNPO法人「リスマイリー」を設立したり、まだまだ使える中古タイヤの普及を目指す「世界リサイクルタイヤ研究同志の会」も立ち上げたり…その疾走は留まることを知らない。

だが、掛け声だけではなく、まず社員を大切にし、取引先を、客を、地域社会を大切にして、誰もが幸せになれる社会の在り方を真剣に考え、実践していることは評価されるべきだ。たかが中古タイヤーーだが、それを通じて実現できることは無限にある。

(取材・文/樫田秀樹)

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