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瀬古利彦が衝撃提言「箱根駅伝に42.195km区間導入を」

2017年03月07日 11時00分
提供:NEWSポストセブン

 2月26日に開かれた東京マラソンではウィルソン・キプサング(34、ケニア)が2時間3分58秒で優勝。終わってみれば上位7人は全員、アフリカ勢だ。

 世界との差を見せつけられたのは、正月の風物詩となった箱根駅伝で脚光を浴びた若手選手たちだった。

 2012年の箱根から3年連続区間賞の設楽悠太(東洋大卒、Honda)は日本記録(2時間6分16秒)を上回るペースでレースを進めたが、30km以降は失速して11位(2時間9分27秒)。花の2区で連続区間賞(2015、2016年)の服部勇馬(同、トヨタ自動車)は13位(2時間9分46秒)に終わった。日本人トップの井上大仁(山梨学院大卒、MHPS)ですら2時間8分22秒と、トップと4分以上の大差だった。

「日本のマラソンは今までで一番弱い」と危機感を顕わにするのは、昨年11月に日本陸連の「マラソン強化戦略プロジェクト」のリーダーに就任した瀬古利彦氏(DeNAランニングクラブ総監督)だ。現役時代、国内外のマラソンレースで15戦10勝の戦績を残したレジェンドは東京マラソン直前、本誌の取材にこう語った。

「世界が2時間2~3分の記録で走っているのに、日本は8~9分台で争っている。30年前の記録ですよ。箱根の距離(1区間約20km)を走れる選手がたくさんいても、マラソンは全く別の種目です。駅伝のついでにやるんではなく、意識も生活も42.195kmにかける“マラソンの職人”を育てないと手遅れになる」

 そこで具体的に何を変えるのかを問うと「仮にできるなら」と前置きしたうえで、大胆な“改革プラン”を明かした。

「箱根にフルマラソン区間をつくったらいいんです。今の復路の9区(戸塚~鶴見=23.1km)と10区(鶴見~大手町=23.0km)をつなげてアンカー区間にすれば難しくないでしょ。そうしたら各校が必ずこの距離の練習を始める。出場校のエースが挑めば、毎年20人のマラソンランナーが生まれるわけです」

 あえて記すが、瀬古氏の表情は大真面目だ。箱根駅伝の大改革による“マラソン強豪国復活”を考えているのである。

「はっきりしているのは宗(茂・猛)兄弟や私のような職人がいた時代に比べ、今は練習量が減っていること。1日70~80km走る練習を取り入れたりしないと世界には太刀打ちできませんよ。1992年バルセロナ五輪で金メダルを取った韓国の黄永祚に聞いたら、やはり80km走をやっていた。東洋人が世界に勝つには距離を走るしかない」(瀬古氏)

◆「ケニア人と同じ練習じゃダメ」

 そこには箱根駅伝が視聴率30%に迫る人気を誇っていながら、それがマラソン強化に全く結びついていないことへの複雑な思いもあるのだろう。

 ただ、箱根駅伝の強豪大学では実業団に劣らない最新の練習法が取り入れられている。箱根3連覇を達成した青学大の原晋監督(49)は、体幹トレーニング(青トレ)の導入で結果を出したことが知られている。佐久長聖高(長野)で大迫傑(リオ五輪5000m・1万m代表)らを育てた現・東海大の両角速監督も、最新の低酸素・低圧トレーニングを取り入れている。

 そうした流れにも、瀬古氏の信念は揺らがない。

「科学的トレーニングというのは、それはそれでいいが、練習量をこなせる体を作ってからでも遅くない。ケニア人は年中高地で暮らしているうえに生まれつきのバネが違う。同じ練習をしても歯が立ちませんよ」

 結論を急ぐように、瀬古氏はやおら両手を広げた。

「まずはスタミナをこのくらい作る。そしてちょっとスピードを意識した練習をする(両手の空間を狭める)。そしてまたグッとスタミナをつける練習をして……と繰り返していけば体はできてくる。そこからですよ」

 瀬古氏のイメージは仕上がっているように見えたが、本当に今のマラソン界を救う改革案になり得るのか。「42.195km区間導入論」の是非を識者たちに聞いた。

「劇薬だけど妙案ね」と賛意を示すのは、1984年ロサンゼルス五輪に女子マラソン代表として出場したスポーツジャーナリストの増田明美氏(53)だ。

「高校3年までは長くても10kmのレースまでしか走っていないのに、大学に入っていきなりフルの距離まで伸ばすと選手の怪我が心配です。でも、とにかくマラソンは距離の練習をしないと世界が見えない。それは、競技者だった実感として理解できる。瀬古さんが現役だった頃の練習風景は、修行僧のようでしたから」

 かつて瀬古氏を指導した中村清・早稲田大監督(当時)は、陸軍中野学校出身の元軍人だった。合宿中の千葉県の砂浜で、部員たちを前に「お前たちが世界一になれるならこの砂も食える」といって砂を口に放り込んだ熱血漢。とにかく距離を積ませた。瀬古氏は練習量に裏切られることなく、大学3年次に出場した福岡国際マラソンで初優勝。

「ただ、この指導法は師弟関係が美徳とされた時代だからこそできた。情報も多く自由な今の若者はついてこないでしょう。そこでいうと、原監督は“若者のやる気を引き出す指導”がうまいのよ。町田の寮に行くと、選手が授業や彼女の話などをしながら、ずっとバランスボールで体幹を鍛えている。中村監督の頃はなかったスタイル。瀬古さんも、原さん世代の指導者と連携して新旧の指導法をうまく組み合わせてやってほしいわ」(増田氏)

※週刊ポスト2017年3月17日号


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