日刊アメーバニュース

トンネルも橋も崩壊寸前! 大赤字「JR北海道」を救う方法

2017年02月17日 11時45分
提供:デイリー新潮

■赤字175億円に、維持費が435億円

 昨年11月、営業距離の約半分に当たる10路線13区間を「単独では維持困難な路線」と発表し、大きな波紋を呼んだJR北海道。

 さらに今月8日には、上記のうち7路線8線区の今後20年間の維持費用(修繕・更新費用)の概算が、435億円にも上ることを公表した。

 折しもJR北海道の今年度の決算は、過去最悪の175億円の赤字となる見込み。もはやJR北海道の存続は風前の灯なのか――?

鉄道復権』(新潮選書)などの著書で知られる宇都宮浄人・関西大学教授(交通経済学)に話を聞いた。

■なぜ北海道庁の姿勢が変わったのか

――JR北海道の路線維持費用の概算を見て、どう思いましたか?

「トンネルや橋梁の老朽化、予想はされてましたが、やはり深刻ですね。今回の大規模改修線区一覧に入らなかった区間(※)をどうするかという問題も気になりますが、とにかく事故が起きてからでは遅いので、まずは発表された7路線8線区の大規模修繕・更新にしっかり取り組んでほしい」

※大規模改修線区一覧に入らなかった区間
日高本線(鵡川~様似間)
根室本線(富良野~新得間)
留萌本線(深川~留萌間)
札沼線(北海道医療大学~新十津川間)

――たたでさえJR北海道は万年赤字体質なのに、維持費が435億円もかかるのでは経営が成り立たないのでは?

「もちろんJR北海道単独では不可能です。だから、前にも申し上げた通り、線路や信号などのインフラ部分については国と自治体が資金面で支え、JR北海道は車両の運行管理だけに責任を持つ〈上下分離方式〉を導入すべきです」

――でも、民間ビジネスに税金を投入するのは、世論が納得しないのでは?

「〈移動の自由〉は、海外では基本的な人権の一つと考えられており、鉄道インフラの維持管理に公的資金を投入するのは当然のこととされています。日本でも、車やバスが走る自動車道路の建設費や維持費が公的資金で賄われていますが、それと同じことです」

――言われてみればその通りですが、鉄道会社の自助努力で何とかならないものでしょうか?

「JR北海道が昨年〈維持困難路線〉を発表した際、高橋はるみ・北海道知事が一切支援する姿勢を見せず、すべての責任をJRに丸投げするかのようなコメントを出したら、多くの道民から〈あまりに無責任だ〉と批判が殺到しました。もはやJR北海道の自助努力ではどうにもならないことに、道民も気づいているのだと思います」

「だから、北海道庁はネットワーキングチームを立ち上げ、2月7日に報告書を提出しました。それを見る限り、以前よりもJRを支援していく姿勢になったよう思われます。ただし、資料を詳しく見ると、鉄道に対しては〈自治体財政が厳しい〉など及び腰の記述が多いのに対し、高規格幹線道路については、〈一層の整備促進を図るべきである〉とあり、従来の自動車道路偏重の発想から脱し切れていません」

■「鉄道復権」は本当にありえるのか



――鉄道に拘らなくても自家用車やバスで移動すればいいということではないのでしょうか?

「中核都市を結ぶ都市間交通を鉄道から自動車交通に転換するというのは、輸送効率や環境、移動手段としてのクオリティを考えても、現代の先進国では考えられないことです。地域の足としてみた場合も、子供や高齢者は車を運転できませんし、冬場には道路が積雪・凍結するので、鉄道は信頼性の高い移動手段として有効です。それに北海道の場合、物流を支える動脈としても機能しており、今後トラックの人手不足が深刻になると、鉄道の役割は大きくなるはずです」

――そうは言っても、いまは国も自治体も予算に余裕がありません。

「現在、高規格幹線道路の整備に費やしている巨額の予算を、もう少し鉄道に回すようにすればいいでしょう。〈一層の道路の整備促進を図る〉場合の建設費、今後の維持管理費をしっかりと開示してもらえれば、JR北海道全体の欠損額と比較しても、桁違いであるということがわかるはず。道路の予算と鉄道の予算はあまりにもアンバランスで、それを是正すべきです。たとえば、オーストリアは北海道とほぼ面積が同じで、人口密度も北海道より少し多いぐらいです。かつては連邦の道路支出と鉄道支出は拮抗してましたが、今では鉄道支出が道路支出のほぼ2倍に増えています」



――なぜ外国では鉄道にそこまで税金を投入するのでしょうか?

「『鉄道復権』でも詳しく描きましたが、交通経済学の知見に従って便益計算を積み重ねていくと、単なる移動手段としての便益以外にも、環境や沿線地域に対する効果があり、鉄道はわれわれが思っている以上に地域経済に貢献していることがわかります。だからこそ欧米では〈上下分離方式〉の導入は当たり前、さらに鉄道に投入する公的予算をどんどん拡大していく傾向にあるのです」

――うーん、日本にいると、「鉄道復権」なんて話はにわかに信じがたいのですが……。

「それは日本人がいつまでも〈運賃収入でインフラ維持管理も含めて黒字経営〉という古いビジネスモデルに拘っているからです。アメリカでは、中心部の公共交通をすべて無料にし、それによって地域経済を活性化させて、全体の税収を増やそうとしている地方都市もあります。日本でも鉄道事業者も行政も、柔軟かつ大胆な発想で、新たな鉄道ビジネスの地平を切り開いてほしいと思います」

宇都宮浄人(うつのみや・きよひと)
関西大学経済学部教授。1960年兵庫県生まれ。京都大学経済学部卒業。1984年に日本銀行に入行。2011年に関西大学経済学部教授に就任。著書に『鉄道復権』(新潮選書、第38回交通図書賞受賞)、『路面電車ルネッサンス』(新潮新書、第29回交通図書賞受賞)、『地域再生の戦略: 「交通まちづくり」というアプローチ 』(ちくま新書、第41回交通図書賞受賞)など。

デイリー新潮編集部


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