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知識ゼロでもわかる【経済用語】 シャープ買収を「マンション」に例えて解説!

2016年03月29日 08時00分
提供:ORICON STYLE

 日々、新聞やニュースで目にする経済用語。社会人として当然知っているべきものだが、ちゃんと理解している人は意外に少ないのではないだろうか。そんな「いまさら聞けない」という経済用語を時事ネタに絡めて3つ解説する。

知識ゼロでもわかる【経済用語】 「長期金利マイナス」の影響が丸わかり!

 今回は大手電機メーカーのシャープが、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に買収されたことに関連して、「第三者割当増資」、「議決権」、「希薄化」を取り上げる。

 このニュースを伝えた2月25日付のロイター通信の記事(抜粋)を見てみよう。

 シャープは25日、経営再建の支援を受ける台湾の鴻海精密工業などに対し、「第三者割当増資」を実施、総額約4800億円を調達すると発表した。

今回の増資で新たに約32億8195万株の普通株式を発行するほか、C種種類株を約862万株発行する。調達額は(手数料を除き)普通株で3825億円、種類株1017億円の合わせて約4842億円。

 これらすべてを鴻海グループ4社が買い受け、議決権比率は66.07%になる。今回の増資によって、シャープの発行済み株式総数は、昨年9月末時点に対し最大243.56%(議決権ベースで245.91%)と、大幅に希薄化する。

 専門用語が並ぶこの記事を理解するために、株式会社を“分譲マンション”、株式が“住戸”で、そこに株主が住んでいると考えよう。株式会社の経営方針を決めるのが、議決権を持った株主たちによる株主総会で、これが分譲マンションの管理・運営を決める住民総会に相当する。

 液晶事業で失敗し経営危機に陥ったシャープは、大きく傾いた分譲マンションだ。このままでは倒壊(倒産)する恐れがあるものの、巨額の修繕費を調達できずにいた。分譲マンションがこうした状況に陥った場合には、住戸の増築で対応することがある。総住戸100戸の分譲マンションに10戸を増築して2000万円で売り出し、2億円の売却代金を改築・修繕費用に充当するといった具合だ。

 シャープの第三者割当増資もこれと同じだ。資本を増やすという意味の増資は、株式会社が新たに株式を発行・売却して資金を得るというもの。増資には、広く一般の投資家に株式を売り出す公募増資、特定の相手に絞って売り出す第三者割当増資、さらに現在の株主に対して売り出す株主割当増資などがあり、シャープが行うのは鴻海に売却先を限定した第三者割当増資だった。住戸(株式)を増やして鴻海に売却、新たな住民(株主)になってもらった上で、売却費用を修繕(経営再建)費用に充てるというわけだ。

 シャープが鴻海向けに新規発行するのは、普通株式とC種種類株式の2つ。普通株式32億8195万株は1株118円で売却され、その代金約3873億円(手数料を除いて3825億円)と、C種種類株約862万株を1株1万1180円で売却した1017億円を合わせた4842億円が、鴻海からシャープに支払われることになる。

 このお金を使って、シャープは会社再建に取り組むことになるのだが、会社の経営権は鴻海に奪われる。昨年9月末時点でのシャープの発行済み株式数は17億株ほどで、そのうち議決権のある株式数は約16億8500万株だった。今回、鴻海向けの第三者割当増資によって議決権のある普通株式が32億株余りも発行されることから、鴻海が議決権の66.07%獲得し、株主総会での決定権、つまり経営権を握ってシャープを買収することになるのだ。

 大量に住戸を増築して鴻海という新住民を迎え入れる結果、住民総会でもその意向に従わざるを得なくなるが、既存の住民(株主)には株式の希薄化という試練も待ち受けている。

 分譲マンションの住戸数を増築しても、土地や共用部分などの共有財産は変わらないことから、一戸当たりの持ち分が減ってしまう。住戸100戸で敷地面積が1000平方メートルの分譲マンションの場合、一戸当たりの土地の所有権は10平方メートル。ここで住戸が100戸増築されて200戸になったら、一戸当たりの土地所有権は半分の5平方メートルとなり資産価値は大きく低下する。これが希薄化であり、シャープの株式も第三者割当増資によって株式数が2.4倍に増えることから株式の大幅な希薄化が起こり、既存の株主は大きな損失を被るのだ。

 株式の希薄化に加えて、既存の株主は第三者割当増資の売却価格にも不満を持っている。鴻海への普通株式の売却価格118円だが、第三者割当増資発表前日の終値は174円で3割以上も安く設定されている。倒壊寸前の分譲マンションの住戸を大量に購入するのだから、価格は安くて当然というのが鴻海の考え方だが、極端な安値での売却に既存の株主からは非難と落胆の声が上がった。第三者割当増資の発表後、シャープの株価が一時136円にまで急落したのは、株式の希薄化と安すぎる売却価格に嫌気がさした既存の株主たちが、「こんなマンションに住んでいられるか!」と、株式を売り払った結果だったのである。

 鴻海という新住民が大挙して乗り込んでくるシャープという分譲マンション。鴻海としても、建物の修繕に失敗して倒壊してしまえば、投入した巨額の資金が失われるだけに、必死で再建を試みるだろうが、経営権を握っていることから、価値のある事業だけ取り出して、残りを解体することも不可能ではない。

 厳しい経営手法で知られる鴻海の郭台銘(テリー・ゴー)最高経営責任者だけに、強引な手段に打って出ることも考えられる。シャープという分譲マンションを建て直すのか、あるいは土地と使える設備だけを残して、解体処分してしまうのか…。日本を代表する家電メーカーシャープの命運は、鴻海の手に握られたのである。

記事/玉手 義朗
1958年生まれ。外資系金融機関での外為ディーラーを経て、現在はテレビ局勤務。著書に『円相場の内幕』(集英社)、『経済入門』(ダイヤモンド社)がある。


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