日刊アメーバニュース

横浜・野毛山動物園のカメは「密輸」されたカメって本当?

2015年02月15日 10時30分
提供:ウレぴあ総研

<横浜のココがキニナル!>
野毛山動物園で展示しているカメは、何と半数以上が密輸保護個体だとか。野毛山動物園に来ることになった経緯が知りたいです・・・。(ねこぼくさんのキニナル)

【写真13枚】野毛山動物園のカメたち

※本記事は2015年2月の「はまれぽ」記事を再掲載したものです。

1951(昭和26)年開園の老舗動物園として知られる野毛山動物園。
規模は大きくないが、入園無料ということもあってズーラシアにも負けない入場者数を誇る動物園である。

そんな野毛山動物園の人気スポットのひとつが、2014(平成26)年8月にリニューアルオープンした爬虫類館だ。
 

40種類の爬虫類を飼育・展示するこの施設で暮らすカメたちの多くが、違法取引の被害者らしい、というのが今回のキニナル。
実際のところはどうなのか。また、本当だとしたら、どんないきさつで野毛山動物園にカメたちが集まるのだろうか。

希少種だらけの爬虫類館!?

今回、話を聞いたのは爬虫類を担当している桐生大輔さん。担当歴12年に加え、自身でもカメを飼育しているというベテラン飼育員さんだ。
 

さっそく、野毛山動物園で保護個体のカメを飼育しているのかと質問をぶつけてみると「はい、それは事実です」との回答。

桐生さんによると「爬虫類は全部で160頭ほどいて、カメは110頭くらいです。そのうち約55頭が違法に持ち込まれて、保護された個体です」ということだから、キニナルにある通り、カメの半数が密輸保護個体ということになる。

違法に持ち込まれるということは、被害に遭うカメは取引が制限されている希少種ということだ。
例えば、国内では野毛山動物園にしかいないヘサキリクガメ。
マダガスカル島のごく一部にのみ生息するこのカメは、自然破壊や外来動物の脅威にさらされ絶滅の危機に瀕している。
 

1986(昭和61)年から現地に保護繁殖場が設けられて少しずつ数を増やしていたが、1996(平成8)年、その繁殖場に心ないカメ泥棒が入り込み76頭が盗まれてしまうという大事件が起こった。
その際、日本にも密輸があったようで、警察によって摘発された個体が現在は野毛山動物園で飼育されているというわけだ。

ほかにも、ホウシャガメやバタグールガメ、インドセタカガメにハミルトンガメなど、野生生物の国際取引を規制するワシントン条約の附属書I(I~IIIまであり、Iが最も制限が強い)に掲載されるカメたちが多く飼育されている。
 

動物園の場合、それらの種を合法的に迎え入れられる可能性もある。しかし、野毛山動物園で飼われているこれらのカメたちは、すべて人間のエゴで生息地から違法に連れてこられた個体だそうだ。

警察にも頼られる野毛山動物園

では、違法に日本に持ち込まれた、あるいは持ちこまれそうになったカメが、どういう理由で野毛山動物園に託されるのだろうか。

密輸の保護個体として動物園にやってくる動物には、大きく分けて2通りのパターンがあるそうで、それによって手続きに多少の違いがある。

ひとつは、空港などで発見され、国内に持ち込まれるのを水際で防いだ場合だ。
この場合、国際条約であるワシントン条約違反(ワシントン条約に罰則規定はないため、国内法の外国為替及び外国貿易法が適用される)となり、発見された動物の所有権は経済産業省が持つことになる。
 

経産省からは日本動物園水族館協会(JAZA)に連絡が行き、JAZAから所属の動物園などに保護飼育の打診がされるんだそうだ。その後、動物園での飼育が始まっても所有権は国が持ち続けることになる。
野毛山動物園の保護個体の中で、最も新入りのモエギハコガメはこのパターンで野毛山へやって来た。

一方、税関をすり抜け、国内に持ち込まれてしまった場合は日本の法律が根拠になる。
国内外の希少な野生生物を保護するための「種の保存法(正式名称は、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律)」や「文化財保護法」がそれだ。

文化財保護法に抵触するのは、国際取引ではなく国内の天然記念物に指定された動物の捕獲ややり取りなどが行われた場合。
野毛山動物園で飼育されているカメで言うと、リュウキュウヤマガメがこれに該当する。
 

国内法で保護された動物は、警察の証拠品という扱い。
警察から任意の動物園に保護飼育の打診がなされ、手続きが終わると所有権ごと動物園に移ることになっている。

野毛山動物園のカメの場合、近年では警視庁から保護を依頼されることが多かったそうだ。
警視庁による摘発件数が多いというのもあるが、都内にある上野動物園や多摩動物公園を差し置いて野毛山にやってくるのは、2003(平成15)年に起きた事件がきっかけになったという。

「実は、2003年に野毛山動物園からホウシャガメが盗まれたことがあったんです」と、当時爬虫類を担当し始めたばかりだったという桐生さんは話す。
そのカメ泥棒を逮捕してホウシャガメを取り戻してくれたのが警視庁で「そこで縁ができました」とのこと。

それに加え、桐生さんはホウシャガメやインドセタカガメを国内で初めて繁殖させるなど、数々の実績を持つカメ飼育のエキスパートでもある。
カメの飼育を安心して任せられる飼育員さんの存在も、野毛山動物園が頼られる理由であることは間違いない。

違法な上に乱暴な扱い

もちろん、禁じられた動物取引を行うことは、法的にも倫理的にもしてはいけないことだ。
しかし、問題はそれだけではなく、いわば二次被害的に動物が苦しめられるケースもある。

例えば、輸送の方法だ。
動物の長距離輸送はただでさえ気を使うことなのに、違法取引における輸送ではまったく動物に配慮がされないことがままあるそうだ。
劣悪な環境での輸送に耐えられず、日本に着いたときには動物が死んでしまっていたり、傷付いていたりすることも珍しくないという。
 

また、カメの中には飼育の難しい種もいる。
そういった知識や技術がないにもかかわらず、希少なカメを違法に飼育して死なせたり、健康状態を悪化させる例もあると桐生さんは話す。
 

この写真のホウシャガメは、保護されたときには、本来はドーム型になる甲羅がデコボコになってしまっていた。これは飼育環境の劣悪さを物語っているそうだ。
技術があるからといって飼っていいわけではないが、エサのやり方や温度、湿度をしっかり管理できなければ、甲羅の成長がいびつになるなどし、余計にカメを苦しめることになってしまうのだ。

故郷には帰れない

たぶん、この記事をここまで読んだ人の多くが、保護したなら生息地に戻してあげればいいじゃない、と思っているだろう。

桐生さんも「それができれば、理想です」と話す。
しかし、日本に密輸入される動物には、その過程で細菌やウイルス、寄生虫などが付いている可能性がある。

「例えば、インド原産のインドホシガメと一緒にいたホウシャガメを故郷のマダガスカルに帰すと、インドの細菌やウイルスをマダガスカルに持ち込むことにもなりかねない」と桐生さんは言う。
 

インドの動物たちには大きな害のない細菌やウイルスが、マダガスカルの動物にとっては致死性である可能性も否定できない。
そうなれば、里帰りさせることでかえってその種の生息数や、当地の生態系そのものに悪影響を与えるかもしれないのだ。
 

密輸元となっている国の中には検疫所を持たない地域も多く、そうなると「帰すべきではない」という判断がなされる。残念ながら、いったん密輸されてしまった動物は、動物園などで一生を過ごすほかないというわけだ。

取材を終えて

桐生さんは「爬虫類は密輸されやすい。その中でも、カメは圧倒的に多い」と話す。
鳴くことも、激しく動くこともしないので運びやすいという側面もあるが、日本人にカメ好きが多いという理由もある。

WWF(世界自然保護基金)とIUCN(国際自然保護連合)の自然保護事業として、国際的ネットワークを持つNGO団体「TRAFFIC」の日本支部「トラフィックイーストアジアジャパン」発行の『私たちの暮らしを支える世界の生物多様性-日本の野生生物取引のいま-』によれば、2007(平成19)年にリクガメの合法輸入量が世界2位になるなど、日本はカメ輸入大国でもある。

執筆時点で財務省から公表されている2014(平成26)年1月から11月までの輸入数を見ても、24万4958頭の爬虫類のうち、3分の2を超える16万6967頭をカメが占めている。
 

しかし、密輸する人間はもちろん、違法と知って飼育している人も、本当のカメ好きじゃない。本当に好きならそんなことはしないはずだ。

「動物を飼うこと自体を否定する気はありません」と話す桐生さんは「でも、禁止されている動物に手を出さないでほしい。できれば野生動物は動物園で見るようにしてほしい」と続ける。

また「合法でも野生動物を飼うのなら、きちんと飼えるだけの環境を整え、一生懸命勉強して、繁殖まで考えて飼うようにしてほしい」とも話してくれた。

野毛山動物園では、桐生さんの努力によって繁殖に成功した希少種も少なくない。それ自体はよろこばしいことだが、彼らを野生に戻すことは恐らく不可能だ。本来なら日本にいてはいけないカメたちなのだ。
カメが背負うのは甲羅だけでいい。一部の人間の都合で、余計な苦しみまで背負わせてはならない。
 

野毛山動物園からのお知らせ

講演会「知ろう・守ろう・日本の動物」(申し込み先着順)
期間/2月28日(土)
時間/13:30~15:50

「第10回 動物たちのSOS展」
期間/3月1日(日)~3月31日(火)

取材協力
野毛山動物園
所在地/横浜市西区老松町63-10
電話/045-231-1307
時間/9:30~16:30(最終入園は16:00)
入園料/無料

※本記事は2015年2月の「はまれぽ」記事を再掲載したものです。


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