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中国嫁日記作者 広州へ移住して最大のチャイナリスクは停電

2014年03月02日 16時00分
提供:NEWSポストセブン

 40代のオタク日本人と、中国からやってきた20 代のお嫁さん、月(ゆえ)さんとの日常生活を描く人気ブログ『中国嫁日記』の書籍版第3巻(KADOKAWA エンターブレイン)が発行された。著者の井上純一氏によれば、ブログで描き続けている原稿は6巻まで出せるほど溜まっているが、2巻から3巻を出すまでに約2年かかった。3巻出版にあわせて一時帰国していた井上氏に、3巻出版の苦労と、もうすぐ2年になる中国生活について聞いた。

 * * *
――中国へ移り住んでもうすぐ2年になりますね。

井上純一(以下、井上):2年経つといっても、最初の1年は日本にいる時間が長かったんです。マンガの仕事をする環境が中国の家になかったので、単行本『月とにほんご』(KADOKAWA アスキー・メディアワークス)の描き下ろしを終わらせてから中国へ行く予定だったのですが、終わる前に引っ越しの日を迎えました。

 だから、仕事をするためにちょくちょく日本へ帰る生活だったんです。でも結局、終わらなかったので中国で仕事をすることに決めました。

――マンガを描く仕事のための環境を中国で同じように整えるのは難しいのでしょうか?

井上:PCやスキャナ、ペンタブレットなどハードウェアで僕が使っている機器は、日本で使っていたものと同じメーカーの正規品を中国で買ったので、日本でそろえるよりも高くつきました。中国で安いのは家賃と人件費だけですね。PC本体は日本で組んだものを持って行きました。

 お金がかかることは、その後に起きたことに比べたらたいしたことありません。もっとも問題なのは電圧が一定ではない上に停電がよく起きて、いきなり電子機器が壊れることです。

――具体的には、どんなものが壊れるのでしょうか?

井上:電力が必要なUSB機器、たとえば外付けHDDなどですが、それらを接続したままPCの電源ボタンを押しても、起動しないんです(笑)。でも、この場合はHDDを外せば元に戻ります。それよりも、2年の間に2回、PCの電源ユニットが壊れたことの方が深刻でした。電圧が不安定なので、過電流で焼き切れて壊れるんです。おかげで「電源が壊れました。作業が遅れます」というメールを日本にいる編集者へ何度も送りました(笑)。

――壊れた電源ユニットの替えは中国で購入されたんですか?

井上:中国で暮らしている家の前に「電脳街」と称するPCパーツ専門店が集まっているところがあります。電源ユニットくらいそこで買えるだろうと思っていたら、出力電圧が低いものしかない。仕事用PCはマンガやイラストを描くために高性能なCPUやビデオカードを使っているので、電源も高電圧の出力が必要です。日本なら特殊なパーツではないのですが、近所では買えないので、わざわざ香港まで電源だけを買いに行きました。

 香港で正確にPCの部品を手に入れるには、通訳として月を連れて行かねばなりません。中国人が香港に行くのは面倒な手続きが必要なので、気軽にふらりと行くわけにはいきません。だから、一度の買い物で複数の電源ユニットを買ってきました。

 そうしたら、1年も経たないうちにやっぱり壊れて1個交換したので、もう残り1個しかありません(笑)。交換ばかりしていられないので、無停電電源装置(UPS)を買いました。部屋の電源とPCの間にUPSを設置することで、やっと電源トラブルの回数が減りました。

――日本でUPSを使う場所というと巨大なデータセンターや航空管制、発電所など一瞬たりとも停電が許されないところばかりですね。

井上:PCを不安定な電流から保護するためにUPSを使っています。この間、停電が起きたので初めてUPSが本来の意味で役に立ちました(笑)。でもゴオオオーと鳴り続けてやかましいんです。日本製じゃなく中国で買ったものだからなのか、凄まじくうるさい。いま初めて告白しますが、電源だけではなく他のトラブルも起きて、このままでは年度末までに『中国嫁日記』3巻を出せないのではと冷や汗をかきました。

――すでに十分トラブルまみれなのに、まだ起きるんですね。

井上:私の仕事用コンピュータは安全性を高めるために二つのHDDを繋げてデータをミラーリング、同一の内容を二つのHDDに記録するようにしています。その片方が壊れて、今は一つしかHDDが動いていません。幸い、データは複数の場所にコピーしているので、HDDが壊れてもすべてのデータがいきなり消滅することはないのですが、ミラーリングしておいてよかった。このトラブルは、担当編集さんにも今日まで話していませんでした(笑)。

――交換用のHDDも香港へ買いに行くのでしょうか?

井上:こんなこともあろうかと予備HDDはすでに用意してあるんです。中国の家へもどってから交換作業をします。ちゃんと用意しているあたり、我ながら大したもんですよ(笑)。常にチャイナリスクがあると思って備えています。PC関連に関しては、中国のものを何も信じていません。

――中国での生活は、予想しないことと備えることの追いかけっこのようですね。

井上:この間は、自分の仕事部屋の電気をつけようとしたら、すべての電源がつかなくなったんです。わけがわからなくて電気屋を呼んだら「明日、修理に来るまで二度とこのスイッチを入れるな。もし入れたら、このフロア全部が停電する」と言われました。ひとつの部屋のスイッチを押すだけで全体が止まる、同じマンションの電気が止まるというんです(笑)。

 おそらく配線そのものがおかしいはずなのに、ちゃんと修理してないんですよ。新しい装置を設置しただけで、電気配線の構造はそのままだと思います。その装置が壊れたら、また仕事部屋の電気のスイッチを入れるとマンションのフロア全体が停電するんです。とても面白い(笑)。

――ずいぶん雑な対処方法ですが、中国でのお住まいは高級マンションなんですよね?

井上:工場が多い地域なのですが、その経営者が多く住んでいるマンションで、実際に金持ちが多いですね。でも、そんなの関係ないです(笑)。中国の住宅事情を考えると、まだまともな方ですよ。

■井上純一(いのうえじゅんいち)1970年生まれ。宮崎県出身。漫画家、イラストレーター、ゲームデザイナー、株式会社銀十字社代表取締役社長。多摩美術大学中退。40歳で結婚した20代の中国人妻・月(ゆえ)との日常を描いた人気ブログ『中国嫁日記』を書籍化しシリーズで累計65万部を超えるベストセラーに。2012年4月から広東省東莞市在住。著書に『月とにほんご 中国嫁日本語学校日記』(監修・矢澤真人/KADOKAWA アスキー・メディアワークス)など。最新刊は『中国嫁日記』3巻(KADOKAWA エンターブレイン)。


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