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もうひとつの木嶋佳苗事件 なぜ男たちは彼女に惹かれたのか?

2013年12月23日 11時20分
提供:ダ・ヴィンチ

 首都圏連続不審死件の木嶋佳苗と並び称された「鳥取連続不審死事件」上田美由紀被告の控訴審が12月10日、広島高裁松江支部で始まった。

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 この事件は09年、当時35歳だった元スナック従業員の美由紀被告が2件の強盗殺人及び詐欺罪などを問われたものだが、美由紀被告の周囲には、事件化された2件以外にも4人もの男性が不審な死を遂げていたことが発覚、連続不審死事件として注目を浴びたのだ。奇しくも同時期、東京周辺でも木嶋佳苗被告周辺の連続不審死事件が発覚、2人の年恰好など共通点が多かったこともあり、類似事件として大きな話題になる。2人がともに一般的に美人とされる容姿ではなかったためか、この2つの事件に対し「美人でもないのに、なぜ何人もの男たちと?」という疑問を抱く人も少なくなかった。

 一審法廷で自らの性遍歴を赤裸々に開陳した佳苗被告に対し、一審で黙秘を貫いた美由紀被告については、鳥取がマスコミが集中する東京から遠いこともあり、その肉声が伝わることはほとんどなかった。そんな鳥取連続不審死事件を丹念に追ったルポが『誘蛾灯 鳥取連続不審死事件』(青木理/講談社)だ。

 多くの事件報道が加害者の生い立ちなどから事件をアプローチするのに対し、本書の興味深いところは、被害者や美由紀被告と関係のあった男性たちへのアプローチを主とし、事件の起こった鳥取という地方性、舞台となったスナックでの交遊などを通し、事件を浮かび上がらせていこうと試みた点だ。

 著者の青木氏はその理由をこう記している。

「(被害に合った)男たちの中には新聞記者や警察官もいて(略)安定した仕事と家庭を持つなど、かなり恵まれた環境にある者も多かった。(にも関わらず)美由紀のような女に次々と吸い寄せられていった男たちの心情のほうに興味を惹かれていた」からだと。

 男たちはなぜ美由紀被告に惹かれたのか。

 子煩悩で仕事熱心だった男たちは、職場を無断欠席するなど「美由紀と交際をはじめ、様子を一変させてしまう」。妻子を捨て美由紀被告の元に行き、彼女の言うがままに多額の金を貢いでいく。そして男たちは一様に「美由紀に癒された」と話すのだ。

「キライではなかったよ。可愛いところもあったしな」
「子供をダシに使うんや。アイツの子どもにオレのことを“お父さん、お父さん”って呼ばせよる。そりゃ、こっとも悪い気はせんやろ。“お父さん、一緒に暮らそう”とか、“お父さんとお母さんは結婚しないの?”なんて言われればな、こっちはホロっとくるがな。それにアイツ、子どももたーくさん育ててるしなぁ」
「ああ見えて無邪気なところがあって、子どもみたいにジャレついてきたり、可愛いらしい手紙なんかもマメに書いてきたしな」
「若い女にそんなことされりゃ、男なら誰だってうれしくなるやろが」

 かつて美由紀被告と付き合ったことで、妻子を捨てた70歳近い男性の証言だ。

 もう1人、同じく妻子と別れ、美由紀被告と4年間交際を続けた40代の男性もこう話す。

「(夫婦仲が冷めるとか、不和とか)そういうとこにスッと入り込んでくるのがウマいんだわ」
「(メールも)ものすごい送ってきたで。それに女1人で何人もの子どもを育てとるわけじゃん。その子どものことなんかタテに取られると、やっぱりホロッとくることもあるしな」
「とにかく男を立ててくれる。居心地のいい空間、居心地のいい空気っていうか、そんなんをつくるのがうまいんや」
「出かけた先で知り合いなんかに会ったりすると、“うちのもんがお世話になっています”って、きちーんと挨拶する。賞月に上司の家に行くっていえば、“あんた、手ぶらじゃいけん”とかいって、ちゃーんと土産を用意してくれたりとかな」
「後輩と飲みにいくっていえば、財布の中に黙って二万とか三万、それなりのカネを入れといてくれたりとかな」

 礼儀正しく、男を立てる。そして男に居心地のいい場所を与える―。男たちは一様に美由紀被告を「ウソつきだった」という一方、彼女の女性としての可愛いらしさ、魅力を語るのだ。

 もうひとつ、上田事件を取材する著者は足しげく市内の繁華街にある「カラオケスナック・ビッグ」に通う。そこはかつて美由紀被告がホステスとして働き、事件に関係することになる多くの男性と出会った“デブ専”のスナックだ。ママは美由紀被告に自分の所有するアパートを貸し、男を紹介したエピソードを著者に語る。そしてママ自身も窃盗事件の被害者だった。

「あーらぁ、青ちゃんじゃないっ。ずっと待っていたんやでぇ」

 高齢の“ビッグ”なママやホステスたちからすっかり常連扱いの著者は、この場末のスナックを軸に、狭い土地や人間関係、そして事件の“背景”を垣間見る。

 本当に美由紀被告は男たちを殺したのか。美由紀被告が主張する“真犯人”とは誰なのか。困窮と格差、そして裁判員制度にも切り込んでいく。どん底に巣食う日本の病理―。

 昨年の一審では無罪を主張をしたものの、死刑判決を受けた美由紀被告。一審では黙秘を通した美由紀被告だが、控訴審初公判では、一転、無罪主張を含め事件の詳細を語り始めている。今後も控訴審は続くが、今後美由紀被告は何を語るのか。事件の真相は。物証がほとんどない事件だけに、今後の行方が注目される。

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