コラム

ピース・又吉が「太宰治の感覚は芸人的」とする理由

11月01日11時45分

提供:ダ・ヴィンチ

 無類の本好きで知られる人気芸人・又吉直樹(ピース)さん。なかでも太宰治の大ファンであることはよく知られているが、太宰は今やったら芸人になってたんじゃないか、と又吉さんは言う。
 
 「おもろい話を人に伝える時に、実際起こったのと同じこと書いても、うまいこと人に伝わらへん。実際にその場におった人よりどうしても質が落ちるじゃないですか。そこで起こったことと同じだけの感動を呼びおこすにはそのための仕掛けが絶対に必要で、たとえば『富嶽百景』で太宰は井伏鱒二さんが放屁したって書いてるけど、実際は退屈そうに岩に座っていただけなんですよ。それをそのまま伝えても、その時の感じは伝わらない。
 
 よく〈話を盛る〉って言いますけど、その盛り方が嘘じゃないっていうか、盛らへんほうが嘘になる。盛ることによって、その場にいたのと同じことを感じさせようとしてる。たぶん太宰は井伏さん見て、おもろかったんだと思うんですよ。なに、この人。頂上まで来て、こんな退屈そうにして……ここで屁をこくぐらいが井伏さんのその時の感じが明確に伝わる、そのための工夫やったんじゃないか。井伏さん、否定してますからね。俺は屁はこいてないって。
 
 有名な〈富士には月見草がよく似合う〉っていうくだりも、あの時間に月見草は咲かない、でも咲いてると言ってちょうどいいくらいの何かがあったんじゃないか。そういう作中の工夫の仕方に身に覚えがあるというか、感覚的に芸人に近いものを感じますね」

(ダ・ヴィンチ11月号「又吉直樹 インタビュー」より)

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